店舗を閉店するとき、設備や什器と同じくらい早く整理したいのが商品在庫です。
閉店日まで通常どおり仕入れを続けていると、営業終了時に大量の商品が残り、最後になって、
- 大幅値引きする
- 買取会社へまとめて売る
- 他店舗へ移す
- 廃棄する
といった判断を短期間で行わなければならなくなります。
在庫は、厨房機器や店舗什器とは性質が異なります。
基本的には販売するために仕入れた商品なので、廃棄すれば仕入原価を回収できません。
一方、閉店直前まで高値で売ろうとして大量に残れば、退去期限までに処理できず、最後は処分費まで必要になる可能性があります。
店舗閉店時の在庫処分では、「一番高く売る」だけではなく、「退去期限までに何を何個、どの方法でなくすか」を先に決めることが重要です。
この記事では、店舗閉店時の在庫を売り切り、移管、返品、買取、寄附、廃棄へ分けて処理する8つの方法を整理します。
厨房機器・什器・家具など商品在庫以外もまとめて整理したい場合は、店舗を閉店するとき何が買取できる?をご覧ください。
店舗閉店時の在庫処分は8つの順番で考える
- 在庫を棚卸しして所有関係を確認する
- 閉店までの販売可能期間を決める
- 通常販売・値下げ販売で売り切る
- 他店舗・EC・倉庫へ移管する
- 仕入先へ返品できるか確認する
- 法人向け在庫買取へ一括査定する
- 寄附・再利用できる在庫を分ける
- 残った商品を適正に廃棄し記録を残す
1.最初に在庫を棚卸しする
閉店時の在庫処分は、「店内に商品が何個あるか分からない」状態では進めにくくなります。
最初に、可能な範囲で在庫を一覧化します。
確認したい項目
- 商品名
- SKU・品番
- JANコード
- 数量
- 仕入原価
- 通常販売価格
- 賞味期限・消費期限等
- 商品の状態
- 保管場所
です。
すべてを完璧に棚卸しできなくても、カテゴリー別の概算数量、写真、段ボール数などが分かれば、在庫買取会社へ相談できる場合があります。
自社所有の商品か確認する
店舗に置いてある商品でも、自社所有とは限りません。
例えば、
- 委託販売商品
- メーカーからの預かり商品
- レンタル品
- サンプル品
などがあります。
自社所有でない商品を勝手に値下げ・買取・廃棄しないようにします。
設備・什器と商品在庫を分ける
例えば、アパレル店舗なら、
- 衣類・バッグ → 商品在庫
- ハンガーラック → 店舗什器
- レジPC → OA機器
- ショーケース → 店舗什器
です。
商品在庫と設備では売却先が異なるため、最初に分けます。
2.閉店までの販売可能期間を決める
在庫処分は閉店日の直前に始めるのではなく、閉店までの販売期間から逆算します。
例えば、在庫1000点を持った状態で閉店まで1か月しかないなら、現在の通常販売ペースで何点売れるか確認します。
通常販売だけで売り切れるか計算する
例えば、
- 現在庫:1000点
- 通常販売:1日10点
- 営業残日数:30日
なら、単純計算では約300点しか販売できません。
約700点について、値下げ、移管、買取など別の出口を用意する必要があります。
閉店直前まで仕入れを続けない
閉店日が決まったら、通常時と同じ発注を続ける必要があるか見直します。
確認するのは、
- 自動発注
- 定期発注
- 予約発注
- 最低発注ロット
- 季節商品
- 定期便
です。
ただし、閉店まで営業を継続するために必要な商品まで止めると、欠品によって売上を失う可能性があります。
「仕入れゼロ」ではなく、閉店時に残る量を小さくするよう調整します。
3.通常販売・値下げ販売で売り切る
利益を最も残しやすいのは、通常の顧客へ通常販売できる場合です。
閉店まで時間がある段階では、すぐ大幅値引きするのではなく、販売速度を確認しながら価格を調整します。
段階的に価格を変更する
例えば、
- 通常販売
- 一部商品の値下げ
- 閉店セール
- 最終処分価格
と段階を分ける方法があります。
最初から大幅値下げすると回収額を下げる場合がある
閉店日まで十分な時間があるにもかかわらず、すべて50%OFFにすると、本来通常価格で販売できた商品まで安く売ることになります。
反対に閉店3日前になって定価販売を続けていれば、大量在庫が残る可能性があります。
在庫処分では、「値引率」より「残り日数と販売速度」で価格を変える方が合理的です。
ブランド・メーカー契約も確認する
