店舗を居抜きで退去するとき、仲介会社や居抜き専門サービスへ依頼すると「仲介手数料」「造作譲渡手数料」「成功報酬」など複数の費用が出てくることがあります。
中には、造作譲渡代金の一定割合を手数料とする会社もあれば、固定料金を設定する会社、売主側の手数料を無料としている会社もあります。
ここで注意したいのが、店舗の賃貸借契約に対する「仲介手数料」と、内装・厨房機器などを次の借主へ引き継ぐ「造作譲渡手数料」は同じ費用ではないことです。
さらに、掲載料、広告料、企画料、コンサルティング料、貸主との調整費などが設定されているサービスもあります。
居抜き仲介を比較するときは、「手数料○%」だけを見るのではなく、何のサービスに対する費用なのか、誰が支払い、最終的にいくら手元へ残るのかを確認することが重要です。
この記事では、居抜きの仲介・造作譲渡で発生する可能性がある費用を整理し、仲介会社を比較するときの7つの確認ポイントを解説します。
居抜き退去で発生する費用全体については、居抜き退去の費用は何にかかる?をご覧ください。
居抜きの「仲介手数料」は一つではない
居抜きでは、大きく分けて次の二つの取引が同時に進むことがあります。
- 店舗物件の賃貸借
- 内装・設備などの造作譲渡
現在の借主が後継テナントへ店舗を直接貸すわけではありません。
後継テナントは通常、貸主との間で新しい賃貸借契約を締結します。
一方、現在の借主が所有している内装・厨房設備・店舗什器などについては、現在の借主と後継テナントの間で造作譲渡を行う場合があります。
二つの契約があるため費用も分かれる
そのため、居抜きでは、
- 物件の賃貸借を仲介する手数料
- 造作譲渡を支援・仲介する手数料
がそれぞれ設定されることがあります。
請求書に「仲介手数料」と書かれているかだけではなく、何の契約に対する費用なのか確認します。
居抜き仲介で確認する7つのポイント
- 誰が手数料を支払うのか
- 賃貸借の仲介手数料か造作譲渡手数料か
- 定率・固定額・最低手数料のどれか
- 成功報酬か、不成立でも費用がかかるか
- 仲介手数料以外の料金があるか
- 掲載料・広告料・企画料・コンサル料の中身
- 消費税を含めた最終手取りはいくらか
1.誰が手数料を支払うのか
居抜きサービスを見るときは、まず売主側・買主側のどちらに料金が発生するか確認します。
例えば、
- 売主のみ手数料
- 買主のみ手数料
- 双方に手数料
- 売主側は無料
など、サービスによって異なります。
「手数料無料」が誰に対してなのか確認する
広告に「手数料無料」と書かれていても、
- 売主だけ無料
- 査定・掲載だけ無料
- 成約時には別料金が必要
という場合があります。
無料という言葉だけで判断せず、成約までに自社が負担する金額を確認します。
2.賃貸借の仲介手数料か造作譲渡手数料か
ここは特に重要です。
賃貸借の仲介手数料
後継テナントと貸主との新しい賃貸借契約を不動産会社が媒介することに対する報酬です。
宅地・建物の貸借の媒介報酬については、宅地建物取引業法と国土交通大臣の告示による上限があります。
通常の事業用物件の賃貸借媒介では、貸主・借主双方から受け取る報酬の合計は、原則として賃料1か月分に相当する金額以内とされています。消費税は別途考えます。
造作譲渡手数料
一方、造作譲渡手数料は、
- 内装
- 厨房機器
- 家具
- 店舗設備
などを現在の借主から次の借主へ譲渡する取引について、査定、買い手探し、条件調整、契約支援などを行うサービスへの料金として設定されるものです。
賃貸借の仲介手数料とは、料金の根拠・計算方法が別になっていることがあります。
両方請求されることもある
例えば後継テナント側では、
- 賃貸借契約の仲介手数料
- 造作譲渡手数料
の両方が発生するケースがあります。
現在の退去者側についても、造作譲渡支援の成功報酬を支払うサービスがあります。
したがって、「仲介手数料1か月分だけ」と考えず、居抜き取引全体で発生する手数料を一覧化します。
3.定率・固定額・最低手数料を確認する
造作譲渡の手数料には複数の料金方式があります。
造作譲渡額に対する定率
例えば、
造作譲渡代金 × ○%
という計算です。
造作価格が高いほど手数料も大きくなります。
固定額
造作譲渡額にかかわらず、一定額を支払う方式です。
定率+固定額
例えば、
造作譲渡額 × ○% + ○万円
