飲食店の閉店・退去は何から?契約確認から明け渡しまでの進め方

飲食店を閉店すると決めたあと、最初に悩みやすいのが「何から手を付ければよいのか」です。

飲食店の退去では、賃貸借契約だけでなく、居抜き・造作譲渡、厨房機器、リース品、従業員、仕入先、食品営業の手続き、廃棄物、原状回復などが同時に動きます。

順番を誤ると、まだ売却できた厨房機器を処分してしまったり、居抜きで退去できる可能性があったのに先に解体を発注してしまったり、原状回復の期間が足りなくなったりすることがあります。

飲食店の閉店では、最終営業日だけを決めるのではなく、契約上の明渡し日から逆算して、物件・設備・人・行政手続きを並行して進めることが重要です。

一般的な店舗閉店の全体手順については、店舗閉店・退去のやることと流れもあわせて確認してください。

目次

飲食店を閉店すると決めたら最初に確認する4つのこと

閉店を決めた直後に、いきなり解約通知や厨房機器の処分を始める必要はありません。

まず次の4点を確認します。

  1. 賃貸借契約の解約予告期間と返還条件
  2. 契約終了日・明渡し日
  3. 居抜き・造作譲渡を検討できるか
  4. 厨房機器・設備の所有者が誰か

この4点によって、その後のスケジュールや閉店コストが大きく変わります。

飲食店閉店・退去の全体的な進め方

段階 主な作業
1 賃貸借契約・解約予告・原状回復条件を確認
2 最終営業日と明渡し日を分けて決める
3 居抜き・造作譲渡の可能性を確認
4 厨房機器・什器・リース品を棚卸し
5 従業員・取引先・予約客等への対応
6 保健所等の行政手続きを確認
7 売却・返却・不用品処分を実施
8 原状回復・内装解体を実施
9 完了確認・立会い・鍵返却・明渡し

実際には複数の作業を並行して進めますが、「何を先に確定しなければ次へ進めないか」を把握しておくことが重要です。

1.賃貸借契約書を確認する

飲食店閉店で最初に確認したいのは、賃貸借契約書です。

特に次の項目を確認します。

  • 契約期間
  • 解約予告期間
  • 中途解約に関する条項
  • 違約金
  • 原状回復範囲
  • スケルトン返しの記載
  • 指定業者の有無
  • 造作譲渡・居抜きに関する条件
  • 転貸・契約上の地位移転等の制限
  • 敷金・保証金・償却

飲食店では内装・厨房設備への投資が大きいため、一般的な小売店舗以上に「何を撤去し、何を残せるか」が閉店費用へ影響します。

契約書に「スケルトン返し」と記載されていても、実際の返還状態は契約、特約、入居時の状態、貸主との合意などを確認して確定します。

店舗の原状回復範囲については、飲食店の原状回復も確認してください。

2.最終営業日と契約終了日・明渡し日を分ける

飲食店では「閉店日」と「退去日」を同じものとして考えない方がよいでしょう。

最終営業日のあとにも、次の作業が残る可能性があります。

  • 食材・在庫整理
  • 厨房機器の査定・搬出
  • リース品の返却
  • 什器・備品の撤去
  • 廃棄物処理
  • 内装解体
  • 原状回復工事
  • 完了確認
  • 是正工事
  • 退去立会い
  • 鍵返却

たとえば最終営業日の翌日が契約終了日では、設備撤去や原状回復の期間を確保できない可能性があります。

逆に営業終了から明渡しまでを長く取りすぎれば、その期間の賃料等が発生することもあります。

まず契約上の明渡し期限を確認し、そこから必要な工事日数、厨房設備の搬出、最終営業日を逆算します。

時間軸で整理したい場合は、店舗閉店はいつから準備するかも参考になります。

3.解体する前に居抜き・造作譲渡を検討する

飲食店では、厨房設備、排気設備、カウンター、客席内装などを次のテナントへ引き継げる可能性があります。

居抜きや造作譲渡が成立すれば、設備を売却できるだけでなく、撤去・原状回復の一部を回避できる場合があります。

ただし、借主だけの判断で設備や内装を残して退去できるわけではありません。

賃貸借契約や貸主・管理会社の承諾条件を確認する必要があります。

先に設備を壊さない

居抜きを検討する場合に特に注意したいのが、原状回復工事や厨房撤去を先に発注しないことです。

一度撤去・解体した設備は、造作譲渡の対象には戻せません。

基本的には、次の順番で検討します。

  1. 契約上の返還条件を確認
  2. 貸主・管理会社へ居抜き可能性を確認
  3. 厨房・内装・設備の価値を査定
  4. 後継テナント募集の可能性を確認
  5. 成立しない場合に原状回復へ切り替える

