スケルトン工事の費用はいくら?坪単価だけで決めない8つの確認

店舗やテナントを退去するとき、賃貸借契約で「スケルトン返し」を求められることがあります。

スケルトン工事では、借主が設置した内装・造作・設備などを撤去し、建物の躯体や貸主側設備を中心とした状態へ戻します。

検索すると「坪3万円」「坪5万円」「坪10万円」といった費用目安が見つかりますが、スケルトン工事は坪数だけでは金額を判断しにくい工事です。

同じ30坪でも、間仕切りの少ない物販店と、厨房土間・給排水・排気ダクト・ガス設備まで撤去する飲食店では作業量が大きく違います。

さらに、地下店舗、高層階、夜間工事、長い搬出経路、石綿含有建材などが加われば費用は大きく変わります。

スケルトン工事では「坪単価はいくらか」より先に、「どの状態まで戻す契約なのか」と「その見積に何が含まれているのか」を確認することが重要です。

この記事では、スケルトン工事の費用を考えるときに確認したい8項目と、坪単価を見るときの注意点を整理します。

店舗解体費用全体については、店舗の解体費用はいくら?をご覧ください。

目次

スケルトン工事とは

スケルトン工事とは、店舗・テナントの内装や借主側設備などを撤去し、建物の構造部分が見える状態を中心とした空間へ戻す工事です。

一般的には、

  • 間仕切り壁
  • 天井仕上げ
  • 床仕上げ
  • 造作家具
  • カウンター
  • 店舗什器
  • 借主設置の電気設備
  • 給排水設備
  • 空調・換気設備
  • 厨房設備

などが撤去対象になります。

ただし、「スケルトン」という言葉だけで全国一律に完成状態が決まっているわけではありません。

同じスケルトン返しでも完成状態は物件によって違う

例えば、ある物件では、

  • 床はコンクリート躯体まで撤去
  • 天井は躯体現し
  • 空調は貸主設備なので残す
  • 幹線設備は残す

という条件かもしれません。

別の物件では、

  • OAフロアは残す
  • 天井も既存状態へ復旧する
  • 増設空調だけ撤去する
  • 配管を指定位置まで撤去する

という場合があります。

そのため、施工会社に「スケルトン工事をお願いします」とだけ伝えるのではなく、貸主・管理会社が求める完成状態を確認します。

スケルトン工事と原状回復は同じではない

原状回復は、賃貸借契約で定められた状態へ物件を戻すことです。

その返還状態としてスケルトンが指定されていれば、スケルトン工事が原状回復工事の一部になります。

一方、既存内装を一部残した状態で返還できる物件なら、スケルトン工事までは必要ありません。

両者の違いについてはART-248「スケルトン工事と原状回復の違い」で詳しく扱います。

スケルトン工事の坪単価はかなり幅がある

スケルトン工事では「坪単価」が目安として使われます。

しかし、公開されている価格情報を見ても、数万円台前半から10万円を超える水準まで幅があります。

この差は、単純に施工会社の価格が違うだけではありません。

  • 撤去範囲
  • 業態
  • 設備量
  • 廃材処分
  • 搬出条件
  • 夜間工事
  • 石綿対応

など、見積条件自体が違うためです。

坪単価に何を含むかも会社によって違う

例えば坪5万円と書かれていても、

  • 解体作業だけ
  • 廃材処分込み
  • 養生込み
  • 設備撤去は別
  • 石綿対応は別

など条件が違います。

そのため、単価だけを横並びにしても正しく比較できません。

スケルトン工事費用を左右する8つの確認

  1. どの状態まで戻すか
  2. 内装・造作の撤去量
  3. 空調・電気・給排水など設備撤去
  4. 厨房・水回りなど業態特有の設備
  5. 養生・搬出・車両条件
  6. 廃材の種類・量・処分
  7. 石綿など法令対応
  8. 夜間工事・補修・追加費用条件

