店舗・オフィスの撤去・廃棄|内装解体・スケルトン返し・残置物処分の進め方

店舗閉店やオフィス退去では、内装、設備、家具、什器、残置物などを撤去する必要があります。

ただし、退去が決まったからといって、室内にあるものをすべて壊して捨てればよいわけではありません。

契約上残してよいものまで撤去すれば余計な工事費が発生します。

売れる設備を廃棄すれば、資産を失ったうえに処分費まで支払うことになります。

居抜きで次のテナントへ引き継げる内装を先に解体すれば、その選択肢もなくなります。

撤去・廃棄では、「何を壊すか」より前に「何を壊す必要がないか」を整理することが重要です。

このページでは、内装解体、スケルトン返し、残置物撤去、事業系廃棄物の処理を、原状回復との関係も含めて整理します。

撤去・廃棄を依頼する前に確認する順番

閉店・退去が決まったら、次の順番で整理します。

  1. 賃貸借契約上の原状回復範囲を確認する
  2. 居抜きで残せるものを確認する
  3. 新店舗・新オフィスへ移設するものを分ける
  4. 売却できる設備・什器を査定する
  5. リース・レンタル品を分ける
  6. 貸主所有設備を確認する
  7. 残ったものについて撤去・廃棄方法を決める
  8. 原状回復工事と工程を合わせる

この順番なら、廃棄する量そのものを減らせる可能性があります。

厨房機器、店舗什器、オフィス家具などの売却については設備・什器買取ガイドで詳しく整理しています。

内装解体と原状回復は同じではない

「内装解体」「原状回復」「スケルトン返し」は混同されやすい言葉です。

内装解体は、室内に設置された内装・造作・設備などを壊して撤去する工事そのものを指します。

原状回復は、賃貸借契約上求められる状態まで物件を戻して明け渡すことです。

原状回復のために内装解体が必要になることはありますが、原状回復には、

  • クロスの施工
  • 塗装
  • 床の復旧
  • 設備の復旧
  • クリーニング

など、壊す以外の工事も含まれる場合があります。

つまり、

内装解体=工事の一部
原状回復=明け渡し時に達成すべき状態

と考えると整理しやすくなります。

原状回復については店舗・オフィスの原状回復ガイドを確認してください。

スケルトン返しとは

スケルトン返しとは一般に、店舗等の内装や造作、設備を撤去し、建物の構造体や基本部分が見える状態まで戻して返却することを指します。

例えば、

  • 間仕切り
  • 造作壁
  • 天井
  • 床仕上げ
  • カウンター
  • 厨房
  • 店舗什器
  • 借主が設置した設備

などを撤去することがあります。

ただし、「スケルトン」という言葉だけで具体的な完成状態が全国一律に決まっているわけではありません。

物件によって、

  • 床下地をどこまで残すか
  • 天井をどこまで撤去するか
  • 空調設備を残すか
  • 給排水管をどこで処理するか
  • 電気配線をどこまで撤去するか
  • 貸主所有設備をどう扱うか

が異なります。

「スケルトン返し」と言われたら、完成状態を図面や書面で具体化することが大切です。

スケルトン返しと原状回復の違い

原状回復は、契約上求められる状態へ戻すことです。

その完成状態がスケルトンなら、スケルトン返しが原状回復になります。

一方、入居時が事務所仕様で、壁・天井・床等を復旧して返す契約なら、躯体まで解体することが原状回復とは限りません。

したがって、

原状回復=必ずスケルトン返し

ではありません。

どの状態まで戻すかは賃貸借契約、特約、入居時の状態などから確認します。

居抜きで借りた店舗でもスケルトン返しが必要なことがある

「居抜きで借りたのだから、居抜きのまま返せる」とは限りません。

前のテナントが残した設備や造作をそのまま使っていた場合でも、現在の契約でスケルトン返しが定められていれば、退去時にそれらの撤去を求められる場合があります。

逆に、貸主と後継テナントの承諾が得られれば、居抜きで引き継げる場合もあります。

退去が決まったら、解体を発注する前に居抜き・造作譲渡の可能性を確認します。

内装解体で撤去するもの

実際の対象は物件ごとに異なりますが、店舗なら例えば、

  • 造作壁・間仕切り
  • カウンター
  • 客席造作
  • 厨房設備
  • ダクト
  • 看板
  • 照明
  • 床材
  • 天井材
  • 給排水設備の一部
  • 電気設備の一部

