飲食店の内装解体はどう進める?厨房・ダクト・設備撤去で確認する8項目

飲食店を閉店・移転するとき、内装を撤去して物件を返還しなければならない場合があります。

ただし、飲食店の内装解体は、壁・床・天井を取り壊すだけではありません。

厨房機器、排気フード・ダクト、給排水、ガス、電気、グリストラップ、空調、業務用冷蔵冷凍設備、厨房土間など、多くの設備が絡みます。

さらに、厨房機器や造作にまだ価値があるなら、解体前に居抜き・造作譲渡や中古買取を検討できる場合があります。

順番を間違えると、本来売れた厨房機器を先に壊したり、貸主が残置を認める設備まで撤去したり、反対に必要な設備撤去が見積から漏れたりすることがあります。

飲食店の内装解体では、「解体業者を探す」前に、返還状態と残す物・売る物・撤去する物を確定することが重要です。

目次

飲食店の内装解体とは?原状回復との違い

「内装解体」「スケルトン工事」「原状回復」は同じ意味ではありません。

項目 主な内容
内装解体 内装、造作、厨房設備等を撤去する工事
スケルトン工事 内装・設備を大きく撤去し、躯体に近い状態へ戻す工事
原状回復 契約で定めた返還状態へ戻す一連の工事

原状回復には、内装解体だけでなく、補修、塗装、設備復旧、清掃、貸主検査後の是正などが含まれる場合があります。

また、「スケルトン返し」と書かれていても、具体的に何を残し何を撤去するかは物件ごとに異なります。

空調、排気設備、グリストラップ、給排水管、電気設備、床下設備などまで借主が撤去するのか、貸主側設備として残すのかを、契約・図面・貸主指示で確認します。

店舗の原状回復全体については、店舗閉店時の原状回復も参照してください。

解体を決める前に居抜き・買取の可能性を確認する

飲食店では、解体工事を発注する前に確認したいことがあります。

それが、現在の内装・厨房設備を残したまま次の出店者へ引き継げないかという点です。

居抜きが成立すれば、厨房機器や造作を残したまま引き渡せる可能性があります。

また、居抜きが難しくても、業務用冷蔵庫、製氷機、食器洗浄機、ガスレンジ、フライヤー等を中古買取へ回せる場合があります。

そのため、基本的な順番は、

  1. 貸主・管理会社へ居抜きの可否を確認する
  2. 造作・設備の所有権を確認する
  3. 居抜き・造作譲渡の可能性を判断する
  4. 厨房機器等の買取査定をする
  5. 残す物・売る物・返却する物を確定する
  6. 残った物を対象に内装解体を見積もる

という流れが整理しやすくなります。

厨房機器を売却できるか確認する場合は、飲食店の閉店で厨房機器は買取できる?を参照してください。

居抜き自体を検討する場合は、居抜き・造作譲渡も確認してください。

飲食店の内装解体で確認する8項目

1.賃貸借契約と返還状態を確定する

解体業者へ見積を依頼する前に、今回の店舗をどこまで戻す必要があるのか確認します。

確認する資料には、

  • 賃貸借契約書
  • 原状回復特約
  • 入居時図面
  • 工事区分表
  • 退去工事仕様書
  • 貸主・管理会社との打ち合わせ記録

などがあります。

特に飲食店では、次の設備について認識違いが起きやすくなります。

  • 排気フード・ダクト
  • 厨房内の給排水
  • ガス配管
  • グリストラップ
  • 厨房土間
  • 防水層
  • 空調
  • 看板
  • 外部設備

「スケルトン返しだから全部撤去」と施工会社だけで判断せず、何をどこまで撤去するか貸主側と具体的に確認します。

2.厨房機器の所有者と撤去方法を確認する

厨房機器には、自社購入品だけでなくリース・レンタル品が含まれることがあります。

区分 対応
自社所有 買取・移転・廃棄を判断
リース リース会社へ返却・買取等を確認
レンタル・貸与 所有者へ返却条件を確認
貸主所有 借主判断で撤去しない
所有者不明 契約・貸主へ確認