飲食店固有の居抜き退去については、飲食店を居抜きで退去する方法で詳しく解説しています。

4.厨房機器は「所有物・リース・貸与品」に分ける

飲食店の閉店では、冷蔵庫、製氷機、食器洗浄機、ガスレンジ、フライヤー、シンクなど大量の厨房設備があります。

しかし、店内にあるからといってすべて自社所有とは限りません。

最初に次のように分類します。

  • 自社所有
  • リース
  • レンタル
  • メーカー・仕入先等からの貸与
  • 貸主所有設備
  • 前テナントから引き継いだ設備

リース品や貸与品を誤って売却・処分すると、後から返却を求められる可能性があります。

売却できる設備は営業中に査定する

厨房機器は、動作確認ができる状態の方が査定しやすい場合があります。

そのため、すべての営業を終えて電源やガスを止めてから初めて査定するより、閉店日が決まった段階で査定候補を整理する方が進めやすくなります。

厨房機器の査定については、飲食店閉店時の厨房機器買取を確認してください。

売れる機器と処分が必要な機器が混在している場合は、厨房機器の買取と処分を同時に進める方法も参考になります。

5.従業員・取引先・予約客への対応時期を決める

飲食店は物件だけでなく、人や取引先との調整も必要です。

従業員

別店舗への異動、雇用継続、契約期間満了、退職、解雇などによって必要な対応は異なります。

閉店するからといって、すべての従業員が自動的に同じ日に退職するわけではありません。

閉店に伴って会社側から解雇する場合には、労働法上の解雇ルールを確認する必要があります。

原則として解雇には30日前の予告や、予告期間が不足する場合の解雇予告手当などの規定があります。ただし、有期契約やその他の状況では別の論点もあるため、「30日前に伝えれば必ず問題ない」という意味ではありません。