などがあります。

オフィスでは、

  • パーティション
  • 造作会議室
  • 受付造作
  • 床材
  • 配線
  • 増設照明
  • 借主設置の設備

などが対象になることがあります。

重要なのは、一般的な撤去項目をそのまま自社物件へ当てはめるのではなく、今回の契約上どれを撤去する必要があるのかを確認することです。

貸主所有設備を勝手に撤去しない

店舗やオフィス内にあるものが、すべて借主の所有物とは限りません。

例えば、

  • 空調
  • 照明
  • 消防設備
  • トイレ
  • 給排水設備
  • 分電盤
  • 建物側の設備

などについて、貸主側の所有物が含まれていることがあります。

「スケルトンだから全部撤去」と自己判断すると、残すべき設備まで壊してしまう可能性があります。

解体範囲は貸主・管理会社と事前に確認します。

リース・レンタル品も解体業者へ渡さない

厨房機器、複合機、POS、美容機器などにはリースやレンタル品が含まれることがあります。

これらは自社所有物ではないため、解体・廃棄・売却の対象へ入れる前に契約を確認します。

設備整理については設備・什器買取ガイドも確認してください。

残置物撤去とは

店舗・オフィスを退去するとき、室内に残っている家具、備品、在庫、家電、什器などを搬出する作業を「残置物撤去」と呼ぶことがあります。

例えば、

  • デスク
  • 椅子
  • ロッカー
  • 食器
  • 在庫
  • 家電
  • 事務用品
  • 店舗備品

などです。

ただし、「残置物」という名称だからといって、すべて同じ方法で処分できるわけではありません。

事業活動から出る廃棄物は、種類に応じて産業廃棄物または事業系一般廃棄物などとして適切に処理する必要があります。

店舗・オフィスのごみを家庭ごみとして出さない

事業所から出る廃棄物は、家庭から出るごみとは扱いが異なります。

例えばオフィス移転で出る家具や設備も、材質や種類によって処理区分が異なります。

自治体の家庭ごみ収集へ大量に出すのではなく、事業系廃棄物として適切な方法を確認します。

何が産業廃棄物に該当するかは、物の種類や発生状況によって異なります。

処理を依頼するときは、対象物を伝えたうえで、必要な許可や処理方法を確認します。

「不用品回収なら何でも持っていける」と考えない

店舗やオフィスの退去で大量の廃棄物が出る場合、価格だけを見て回収業者を選ばないことが重要です。

廃棄物の種類によって、収集運搬や処分に必要な許可が異なります。

確認したいのは、

  • 何を処分するのか
  • その廃棄物を取り扱える事業者か
  • どこへ運搬するのか
  • どのように処理するのか
  • 必要な契約や管理票をどのように扱うのか

です。

「全部まとめて安く持っていきます」という説明だけでなく、処理の流れを確認します。

オフィス移転で出る産業廃棄物は事業者側にも処理責任がある

オフィス移転などで事業活動から産業廃棄物が発生し、その処理を外部へ委託する場合、排出事業者には適正処理を確認する責任があります。

対象となる産業廃棄物の処理を委託する際には、許可を受けた処理業者への委託、必要な委託契約、マニフェストによる処理状況の確認などが必要になります。

引越会社や片づけ業者へ渡せば、それ以降はすべて自社と無関係になるという考え方ではありません。

内装解体工事から出る廃棄物は扱いが異なる

一方、内装解体や原状回復などの建設工事そのものから発生する廃棄物については、原則として発注者から直接工事を請け負った元請業者が、廃棄物処理法上の排出事業者になります。