自社所有品であっても、買取可能性がある機器を解体業者へ先に撤去・廃棄してもらうと、売却できなくなることがあります。

解体見積を取る際には、厨房機器について、

  • 売却して先に搬出する物
  • 移転先へ持っていく物
  • 解体業者へ撤去してもらう物
  • リース会社等へ返却する物

を区別します。

3.ガス・電気・給排水をどこで切り離すか決める

飲食店では、厨房機器を単純に運び出すだけでは終わらないことがあります。

機器が、

  • ガス配管
  • 給水
  • 排水
  • 電源
  • 専用回路

へ接続されているためです。

撤去時には、機器を外すだけなのか、配管・配線まで撤去するのか、閉塞や復旧をどこまで行うのかを確認します。

ガス・電気等について専門資格・事業者対応が必要な作業を、閉店を急いでいるからという理由で店舗スタッフが自己判断で行わないようにします。

また、元栓を閉めれば原状回復が完了するとは限りません。

貸主が求める返還状態まで、配管や設備の復旧方法を確認してください。

4.排気フード・ダクトをどこまで撤去するか確認する

飲食店で一般店舗との差が出やすいのが排気設備です。

厨房には、

  • 排気フード
  • ダクト
  • 排気ファン
  • 防火ダンパー
  • 屋外排気設備

などが設置されている場合があります。

店内フードだけを撤去すればよいのか、天井内ダクトまで撤去するのか、外壁・屋上側まで借主施工なのかは物件ごとに異なります。

また、ダクト撤去では油汚れ、吊り材、高所作業、外部足場、他設備との干渉などにより工事量が変わる場合があります。

解体見積には、

  • フード撤去
  • 店内ダクト撤去
  • ファン撤去
  • 外部ダクト撤去
  • 開口部の復旧

のうち何が含まれているか確認します。

5.グリストラップ・厨房土間・防水を確認する

飲食店では厨房床側にも一般店舗にはない設備があります。

代表的なのがグリストラップです。

床下埋設なのか床置きなのか、貸主設備なのか借主施工なのかによって撤去範囲は異なります。

さらに厨房では、床をかさ上げして配管を通していたり、コンクリート土間を施工していたり、防水を追加していたりすることがあります。

そのため、スケルトン返しの場合でも、

  • 厨房床仕上げだけを撤去するのか
  • 土間まで斫るのか
  • 給排水配管をどこまで撤去するのか
  • グリストラップを撤去するのか
  • 床開口部をどこまで補修するのか

を明確にします。

実際の飲食店内装解体でも、厨房設備だけでなく厨房土間のコンクリート撤去まで行われる事例があります。

ただし、飲食店だから厨房土間を必ず撤去するという意味ではありません。

今回の契約上の返還状態を基準に判断します。

6.業務用冷凍冷蔵・空調機器のフロン対応を確認する

飲食店には、

  • 業務用冷蔵庫
  • 業務用冷凍庫
  • 冷蔵ショーケース
  • 製氷機
  • 業務用エアコン

など、冷媒としてフロン類を使用する機器が設置されていることがあります。

これらのうちフロン排出抑制法上の第一種特定製品を廃棄等する場合は、機器の中に残るフロン類を適切に回収する必要があります。

フロン類の回収を直接依頼する場合と、設備業者・解体業者等を経由して依頼する場合では、回収依頼書や委託確認書等を用いた行程管理が行われます。

そのため、見積時には、

  • フロン対象機器か
  • 中古機器としてそのまま再利用するのか
  • 廃棄・資源化するのか
  • 誰がフロン回収を手配するか
  • 必要な書類を誰が管理するか

を確認します。

「解体業者が持っていくから後は任せればよい」とだけ考えず、フロン対象機器があることを事前に伝えてください。

7.内装解体前に石綿事前調査を行う

飲食店の解体でも、壁、床、天井、下地材、設備周辺など既存建材を撤去・改修する場合があります。

解体・改修工事では、工事規模の大小にかかわらず、工事対象部分の材料について石綿含有の有無を事前に調査する必要があります。

一定規模以上の工事では、その調査結果を行政へ報告する制度もあります。

ここで重要なのは、

行政への報告が不要な小規模工事だから、石綿事前調査自体も不要という意味ではない

という点です。

発注時には、

  • 事前調査を誰が行うか
  • 既存図面・改修履歴があるか
  • 分析調査が必要か
  • 見積に調査費が含まれているか
  • 含有が判明した場合の施工方法・費用・工期

