居抜き設備が故障したら?引渡し前後の確認・修理費・責任範囲を整理

居抜きで店舗を引き継いだ直後に、「冷蔵庫が冷えない」「エアコンから水が漏れる」「製氷機が動かない」といった設備故障が見つかることがあります。

反対に、売主側でも、造作譲渡契約を結んだ後、引渡し前に設備が故障するケースがあります。

このとき、引渡し直後だから旧テナントが必ず修理する、中古設備だから新テナントがすべて負担する、と単純に決めることはできません。

確認するべきなのは、設備がいつ・どのように故障したかだけではなく、「どの状態で引き渡す契約だったか」です。

この記事では、居抜き設備に故障・不具合が見つかったときの初動から、動作確認、修理・交換、契約上の責任までを実務順に整理します。

目次

居抜き設備が故障したら、まず5つ確認する

故障が見つかったときは、すぐに修理費の負担交渉へ入るのではなく、先に事実関係を固定します。

1.安全に関わる場合は使用を止める

漏電、ガス漏れ、異常発熱、大量の漏水など、安全上の問題が疑われる場合は使用を停止し、設備業者や管理会社などへ確認します。

原因が分からないまま何度も電源を入れるなど、故障状態を悪化させる行為は避けます。

2.故障状態を写真・動画で残す

修理や撤去を行う前に、現在の状態を記録します。

  • 設備全体の写真
  • メーカー名
  • 型番
  • 製造番号
  • エラーコード
  • 異音・異常動作の動画
  • 漏水箇所
  • 温度表示
  • 電源が入るかどうか

など、後から確認できる情報を残します。

故障設備をすぐ廃棄してしまうと、引渡し時点でどのような状態だったかを確認しにくくなります。

3.誰の設備か確認する

設備が壊れたとき、現在の使用者だけを見て負担を判断しないようにします。

設備は、

  • 旧テナントから造作譲渡されたもの
  • 貸主所有設備
  • リース会社所有
  • レンタル・貸与品
  • 新テナント自身が設置したもの

などに分かれます。

所有関係によって、確認すべき契約・相手が変わります。

居抜き設備の所有権は誰?居抜き店舗にリース品がある場合の対応も確認してください。

4.造作譲渡契約書と設備表を確認する

故障した設備が本当に譲渡対象だったのか、その設備についてどのような状態を約束していたかを確認します。

例えば契約前に、

  • 正常稼働中
  • 動作確認済み
  • 一部不具合あり
  • 動作未確認
  • 修理が必要

など、どのように説明していたかが重要です。

5.いつ故障したかを確認する

少なくとも、

  • 契約前から故障していた
  • 契約後・引渡し前に故障した
  • 引渡し時点ですでに故障していた
  • 引渡し後に故障した

を分けます。

「引渡し後に発覚した」ことと「引渡し後に故障した」ことも同じではありません。

引渡し前に故障した場合

造作譲渡契約を締結した後、まだ店舗を引き渡していない段階で設備が故障することがあります。

この場合は、まず契約上、どの状態の設備を引き渡すことになっていたかを確認します。

例えば「正常に稼働する冷蔵庫」として譲渡する合意であったのに、引渡し前に使用不能になったのであれば、そのまま黙って引き渡すのは避けます。

売主側では、

  1. 故障状態を記録する
  2. 買主へ早めに伝える
  3. 修理可能か確認する
  4. 修理・交換・対象から除外・価格調整等を協議する
  5. 変更した条件を書面に残す

という順番で進めます。

修理すれば必ず解決するとも限りません。古い機器では修理部品がない場合や、交換した方が合理的な場合もあります。

引渡し直後に故障が見つかった場合

買主側で特に問題になりやすいのが、店舗を受け取った直後の故障です。

この場合も、「翌日に壊れたから売主責任」と日数だけで判断しません。

確認するのは、

  • 引渡し時点ですでに不具合があったのか
  • 引渡し後の使用で故障したのか
  • 売主が故障を認識していたのか
  • 契約上どの性能を約束していたのか
  • 設備の年式・使用状況
  • 故障原因について専門業者が何と判断しているか

