原状回復の諸経費が高い?見積で確認する8項目と内訳の見方

店舗やオフィスの原状回復見積を確認していると、工事明細の最後に「諸経費 一式」「現場管理費」「一般管理費」などがあり、想像以上に大きな金額になっていることがあります。

例えば、内装・設備工事そのものが300万円なのに、諸経費としてさらに数十万円が加算されていれば、

「この費用は本当に必要なのか」

「工事費にすでに含まれているのではないか」

「何%なら妥当なのか」

と疑問を持つのは自然です。

ただし、諸経費は単純に施工会社の利益だけを意味するものではありません。

現場を管理する人員、安全管理、工程調整、保険、法定福利費、本社・支店の管理費など、直接の床・壁・設備工事とは別に必要となる費用が含まれている場合があります。

そのため、「諸経費が20%だから高い」「10%なら適正」のように率だけで判断するのではなく、何を含み、何を基準に計算し、他の項目と重複していないかを確認することが重要です。

この記事では、店舗・オフィスの原状回復見積で諸経費が高く見えたときに確認したい8項目を整理します。

見積書全体の読み方については、原状回復の見積書の見方をご覧ください。

目次

原状回復工事の「諸経費」とは何か

原状回復見積に書かれる「諸経費」には、全国共通の一つの定義や書き方があるわけではありません。

施工会社によって、

  • 共通仮設費
  • 現場管理費
  • 一般管理費
  • 会社経費
  • 諸経費
  • 現場諸経費

など名称が異なることがあります。

さらに、それらを細かく分ける会社もあれば、複数の経費をまとめて「諸経費 一式」とする会社もあります。

公共工事では共通費を複数に分けて考える

原状回復工事そのものの料金基準ではありませんが、工事費の構造を理解する参考として、公共建築工事では工事費を細かく区分しています。

代表的には、

  • 直接工事費
  • 共通仮設費
  • 現場管理費
  • 一般管理費等

といった構成です。

直接工事費

材料や施工など、その工事を行うために直接必要となる費用です。

例えば、

  • タイルカーペット撤去・張替え
  • クロス張替え
  • 間仕切り撤去
  • 照明工事
  • 電気設備工事

などがあります。

共通仮設費

工事を行うために共通して必要となる仮設・安全・運搬などの費用です。

例えば、

  • 養生
  • 準備・片付け
  • 安全対策
  • 仮設設備
  • 工事用の運搬

などが該当することがあります。

現場管理費

現場を管理・運営するための費用です。

例えば、

  • 現場監督・管理担当者
  • 工程管理
  • 品質管理
  • 安全管理
  • 労務管理
  • 現場従業員に関係する経費

などです。

一般管理費等

会社そのものを継続して運営し、工事を受注・管理するための本社・支店側の経費や利益などを含む考え方です。

ただし、民間の原状回復見積が、この公共工事の区分どおりに作られているとは限りません。

あくまで、「直接施工以外にも工事を成立させるための経費がある」という構造を理解するための参考です。

諸経費が高いと感じたら確認する8項目

  1. 「諸経費」に何が含まれているか
  2. 何を基準に何%を掛けているか
  3. 共通仮設費・現場管理費・一般管理費との関係
  4. 個別計上された費用と重複していないか
  5. 工事項目の単価側に含まれる経費との関係
  6. 指定業者・管理会社などの管理構造
  7. 現場条件によって経費が増えていないか
  8. 同じ条件の見積と比較する

1.「諸経費」に何が含まれているか確認する

最初に確認したいのは金額ではなく中身です。

例えば、見積書に、

「諸経費 700,000円 一式」

としか書かれていない場合、その70万円が何を含むのか分かりません。

施工会社へ、

  • 現場管理費を含むのか
  • 一般管理費を含むのか
  • 安全管理費を含むのか
  • 運搬・車両費を含むのか
  • 駐車場代を含むのか
  • 保険・法定福利費等を含むのか

