店舗閉店やオフィス移転では、大量の設備や什器が不要になります。
このとき、最初からすべてを「不用品」として処分するのはおすすめできません。
厨房機器、店舗什器、オフィス家具、OA機器などには、中古品として売却できるものがあります。
一方で、新しい拠点へ持っていくもの、リース会社へ返却するもの、建物に残すもの、法令や契約に沿って適切に廃棄するものもあります。
閉店・移転時には、まず「移設・売却・返却・残置・廃棄」の5つに分けることから始めます。
このページでは、設備・什器を処分する前に確認したいことと、原状回復まで含めた進め方を整理します。
閉店・移転で設備をすぐ処分しない方がよい理由
設備や什器を廃棄すると、通常は搬出や処理の費用が発生します。
一方、中古需要があるものなら、買取価格がつく可能性があります。
つまり同じ設備でも、
- 処分する → 費用が発生する
- 売却する → 買取代金を受け取れる可能性がある
という逆の結果になる場合があります。
さらに、売却できれば原状回復工事までに撤去する物量も減らせます。
そのため基本的には、
買取可能性を確認 → 売れないものを処分
の順番で考えます。
最初に「移設・売却・返却・残置・廃棄」に分ける
店舗やオフィスにあるものを一覧にして、次の5つに分類します。
1. 新しい店舗・オフィスへ移設する
まだ使用する設備・家具です。
買取査定や廃棄業者へ渡す対象から除外します。
2. 売却する
自社では不要になるものの、中古市場で再利用できる設備・什器です。
3. リース・レンタル会社へ返却する
自社所有ではない機器です。
売却・廃棄する前に契約先を確認します。
4. 居抜き等で物件に残す
貸主・管理会社や後継テナントとの合意により、内装や設備を残す場合です。
居抜きについては居抜き・造作譲渡ガイドで詳しく解説しています。
5. 廃棄する
移設せず、売却もできず、返却・残置もしないものです。
この順番で分類すると、廃棄対象を必要以上に増やしにくくなります。
厨房機器で買取を検討できるもの
飲食店の閉店・移転では、大型の厨房機器が多数残ることがあります。
例えば、
- 業務用冷蔵庫
- 業務用冷凍庫
- コールドテーブル
- 製氷機
- 食器洗浄機
- ガスレンジ
- フライヤー
- オーブン
- スチームコンベクションオーブン
- シンク
- 作業台
- ショーケース
- 製麺機
- 券売機
などは、中古市場で取り扱われている代表的な設備です。
ただし、同じ種類の設備なら必ず買い取ってもらえるわけではありません。
年式、メーカー、型番、状態、需要、搬出条件などによって査定結果は変わります。
店舗什器で買取を検討できるもの
飲食店以外でも、店舗にはさまざまな什器があります。
例えば、
- 陳列棚
- ショーケース
- レジカウンター
- ディスプレイ什器
- 業務用家具
- テーブル・椅子
- ワゴン
- 収納
- 受付家具
- サロン用設備
などです。
店舗什器は、ブランド、デザイン、サイズ、状態に加え、再販しやすいかどうかも査定に影響します。
店舗専用に造作した大きな家具は、購入時に高額だったとしても、その店舗に合わせて作られているため、中古品として再利用しにくい場合があります。
オフィス家具で買取を検討できるもの
オフィス移転・縮小・拠点統合では、家具を大量に入れ替えることがあります。
対象になりやすいのは、
- オフィスチェア
- デスク
- 会議テーブル
- キャビネット
- 書庫
- ロッカー
- 応接家具
- ミーティングチェア
- パーティションの一部
などです。
特に法人移転では点数が多いため、一点ごとの価格だけでなく、搬出作業まで含めて条件を比較する必要があります。
オフィス移転全体についてはオフィス退去・移転ガイドも確認してください。
OA機器は売却前にデータと契約を確認する
オフィスには、
- パソコン
- サーバー
- 複合機
- プリンター
- モニター
- 電話機
- ネットワーク機器
などがあります。
ここでは価格以前に、所有権と情報管理を確認します。
複合機やパソコンなどがリース契約なら、勝手に売却できません。
また、自社所有品でも記憶媒体がある機器は、売却・廃棄前にデータを適切に消去します。
単純にファイルを削除しただけではデータが復元できる場合があるため、社内の情報管理基準に沿った消去方法や専門サービスを利用します。
リース品を売却しない
閉店や移転時に特に注意したいのがリース・レンタル品です。
例えば、
- 複合機
- POS
- 電話設備
- 厨房機器
- 美容機器
- 医療関連機器
などが対象になることがあります。
店舗やオフィスに置いてあるからといって、自社所有とは限りません。
まず、
- 購入
- リース
- レンタル
- 貸与
を確認します。