を確認します。

詳しくは、内装解体・原状回復のアスベスト事前調査を参照してください。

8.解体・搬出・廃材・検査まで一つの工程にする

飲食店の退去は、内装解体だけの日程を組めば終わるわけではありません。

実際には、

  1. 最終営業
  2. 在庫整理
  3. リース・貸与品返却
  4. 居抜き・厨房機器買取
  5. 残置物撤去
  6. フロン機器対応
  7. 石綿事前調査
  8. 厨房・設備・内装解体
  9. 廃材搬出・処理
  10. 原状回復・補修
  11. 清掃
  12. 貸主検査
  13. 是正
  14. 明渡し

という流れになる場合があります。

飲食店では厨房機器の搬出やダクト撤去に時間がかかることもあるため、「解体工事○日」だけで退去期限を判断しない方がよいでしょう。

貸主検査と是正期間まで含めて明渡日から逆算します。

飲食店の内装解体費用は何で変わる?

飲食店の内装解体は、店舗面積だけで費用を判断しにくい工事です。

同じ20坪でも、カフェと焼肉店、ラーメン店、居酒屋では設備量が大きく異なることがあります。

主な費用変動要因には次があります。

  • 店舗面積
  • 部分解体かスケルトンか
  • 厨房機器の量
  • 厨房土間・防水
  • 給排水設備
  • ガス設備
  • 排気フード・ダクト
  • 空調設備
  • 客席造作
  • 看板・外装設備
  • 廃材量
  • 石綿対応
  • 階数
  • エレベーター
  • 搬出経路
  • 夜間・休日作業
  • 商業施設等の工事制限

そのため、全国一律の坪単価を自店舗へそのまま掛けるより、返還状態と設備量を確定して現地見積を取る方が実務的です。

店舗解体費用全体については、店舗の解体費用、スケルトン工事の費用についてはスケルトン工事の費用で分けて解説しています。

見積で分けて確認したい費目

飲食店の内装解体では、「解体工事一式」という総額だけでは比較しにくくなります。

費目 確認内容
内装解体 壁・床・天井・造作等
厨房設備撤去 機器・シンク・作業台等
設備切離し ガス・電気・給排水等
排気設備 フード・ダクト・ファン等
厨房床 土間・防水・配管・グリストラップ等
冷凍空調 フロン回収を含むか
養生 共用部・床・壁・EV等
搬出 作業員・階段・EV・距離
廃材処理 種類・数量・運搬・処分
石綿 事前調査・分析・含有時対応
追加条件 夜間、休日、数量増、貸主追加指示等

見積書の詳しい読み方は、内装解体の見積内訳を確認してください。

解体廃材と閉店前から残っている物を分ける

飲食店退去では、大量の物が同時に店内から出ます。

ただし、内装解体によって発生した廃材と、工事前から店内にあった厨房機器・食器・家具・在庫・備品等は分けて考えます。

建設工事によって発生する廃棄物については、原則として発注者から工事を直接請け負った元請業者が排出事業者となります。

一方、工事前から存在している不用品・残置物まで、自動的にすべて「解体工事の廃材」になるわけではありません。

閉店前に、

  • 売る物
  • 返却する物
  • 移転する物
  • 残置物として撤去する物
  • 解体工事で発生する廃材

を分けておくと、見積と処理責任を整理しやすくなります。

飲食店の内装解体業者を選ぶときの確認項目

飲食店の解体では、単純な間仕切り撤去だけでなく、厨房・設備工事まで関係する可能性があります。

業者選定時は、

  • 飲食店の解体実績
  • 現地調査の内容
  • 厨房機器・設備撤去への対応
  • 排気ダクト撤去への対応
  • ガス・電気・給排水の専門工事体制
  • 石綿事前調査への対応
  • 業務用冷凍空調・フロン対応
  • 廃棄物処理体制
  • 商業施設・ビル工事ルールへの対応
  • 夜間・休日施工
  • 貸主検査・是正対応
  • 追加費用条件