という料金体系です。
最低手数料
「造作譲渡額の10%、ただし最低○万円」のように設定されている場合があります。
この場合、小さな造作譲渡では実質的な手数料率が高くなります。
造作100万円・手数料10%でも必ず10万円とは限らない
例えば、
造作譲渡額100万円
手数料10%
最低手数料20万円
という契約なら、手数料は10万円ではなく20万円です。
率と同時に、
- 最低額
- 上限額
- 固定費
がないか確認します。
4.成功報酬か、不成立でも費用がかかるか確認する
居抜き支援では「成功報酬」とするサービスがあります。
成功報酬なら通常、定められた成約条件を満たした時点で報酬が発生します。
一方、サービスによっては成約しなくても、
- 査定料
- 掲載料
- 広告料
- 現地調査費
などが発生する場合があります。
「成功」の定義を確認する
特に確認したいのが、何をもって成約とするかです。
例えば、
- 造作譲渡契約の締結
- 新テナントとの賃貸借契約成立
- 造作代金の支払い
- 店舗引渡し
のどの時点で報酬が発生するのか確認します。
貸主審査に落ちた場合の扱いも確認する
後継候補と造作条件を合意しても、貸主がその事業者との賃貸借契約を承認しなければ、居抜き承継は成立しません。
その場合、
- 手数料は発生しないのか
- 一部実費だけ発生するのか
- 次の候補募集を継続してもらえるのか
を契約前に確認します。
5.賃貸借仲介手数料以外の料金を確認する
居抜き物件では、仲介手数料以外にも、
- 造作譲渡手数料
- 企画料
- コンサルティング料
- 掲載料
- 広告料
- 店舗売却支援料
などの名称が使われる場合があります。
ここで重要なのは名称ではなく、何の業務への報酬なのかです。
名称を変えれば仲介手数料とは無関係になるわけではない
宅地建物取引業者が不動産の賃貸借を媒介する報酬には上限があります。
単に「企画料」「案内料」など別の名称を付ければ、賃貸借の媒介報酬とは無関係になると考えるのは適切ではありません。
一方、媒介業務とは明確に分かれた独立したコンサルティング業務について、別途契約・報酬を設定するケースはあります。
その場合は、
- 仲介業務と何が違うか
- 具体的に何をしてもらうのか
- 報酬はいくらか
- 別契約になっているか
を確認します。
6.掲載料・広告料・企画料・コンサル料の中身を見る
居抜き専門サービスでは、単純な物件掲載だけでなく、
- 店舗査定
- 写真撮影
- 募集資料作成
- 購入候補者への紹介
- 内見調整
- 造作価格交渉
- 貸主との調整支援
- 契約書作成支援
などを提供する場合があります。
その費用が、
- 成功報酬に含まれるのか
- 別料金なのか
を確認します。
掲載チャネル数だけで比較しない
「多くのサイトへ掲載する会社」の方が必ず後継テナントを見つけやすいとは限りません。
店舗の場合は、
- 対象業態の買い手を持っているか
- 対象エリアに強いか
- 非公開で募集できるか
- 貸主との調整経験があるか
なども重要です。
後継テナントの探し方については、居抜きで後継テナントを探す方法をご覧ください。
7.消費税を含めた最終手取りを計算する
居抜き売却をする側が最終的に確認したいのは、造作譲渡価格ではなく実際に手元へ残る金額です。
例えば、
- 造作譲渡代金:300万円
- 造作譲渡手数料:30万円
- その他支援費:10万円
なら、300万円すべてが手元に残るわけではありません。
さらに、各手数料に消費税が加算される場合があります。
居抜きの手取り額を計算する
退去者側では、次のように整理します。
居抜きの実質手取り = 造作譲渡代金 − 自社負担の各種手数料 − 撤去・補修等の残存費用
さらに居抜きによって回避できる原状回復費も含めると、居抜きの経済効果をより正確に比較できます。
手数料が高くても最終利益が大きい場合がある
例えば、
A社
- 売却価格:300万円
- 手数料:30万円
- 手取り:270万円
B社
- 売却価格:200万円
- 手数料:0円
- 手取り:200万円
なら、手数料無料のB社よりA社の方が70万円多く残ります。
逆に同じ売却価格なら、手数料無料の方が有利です。
「手数料が何%か」ではなく、成約可能性・売却価格・退去までの時間を含めた最終手取りで比較します。
造作譲渡手数料は10%が相場?
