造作譲渡の査定は何を見る?店舗の内装・設備を評価する8項目と価格の考え方

店舗を閉店するとき、内装や厨房設備をそのまま次のテナントへ引き継げれば、原状回復で壊してしまう前に資産として売却できる可能性があります。

そこで気になるのが、「この店舗の造作はいくらで売れるのか」という点です。

しかし、造作譲渡の査定額は、出店時に内装へかけた金額を一定割合で減価させれば求められるものではありません。

例えば、1,500万円をかけて作った店舗でも、次のテナントがほとんど作り直す必要があるなら評価は低くなります。

反対に、取得からある程度年数が経っていても、厨房・排気・給排水などが次の業態でもそのまま使え、立地や賃貸条件にも需要があれば、店舗一体として価値が残る場合があります。

造作譲渡の査定で重要なのは、「売主がいくら使ったか」より、「次の借主がその店舗を引き継ぐことで、どれだけ時間と初期投資を減らせるか」です。

この記事では、店舗の造作譲渡を査定するときに確認される項目と、提示された査定額をどう判断すればよいかを整理します。

居抜き・造作譲渡全体については、居抜き・造作譲渡ガイドをご覧ください。

目次

造作譲渡の「査定」とは何を評価するものか

造作譲渡では、現在の借主が所有する内装・設備・什器などを次の借主へ譲渡します。

査定では、単純な中古設備の買取価格だけでなく、店舗一体として次のテナントが利用する価値を考えます。

例えば飲食店であれば、

  • 厨房設備
  • 排気ダクト
  • 給排水
  • ガス設備
  • 空調
  • カウンター
  • 客席
  • 照明
  • 内装
  • 店舗什器

などをまとめて評価することがあります。

さらに、その店舗を借りるための賃貸条件や立地も、実際の譲渡成立可能性に影響します。

造作譲渡額と厨房機器の買取額は同じではない

ここは混同しやすいポイントです。

例えば業務用冷蔵庫だけを厨房機器買取会社へ売る場合は、その冷蔵庫単体の中古市場価値が中心になります。

一方、居抜きで店舗全体を次のテナントへ引き継ぐ場合は、

  • 厨房機器
  • 内装
  • 設備
  • 設備同士の接続
  • 店舗レイアウト
  • その場所ですぐ営業準備できること

をまとめた価値になります。

そのため、

「厨房機器を単品で売った場合は100万円だから、造作譲渡額も100万円」

とは限りません。

逆に、内装一式としての買い手がいなければ、個別の厨房機器として売却した方が回収しやすい場合もあります。

厨房機器単体の売却については、設備・什器買取ガイドをご覧ください。

造作譲渡の査定で見る8つの項目

  1. 厨房機器・設備の状態
  2. 内装・設備の再利用性
  3. 次の業態との相性
  4. 立地・賃貸条件
  5. 次の借主に必要な追加工事
  6. 原状回復・撤去を避けられる価値
  7. 退去までの残り時間
  8. 買い手の需要と競争状況

1.厨房機器・設備の状態

設備の状態は査定の基本です。

例えば厨房機器なら、

  • メーカー
  • 型式
  • 年式
  • 動作状況
  • メンテナンス状況
  • 汚れ・腐食
  • 故障歴
  • 交換部品の入手性

などを確認します。

購入時に高価だった設備でも、故障していたり、交換時期が近かったりすれば、次の借主から見る価値は下がります。

一方、日常的に清掃・メンテナンスされ、すぐ使える状態なら評価しやすくなります。

年式だけで決まるわけではない

古い設備だから一律で価値がなくなるわけではありません。

使用頻度、整備状況、メーカー、故障リスクなども関係します。

逆に比較的新しくても、長期間メンテナンスされていない設備は、次の借主が修理・交換費を見込む必要があります。

2.内装・設備の再利用性

造作譲渡では、「次の借主がそのまま使えるか」が大きな評価材料になります。

例えば、

  • 厨房レイアウトが一般的
  • 客席配置を変更せず使える
  • 給排水位置が使いやすい
  • 十分な排気設備がある
  • 電気容量に余裕がある
  • 空調能力が適している