を確認します。

「一式」表記だから不適切とは限らない

諸経費は、床材のように「100㎡×単価」で簡単に表現できない費用が多くあります。

そのため、一式で計上されていること自体を問題とする必要はありません。

重要なのは、大きな金額になっている場合に算定の考え方を説明できるかです。

一式見積全般については、原状回復の見積で「一式」と書かれていたら?で整理しています。

2.何を基準に何%を掛けているか確認する

諸経費が率で計算されている場合は、まず「何に対する率なのか」を確認します。

例えば、

  • 直接工事費に対して○%
  • 直接工事費+共通仮設費に対して○%
  • 工事原価全体に対して○%

では、同じ10%でも金額が違います。

率を計算するなら分母を揃える

諸経費率を確認するときは、

諸経費 ÷ 算定対象額 × 100

で確認できます。

ただし、相見積もりでA社とB社の率を比較する場合は、両社が同じ金額を分母にしているか確認する必要があります。

「何%なら適正」という一律の基準はない

民間の店舗・オフィス原状回復工事について、全国共通で、

「諸経費は10%」

「15%を超えたら高すぎる」

と決められているわけではありません。

工事規模、工期、施工時間、管理人数、ビル条件などによって必要な経費は変わります。

小規模工事では率が大きく見えることもある

例えば、現場管理に最低限1人の担当者が必要だとします。

工事総額が1,000万円なら管理費の比率は小さく見えますが、工事総額が100万円なら、同じ管理業務でも比率は大きくなります。

つまり、諸経費率が高いという理由だけで、高額・不適切と判断することはできません。

3.共通仮設費・現場管理費・一般管理費との関係を確認する

見積によっては、

  • 共通仮設費
  • 現場管理費
  • 一般管理費
  • 諸経費

がそれぞれ別項目になっていることがあります。

この場合、

「管理費が4種類あるから全部重複している」

と即断しないようにします。

それぞれ違う種類の経費を表している可能性があるためです。

ただし「最後の諸経費」が何なのかは確認する

例えば、

  • 共通仮設費 20万円
  • 現場管理費 40万円
  • 一般管理費 50万円
  • 諸経費 60万円

となっている場合、最後の60万円が何を表しているのか確認します。

一般管理費とは別の費用なのか、全体管理料なのか、何かをまとめているのかが分からなければ比較できません。

4.個別計上された費用と重複していないか確認する

諸経費に含まれているはずの費用が、別項目にも計上されていないか確認します。

例えば、

  • 養生費
  • 運搬費
  • 駐車場代
  • 交通費
  • 現場管理員費
  • 工事申請費

などです。

これらが個別計上され、さらに「諸経費○%」が掛かっている場合、すぐ二重計上と決めることはできません。

個別費用そのものに対して、別の管理経費が必要になることもあるためです。

ただし、同じ費用を二度請求していないかは確認できます。

確認するときの聞き方

例えば、

「駐車場代は別途実費で計上されていますが、諸経費にも駐車場・交通関係費は含まれていますか」

「現場管理費が別にありますが、諸経費に含まれる管理費とは何が違いますか」

という聞き方をすると整理しやすくなります。

5.工事項目の単価側に含まれる経費との関係を確認する

見積では、各専門工事会社の単価自体に、その会社の経費が含まれている場合があります。

例えば、クロス工事会社の単価には、

  • 材料
  • 施工
  • 専門業者側の管理費

などが含まれている可能性があります。

その上で元請会社が、現場全体を管理するための現場管理費や一般管理費を計上することがあります。

この構造も、直ちに二重計上という意味ではありません。

「専門業者の経費」と「元請の管理費」は別の場合がある

原状回復工事では、

  • 内装
  • 電気
  • 空調
  • 防災
  • 給排水

など複数の専門工事会社が入ることがあります。

元請会社は、各社の施工日程・安全・品質・ビル側調整をまとめて管理します。

そのため、専門業者の価格に経費が含まれていることと、元請側の管理費が存在することは別問題です。

重要なのは、どの階層でどの費用が発生しているかを把握することです。

6.指定業者・管理会社などの管理構造を確認する

オフィスビルの原状回復では、貸主指定業者による施工になっていることがあります。

この場合、実際の専門工事会社との間に、

  • 元請会社
  • 指定施工会社
  • 管理会社
  • 専門工事会社

など複数の関係者が入る場合があります。

それぞれが実際に業務を担っていれば、管理費が発生すること自体は不自然ではありません。

ただし、見積が高い場合は、

  • 誰が現場を管理するのか
  • 誰が施工するのか
  • 管理会社の費用はどこに入っているか
  • 指定業者の管理費はどの項目か

を確認します。

指定業者の原状回復見積が高い場合は、原状回復の指定業者が高いときは?をご覧ください。

7.現場条件によって諸経費が増えていないか確認する

諸経費は、現場条件によって増えることがあります。

例えば、

  • 夜間工事
  • 休日工事
  • 施工可能時間が短い
  • 工期が長い
  • 現場管理員の常駐が必要
  • 大型ビルで申請が多い
  • 複数フロアを施工する
  • 搬出入時間が限定される