1.どの状態まで戻すか

費用を見る前に、スケルトン完成状態を確定します。

確認する資料は、

  • 賃貸借契約書
  • 原状回復特約
  • 工事区分表
  • 入居時図面
  • 貸主・管理会社の返還仕様

などです。

貸主立会いを先に行う方法もある

契約書だけでは撤去範囲が分かりにくい場合は、施工会社へ正式発注する前に、貸主・管理会社と現地を確認します。

例えば、

  • この天井は撤去するのか
  • 空調は残すのか
  • 床下配線はどこまで取るのか
  • アンカー跡は補修するのか

を確認します。

必要以上のスケルトン工事をしない

「スケルトン返しだから全部撤去」と施工会社だけで判断すると、貸主が残してよい設備まで撤去する可能性があります。

反対に、必要な設備を残せば、貸主検査後に追加工事になる場合があります。

最初に完成状態を確定することが、費用管理の出発点です。

2.内装・造作の撤去量

スケルトン工事では、現在の店舗にどれだけ造作があるかで作業量が変わります。

例えば、

  • 間仕切り壁
  • 個室
  • 造作棚
  • カウンター
  • ステージ
  • 床上げ
  • 天井造作
  • 看板

などです。

面積が同じでも壁・個室が多いと作業量が増える

30坪のオープンな物販店と、30坪に多数の個室を設けたサロンでは、撤去する壁・建具・設備量が違います。

坪数だけでは、この差を反映できません。

3.空調・電気・給排水など設備撤去

内装を壊すだけでなく、借主が設置・変更した設備を撤去・復旧する場合があります。

電気設備

  • 照明
  • 配線
  • コンセント
  • 分電盤
  • 動力

空調・換気

  • エアコン
  • 室外機
  • ダクト
  • 換気設備

給排水

  • 給水管
  • 排水管
  • 給湯設備
  • シンク

これらは内装解体と別の専門工事として計上される場合があります。

貸主設備まで撤去しない

空調・電気・防災設備には、

  • 貸主設備
  • 借主が追加した設備

が混在している場合があります。

貸主設備を誤って撤去すれば、復旧費が追加されます。

工事区分を確認してから施工します。

4.厨房・水回りなど業態特有の設備

スケルトン工事で費用が大きくなりやすいのが、設備の多い業態です。

飲食店

飲食店では、

  • 厨房機器
  • 排気ダクト
  • 厨房土間
  • 防水
  • グリストラップ
  • 給排水
  • ガス配管

などが存在します。

単純な壁・床撤去より作業量も廃材量も増えやすくなります。

美容室・サロン

美容室などでは、

  • シャンプー台
  • 給排水
  • 床配管
  • 造作ミラー
  • 個室

などが費用へ影響します。

売れる設備はスケルトン工事前に分ける

厨房機器・店舗什器の中には中古買取できる物があります。

施工会社へ「全部撤去処分」と依頼した後では、売却できた設備まで廃材として扱われる可能性があります。

スケルトン見積を確定する前に、

  1. 残す物
  2. 売る物
  3. 処分する物

へ分けます。

設備・什器の売却については、設備・什器買取ガイドをご覧ください。

5.養生・搬出・車両条件

解体した内装・設備は、店舗から搬出する必要があります。

ここで費用差が出ます。

費用が増えやすい条件

  • 地下店舗
  • 高層階
  • 階段のみ
  • エレベーターが小さい
  • 搬出可能時間が短い
  • トラックを近くへ停められない
  • 店舗から搬出口まで遠い