店舗なら、次の借主の初期工事を減らせる可能性があります。

反対に、デザイン性が高くても特定ブランド専用の内装で、次のテナントがほぼ全面改装するのであれば、造作としての評価は上がりにくくなります。

3.次の業態との相性

同じ造作でも、誰が使うかで価値は変わります。

例えば焼肉店の設備は、同じ焼肉・重飲食系の出店者には価値があっても、カフェや物販店には不要な場合があります。

美容室のシャンプー台や給排水設備も、美容室を開きたい人には大きな初期投資削減になりますが、他業態には撤去対象になる可能性があります。

つまり、造作査定では、

「設備そのものの価値」×「その設備を必要とする買い手がいるか」

を考えます。

4.立地・賃貸条件

造作そのものが良くても、次のテナントがその物件を借りたいと思わなければ譲渡は成立しません。

そのため、

  • 立地
  • 駅からの距離
  • 視認性
  • 店舗面積
  • 賃料
  • 共益費
  • 保証金
  • 営業時間制限
  • 使用可能な業態

なども実質的な査定条件になります。

内装だけを切り離して評価するのではなく、「この条件で次の借主が入りたいと思うか」を考えます。

現在の賃料が次の借主にも適用されるとは限らない

次のテナントの賃貸条件は、貸主と次の借主との新しい契約で決まります。

現在の借主が支払っている賃料だけを前提に造作価値を決めないようにします。

募集前に貸主・管理会社へ次テナントの条件を確認できると、査定・募集価格を考えやすくなります。

5.次の借主に必要な追加工事

居抜き物件でも、次の借主がまったく工事をせず営業できるケースばかりではありません。

例えば、

  • 厨房機器の交換
  • 排気能力の増強
  • 電気容量変更
  • 客席レイアウト変更
  • 看板変更
  • 内装補修
  • 消防設備変更

などが必要になる場合があります。

買い手側から見ると、

造作譲渡額+追加工事費

が実際の負担です。

したがって、造作を高く評価しても、追加工事に多額の費用がかかれば、買い手が支払える造作譲渡額は下がりやすくなります。

6.原状回復・撤去を避けられる価値

売主側では、造作譲渡代金だけを見ると判断を誤る場合があります。

例えば、造作譲渡額が50万円しか付かなかったとしても、居抜きが成立することで、

  • 内装解体
  • 厨房設備撤去
  • 廃棄物処分
  • 搬出費

などを200万円減らせるのであれば、売主側の経済効果は造作代金50万円だけではありません。

ただし、これは貸主がその状態での返還を承諾し、実際に原状回復工事が不要になる場合に限ります。

「買い手がいるから原状回復費が必ずゼロになる」とは考えません。

造作譲渡の価値は売却額と退去コスト削減を分けて計算する

売主側では、次のように分けると判断しやすくなります。

造作譲渡による受取額

と、

居抜き成立によって実際に不要になる原状回復・撤去・処分費

です。

そこから、

  • 仲介手数料等
  • 追加撤去費
  • 残すことを認められなかった設備の処分費
  • 後継テナント探し中の賃料

などを差し引きます。

造作譲渡額だけで比較するより、閉店全体の手残りを把握できます。

7.退去までの残り時間

同じ店舗でも、退去まで半年ある場合と、1か月しかない場合では売却条件が変わります。

時間があれば、

  • 複数の候補者を探す
  • 業態の合う買い手を待つ
  • 価格交渉する
  • 貸主審査を進める

余地があります。

一方、退去期限が迫っていれば、買い手を待ち続けるほど原状回復へ切り替える時間がなくなります。

そのため、希望価格を下げて成立を優先する判断が必要になる場合があります。

売主の希望価格と「期限内に成立する価格」は違う

査定では、高く売れる可能性だけでなく、いつまでに売る必要があるかを考えます。