といった条件です。

夜間だから単価だけが上がるとは限らない

夜間工事では作業員の労務費だけでなく、

  • 管理担当者
  • 警備・立会い
  • 搬出調整
  • ビル管理との調整

などの費用も増える可能性があります。

見積の諸経費が高い場合は、施工条件による増額がどこに反映されているか確認します。

工期が長いと管理費が増えることがある

例えば、同じ工事量でも10日で完了する案件と1か月かかる案件では、現場を管理する期間が違います。

したがって、工事総額だけではなく工期も確認します。

8.同じ条件の見積と比較する

諸経費が高いか確認する方法として、契約上可能であれば相見積もりがあります。

ただし、

A社:直接工事費へ諸経費をまとめて含む

B社:直接工事費と現場管理費を分ける

C社:共通仮設費・現場管理費・一般管理費をすべて分ける

という場合、見積書の「諸経費」の行だけを比較しても意味がありません。

総額を共通の区分へ組み替える

例えば、各見積を、

  • 直接工事
  • 共通仮設・養生
  • 現場管理
  • 一般管理・会社経費
  • 廃棄・運搬
  • その他

へ整理して比較します。

そのうえで、「どの会社だけ管理系費用が大きいか」を確認します。

相見積もりについては、原状回復の相見積もりはどう取る?をご覧ください。

諸経費率だけを比較すると判断を誤る例

例えば、次のような2社があるとします。

A社
直接工事費 300万円
諸経費 60万円

B社
直接工事費 300万円
共通仮設費 15万円
現場管理費 25万円
一般管理費等 25万円

A社の諸経費は20%に見えます。

B社は「諸経費」という名称自体がありません。

しかし、管理・共通費を合計すると65万円です。

名称だけを見るとA社が高く見えても、実際の工事価格はほぼ同水準です。

このように、諸経費の行だけでは比較できません。

「諸経費20%」だけで高いとは判断できない

見積で諸経費が20%になっていると、大きく感じるかもしれません。

しかし、判断には、

  • 算定対象額
  • 工事規模
  • 工期
  • 施工時間
  • 現場管理体制
  • 諸経費以外の管理費計上

を確認する必要があります。

反対に10%だから必ず適正とも言えません。

直接工事の単価自体が高ければ、諸経費率が低く見えても総額は高くなります。

諸経費が高いときに再見積を依頼する方法

いきなり、

「諸経費を半分にしてください」

と依頼するより、内容を確認してから再見積を依頼します。

例えば、

  • 諸経費の算定対象額を教えてください
  • 現場管理費との違いを教えてください
  • 別途計上されている養生費・車両費との関係を教えてください
  • 管理員常駐が必要な日数を教えてください
  • 工期短縮で管理費を見直せるか確認してください

という形です。

諸経費だけを下げるより工事全体を見直す

原状回復費用を減らしたい場合、諸経費だけを値切るより、

  • 不要な工事を外す
  • 数量を修正する
  • 仕様を見直す
  • 売却できる設備を処分対象から外す
  • 施工時間を調整する
  • 工期を適正化する