商品によっては、
- 値引き販売
- EC販売
- 第三者への転売
について契約上の条件が設けられている場合があります。
特にブランド商品、フランチャイズ商品、代理店商品などは、通常の仕入契約を確認してください。
4.他店舗・EC・倉庫へ移管する
複数店舗を運営している場合は、閉店店舗で売り切る必要がない商品もあります。
例えば、
- 別店舗へ移管
- EC在庫へ転換
- 倉庫へ集約
- 催事・アウトレットで販売
できる場合があります。
移管にも費用がかかる
在庫を別店舗へ送れば商品価値は残りますが、
- 梱包
- 運送
- 倉庫保管
- 検品
- 在庫登録
などの費用が発生します。
販売見込みの低い商品まですべて移管すると、単に不良在庫の保管場所を変えるだけになる場合があります。
移管する在庫を選ぶ
例えば、
- 定番商品
- 別店舗でも販売実績がある商品
- ECで販売しやすい商品
- 期限が十分残っている商品
を優先します。
5.仕入先へ返品できるか確認する
商品・契約によっては、仕入先やメーカーへの返品が認められる場合があります。
ただし、閉店するからといって当然に返品できるわけではありません。
確認する条件
- 返品可能期間
- 未開封条件
- 返品可能数量
- 返品手数料
- 送料負担
- 委託販売か買切仕入か
などです。
返品できる商品を先に廃棄しない
大量の閉店在庫を急いで処分会社へ渡した後で、「メーカー返品できた」と分かっても戻せません。
閉店予定が決まったら、主要仕入先へ返品条件を確認します。
6.法人向け在庫買取へ一括査定する
通常販売・移管・返品で処理しきれない在庫は、法人向け在庫買取会社へ売却できる場合があります。
対象例として、
- アパレル
- 雑貨
- 家電
- ホビー
- 日用品
- 工具
- 生活用品
などがあります。
取扱品目は買取会社によって異なります。
一括買取のメリット
- 短期間で大量在庫を減らせる
- 複数SKUをまとめて処理できる
- 現金化できる
- 廃棄数量を減らせる
ことです。
買取価格は通常販売価格より低くなることが多い
在庫買取会社は、買い取った商品を再販売します。
そのため、店舗で顧客へ直接販売する価格と同額では買い取れません。
ただし、閉店後に商品を廃棄すれば売却代金は0円となり、さらに処分費が必要になる場合があります。
比較するのは、
通常販売で見込める回収額 − 売り切るために必要な時間・人件費
と、
一括買取額 − 引取・運送等の費用
です。
在庫買取会社へ伝える情報
- 商品カテゴリー
- メーカー・ブランド
- 数量
- 希望売却時期
- 保管場所
- 商品の状態
- 期限
- 在庫リスト
- 写真
などを準備すると査定を進めやすくなります。
在庫リストがない場合でも相談できることがある
長年営業していた店舗では、実在庫とシステム在庫が一致していない場合があります。
その場合でも、
- 店舗全体の写真
- 段ボール数
- 主要カテゴリー
- 概算数量
などから相談できる買取会社があります。
「正確な一覧が完成するまで何も相談しない」とすると、処理時間を失う可能性があります。
7.寄附・再利用できる在庫を分ける
商品によっては、廃棄ではなく寄附・再利用という方法もあります。
特に未利用食品では、フードバンク等への食品寄附という選択肢があります。
食品なら何でも寄附できるわけではない
寄附先には、
- 賞味期限までの残日数
- 未開封
- 保存状態
- 温度管理
- 商品表示
- 受入可能数量
などの条件があります。
消費者庁の食品寄附ガイドライン等も確認し、受入団体と調整してください。
寄附を閉店最終日の処理方法にしない
大量の食品が閉店日に残り、
「今日中に全部寄附したい」
と考えても、受入先が確保できるとは限りません。
食品寄附を検討するなら、在庫数量と期限が分かる段階で早めに相談します。
商材によって販売・譲渡条件が異なる
次のような商品は、通常の商品在庫と同じ感覚で自由に転売・寄附できるとは限りません。
- 酒類
- 医薬品
- 医療機器
- 一部の化粧品
- 食品
- 許認可が関係する商品
該当する場合は、現在の許認可、商品カテゴリー、売却先の資格等を確認してください。
8.残った商品を適正に廃棄する
販売、移管、返品、買取、寄附で処理できない在庫は、最終的に廃棄することになります。
ただし、店舗の商品在庫は事業活動に伴って生じた廃棄物です。