例えば、

  • 高値で長く募集する
  • 現実的な価格で早期成立を狙う
  • 譲渡額をほぼ取らず原状回復回避を優先する

では戦略が違います。

閉店・退去案件では、「最高価格」より「退去期限までに成立する確率」の方が重要になるケースがあります。

8.買い手の需要と競争状況

最終的な造作譲渡額は、買いたい人がいるかで決まります。

例えば、同じ店舗について、

  • 候補者が複数いる
  • 同業態の出店希望者が多い
  • 近隣に同条件の居抜き物件が少ない

なら価格交渉で売主側が有利になりやすくなります。

反対に、問い合わせがほとんどなく、退去期限が迫っている場合は、査定額を下げなければ成立しない場合があります。

後継テナントの探し方については、居抜きで後継テナントを探す方法をご覧ください。

「内装工事に1,000万円かかった」は査定根拠の一つにすぎない

店舗オーナーとしては、出店時にかけた費用を回収したいと考えるのが自然です。

しかし、造作譲渡の買い手は過去の工事代金を買うわけではありません。

現在残っている内装・設備を使うことで、これから自分が支払う初期投資をどれだけ減らせるかを見ています。

そのため、

  • 取得価格
  • 帳簿上の残存額
  • 内装工事にかけた総額

と、実際の造作譲渡市場で成立する金額は一致しないことがあります。

簿価と造作譲渡額も同じではない

会計上、内装・設備に帳簿価額が残っていても、その金額で買い手が見つかるとは限りません。

反対に、会計上かなり償却が進んでいても、設備状態・店舗条件・買い手需要によって取引価値が残る場合があります。

税務・会計処理については、実際の譲渡条件をもとに税理士等へ確認してください。

査定前に用意しておくとよい資料

査定を受けるときは、可能な範囲で次の資料を揃えます。

  • 店舗平面図
  • 厨房図面
  • 設備一覧
  • 厨房機器のメーカー・型式・年式
  • 設備購入記録
  • 修理・メンテナンス記録
  • 賃貸借契約の主要条件
  • 退去予定日
  • 原状回復条件
  • 店内写真

すべて揃っていなくても査定相談はできますが、情報が整理されているほど、査定側も次の買い手が利用できる範囲を判断しやすくなります。

所有者を確認する

店舗内にある設備すべてを造作譲渡できるとは限りません。

例えば、

  • 貸主所有設備
  • リース会社所有設備
  • レンタル品
  • 取引先から貸与されている設備

は、自社所有物として売却できません。

査定前に、自社所有物とそれ以外を分けます。

査定では現地確認を受けた方が精度を上げやすい

店舗面積、業態、写真だけでも概算査定ができる場合があります。

しかし、設備状態、排気・給排水、内装の傷み、搬出条件などは写真だけでは判断しにくいものがあります。

本格的に居抜き売却を進める場合は、現地を確認した査定と、写真・電話だけの概算査定を分けて考えます。

査定額には種類がある

「査定300万円」と言われても、その300万円が何を意味するのか確認します。

例えば、

  • 業者が直接買い取る金額
  • 後継テナントへ募集する希望価格
  • 成約が見込める想定価格
  • 設備だけを単品売却した査定額

では意味が違います。

特に「この価格で売り出せます」と「この価格で買い取ります」は同じではありません。

高い査定額だけで業者を選ばない

複数社へ相談すると、異なる査定額が提示されることがあります。

その場合、最高額だけを見るのではなく、

  • 直接買取なのか仲介なのか
  • 手数料はいくらか
  • いつ支払われるか
  • 買い手が見つからなかった場合はどうなるか
  • 原状回復期限との関係
  • 貸主調整を誰が行うか
  • 残置できない設備の撤去費は誰が負担するか