仕入先・取引先

食材、酒類、消耗品、おしぼり、マット、BGM、POS、予約システムなど、継続契約しているサービスを一覧化します。

最終営業日だけでなく、返却物や解約予告期間も確認します。

予約客・顧客

閉店日以降の予約がある場合は、個別連絡が必要になることがあります。

回数券、預かり金、前払い商品等を扱っている場合も、それぞれの契約関係を確認します。

6.保健所などの行政手続きを確認する

飲食店は食品営業の許可・届出が関係するため、一般の店舗より閉店時の行政確認事項が増えます。

ただし、提出期限、様式、営業許可書の扱い、オンライン手続きの可否などは自治体や営業形態によって異なります。

そのため、店舗を管轄する保健所の案内を確認してください。

東京都では、対象となる食品営業許可について、廃業後一定期間内に廃業届を提出する手続きが案内されています。

全国一律に同じ期限・提出方法とは限らないため、閉店日が決まった段階で所管保健所へ確認しておくと安全です。

移転・事業譲渡は単純な「廃業」とは限らない

別の場所へ店舗を移転する場合や、飲食店事業を他社へ譲渡する場合は、単純に現在の営業を終了するケースとは手続きが異なる可能性があります。

造作や厨房機器を譲渡しただけで、食品営業上の許可が自動的に次のテナントへ移ると考えないようにしてください。

詳しくは、飲食店閉店時の保健所手続きで確認できます。

食品営業以外にも、店舗の営業内容や設備によって消防、各種営業許可・届出等の確認が必要になる場合があります。

7.不用品を「売る・返す・廃棄する」に分ける

閉店が決まったからといって、店内の物をすべて不用品回収へ出すのは避けた方がよいでしょう。

次の順番で仕分けます。

  1. 次店舗や他店舗で再利用する物
  2. リース・レンタル・貸与先へ返す物
  3. 居抜きで残す物
  4. 買取に出す物
  5. 廃棄する物

廃棄が確定した物については、事業系一般廃棄物、産業廃棄物、個別リサイクル制度などに応じて適切な処理方法を選びます。

店舗閉店時の廃棄物区分については、店舗閉店時の廃棄物処理で詳しく整理しています。

8.居抜き不成立なら原状回復・内装解体へ切り替える

居抜きが成立しなかった場合や、契約上スケルトン返しが必要な場合は、原状回復・内装解体へ進みます。

飲食店では一般店舗より設備が多いため、撤去範囲を曖昧にしたまま見積を取ると比較しにくくなります。

主な確認対象は次のとおりです。

  • 厨房機器
  • 厨房土間・防水
  • 給排水
  • ガス
  • 電気設備
  • フード
  • 排気ダクト
  • グリストラップ
  • 空調・冷凍冷蔵設備
  • 床・壁・天井
  • カウンター・客席造作
  • 看板・外部設備

「スケルトン返し」と書いてあるからすべてを無条件に撤去するのではなく、契約上の返還状態、貸主・管理会社との確認、設備の所有関係から範囲を確定します。

内装解体については飲食店の内装解体、スケルトン返しについては飲食店のスケルトン工事を確認してください。

9.電気・ガス・水道を早く止めすぎない

最終営業日を迎えたからといって、その日にすべてのライフラインを停止すると、その後の作業に支障が出ることがあります。

たとえば次の作業では電気・水道等を必要とする可能性があります。

  • 厨房機器の動作確認
  • 買取査定
  • 冷蔵・冷凍品の整理
  • 清掃
  • 内装解体
  • 原状回復工事
  • 完了確認

停止日は最終営業日ではなく、各業者と工事工程を確認して決めます。

ガス設備についても、取り外しや閉栓の方法を施工業者・供給事業者等へ確認します。

10.最後は明渡し条件を確認して鍵を返す

工事が終わったら、貸主・管理会社と契約上の返還状態を確認します。

明渡し前には次の点を確認します。

  • 原状回復工事の完了
  • 未撤去設備・残置物がないか
  • 貸主所有設備が残っているか
  • 指摘事項・是正工事の有無
  • 看板・屋外設備の撤去
  • 鍵・カード・リモコン等の返却物
  • ライフラインの最終処理
  • 貸主・管理会社との立会い

原状回復工事が完成した日と、契約上の明渡しが完了する日は必ずしも同じとは限りません。

貸主側の確認や是正工事が必要な場合もあるため、工事完了を契約終了日に近づけすぎない方が安全です。

最終工程については、店舗の明け渡し手順で詳しく確認できます。

飲食店閉店で先にやらない方がよいこと

厨房設備をすぐ処分する

居抜き・造作譲渡や買取の可能性を失うことがあります。

所有関係と売却可能性を確認してから処分します。

返還条件を確認せず解体工事を発注する

不要な工事を発注したり、逆に撤去すべき部分が見積から漏れたりする可能性があります。

最終営業日だけ決める

閉店後に厨房撤去・原状回復・行政手続き等が残るため、明渡し日から逆算する必要があります。

すべての厨房機器を自社所有だと思い込む

リース、レンタル、貸与、貸主所有設備が含まれることがあります。

営業終了と同時に電気・水道を止める

査定、撤去、工事、清掃などで必要になる可能性があります。

閉店日からではなく明渡し日から逆算する

飲食店の閉店スケジュールは、「○か月前から始めれば必ず間に合う」と一律には決められません。

解約予告期間、居抜き募集期間、厨房設備の量、原状回復範囲、指定業者、物件規模などによって必要期間が変わるためです。

次のように逆算すると整理しやすくなります。

基準日 逆算して決めること
明渡し日 立会い・鍵返却・是正期限
原状回復完了日 工事期間・検査期間
工事着工日 厨房機器・不用品の搬出期限
設備搬出期限 買取査定・居抜き判断の締切
最終営業日 顧客案内・仕入停止・在庫調整
その前 契約確認・従業員対応・行政確認