現在の居抜きサービスを見ると、造作譲渡額の10%前後を採用する料金例は存在します。
ただし、
- 10%+固定額
- 最低手数料あり
- 売主側0円
- 買主側のみ負担
- 直接買取なので仲介手数料なし
など、料金モデルが異なります。
したがって、「10%が法定相場」「どの会社でも10%」と考えるのは適切ではありません。
手数料無料サービスはなぜ成り立つ?
売主側の手数料が無料でも、サービス会社が収益を得ていないとは限りません。
例えば、
- 買主側から報酬を受ける
- 貸主・物件側から収益を得る
- 店舗を直接買い取って再販売する
- 別のサービスで収益化する
などのビジネスモデルがあります。
売主側無料という理由だけで問題があるわけではありません。
自社にとって、
- 売却価格
- 成約までの期間
- 募集範囲
- サポート内容
が合理的かを確認します。
直接買取と仲介では費用構造が違う
居抜き売却には、仲介会社が後継テナントを探す方式だけでなく、事業者が造作等を直接買い取るサービスもあります。
仲介型
買い手を募集し、条件が合う後継テナントとの成約を目指します。
高く売れる可能性がある一方、買い手探しに時間が必要です。
直接買取型
居抜き事業者自身が買い取るため、成立までが早い場合があります。
一方、再販売リスク等を買い取り側が負うため、仲介による売却価格より査定額が低くなる可能性もあります。
手数料の有無だけでなく、最終的な買取金額を比較します。
居抜き仲介会社を比較する7項目
- 売主が支払う手数料
- 造作譲渡手数料の計算方法
- 最低手数料の有無
- 成功報酬の発生条件
- 不成立時の費用
- 掲載・企画・コンサル等の別料金
- 消費税込みの最終手取り
手数料以外にも比較したい項目
対象エリア
店舗仲介会社によって得意地域が違います。
対象業態
飲食、美容、クリニック、物販など、買い手ネットワークに差があります。
募集方法
一般公開だけでなく、閉店を知られたくない段階で非公開募集ができる会社もあります。
貸主調整
居抜きは貸主の承諾なしには成立しないため、貸主・管理会社との調整実務も重要です。
造作査定
「いくらで売れるか」という査定根拠が明確か確認します。
造作査定については、ART-179「造作譲渡の査定」で整理しています。
手数料を確認するタイミング
仲介会社・居抜きサービスへ正式依頼する前に確認します。
少なくとも、
- 料金表
- 媒介・業務委託契約
- 成功報酬条件
- 最低手数料
- 不成立時費用
- 解約条件
を確認してください。
造作譲渡価格を決めてから手数料を確認するのでは遅い
例えば「造作300万円で売れれば十分」と考えていても、30万円以上の手数料・諸費用が発生するなら、必要な売却価格自体が変わります。
希望手取り額から逆算します。
例えば、
希望手取り300万円
想定手数料33万円
なら、少なくとも333万円以上での売却が必要です。
実際には税やその他費用も確認します。
居抜き仲介手数料のチェックリスト
- 賃貸借仲介手数料を確認した
- 造作譲渡手数料を確認した
- 売主・買主のどちらが払うか確認した
- 定率か固定額か確認した
- 最低手数料を確認した
- 成功報酬の発生条件を確認した
- 不成立時費用を確認した
- 掲載料を確認した
- 広告料を確認した
- 企画料を確認した
- コンサルティング料を確認した
- 各費用の具体的なサービス内容を確認した
- 消費税を確認した
- 造作売却後の最終手取りを計算した
- 原状回復回避額を含めて比較した
居抜きの仲介手数料についてよくある質問
居抜きの仲介手数料はいくらですか?