家庭ごみと同じ方法で処理できるとは限りません。
廃棄物の種類を確認する
在庫によって、
- 事業系一般廃棄物
- 産業廃棄物
- リサイクル対象品
- 専門処理が必要な物
などに分かれる場合があります。
店舗所在地の自治体ルールと、処理会社が必要な許可を持っているか確認します。
撤去・廃棄については、撤去・廃棄ガイドも参考にしてください。
処理業者へ渡しても事業者の責任がゼロになるわけではない
産業廃棄物などを外部業者へ委託した場合でも、排出した事業者には適正処理に関する責任があります。
「安く全部持っていってくれる」という理由だけで業者を選ばず、必要な許可・処理方法を確認します。
廃棄した在庫の記録を残す
閉店在庫を廃棄する場合は、後から、
- 何を
- 何個
- いつ
- なぜ
- どの方法で
処理したか確認できるようにします。
残しておきたい資料
- 在庫一覧
- 廃棄前の写真
- 数量記録
- 処理会社の見積・請求書
- 処理証明等
- 買取明細
などです。
在庫の売却・廃棄に伴う具体的な会計・税務処理は、会社の状況や商品によって異なるため税理士等へ確認してください。
「廃棄すれば全部経費になる」と考えない
在庫を廃棄した場合の税務処理は、廃棄の事実、在庫の状態、帳簿価額、証拠資料等によって確認が必要です。
閉店直前に大量の商品を廃棄する場合は、記録を残したうえで会計担当者・税理士へ確認します。
破産・法的整理が関係する場合は自主的に在庫を処分しない
通常の自主閉店ではなく、破産・法的整理などが予定されている場合、会社資産の売却・処分について通常の閉店とは異なる対応が必要になることがあります。
この場合は、在庫を安値で一括売却したり廃棄したりする前に、弁護士等の専門家の指示を優先してください。
在庫処分は閉店日から逆算する
在庫処分で重要なのは、閉店当日に商品がなくなることだけではありません。
閉店後には、
- 什器撤去
- 設備搬出
- 残置物撤去
- 原状回復
が続きます。
商品在庫が店内に大量に残っていれば、次の工程へ進めない場合があります。
在庫処分の締切日を複数設定する
一つの「閉店日」だけで管理するより、例えば、
- 通常仕入れを減らす日
- 閉店セールを始める日
- 他店舗移管を決める日
- 仕入先返品を締め切る日
- 在庫買取を確定する日
- 廃棄処理を開始する日
- 商品を店内から完全に出す日
を設定します。
「売り切るために閉店を延ばす」が得とは限らない
例えば、残り在庫を通常価格で売るために営業を1か月延長して50万円多く回収できても、
- 追加賃料
- 人件費
- 光熱費
- その他固定費
が80万円かかれば、閉店全体では損失が増えます。
在庫だけの利益ではなく、閉店総額で判断します。
閉店費用全体を抑える方法については、店舗の閉店費用を抑える8つの方法をご覧ください。
在庫処分方法の比較
| 方法 | 回収額 | スピード | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 通常販売 | 高くなりやすい | 遅い | 閉店まで時間がある |
| 閉店セール | 中程度 | 中〜速い | 来店客へ直接販売できる |
| 他店・EC移管 | 将来回収 | 速い | 継続事業がある |
| 仕入先返品 | 契約次第 | 比較的速い | 返品条件を満たす |
| 在庫買取 | 通常販売より低くなりやすい | 速い | 大量在庫を短期間で減らしたい |
| 寄附・再利用 | 売上回収なし | 受入先次第 | 廃棄を減らしたい |
| 廃棄 | 0円・処分費発生 | 速い | 他の方法が使えない |
店舗閉店在庫のチェックリスト
- 実在庫を確認した
- 自社所有品を確認した
- 委託販売品を分けた
- 商品別数量を把握した
- 期限商品を確認した
- 閉店までの販売予測を出した
- 仕入れ量を調整した
- 閉店セール開始日を決めた
- 他店舗移管対象を決めた
- EC移管対象を決めた
- 仕入先返品を確認した
- 在庫買取査定を取った
- 寄附可能品を確認した
- 規制商品の処理方法を確認した
- 廃棄物区分を確認した
- 処理業者の許可等を確認した
- 廃棄記録を残した
- 店内から商品をなくす期限を決めた
店舗閉店時の在庫処分についてよくある質問
閉店したら在庫はどうすればよいですか?