です。

まず相手方へ故障を伝え、設備をすぐ処分せず、必要に応じて修理業者やメーカー等に点検を依頼します。

「故障した=契約不適合」ではない

造作譲渡が売買に当たる場合、設備の不具合について民法上の契約不適合責任が問題になることがあります。

現在の民法では、売買目的物が種類・品質・数量について「契約の内容に適合しているか」が判断の基準になります。

例えば、契約時に正常稼働すると明確に説明された冷蔵庫が、引渡し時点ですでに冷却できない状態だった場合は、契約内容との不一致が問題になり得ます。

一方で、

  • 故障中と明示していた
  • 動作未確認と明示していた
  • 特定の機能は保証しないと双方で合意していた

などの場合は事情が異なります。

設備が中古か新品かではなく、「何を引き渡す契約だったか」が重要です。

契約不適合ならどんな対応が考えられる?

目的物が契約内容に適合しない場合、民法上は状況に応じて、修補等の履行の追完、代金減額、損害賠償、契約解除などが問題になります。

ただし、設備が1台故障したから造作譲渡契約全体を必ず解除できる、といった単純な関係ではありません。

例えば冷蔵庫1台の不具合であれば、

  • 修理する
  • 同等品へ交換する
  • 譲渡価格を調整する
  • 故障設備だけ譲渡対象から外す

といった解決方法を当事者間で検討する場合があります。

契約上の請求権・解除が実際に成立するかは、契約内容や不適合の程度等によって変わります。

「現状有姿」なら故障はすべて買主負担?

造作譲渡契約では、「現状有姿」「現況有姿」と記載されることがあります。

この言葉だけを見て、

「どんな故障があっても売主は一切責任を負わない」

と判断するのは避けます。

現状有姿で引き渡すことと、契約不適合責任をどこまで負わないとするかは、契約書の内容を確認して整理します。

また、民法では担保責任を負わない旨の特約を設けた場合でも、売主が知りながら告げなかった事実について一定の制限があります。

売主側では、把握している故障や不具合を具体的に書き出しておく方がトラブルを減らせます。

動作確認できない設備は「正常」と扱わない

居抜き物件では、内見時にすでに店舗の営業が終了し、電気・ガス・水道が止まっていることがあります。

その場合、厨房設備や給湯器、空調などを十分に動作確認できないことがあります。

確認できない設備を「問題なく使える」と扱うのではなく、設備表に、

  • 動作確認済み
  • 一部確認済み
  • 通電のみ確認
  • 動作未確認
  • 不具合あり

などと記録しておくと、引渡し時の状態を整理しやすくなります。

「電源が入った」ことと「通常使用できる」ことも同じではありません。

引渡し前に確認したい設備

店舗設備は業態によって異なりますが、造作譲渡をする場合は設備一覧を作り、確認できる範囲で動作状態を記録します。

設備 確認例
冷蔵・冷凍庫 電源、庫内温度、異音、扉等
製氷機 運転、製氷、給排水、エラー表示
食器洗浄機 運転、給排水、水漏れ、エラー
空調 運転、異音、異臭、水漏れ
給湯器 給湯、エラー、水漏れ
シンク・配管 漏水、排水状況
照明・電気 点灯、スイッチ、明らかな異常
POS・電子機器 所有者、契約、起動状況、データ処理

設備によっては専門的な点検が必要です。

買主側が設備状態を特に重視する場合は、外観確認だけで済ませず、専門業者による確認を検討します。

動作確認は「いつ、誰が、何を確認したか」まで残す

「動作確認済み」と一言だけ書いても、後で何を確認したのか分からないことがあります。

例えば、

設備 確認日 確認内容 結果
業務用冷蔵庫 ○月○日 電源・冷却 確認済み
エアコン ○月○日 運転・異音 運転確認/異音あり
製氷機 ○月○日 通電のみ 製氷動作未確認