一律ではありません。店舗賃貸借の仲介手数料、造作譲渡手数料、企画・支援費等が別に設定される場合があります。サービスごとの料金表・契約内容を確認してください。
造作譲渡手数料は10%が相場ですか?
造作譲渡額の10%程度を採用するサービス例はありますが、最低手数料、固定額追加、売主無料など他の料金体系もあります。10%を一律の相場とは考えない方がよいでしょう。
賃貸借の仲介手数料と造作譲渡手数料は別ですか?
別の取引への費用として設定されることがあります。賃貸借仲介は物件の賃貸借契約、造作譲渡は内装・設備等の譲渡に関する支援です。それぞれ何の業務への料金か確認してください。
売主も仲介手数料を払いますか?
料金体系によります。売主に造作譲渡成功報酬を設定するサービスもあれば、売主側無料のサービスもあります。
後継テナントが決まらなかった場合も手数料はかかりますか?
成功報酬型なら成約しなければ報酬が発生しない場合があります。一方、掲載料、広告費、査定料などが別に設定される可能性があるため契約前に確認してください。
「企画料」は仲介手数料とは別ですか?
名称だけでは判断できません。何の業務に対する費用なのか確認する必要があります。不動産の媒介業務とは別の独立したサービスとして報酬を設定する場合は、その業務内容・報酬・契約関係が明確になっているか確認してください。
手数料無料の会社を選ぶ方が得ですか?
同じ売却価格・サービス内容なら有利ですが、実際には査定額、成約可能性、募集力、退去までの時間が違います。手数料だけではなく最終手取りで比較してください。
造作譲渡額が0円でも居抜きにする意味はありますか?
あります。造作代金を受け取れなくても、数百万円規模の原状回復・撤去費を回避できるなら、居抜きに経済的なメリットが生じる場合があります。
居抜き仲介は「手数料率」ではなく最終手取りで比較する
居抜きの手数料を確認するときは、
- 誰が払うか
- 賃貸借仲介か造作譲渡か
- 定率・固定・最低額
- 成功報酬条件
- その他料金
- 具体的なサービス内容
- 税を含む最終手取り
を確認します。
造作譲渡手数料10%というサービスもあれば、売主側無料のサービスもあります。
そのため、単純に「5%なら安い」「10%なら高い」と判断することはできません。
例えば、手数料が高くても高い価格で早く成約し、原状回復費・余分な賃料を回避できれば、退去全体では有利になる場合があります。
居抜き仲介会社は、表示された手数料率ではなく、造作売却額・成約までの期間・残る退去費用を含めて、最終的に手元へいくら残るかで比較してください。
居抜き・造作譲渡全体については、居抜き・造作譲渡ガイドをご覧ください。
後継テナントの探し方については、居抜きで後継テナントを探す方法で整理しています。
後継テナント探しに必要な期間については、居抜きの後継テナント探しは何ヶ月必要?をご覧ください。
居抜き退去全体の費用については、居抜き退去の費用は何にかかる?で整理しています。
現在複数の居抜き会社から料金提示を受けており、手数料率、最低額、成功報酬、造作査定額を見てもどこが有利か判断できない場合は、お問い合わせから条件をご連絡ください。