リース契約が残っている場合は、返却、移設、契約継続、解約等について契約会社へ確認します。
買取価格は何で変わるのか
設備・什器の査定は、購入価格だけでは決まりません。
主に確認されるのは、
- メーカー
- 型番
- 製造年・購入時期
- 使用状態
- 故障の有無
- 傷・汚れ
- 中古市場での需要
- 同じ商品が何台あるか
- 搬出の難易度
- 設置場所
などです。
購入時に高額だったとしても、中古市場で需要がなければ高値になるとは限りません。
反対に、一定の需要がある製品なら、古すぎず状態が良いことで査定対象になる可能性があります。
メーカー名・型番・年式を確認しておく
査定依頼をする前に、機器の銘板を確認できると話が早くなります。
最低限、
- メーカー
- 製品名
- 型番
- 製造年
- 台数
が分かるようにしておきます。
厨房機器では本体の側面や内部、背面などに銘板が付いていることがあります。
写真で査定を依頼する場合も、機器全体だけでなく銘板を撮影しておくと情報を伝えやすくなります。
写真査定では何を撮ればよいか
現地査定の前に写真で概算を確認できる事業者もあります。
その場合は、
- 機器全体
- メーカー・型番の銘板
- 傷や破損箇所
- 設置されている周囲
- 搬出経路
を撮影します。
大型機器の場合、商品価値だけでなく搬出条件も重要だからです。
買取金額だけで業者を比較しない
閉店・移転案件では、提示された買取金額だけを比較すると全体コストを見誤ることがあります。
例えば、A社が10万円で買い取り、搬出費が8万円かかる場合と、B社が7万円で買い取り、搬出費込みの場合では、手元に残る金額はB社の方が多くなります。
確認したいのは、
- 買取金額
- 出張費
- 搬出費
- 取り外し費
- 車両費
- 階段作業等の追加費
- 買取不可品の処分費
です。
最終的にいくら受け取り、いくら支払うのかで比較します。
買取と処分を一括で依頼する方法もある
閉店・移転では、売れるものと売れないものが混在しています。
そのため、買取、撤去、処分をまとめて対応する事業者もあります。
窓口を一つにできるため、退去期限が近い場合や物量が多い場合には便利です。
一方で、買取と処分を一社にまとめると、
- 個々の設備の査定額
- 処分費
- 搬出費
の内訳が分かりにくくなることがあります。
少なくとも、
買取額と処分・撤去費を分けて確認する
と比較しやすくなります。
複数社査定が向いているケース
次のような場合は、複数の買取先を比較する意味があります。
- 比較的新しい高額厨房機器がある
- メーカー家具が大量にある
- 店舗設備一式を売却する
- オフィス家具が大量にある
- 退去まで十分な時間がある
一方、数点しかなく商品価値も小さい場合は、複数の事業者へ現地査定を依頼する手間の方が大きくなることがあります。
査定額だけでなく、退去までの時間と担当者の工数も考えて判断します。
売却時期は原状回復工事から逆算する
設備をいつ搬出するかも重要です。
店舗閉店の場合、営業終了後に厨房機器を撤去し、その後で内装解体・原状回復工事へ入ることがあります。
オフィスでも、引越し後に不要家具を搬出し、その後に原状回復工事へ進みます。
そのため、
- 最終営業日・引越し日
- 設備搬出日
- 原状回復工事開始日
- 工事完了日
- 明け渡し日
をつなげて考えます。
買取業者の都合だけで搬出日を決めると、営業や工事工程に影響することがあります。
居抜きに残す設備と個別に売る設備を分ける
居抜き退去を検討している場合は、何でも買取業者へ売ればよいわけではありません。
後継テナントが、
- 厨房機器
- 空調
- カウンター
- テーブル・椅子
- サロン設備
などを必要としているなら、物件に残した方が居抜きとしての価値が高くなる場合があります。
一方、後継者が不要な設備は個別に売却できる可能性があります。
したがって、
造作譲渡するもの・個別売却するもの・撤去するもの
を分けます。
詳しくは居抜き・造作譲渡ガイドを確認してください。
原状回復見積の「処分費」と重複していないか確認する
原状回復見積の中に、
- 什器撤去
- 厨房機器撤去
- 残置物撤去
- 廃棄物処分
などが含まれていることがあります。
その後、別の買取・撤去業者へ設備搬出を依頼するなら、原状回復側の見積からその範囲を外せるか確認します。
同じものについて、
買取業者へ搬出費を払い、原状回復業者にも撤去・処分費を払う
という重複を避けます。
原状回復見積の確認については原状回復ガイドで詳しく解説しています。
業務用冷蔵・冷凍・空調機器を廃棄するときは注意する
業務用冷蔵庫、冷凍庫、ショーケース、業務用エアコンなどには、冷媒としてフロン類が使用されている機器があります。