などを確認します。

解体会社自体がすべての設備工事を自社施工する必要があるという意味ではありません。

専門会社へ依頼する場合も含め、誰がどの範囲を担当し、元請としてどう工程を管理するのかが明確か確認します。

業者選び全般については、内装解体業者の選び方も参照してください。

飲食店では夜間・休日工事になることもある

商業施設、駅ビル、複合ビルなどでは、周囲の店舗が営業している時間に騒音・粉じんを伴う解体作業をできない場合があります。

その場合、

  • 夜間のみ解体
  • 閉館後のみ搬出
  • 休日のみ施工
  • 貨物エレベーターの時間指定
  • 搬入口の予約
  • 共用部養生の指定

などが設定されることがあります。

工事可能時間が短いほど、必要日数・人員・管理費等へ影響する可能性があります。

現地見積時に店舗内部だけでなく、搬入口、共用廊下、エレベーター、建物外まで確認してもらいます。

内装解体で追加費用が出やすい場面

飲食店は設備が多いため、当初見積との条件差によって追加工事が生じる場合があります。

たとえば、

  • 見積後に残置物が増えた
  • 厨房床を撤去したら追加配管が確認された
  • ダクト範囲が想定より広かった
  • 貸主から撤去範囲が追加された
  • 夜間作業へ変更された
  • 石綿調査結果によって対応工事が増えた
  • 厨房機器を売却予定から廃棄へ変更した

などです。

追加費用が提示された場合は、追加という理由だけで不当と判断するのではなく、当初見積の範囲、追加理由、数量、単価、写真、工期への影響を確認します。

詳しくは、内装解体の追加費用を確認してください。

飲食店の内装解体についてよくある質問

飲食店は退去時に必ずスケルトンにしなければなりませんか?

必ずではありません。

返還状態は賃貸借契約、特約、入居時状態、貸主との合意によって変わります。

居抜き退去を認めてもらえる場合や、部分撤去でよい場合もあります。

厨房機器は解体業者に全部処分してもらってよいですか?

自社所有かどうか、買取可能かどうかを先に確認した方がよいでしょう。

リース・貸与品であれば勝手に廃棄できません。

中古価値がある機器については、解体前に買取査定を行う方法があります。

ダクトはどこまで撤去する必要がありますか?

物件ごとに異なります。

厨房フードだけなのか、天井内・外部までのダクトなのか、ファンや開口部復旧まで含むのかを、契約・工事区分・貸主指示で確認します。

グリストラップは必ず撤去しますか?

一律ではありません。

貸主側設備か借主施工か、床置きか埋設か、返還状態がどう定められているかで判断します。

内部に残るものの清掃・処理方法についても、撤去会社と処理方法を確認してください。

業務用冷蔵庫をそのまま解体業者へ渡してよいですか?

フロン類を使用する第一種特定製品に該当し、廃棄等を行う場合は、フロン排出抑制法に基づく回収・行程管理が必要になります。

中古機器として本来の用途で再利用する場合と、廃棄・資源化目的の場合では扱いが異なるため、処分方法を先に確認してください。

小規模な飲食店でも石綿事前調査は必要ですか?

店舗面積が小さいことだけを理由に、解体・改修対象部分の事前調査が不要になるわけではありません。

行政への調査結果報告に規模基準がありますが、事前調査自体とは別の話です。

飲食店の解体には何日くらいかかりますか?

面積だけでは決まりません。

厨房機器、ダクト、土間、設備、搬出条件、作業時間、石綿対応、貸主検査等で必要期間が変わります。

現地調査後の工程表で判断してください。

厨房土間は必ず斫りますか?

必ずではありません。

入居時に借主が施工した土間を撤去してスケルトンへ戻す契約であれば必要になる場合がありますが、貸主が残置を認める場合もあります。

契約上の返還状態を確認してから見積へ入れます。

飲食店の内装解体は、厨房を壊す前の判断が重要

飲食店の内装解体では、施工会社へ「全部スケルトンにしてください」と依頼する前に整理することがあります。

発注前には、

  1. 契約上の返還状態を確定する
  2. 居抜き・造作譲渡の可能性を確認する
  3. 厨房機器の所有権と買取可否を確認する
  4. ガス・電気・給排水の撤去範囲を決める
  5. ダクト・グリストラップ・厨房土間を確認する
  6. 冷凍冷蔵・空調機器のフロン対応を確認する
  7. 石綿事前調査を行う
  8. 解体・廃材・原状回復・貸主検査まで工程化する

という順番で進めると整理しやすくなります。

飲食店は設備量が多いため、解体する前に売れる物・残せる物・返却する物を分けるだけでも、工事範囲が変わる場合があります。

必要な撤去範囲を貸主と確定したうえで、同じ条件で現地見積を取り、解体作業だけでなく設備・搬出・廃材・法令対応・追加条件まで比較してください。

飲食店の内装解体・原状回復について相談する

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