商業施設では養生範囲も広くなりやすい

共用部を傷つけないため、

  • 廊下
  • エレベーター

などを養生します。

養生材料だけでなく、設置・撤去の作業費も必要です。

6.廃材の種類・量・処分

スケルトン工事では撤去範囲が広いため、多くの廃材が発生します。

例えば、

  • 石膏ボード
  • 木くず
  • 金属くず
  • 廃プラスチック
  • ガラス
  • コンクリートがら
  • 混合廃棄物

などです。

「壊す費用」と「捨てる費用」は別

例えば、間仕切り壁を撤去する場合、

  • 壁を解体する人件費
  • 店舗から運び出す費用
  • 車両で運搬する費用
  • 廃材を処理する費用

が必要です。

そのため、見積の「解体工事費」だけでは総額を判断できません。

見積内訳については、内装解体の見積内訳はどう見る?をご覧ください。

廃材処理費が安すぎる見積にも注意する

廃材処理には適切な収集運搬・処理が必要です。

建設工事に伴って生じる廃棄物では、原則として元請業者が排出事業者として適正処理を行います。

そのため、廃材処分費だけを極端に削るのではなく、どこまで処理費が見積へ含まれているか確認します。

7.石綿など法令対応

スケルトン工事では壁・床・天井など幅広い建材を撤去します。

建築物の解体・改修工事では、工事対象部分の材料について石綿の使用有無を事前に確認する必要があります。

一定規模以上の工事では、事前調査結果を行政へ報告する手続も必要になります。

調査費と除去費を分ける

石綿関係では、

  • 事前調査
  • 必要な場合の分析
  • 石綿含有時の除去
  • 飛散防止
  • 適切な処理

などがあります。

事前調査をしたから必ず石綿除去工事が発生するわけではありません。

見積では、調査費と石綿が確認された場合の追加費用を分けて確認します。

石綿対応を単純な値下げ対象にしない

必要な調査・安全対策を省くことは、スケルトン工事費用を合理的に下げる方法ではありません。

見積比較では、各社が同じ法令対応を前提にしているか確認します。

8.夜間工事・補修・追加費用条件

商業施設やオフィスビルでは、工事時間が指定される場合があります。

例えば、

  • 閉館後のみ
  • 22時以降のみ
  • 休日のみ
  • 騒音作業時間が限定

といった条件です。

夜間・休日になると、施工費だけでなく現場管理・警備・立会い等にも影響する場合があります。

撤去後の補修費も確認する

スケルトン工事では、単純に壊したまま返せるとは限りません。

例えば、

  • アンカー穴補修
  • 不要配管の閉栓
  • 開口部閉塞
  • 躯体損傷補修
  • 貸主設備の復旧

などが必要になる場合があります。

完成状態に「補修」が含まれるか確認する

施工会社の見積が「内装撤去まで」で、貸主が要求する補修を含んでいなければ、後で追加費用になります。

追加費用になる条件を契約前に確認する

例えば、

  • 図面にない設備
  • 床下の配管
  • 二重壁
  • 追加残置物
  • 石綿含有建材
  • 貸主からの追加指示

などが見つかると、追加見積になる場合があります。

「何が起きたら追加料金になるのか」を発注前に確認します。

20坪・30坪・50坪ならいくら?

面積別の概算を知りたい場合は、坪単価を使って初期予算を置くことはできます。

しかし、例えば坪5万円と仮定して、

  • 20坪 → 100万円
  • 30坪 → 150万円
  • 50坪 → 250万円

と計算しても、それはあくまで仮置きです。

飲食店の厨房設備、地下搬出、夜間工事、石綿対応などがあれば大きく上振れする可能性があります。

反対に、造作が少なく搬出条件が良ければ、仮置きより低くなる場合もあります。

「小さい店舗だから安い」とは限らない

小規模店舗でも、

  • 最低限必要な職人数
  • 車両
  • 現場管理
  • 養生

には一定の固定費があります。

そのため、面積が小さいほど坪単価が高く見えるケースがあります。

スケルトン工事の見積で確認する費目

見積では、少なくとも次の費用がどこに入っているか確認します。

  • 仮設・養生
  • 内装解体
  • 造作撤去
  • 設備撤去
  • 搬出・積込
  • 車両・運搬
  • 廃材処分
  • 石綿調査・対応
  • 現場管理
  • 諸経費
  • 補修・清掃