まで確認します。

複数査定を比較するときは「最終手残り」で見る

例えば、

A社:造作譲渡想定300万円

B社:造作譲渡想定250万円

だったとしても、A社には高い仲介費や追加撤去費があり、B社にはそれらが含まれている場合があります。

比較するなら、

譲渡代金 − 手数料 − 必要な追加工事・撤去費 − 成立までの追加賃料

まで見ます。

直接買取と仲介売却の違い

直接買取

居抜き事業者などが直接造作を買い取る方法です。

買い手探しを事業者側が引き受けるため、条件が合えば短期間で進めやすくなります。

一方、事業者側が再販売リスクを負うため、最終利用者へ直接売却する場合とは価格構造が異なることがあります。

仲介・募集

居抜き店舗を探している次テナントを募集し、造作譲渡を成立させる方法です。

条件の合う買い手が見つかれば価格面で有利になる可能性がありますが、成立時期は確定しません。

退去期限が短い場合は、価格だけでなく時間も比較します。

設備単品買取という第三の選択肢もある

店舗全体での造作譲渡が成立しなくても、設備単体なら売却できることがあります。

例えば、

  • 業務用冷蔵庫
  • 製氷機
  • 食洗機
  • フライヤー
  • ガスレンジ
  • ショーケース
  • 店舗什器

などです。

居抜きが不成立になった場合も、すぐすべてを廃棄するのではなく、単品買取できるものを分けます。

造作譲渡額を上げやすくする準備

早めに査定する

退去直前では買い手を待つ時間がありません。

早い段階で査定すれば、高値を狙うか、成立速度を優先するか選択できます。

設備情報を整理する

メーカー・型式・年式・メンテナンス状況が分かると、買い手側が交換費を予測しやすくなります。

清掃する

厨房や内装が極端に汚れていれば、次の借主は追加清掃・補修費を見込みます。

通常の清掃で状態を確認しやすくしておくことには意味があります。

故障を隠さない

故障設備を正常品として扱うと、契約後のトラブルにつながります。

修理するか、現状のまま譲渡するかを明確にします。

貸主へ早めに相談する

どれだけ高く査定されても、貸主が居抜き退去を認めなければ店舗一体での譲渡は成立しません。

貸主承諾については、居抜き退去で貸主の承諾を得るには?をご覧ください。

査定額が0円でも「居抜きに意味がない」とは限らない

造作譲渡代金が付かない、あるいは無償譲渡になるケースもあります。

それでも、貸主が居抜き退去を承認し、原状回復・撤去・廃棄の一部を実際に避けられるのであれば、売主側に経済的なメリットが残る場合があります。

反対に、造作譲渡代金が高くても、後継テナントを待っている間に数か月分の賃料が追加で発生すれば、結果的な手残りは小さくなる可能性があります。

査定額そのものより、閉店・退去全体で判断します。

造作譲渡の査定についてよくある質問

造作譲渡はどうやって査定しますか?

内装・厨房設備などの状態だけでなく、次のテナントが再利用できる範囲、業態との相性、立地・賃貸条件、追加工事、退去期限、買い手需要などを含めて判断します。

内装工事に1,000万円かけたら、いくらくらいで売れますか?

取得費から一定割合で決まるものではありません。現在の設備状態と、次の借主がその造作を使うことでどれだけ初期投資を減らせるかによって評価が変わります。

造作譲渡の査定と厨房機器の買取査定は違いますか?

違います。厨房機器買取は機器単体の中古価値が中心ですが、造作譲渡では内装・設備・レイアウトなど店舗一体としての利用価値まで含めて判断します。

古い店舗でも査定額は付きますか?

可能性はあります。築年数や設備年式だけでなく、メンテナンス状態、次の業態での再利用性、立地・賃貸条件などによって変わります。

壊れている設備があると造作譲渡できませんか?

必ずしも不可能ではありません。ただし、故障設備の修理・交換費は買い手側の負担になるため、価格へ影響する可能性があります。状態は事前に開示します。

複数社へ査定を依頼した方がよいですか?

比較する方法はあります。ただし査定額だけでなく、直接買取か仲介か、手数料、成立条件、支払時期、原状回復期限への対応まで揃えて比較してください。

リース品も造作譲渡できますか?

原則として、自社所有ではないリース品を自社資産として売却することはできません。リース契約を確認し、返却・承継などの扱いをリース会社へ確認します。

査定額が付かなければ捨てた方がよいですか?

すぐ廃棄する必要はありません。店舗全体では譲渡額が付かなくても、厨房機器・什器を個別売却できる場合があります。また無償居抜きでも原状回復費を減らせる可能性があります。

造作譲渡査定は「いくらで売れるか」だけを見ない

造作譲渡の査定で確認したいのは、主に次の8項目です。

  1. 厨房機器・設備の状態
  2. 内装・設備の再利用性
  3. 次の業態との相性
  4. 立地・賃貸条件
  5. 買い手に必要な追加工事
  6. 原状回復・撤去を避けられる価値
  7. 退去までの残り時間
  8. 買い手の需要

出店時の内装費や帳簿上の価格だけでは、現在の造作譲渡価値は分かりません。

また、「査定300万円」という数字だけでは、その金額で確実に売れるのか、募集価格なのか、直接買取価格なのかも分かりません。

査定を受けるときは、

  • 何を評価した金額か
  • 誰が買うのか
  • 手数料はいくらか
  • いつ支払われるか
  • 貸主承諾が必要か
  • 成立しなかった場合どうなるか

まで確認します。

そのうえで、造作譲渡代金だけでなく、実際に回避できる原状回復・撤去費と、成立までにかかる賃料等を含めて閉店全体の手残りを比較します。

後継テナントの探し方については、居抜きで後継テナントを探す方法をご覧ください。

居抜きと原状回復のどちらを選ぶか迷っている場合は、店舗閉店は居抜きと原状回復のどちらを選ぶ?で整理しています。

居抜き・造作譲渡全体については、居抜き・造作譲渡ガイドをご覧ください。

閉店期限が決まっており、造作譲渡・設備単品売却・原状回復のどれが最も手残りを残せるか判断できない場合は、お問い合わせから店舗の業態・設備・退去期限・貸主との確認状況をご連絡ください。

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