店舗やオフィスを退去するとき、内装解体・スケルトン工事の見積を受け取っても、項目名だけでは何に費用がかかっているのか分かりにくいことがあります。
例えば見積書には、
- 仮設養生費
- 内装解体費
- 設備撤去費
- 発生材処分費
- 搬出運搬費
- 現場管理費
- 諸経費
などが並びます。
同じ「30坪の店舗解体」でも、厨房設備やダクトまで撤去する案件と、間仕切り・床・天井だけを撤去する案件では内訳が大きく変わります。
内装解体の見積は、総額や坪単価を見るだけではなく、「何を撤去する費用」「何を運ぶ費用」「何を処分する費用」なのかを分けて読むことが重要です。
この記事では、店舗・オフィスの内装解体見積で確認したい9つの費目と、数量・単位・単価・一式表記の読み方を整理します。
見積全体をどの順番で確認するかについては、店舗の解体見積はどこを見る?をご覧ください。
内装解体の見積は大きく9つに分けて見る
施工会社によって項目名は異なりますが、発注者側では次の9区分へ整理すると読みやすくなります。
- 仮設・養生費
- 内装・造作の解体撤去費
- 電気・空調・給排水など設備撤去費
- 搬出・積込・車両費
- 廃材の収集運搬・処分費
- 石綿の事前調査・分析・除去関連費
- 現場管理費・諸経費
- 清掃・補修・仕上げ費
- 見積外・追加工事となる項目
見積書がこの順番で作られている必要はありません。
重要なのは、どの項目がどの費用に当たるのかを整理することです。
1.仮設・養生費
解体工事を始める前に、工事対象外の部分や共用部を傷つけないための準備を行います。
代表的なのが養生です。
例えば、
- 店舗入口
- 共用廊下
- エレベーター
- 床
- 壁
- 既存設備
などをシート・ボード等で保護します。
見積書では、
- 仮設工事
- 共通仮設
- 養生費
- 仮設養生
などの名称になっている場合があります。
養生費は面積だけでは決まらない
例えば同じ30坪でも、1階路面店と高層ビルの店舗では条件が違います。
高層ビルでは、
- 店舗からエレベーターまで長い
- 共用廊下全面養生が必要
- 搬出用エレベーターを養生する
- 管理会社指定の養生方法がある
などによって費用が増える場合があります。
見積で確認すること
- 養生する場所
- 養生する面積・長さ
- 養生期間
- 設置・撤去費を含むか
- ビル指定の養生仕様を満たしているか
2.内装・造作の解体撤去費
内装解体の中心となる費目です。
例えば、
- 間仕切り壁
- LGS・石膏ボード
- 天井
- 床材
- カウンター
- 造作家具
- 建具
- 厨房土間
- 防水
- 看板
などを撤去します。
公開されている実際の見積例でも、「内部造作物撤去」「天井ボード・LGS撤去」「厨房土間撤去」などが個別に計上されています。
「何㎡撤去するか」を確認する
壁・天井・床などでは、㎡単位で積算されることがあります。
例えば、
天井撤去 100㎡ × 1,500円
という見積なら、
- 本当に100㎡あるのか
- 天井仕上げだけか
- 下地まで撤去するのか
- 廃材処分を含むのか
を確認します。
人工計算の場合もある
厨房土間など、面積だけでは作業量を判断しにくい工事では、
5人工 × 25,000円
のように作業員数で計算される場合があります。
この場合は、想定人数と工期を確認します。
同じ「床撤去」でも内容が違う
床撤去と書かれていても、
- タイルカーペットだけ撤去
- 長尺シート撤去
- 床下地まで撤去
- OAフロア撤去
- 厨房土間コンクリートを斫る
では必要な工数も発生する廃材も違います。
項目名だけで比較せず、どこまで撤去するか確認します。
3.電気・空調・給排水など設備撤去費
店舗・オフィスの内装解体では、壁や床だけでなく設備工事が発生します。
見積では、内装解体と別項目になっていることがあります。
電気設備
- 照明
- コンセント
- 配線
- 分電盤
- 動力設備
- 看板電源
空調・換気
- エアコン
- 室外機
- 換気扇
- 排気ダクト
- 給気設備
給排水・ガス
- 給水管
- 排水管
- シンク
- グリストラップ
- 給湯器
- ガス管
防災設備
- 感知器
- 非常灯
- 誘導灯