これは、店舗側・オフィス側が自ら日常業務や引越しで排出する廃棄物とは区別して考える必要があります。

したがって、退去時には、

  • 会社自身が処分する家具・設備・事業系廃棄物
  • 解体工事によって発生する建設廃棄物

を分けて整理すると、誰がどの処理を担当するのか把握しやすくなります。

撤去見積は「解体費」と「処分費」を分けて見る

内装解体の見積には、さまざまな費用が含まれます。

例えば、

  • 解体作業費
  • 設備撤去費
  • 搬出費
  • 車両費
  • 廃棄物処理費
  • 養生費
  • 現場管理費
  • 夜間・休日作業費
  • 諸経費

などです。

総額だけを見るのではなく、「壊す費用」「運び出す費用」「処分する費用」を分けて見ると内容を把握しやすくなります。

撤去費用が変わる主な条件

撤去・解体費は面積だけでは決まりません。

例えば、

  • 撤去する造作の量
  • 厨房設備の有無
  • 床・壁・天井の仕様
  • 設備配管の量
  • 廃棄物の種類と量
  • 階数
  • エレベーターの有無
  • 搬出距離
  • トラックを停められる場所
  • 作業可能時間
  • 夜間工事の必要性
  • 養生範囲
  • ビル側の施工ルール

などで変わります。

そのため、「○坪だから○万円」という数字だけでは、個別見積の妥当性を判断できません。

廃棄量を減らせば費用が変わる可能性がある

解体工事では、撤去するものが増えれば、解体作業だけでなく搬出・運搬・処理する量も増えます。

そこで工事前に、

  • 買取できる厨房機器を搬出する
  • 売れるオフィス家具を売却する
  • 新拠点で使う家具を移設する
  • 居抜きで残す設備を決める

などを行えば、最終的な廃棄量を減らせる場合があります。

ただし、個別搬出することで別途取り外し工事が必要になることもあります。

原状回復業者と買取業者の作業範囲が重複しないよう確認します。

同じものに撤去費を二重で払わない

例えば原状回復見積に、

「厨房機器撤去・処分」

が入っている状態で、別の買取業者がその厨房機器を搬出することになったとします。

その場合、原状回復側の撤去・処分費をそのまま残す必要があるのか確認します。

オフィス家具や残置物でも同様です。

誰が何を撤去するのかを一覧にして、重複発注を防ぐと費用を整理しやすくなります。

指定業者が撤去・原状回復を行う場合

ビルや商業施設によっては、原状回復や設備撤去の一部を指定業者が施工する場合があります。

その場合も、

  • 指定業者が撤去するもの
  • 借主側で事前搬出できるもの
  • B工事になる部分
  • C工事として別発注できる部分

を確認します。

工事区分についてはB工事・指定業者ガイドを確認してください。

解体・改修工事ではアスベスト事前調査を確認する

店舗・オフィスの内装解体や原状回復では、壁、天井、床、設備など建築材料に手を加えることがあります。

建築物の解体・改修工事では、工事前に石綿(アスベスト)含有建材の使用の有無について事前調査が必要です。

これは大規模な建物解体だけの話ではなく、原状回復や改修などの小規模工事でも関係する場合があります。

一定規模以上の工事では、事前調査結果の行政への報告も必要になります。

したがって見積や業者選定時には、対象工事について、

  • 石綿事前調査が必要か
  • 誰が調査するのか
  • 見積に調査費が含まれているか
  • 石綿含有建材が確認された場合に追加対応が必要か

を確認しておきます。

アスベスト調査を後から追加すると工期に影響することがある

工事開始直前になって石綿調査が必要だと分かると、調査や分析、必要な施工方法の検討によって工程が変わる可能性があります。

退去期限が決まっている案件では、解体業者の選定時点で確認しておく方が安全です。

石綿が含まれているかどうかを、建物の見た目だけで自己判断しないようにします。

ビルの工事ルールを先に確認する

撤去業者が決まっても、自由な時間に解体・搬出できるとは限りません。

ビルや商業施設では、

  • 工事申請
  • 作業員名簿
  • 搬出入申請
  • エレベーター予約
  • 養生方法
  • 作業可能時間
  • 騒音作業可能時間
  • 車両の停車場所