「解体一式」の金額が大きい場合は、どこまで含むのか確認します。

見積書全体については、店舗の解体見積はどこを見る?をご覧ください。

スケルトン工事費用を抑える7つの方法

1.本当にスケルトン返しが必要か確認する

賃貸借契約と貸主条件を確認します。

2.完成状態を先に確定する

必要以上に撤去しないようにします。

3.居抜き退去を検討する

貸主が承諾し、後継テナントへ造作を引き継げれば、大規模解体を避けられる可能性があります。

4.売却できる設備を先に分ける

厨房機器・店舗什器などを廃棄物にしないようにします。

5.残置物を整理する

見積条件と着工時の現場状態を一致させます。

6.同じ完成状態で相見積もりする

各社へ同じ返還条件を渡します。

相見積もりについては、内装解体の相見積もりはどう取る?をご覧ください。

7.工事開始前に追加条件を確認する

「別途」「実費」「現場確認後」となっている項目を確認します。

安い見積では抜け項目を確認する

例えば、

A社:200万円

B社:150万円

だったとしても、B社が、

  • 廃材処分別途
  • 空調撤去別途
  • 石綿調査別途
  • 補修別途

なら、最終的にA社より高くなる可能性があります。

見積総額ではなく、貸主が要求する完成状態までの最終費用を比較します。

スケルトン工事前のチェックリスト

  • 賃貸借契約を確認した
  • 本当にスケルトン返しが必要か確認した
  • 貸主と完成状態を確認した
  • 撤去対象を図面・現地で確認した
  • 貸主設備を確認した
  • 厨房・水回り設備を確認した
  • 売却する機器・什器を分けた
  • 残置物を整理した
  • 搬出経路を確認した
  • 工事可能時間を確認した
  • 石綿事前調査を確認した
  • 廃材処分費を確認した
  • 補修範囲を確認した
  • 見積外項目を確認した
  • 追加料金条件を確認した
  • 貸主検査・是正期間を確保した

スケルトン工事費用についてよくある質問

スケルトン工事の坪単価はいくらですか?

公開されている価格情報にはかなり幅があります。撤去範囲、業態、設備、廃材量、搬出条件などが異なるため、一つの坪単価をすべての店舗へ当てはめることはできません。初期概算に使用し、最終的には現地見積で確認してください。

30坪の店舗ならいくらかかりますか?

坪単価を使って初期予算を置くことはできますが、30坪でも物販店と厨房設備の多い飲食店では総額が大きく異なります。撤去対象を確定したうえで見積を取る必要があります。

スケルトン工事には廃材処分費も含まれますか?

会社・見積形式によります。内装解体費とは別に、収集運搬・廃材処分費が計上される場合があります。見積に含まれている範囲を確認してください。

空調設備も全部撤去しますか?

一律ではありません。貸主設備なのか借主設置設備なのか、工事区分・返還条件を確認します。

飲食店はスケルトン工事が高くなりますか?

厨房土間、給排水、ガス、ダクト、厨房設備など撤去物が多い場合は高くなりやすくなります。ただし、設備量や返還条件によるため業態だけでは決まりません。

スケルトン工事でもアスベスト調査は必要ですか?

建築物の解体・改修工事では、工事対象部分の材料について石綿含有の有無を事前調査する必要があります。一定規模以上では調査結果の報告も必要です。

居抜きならスケルトン工事をしなくてよいですか?

貸主が居抜き返還を承諾し、後継テナントとの条件が成立すれば回避できる可能性があります。ただし、契約上のスケルトン義務が自動的になくなるわけではありません。

一番安い施工会社へ頼めばよいですか?

総額だけでなく、完成状態、設備撤去、廃材処分、石綿対応、補修、追加条件まで揃えて比較してください。必要項目が抜けた安い見積では、工事後半に追加費用が発生する可能性があります。

スケルトン工事費用は「坪単価」ではなく完成状態から決める

スケルトン工事で費用を左右するのは、

  1. 返還状態
  2. 内装・造作量
  3. 設備撤去
  4. 業態特有の設備
  5. 養生・搬出
  6. 廃材処理
  7. 石綿対応
  8. 施工条件・追加工事

です。

坪単価は初期の予算を作る際には便利ですが、同じ坪数でも現場条件で総額は大きく変わります。

発注時には「坪○万円だから安い」ではなく、貸主が求めるスケルトン状態まで戻すために必要な費用がすべて含まれているかで判断してください。

店舗解体費用全体については、店舗の解体費用はいくら?をご覧ください。

店舗解体の見積については、店舗の解体見積はどこを見る?で整理しています。

見積内訳については、内装解体の見積内訳はどう見る?をご覧ください。

すでにスケルトン工事の見積を受け取っていて、坪単価が高いのか、設備撤去・廃材処分・補修まで何が含まれているのか判断できない場合は、お問い合わせから店舗業態・坪数・返還条件・見積状況をご連絡ください。

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