- スプリンクラー
建物共用設備とつながる部分では、貸主指定業者・B工事扱いになる場合もあります。
「撤去」と「撤去後の処理」を分けて確認する
例えばシンクを撤去する場合でも、
- シンク本体だけを外す
- 給排水管を切る
- 配管を撤去する
- 床下まで撤去する
- 開口を塞ぐ
では工事内容が違います。
設備撤去費を見るときは、機器を外した後にどの状態まで仕上げるのか確認します。
厨房機器を売却する場合は解体見積から外す
閉店する飲食店では、業務用冷蔵庫・製氷機・食器洗浄機などを買取できる場合があります。
売却予定の機器が、解体見積の「厨房設備撤去処分」に入っていれば、条件を整理します。
売れる機器へ処分費を支払う必要はありません。
厨房機器売却については、飲食店の閉店で厨房機器は買取できる?をご覧ください。
4.搬出・積込・車両費
壊した内装材は、店舗内に置いておくわけにはいきません。
店舗から外へ出し、車両へ積み込み、処理施設などへ運ぶ必要があります。
見積では、
- 小運搬費
- 搬出費
- 積込費
- 車両費
- 運搬費
などの名称で計上される場合があります。
搬出距離で作業量が変わる
例えば、
- 店舗入口のすぐ前にトラックを停められる
- 地下2階からエレベーターで搬出する
- 共用廊下を100m運ぶ
- 階段しか使えない
では搬出に必要な人数・時間が変わります。
車両台数も確認する
例えば、
4t車 5台
と見積されているなら、なぜ5台を想定しているのか確認できます。
ただし、発注者が外観だけで「3台で十分」と判断するのではなく、廃材量の積算根拠を確認する形にします。
5.廃材の収集運搬・処分費
内装解体では、撤去作業費と廃棄物処理費が別になることがあります。
発生するものには、例えば、
- 木くず
- 石膏ボード
- 金属くず
- ガラス
- 廃プラスチック
- コンクリートがら
- 混合廃棄物
があります。
「解体費」と「処分費」は別物
例えば壁を撤去する場合、
壁を壊す作業費
と
壊した石膏ボード・下地を運搬・処分する費用
は別のコストです。
そのため、解体費が安くても廃材処分費が高ければ、全体では安くなりません。
廃材の種類別に単価が違う場合がある
見積書では、
- 木くず
- 石膏ボード
- 金属
- 混合廃棄物
などを分けて積算することがあります。
単位も、
- t
- ㎥
- 台
- 一式
など会社によって違います。
「廃材処分一式」が大きければ前提を聞く
例えば、
産業廃棄物処分費 一式 80万円
とだけ書かれている場合は、
- 想定量
- 主な廃材種類
- 収集運搬を含むか
- 車両費を含むか
を確認します。
建設廃棄物は適正処理を前提にする
内装解体工事に伴って発生する建設廃棄物では、原則として発注者から直接工事を請け負った元請業者が排出事業者となります。
元請業者には、廃棄物を適正に処理する責任があります。
そのため、廃材処分費が高いからといって、処理責任や必要な許可を無視して単純に安い回収先へ切り替える考え方は避けます。
6.石綿の事前調査・分析・除去関連費
建築物の解体・改修工事では、工事対象となる建材について石綿使用の有無を事前に調査する必要があります。
見積では、
- 石綿事前調査費
- 図面調査費
- 現地調査費
- 検体採取
- 分析費
- 届出・報告関連費
- 石綿除去費
などが計上される場合があります。
事前調査費と除去費は分けて考える
事前調査をした結果、石綿含有建材が確認されない場合もあります。
そのため、
- 事前調査費
- 必要な場合の分析費
- 含有が確認された場合の除去費
が別条件になっている場合があります。
一定規模以上は調査結果の報告も必要
建築物の解体では床面積80㎡以上、改修等では請負代金が一定額以上になる場合など、事前調査結果を行政へ報告する対象があります。
ただし、報告対象に該当しない小規模工事でも、事前調査そのものが不要になるという意味ではありません。
7.現場管理費・諸経費
解体工事では、実際に物を壊す作業員以外にも、
- 工程管理
- 安全管理
- 品質管理
- ビル側との調整
- 作業員管理
などが必要になります。
見積書では、
- 現場管理費
- 現場諸経費
- 一般管理費