店舗閉店と事業そのものの廃業は分けて考える

飲食店を1店舗閉店することと、会社や個人事業そのものを終了することは同じではありません。

複数店舗を運営していて一店舗だけ閉店する場合や、別の場所へ移転する場合には、事業自体は継続します。

一方、個人事業そのものを終了する場合や法人を解散する場合には、税務・社会保険その他の手続きも別途確認する必要があります。

本記事ではテナント退去・飲食店閉店の実務を中心に扱い、会社清算や法人税務等はそれぞれの専門家・公的窓口で確認してください。

飲食店閉店・退去のFAQ

飲食店を閉店すると決めたら一番最初に何をすればよいですか?

まず賃貸借契約書を確認します。

解約予告期間、契約終了日、原状回復・スケルトン返し、居抜き・造作譲渡に関する条件を確認したうえで、明渡し日からスケジュールを逆算します。

最終営業日と退去日は同じ日にした方がよいですか?

必ず同じ日にする必要はありません。

営業終了後に厨房機器の搬出、清掃、原状回復工事、貸主確認などが必要になる場合があるため、必要工程を確認して決めます。

解約通知を出す前に居抜きを検討した方がよいですか?

居抜き・造作譲渡を検討する場合は、契約条件と貸主・管理会社の方針を早めに確認する価値があります。

ただし、借主だけで後継テナントや設備残置を決定できるとは限りません。貸主の承諾や契約条件を確認して進めてください。

厨房機器は閉店前に売ってもよいですか?

自社所有で、営業や居抜きに必要ない機器であれば売却候補になります。

ただし、リース・レンタル・貸与品や居抜き譲渡予定設備を誤って売らないよう、所有関係と退去方針を先に確認します。

保健所への廃業届はいつ出しますか?

提出時期や方法は管轄自治体、許可・届出の種類によって確認してください。

一定期間内の届出を定めている自治体もあるため、最終営業日が決まった段階で所管保健所へ確認するのが安全です。

従業員には30日前に閉店を伝えれば問題ありませんか?

一律には言えません。

閉店後に別店舗へ異動するのか、雇用契約を終了するのか、有期契約なのかなどによって状況が異なります。

会社側から解雇する場合には、原則30日前の解雇予告や解雇予告手当等のルールがありますが、それだけで解雇の有効性やその他の義務がすべて決まるわけではありません。

居抜きの買い手が見つからなかったらどうしますか?

原状回復・スケルトン返しへ切り替える必要がある場合に備えて、居抜き募集と並行して工事の必要期間や見積を把握しておく方法があります。

居抜きの募集期限を明渡し直前まで設定すると、買い手が見つからなかった際に工事期間が不足する可能性があります。

飲食店の不用品は一社に全部処分してもらえますか?

一つの窓口で対応できる業者もありますが、一般廃棄物、産業廃棄物、家電リサイクル対象品、フロンを使用する機器などでは処理方法や許可が異なる場合があります。

一括依頼する場合でも、誰が何をどの処理ルートで扱うのか確認してください。

飲食店の閉店は「壊す・捨てる」前の判断が重要

飲食店の閉店・退去では、閉店日を決めたあとすぐに厨房機器を処分したり、スケルトン工事を発注したりする必要はありません。

最初に賃貸借契約と明渡し条件を確認し、居抜き・造作譲渡の可能性、厨房設備の所有関係、買取可能性を確認します。

その後、従業員・取引先・行政手続きを並行して進め、売却・返却する物を除いたうえで、必要な撤去・廃棄・原状回復だけを実施します。

飲食店は厨房、ダクト、給排水、ガス、グリストラップなど設備が多いため、一般店舗より閉店工程が複雑になりやすい業態です。

最終営業日ではなく、契約上の明渡し日をゴールにして各作業を逆算すると、工程の抜けを減らしやすくなります。

居抜き、厨房機器買取、原状回復、撤去・廃棄を含めて閉店・退去の進め方を整理したい場合は、お問い合わせから相談できます。

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