まず通常販売・閉店セール、他店やECへの移管、仕入先返品を検討し、それでも残る商品を在庫買取、寄附・再利用、廃棄へ分けます。最初から全量廃棄すると回収可能な価値を失う場合があります。
閉店在庫をまとめて買い取ってもらえますか?
法人・店舗の閉店在庫を一括査定する事業者があります。取扱品目、数量、商品状態、期限、保管場所等によって買取可否・価格が変わります。
在庫リストがなくても査定できますか?
写真や概算数量等から相談できる事業者があります。ただし最終的な取引では数量確認が必要になる場合があります。
閉店セールと一括買取はどちらが得ですか?
通常は顧客へ直接販売する方が1点当たりの回収額は高くなりやすい一方、販売に時間・人件費・賃料が必要です。閉店までの残日数と固定費まで含めて比較してください。
余った食品をフードバンクへ寄附できますか?
寄附可能な食品がありますが、未開封、期限、保存状態、温度管理、受入団体の条件等を満たす必要があります。寄附先や食品寄附ガイドラインを確認してください。
商品在庫を家庭ごみに出してもよいですか?
事業活動から出た廃棄物は家庭ごみとは扱いが異なります。事業系一般廃棄物・産業廃棄物等の区分と、店舗所在地の自治体ルールを確認してください。
廃棄業者へ渡せば店舗側の責任はなくなりますか?
産業廃棄物等では、外部へ処理委託しても排出事業者としての責任が残ります。必要な許可・契約・適正処理を確認してください。
在庫を廃棄すれば税金上すべて損失にできますか?
具体的な会計・税務処理は在庫の状態、廃棄理由、証拠資料等で異なります。「捨てれば自動的に全額経費」と判断せず、在庫表、写真、処理記録等を残し税理士等へ確認してください。
設備や什器も在庫買取会社へ一緒に売れますか?
扱う事業者もありますが、商品在庫と厨房機器・什器では中古市場が異なります。設備・什器については、店舗閉店時の一括買取も確認してください。
店舗閉店時の在庫は「捨てる前に出口を分ける」
閉店時の商品在庫は、
- 棚卸する
- 販売可能期間を確認する
- 売り切る
- 他店・ECへ移す
- 返品する
- 買取へ回す
- 寄附・再利用する
- 最後に適正廃棄する
という順番で考えます。
閉店直前まで通常営業と同じ仕入れを続け、最後の日に大量の商品が残る状態になると、値下げ・買取・寄附の選択肢が減ります。
反対に早すぎる在庫処分は、本来通常価格で販売できた商品まで安く手放すことになります。
在庫処分では、商品1点当たりの価格だけでなく、閉店までの時間、賃料、人件費、処分費まで含めて、店舗全体で最も損失が小さい出口を選ぶことが重要です。
店舗閉店全体については、店舗閉店ガイドをご覧ください。
閉店費用を抑える方法については、店舗の閉店費用を抑える8つの方法で整理しています。
厨房機器・什器・家具などもまとめて処理したい場合は、店舗を閉店するとき何が買取できる?をご覧ください。
在庫・設備・什器・廃棄物が混在しており、どこまで売却し、どこから撤去・廃棄へ回せばよいか整理できない場合は、お問い合わせから店舗業態、在庫の種類・概算数量、閉店日、退去期限をご連絡ください。