対象となる業務用冷凍空調機器を廃棄する場合は、通常の什器と同じようにそのまま廃棄するのではなく、フロン排出抑制法に沿った対応が必要です。
売却ではなく廃棄になる場合は、処理を依頼する事業者へ、
- 対象機器か
- フロン回収をどのように行うか
- 必要な書類をどう扱うか
を確認します。
事業所から出るものを家庭ごみと同じ感覚で処分しない
店舗やオフィスから大量に出る家具・設備・廃材は、家庭の引越しごみとは扱いが異なります。
材質や発生状況によって、産業廃棄物に該当するものと事業系一般廃棄物に該当するものがあります。
そのため、売却できなかったものを処分するときは、対象物に応じた適切な処理先を確認します。
撤去・廃棄については撤去・廃棄ガイドで詳しく整理します。
パソコンや記憶媒体はデータを消してから売却する
パソコン、サーバー、NASなどを売却・廃棄する場合、端末本体だけでなく内部データを考える必要があります。
顧客情報、従業員情報、契約書、メール、業務資料などが残っていれば、情報漏えいにつながる可能性があります。
単純なファイル削除やゴミ箱を空にする操作だけに頼らず、保存されている情報の機密性や媒体に応じた方法でデータを消去します。
外部業者へ依頼する場合は、消去方法や作業記録・証明の有無なども確認します。
買取業者を見るときの確認ポイント
価格だけではなく、次の点も確認します。
- 法人・店舗案件に対応しているか
- 対象設備の買取実績があるか
- 現地査定が必要か
- 搬出作業まで対応するか
- 取り外しが必要な設備に対応するか
- 買取不可品をどう扱うか
- 処分まで依頼する場合の処理方法
- 作業日を原状回復工程に合わせられるか
- 見積後に追加費用が発生する条件
閉店・退去では、「最高額で一台売れること」だけでなく、決められた日までに現場を空にできることも重要です。
査定前にやっておきたいこと
査定を依頼する前に、設備一覧を簡単に作っておくと比較しやすくなります。
項目は、
- 品名
- メーカー
- 型番
- 年式
- 台数
- 状態
- 所有・リースの区分
- 移設・売却・廃棄の希望
程度で十分です。
大量にある場合は、Excel等で一覧化して各社へ同じ情報を渡すと、条件を比較しやすくなります。
高く売るために退去直前まで待つ必要はない
売却時期が遅すぎると、査定額以前に搬出日程を確保できないことがあります。
特に大量の厨房機器やオフィス家具は、
- 現地調査
- 査定
- 搬出計画
- 車両手配
- 人員手配
が必要になる場合があります。
退去期限が決まった段階で、売却候補だけでも早めに整理しておく方が安全です。
閉店・移転時の設備整理チェックリスト
所有関係
- 自社所有品を確認した
- リース品を確認した
- レンタル品を確認した
- 貸主所有設備を確認した
移設
- 新拠点へ持っていくものを決めた
- 他店舗・他拠点へ移すものを決めた
- 搬送方法を決めた
売却
- 売却候補を一覧化した
- メーカー・型番を確認した
- 年式を確認した
- 状態を確認した
- 写真を撮った
- 搬出条件を確認した
居抜き
- 後継テナントへ残す設備を決めた
- 造作譲渡対象を確認した
- 貸主側と残置条件を確認した
処分
- 売れなかったものだけを処分対象にした
- 原状回復見積と撤去範囲が重複していないか確認した
- 廃棄物の処理方法を確認した
- フロン使用機器の処理を確認した
- OA機器等のデータ消去を確認した
売るか処分するか迷ったときの順番
閉店・移転で設備が大量に残ったら、次の順番で整理します。
- 自社所有か確認する
- 新拠点で使うものを除外する
- 居抜きで残すものを除外する
- 中古価値があるものを査定する
- 売れなかったものを処分対象にする
- 原状回復工事と搬出工程を調整する
最初から「全部処分してください」と依頼するより、何を残せるかを先に見る方が退去費用を整理しやすくなります。
目的別に詳しく確認する
- 店舗閉店全体を確認したい → 店舗閉店ガイド
- オフィス移転・退去全体を確認したい → オフィス退去・移転ガイド
- 居抜きで設備を引き継ぎたい → 居抜き・造作譲渡ガイド
- 原状回復見積を確認したい → 原状回復ガイド
- 撤去・内装解体・処分を確認したい → 撤去・廃棄ガイド
- 契約や退去日程を確認したい → 契約・退去手続きガイド
処分を決める前に、売却できるものを分ける
店舗閉店やオフィス移転では、退去期限があるため「とにかく全部なくしたい」と考えやすくなります。
しかし、まだ使える設備まで最初から廃棄対象にすると、買取可能な資産を失うだけでなく処分費まで支払うことがあります。
まず、
- 移設するもの
- 売却するもの
- 返却するもの
- 居抜きで残すもの
- 廃棄するもの
を分け、それぞれの搬出期限を原状回復工程へ組み込みます。