- 諸経費
などとして計上される場合があります。
諸経費の率だけでは判断しない
例えば、諸経費が20%だから高い、10%なら安い、と一律に判断することはできません。
何を算定対象にしているか、現場管理費が別なのか、工期がどの程度かで金額は変わります。
大きい金額なら中身を確認する
例えば、
- 現場管理費 40万円
- 諸経費 60万円
と両方ある場合、それぞれ何を含む費用なのか確認します。
複数の管理費があるだけで二重計上と決めず、費用の役割を確認します。
8.清掃・補修・仕上げ費
内装を解体すれば終わりとは限りません。
物件返還時には、
- 撤去後清掃
- 床補修
- 壁補修
- 開口部閉塞
- 配管閉栓
- アンカー跡補修
- 塗装
などが必要になる場合があります。
見積で「解体工事」は安く見えても、返還に必要な補修が含まれていなければ、後から追加になります。
貸主が求める完成状態と照らす
例えばスケルトン返しでも、
- 床は躯体現しでよい
- アンカー穴は補修する
- 配線は一定位置まで撤去する
- ダクト開口は塞ぐ
など、貸主ごとに条件が違います。
契約・貸主指示と見積の完成状態を合わせます。
9.見積外・追加工事となる項目
見積書の「含まれている項目」だけではなく、「含まれていない項目」も確認します。
例えば、
- 石綿除去
- 想定外の二重壁・二重床
- 床下埋設設備
- 追加残置物
- 貸主から追加指示された工事
- 夜間・休日変更
- 想定を超えた廃材
などが別途扱いになっていることがあります。
「別途」は金額ゼロではない
見積書で、
「石綿除去 別途」
「追加廃材 別途」
と書かれている場合、現在の総額には含まれていません。
追加条件が発生した際にどのように再見積するのか確認します。
追加費用についてはART-276「内装解体の追加費用」で詳しく扱います。
内装解体見積で使われる「数量・単位」を読む
見積の内訳を理解するには、数量と単位を見ることが重要です。
㎡
壁・床・天井など面積で計算する工事に使われます。
m
配管・巾木・壁など長さで計算する場合があります。
台・箇所
機器・設備・看板など個数単位で計算します。
人工
作業員1人が一定時間働く作業量を表す考え方です。
特殊作業や数量化しにくい作業で使われることがあります。
t・㎥
廃棄物の重量または容積で使われます。
一式
複数作業をまとめて一つの金額にしている項目です。
「一式」があること自体は問題ではない
内装解体では、すべての作業を㎡や台数で表せるとは限りません。
例えば、
- 準備作業
- 小規模な配線処理
- 細かな補修
などを一式で計上することがあります。
したがって、一式表記があるだけで見積が不適切とはいえません。
金額の大きい一式は内容を確認する
一方、
「解体撤去工事 一式 250万円」
のように見積の大部分が一式になっている場合は、
- 何を撤去するのか
- 設備撤去を含むか
- 廃材処分を含むか
- 養生を含むか
を確認します。
単価が安くても数量が多ければ高くなる
見積を見るとき、「単価が高いか」だけに注目しがちです。
しかし、
単価 × 数量 = 金額
です。
例えば、
A社:1,500円 × 100㎡ = 15万円
B社:1,800円 × 70㎡ = 12万6,000円
なら、単価が高いB社の方が総額は低くなります。
なぜ数量が違うのか確認することが重要です。
相見積もりでは費目を同じカテゴリーに組み替える
各社が同じ項目名で見積を作るわけではありません。
例えば、
A社:養生費
B社:共通仮設費
C社:仮設・搬出準備一式
という場合があります。
相見積もりでは名称だけでなく中身を確認し、
- 仮設・養生
- 解体
- 設備
- 搬出
- 廃材処分
- 石綿
- 管理・諸経費
- 補修
など同じカテゴリーへ組み替えて比較します。
相見積もりについては、内装解体の相見積もりはどう取る?をご覧ください。
高い項目から確認する
すべての数百円・数千円の差を確認するより、金額が大きい項目から見ます。
例えば総額300万円なら、
- 解体工事 100万円
- 廃棄物処分 80万円
- 設備撤去 50万円
といった大きな項目の根拠を確認する方が、全体へ与える影響は大きくなります。