のように記録できます。

写真や動画を設備表と紐付けておく方法もあります。

売主が把握している不具合は先に書く

売主側で、

  • 以前から異音がある
  • 時々エラーが出る
  • 水漏れ歴がある
  • 修理歴がある
  • 一部機能が使えない

といった事実を把握している場合は、契約前に説明しておく方が安全です。

口頭だけでなく、設備一覧や契約書の別紙などに記録しておけば、「聞いていない」というトラブルを減らせます。

造作譲渡全体の契約トラブルについては造作譲渡のトラブル7例も確認してください。

買主側は引渡しを受けたら早めに検査する

買主側も、設備を受け取った後に長期間放置せず、使用できる状態になった段階で速やかに確認します。

特にBtoBの造作譲渡では、当事者双方が商人となる売買に該当する場合があります。

その場合、商法526条では、買主が目的物を受領したときに遅滞なく検査することや、不適合を発見した場合の通知について規定があります。

直ちに発見できない種類・品質の不適合についても、一定期間内に発見した場合の通知に関する規定があります。

「民法では知ってから1年だから、しばらく様子を見てもよい」と自己判断しないことが重要です。

具体的な期限は、当事者が商人に当たるか、契約書にどのような通知期限を定めているかなども確認してください。

民法566条の「1年」は1年間の保証期間ではない

民法566条では、種類・品質について契約内容に適合しない目的物を引き渡した場合、買主がその不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しない場合の権利制限が定められています。

ただし、これは単純な「中古設備には1年間保証が付く」という制度ではありません。

そもそも契約不適合があるのか、契約で責任範囲をどう定めているのか、商法の検査・通知規定が関係する取引なのかなどを別途確認する必要があります。

故障原因の確認前に修理費負担を確定しない

設備故障が起きたときは、原因によって整理が変わることがあります。

例えば、

  • 引渡し前から存在していた部品故障
  • 経年劣化
  • 電源・ガス・給排水等の設備側の問題
  • 移設・工事による問題
  • 引渡し後の使用方法による問題

などです。

原因を確認せず、相手方へ「修理費を全額払ってください」と求めるだけでは解決しにくいことがあります。

必要に応じて設備会社・メーカー等の点検結果を取得し、原因と修理内容を分けて確認します。

修理・交換・値引きのどれがよい?

故障が確認された後の解決方法は、設備によって異なります。

修理

比較的新しく、部品供給があり、修理後も継続使用できる場合に検討します。

交換

修理費が高い、部品がない、故障を繰り返しているなどの場合は交換を検討します。

譲渡対象から除外

買主が設備を必要としていない場合や、修理より撤去した方がよい場合には、譲渡対象から外して条件を調整する方法があります。

造作譲渡価格を調整

故障設備を現状のまま買主が引き取る代わりに、価格条件を調整する方法もあります。

いずれの場合も、口頭で変更せず、変更後の対象物・価格・責任範囲を書面等で残します。

故障設備を撤去する前に貸主・原状回復条件も確認する

故障して使えない設備だからといって、借主の判断だけで撤去してよいとは限りません。

例えば、

  • 貸主所有設備だった
  • 建物設備と接続されている
  • 居抜きで残す前提の設備だった
  • 撤去後の穴・配線・配管復旧が必要

といったケースがあります。

撤去や交換の前に所有者と貸主側の工事条件を確認します。

居抜き店舗の原状回復義務も参照してください。

故障設備を中古買取へ回せるとは限らない

居抜きで次のテナントが設備を必要としなくなった場合、設備買取を検討することがあります。

ただし、故障品については、

  • 修理可能か
  • 年式
  • 部品取りとして需要があるか
  • 撤去費用がどの程度か
  • 所有者が誰か

などによって買取可否が変わります。

故障設備を「売れる前提」で原状回復計画を組まず、査定してから判断します。

設備・什器買取の進め方も確認してください。

売主側が引渡し前にやること

  1. 譲渡対象設備を一覧化する
  2. 所有者・リース等を確認する
  3. 型番・年式等を記録する
  4. 可能な範囲で動作確認する
  5. 故障・異音・水漏れ等を記録する
  6. 既知の不具合を買主へ説明する
  7. 動作未確認品はその旨を記載する
  8. 故障が発生したら引渡し条件を再協議する