方が効果が大きい場合があります。

原状回復費全体の下げ方については、原状回復費用を抑える方法をご覧ください。

必要な管理費まで削らない

原状回復工事でも、安全・工程・品質を管理するための費用は必要です。

近年の建設業では、適正な労務費や法定福利費、安全な施工を確保するための経費を明確にし、適正に確保する方向で制度整備が進んでいます。

そのため、

「直接作業ではない費用だから全部不要」

という考え方にはしません。

必要な経費なのか、金額・計算方法が合理的なのかを確認します。

公共建築工事の率をそのまま民間原状回復へ当てはめない

公共建築工事では、共通仮設費、現場管理費、一般管理費等について積算基準があります。

ただし、公共工事と民間のテナント原状回復では、

  • 契約方法
  • 工期
  • 施工規則
  • 工事規模
  • 指定業者制
  • 夜間作業

などが違います。

したがって、公共工事の率を取り出して、

「国の率より高いから不当」

と直接判断するのは適切ではありません。

公共積算基準は、費用の構成や計算方法を理解する参考として使います。

原状回復の諸経費が高いときのチェックリスト

  • 諸経費に何が含まれるか確認した
  • 算定対象額を確認した
  • 諸経費率を計算した
  • 共通仮設費との違いを確認した
  • 現場管理費との違いを確認した
  • 一般管理費との違いを確認した
  • 個別計上費との重複を確認した
  • 専門工事側の経費との関係を確認した
  • 管理会社・指定業者の役割を確認した
  • 夜間・工期等の施工条件を確認した
  • 追加費用条件を確認した
  • 同条件の見積と比較した

原状回復の諸経費についてよくある質問

原状回復の諸経費は何%が相場ですか?

民間の店舗・オフィス原状回復について、全国共通の適正率が決められているわけではありません。工事規模、工期、施工条件、見積の項目構成によって変わるため、率だけでなく含まれる費用と算定対象額を確認してください。

諸経費20%は高すぎますか?

20%という数字だけでは判断できません。共通仮設費・現場管理費などを諸経費へまとめている場合もあれば、別に計上している場合もあります。何に対する20%なのかも確認する必要があります。

諸経費は施工会社の利益ですか?

利益だけとは限りません。現場管理、安全管理、法定福利費、会社運営に必要な費用などを含む場合があります。具体的な範囲は見積を作成した会社へ確認してください。

現場管理費と一般管理費の両方があれば二重計上ですか?

必ずしも二重計上ではありません。現場管理費は施工現場の管理、一般管理費は本社・支店側の企業管理など、異なる経費として扱われる場合があります。

現場管理費と諸経費が両方ある場合はどうしますか?

それぞれに何が含まれているか確認します。諸経費が現場管理費を含まない別の会社経費なのか、同じ費用が重複しているのかを確認してください。

駐車場代や養生費が別にあるのに諸経費も取られるのはおかしいですか?

自動的におかしいとは言えません。ただし、諸経費に何を含むのかを確認し、同一費用が重複して計上されていないか確認する価値があります。

指定業者の諸経費も確認できますか?

指定業者だから見積内容を確認できないわけではありません。諸経費の算定対象、現場管理費との違い、工期や管理体制などを確認できます。

諸経費を値下げしてもらうことはできますか?

再見積を相談することはできます。ただし、率だけを一律に下げるより、工事範囲、管理日数、施工時間、個別経費の重複などを確認し、条件が変わる部分を再積算してもらう方が合理的です。

諸経費が高いときは「率」より「構造」を確認する

原状回復見積の諸経費を見るときは、単純に何%かだけを確認するのではありません。

確認する順番は、

  1. 何が含まれているか
  2. 何を基準に計算しているか
  3. 共通仮設費・現場管理費・一般管理費との関係
  4. 個別計上費との重複
  5. 専門工事側の経費との関係
  6. 指定業者・管理会社の管理構造
  7. 工期・夜間など施工条件
  8. 同条件の他見積との比較

です。

諸経費には、工事を安全かつ期限内に完成させるために必要な費用も含まれます。

一方、金額が大きいのに算定対象・内容が説明できない場合や、同じ費用が複数箇所に入っているように見える場合は、発注前に確認する価値があります。

「諸経費をゼロにする」のではなく、必要な経費と説明できない経費を分けることが見積精査のポイントです。

原状回復見積全体については、原状回復の見積書の見方をご覧ください。

工事項目ごとの内訳については、原状回復見積の内訳はどこを見る?で整理しています。

原状回復全体については、原状回復ガイドをご覧ください。

すでに見積を受け取っており、諸経費・現場管理費・一般管理費の関係や、どの項目を確認すべきか整理できない場合は、お問い合わせから現在の見積状況をご連絡ください。

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