見積が高いと感じる場合の確認方法については、内装解体の見積が高いときは?をご覧ください。
安い見積では「抜けている内訳」を確認する
他社より大幅に安い見積では、単価が安い場合だけでなく、項目そのものが入っていない場合があります。
例えば、
- 廃材処分が別途
- 空調撤去が別途
- 養生が別途
- 石綿調査が別途
- 補修が別途
なら、最終支払額は初期見積より増える可能性があります。
最安値だけで判断せず、物件を返還できる状態まで何が含まれているか確認します。
内装解体の見積内訳チェックリスト
- 貸主が求める返還状態と見積範囲が一致している
- 仮設・養生範囲が分かる
- 壁・床・天井の撤去範囲が分かる
- 設備撤去の範囲が分かる
- 厨房機器等の売却対象を処分見積から外した
- 搬出費・車両費の条件が分かる
- 廃材の種類・量の前提が分かる
- 廃材処分費に何が含まれるか分かる
- 石綿事前調査の扱いを確認した
- 現場管理費・諸経費の内容を確認した
- 撤去後の補修・清掃を確認した
- 数量・単位・単価を確認した
- 金額の大きい一式項目を確認した
- 見積外・別途項目を確認した
- 追加費用の承認方法を確認した
内装解体の見積内訳についてよくある質問
内装解体の見積には何が含まれますか?
一般的には、仮設・養生、内装や造作の撤去、設備撤去、搬出、廃材処理、現場管理・諸経費などが含まれます。石綿調査や補修などが別項目になることもあります。
解体工事費と廃材処分費が別なのは普通ですか?
別に計上される見積はあります。解体作業と、解体で発生した廃材を収集・運搬・処分する作業は別だからです。どこまで含むかを確認してください。
「一式」と書かれた見積は問題ですか?
一式表記自体が問題とは限りません。ただし金額の大きい項目では、対象範囲・数量・含まれる作業を確認すると比較しやすくなります。
廃材処分費はどう確認すればよいですか?
廃材の種類、想定重量・容積・車両台数などの前提を確認します。収集運搬費まで含むのか、処分だけなのかも確認してください。
電気・空調設備の撤去費は解体費に含まれますか?
会社・見積形式によります。内装解体とは別の専門工事として計上されることもあります。特にビル設備につながる工事は指定業者扱いになる場合もあります。
アスベスト調査は内装解体でも必要ですか?
建築物の解体・改修工事では、工事対象材料について石綿使用の有無を事前に調査する必要があります。一定規模以上の工事では調査結果の報告も必要になります。
見積にない追加費用が発生することはありますか?
石綿含有建材、想定外の構造、追加残置物、貸主の追加指示などで追加工事が必要になる場合があります。発注前に「別途」「見積外」となっている条件を確認してください。
相見積もりでは内訳のどこを比較しますか?
まず完成状態と撤去範囲を揃え、そのうえで解体、設備、搬出、廃材処理、養生、管理費、見積外条件を同じカテゴリーへ整理して比較します。
内装解体の見積は「解体・運搬・処分」を分けて読む
内装解体の見積書を見るときは、すべてを「解体費」としてまとめて考えない方が分かりやすくなります。
大きくは、
- 工事するための準備・養生
- 内装・造作を壊す
- 設備を撤去する
- 廃材を店舗から搬出する
- 車両で運搬する
- 廃材を適切に処理する
- 必要な石綿対応を行う
- 現場全体を管理する
- 最後に補修・清掃して返還状態を作る
という工程があります。
それぞれに必要な人員・時間・処理費があるため、見積内訳も複数項目になります。
重要なのは「項目が多いか少ないか」ではなく、必要な作業が漏れなく入り、数量・単価・別途条件を説明できる見積になっているかです。
見積全体のチェック方法については、店舗の解体見積はどこを見る?をご覧ください。
見積金額が高いと感じている場合は、内装解体の見積が高いときは?で見直す順番を整理しています。
店舗・オフィスの撤去・廃棄全体については、撤去・廃棄ガイドをご覧ください。
すでに解体見積を受け取っており、解体作業・設備撤去・廃材処分・管理費のどこが高いのか、複数見積の項目名が違って比較できない場合は、お問い合わせから退去条件と見積状況をご連絡ください。