などが決められていることがあります。

夜間・休日しか作業できない場合は、工事費にも影響します。

撤去工事は明け渡し日から逆算する

退去では「解体工事終了日」と「契約終了日」が同じでは危険な場合があります。

工事後に貸主・管理会社の確認が入り、是正を求められる可能性もあるからです。

工程は、

  1. 営業終了・引越し
  2. 買取品・移設品の搬出
  3. 残置物撤去
  4. 内装解体
  5. 原状回復工事
  6. 清掃
  7. 貸主側確認
  8. 必要な是正
  9. 明け渡し

と考え、余裕を確保します。

店舗閉店全体は店舗閉店ガイド、オフィスについてはオフィス退去・移転ガイドも確認してください。

見積で「一式」が多いときに確認すること

例えば、

  • 内装解体一式
  • 残置物撤去一式
  • 廃材処分一式
  • 運搬費一式

という見積があります。

一式表記そのものが問題なのではありません。

ただし金額が大きい場合は、

  • 何を撤去するのか
  • 何が処分対象なのか
  • 数量はどの程度か
  • 運搬は何台分か
  • どの作業まで含むのか

を確認できた方が比較しやすくなります。

安さだけで撤去業者を選ばない

撤去・廃棄では、見積価格だけでなく、適切に工事と廃棄物処理が行われるかも重要です。

確認したいのは、

  • 今回の工事内容に対応できるか
  • 廃棄物の処理体制を説明できるか
  • 必要な許可を持つ処理業者と連携しているか
  • 見積に処分費が明確に含まれているか
  • 追加費用が発生する条件が明確か
  • ビル側との工事調整に対応できるか
  • アスベスト事前調査について説明できるか
  • 工期を守れるか

です。

処分費だけ極端に安い場合は、「なぜ安いのか」も確認します。

撤去・廃棄費を抑えるときの順番

費用を抑える場合は、単純な値引き交渉だけでなく、次の順番で見ます。

  1. 契約上、本当に撤去する必要があるか確認する
  2. 居抜きで残せるものを確認する
  3. 新拠点へ移設するものを除外する
  4. 売却できるものを処分対象から外す
  5. リース・貸主所有品を除外する
  6. 撤去範囲と数量を確認する
  7. 搬出・処分費の内訳を確認する
  8. 他の工事見積と重複していないか確認する

「処分単価を安くする」前に、処分する量そのものを減らせないかを見ることがポイントです。

撤去・廃棄のチェックリスト

契約・工事範囲

  • 原状回復条件を確認した
  • スケルトン返しの具体的範囲を確認した
  • 貸主所有設備を確認した
  • B工事・C工事を確認した
  • 残してよいものを確認した

設備・什器

  • 新拠点へ移設するものを分けた
  • 買取査定するものを分けた
  • 居抜きで残すものを分けた
  • リース・レンタル品を確認した
  • 廃棄するものを確定した

見積

  • 解体費を確認した
  • 搬出費を確認した
  • 運搬費を確認した
  • 処分費を確認した
  • 養生費を確認した
  • 夜間・休日作業費を確認した
  • 高額な一式項目の内容を確認した
  • 他業者との作業重複を確認した

廃棄物・安全

  • 廃棄物の種類を確認した
  • 適切な処理方法を確認した
  • 必要な許可・委託方法を確認した
  • 必要に応じてマニフェストを確認した
  • アスベスト事前調査について確認した

工程

  • 営業終了日・引越し日を確認した
  • 買取品の搬出日を決めた
  • 解体開始日を決めた
  • 原状回復工事期間を確保した
  • 完了検査日を確保した
  • 是正期間を確保した
  • 明け渡し日を確認した

目的別に詳しく確認する

壊して捨てるのは、残せるものを確認した後

内装解体や廃棄は、一度実施すると元に戻せません。

そのため、撤去業者へ発注する前に、

  • 契約上必要な撤去範囲
  • 居抜きで残せるもの
  • 売却できる設備
  • 移設する家具・什器
  • リース・貸主所有設備

を整理します。

最後に残ったものが、本当に撤去・廃棄する対象です。

内装解体・スケルトン返し・撤去について相談する