買主側が引渡し前後にやること

  1. 造作リストと現物を照合する
  2. 所有者を確認する
  3. できる設備は引渡し前に動作確認する
  4. 確認できない設備を「確認済み」にしない
  5. 引渡し後は早めに設備を検査する
  6. 故障を発見したら写真・動画で記録する
  7. 相手方へ早めに通知する
  8. 原因確認前に設備を廃棄しない

設備確認表を1枚作っておく

居抜きの設備トラブルを減らすには、契約書だけでなく設備確認表を作る方法があります。

例えば、次の項目を入れます。

  • 設備名
  • メーカー
  • 型番
  • 製造番号
  • 所有者
  • リースの有無
  • 確認日
  • 確認した機能
  • 不具合
  • 修理履歴
  • 写真番号
  • 譲渡対象かどうか

設備状態が契約内容の一部として分かるようにしておけば、後から「正常と言った・言っていない」という争いを減らしやすくなります。

よくある質問

居抜き設備が引渡し直後に壊れたら旧テナントが修理しますか?

一律には決まりません。引渡し時点で契約内容に適合していたか、設備状態をどのように説明していたか、既知の不具合、免責等の特約、故障原因などを確認します。

中古設備なら故障はすべて買主負担ですか?

中古という理由だけで自動的にすべて買主負担になるわけではありません。どの品質・性能の設備を譲渡する契約だったかを確認します。

「現状有姿」と書いてあれば売主に請求できませんか?

現状有姿という文言だけで、すべての契約不適合責任が当然に免除されるとは限りません。契約不適合責任に関する特約、設備状態の説明、売主が把握していた不具合等を確認します。

動作確認できない厨房機器はどう契約すればよいですか?

「動作未確認」であることを明示し、確認できていない機能や引渡し後の責任範囲を当事者間で整理します。「問題なく使用できる」と未確認の性能を断定しない方が安全です。

買主は設備をいつ確認すればよいですか?

可能なら引渡し前に確認し、受領後も速やかに確認します。商人間売買に該当する場合は商法上の検査・通知規定が関係する可能性があるため、故障を見つけたら放置せず早期に相手方へ伝えます。

民法の「知ってから1年」は1年間の設備保証ですか?

違います。民法566条は契約不適合についての通知期間に関する規定であり、すべての中古設備に1年間の無料修理保証を付ける制度ではありません。契約内容、特約、商法の適用等を別途確認します。

修理前に相手へ連絡する必要がありますか?

安全確保のため緊急対応が必要な場合を除き、責任関係が問題になり得る設備は、状態を記録して相手へ連絡してから修理方法を協議する方が経緯を残しやすくなります。

修理会社が「経年劣化」と言ったら買主負担ですか?

その判断だけで費用負担が自動的に決まるわけではありません。契約で約束した設備状態、設備の説明、特約、引渡し時点の状態などと合わせて確認します。

設備故障でもめて解決しない場合は?

造作譲渡契約書、設備一覧、写真・動画、メール、修理会社の点検結果、時系列を整理します。修理費、代金返還、解除、損害賠償等について双方の主張が対立する場合は、法律の専門家への相談も検討します。

設備故障では、修理より先に「引渡し時の状態」を確定する

居抜き設備が壊れたとき、最初に決めるべきなのは「誰が修理費を払うか」ではありません。

設備の現状を保存する → 所有者を確認する → 契約で約束した状態を確認する → 故障時期・原因を調べる → 相手へ通知する → 修理・交換・価格調整等を決めるという順番で進めます。

引渡し前であれば、動作確認と既知不具合の開示を行い、確認できない設備は「動作未確認」と明示します。

引渡し後であれば、設備をすぐ処分せず、写真・動画・点検記録を残し、早めに相手方へ通知します。

設備故障について売主・買主のどちらが何を確認すればよいか、造作譲渡契約や原状回復まで含めて整理したい場合は、店舗・オフィスの退去について相談するから相談できます。

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