店舗やオフィスの原状回復見積には、内装解体、床、壁・天井、電気、空調、廃棄物処分、現場管理費など、普段は見慣れない項目が並びます。
見積総額が高いかどうかだけを見ても、どこに費用がかかっているのか、何を確認すべきなのかは分かりません。
原状回復見積を読むときは、工事項目ごとに「何を施工するのか」「数量は何から算出されたのか」「単価には何が含まれているのか」を分けて考えます。
この記事では、店舗・オフィスの原状回復見積に出てきやすい内訳を工種ごとに分け、発注前にどこを見るかを整理します。
見積書全体をどの順番で確認するか分からない場合は、先に原状回復の見積書の見方をご覧ください。
原状回復見積は「工事項目 × 数量 × 単価」で考える
原状回復工事の金額は、一つの坪単価だけで決まるものではありません。
基本的には、さまざまな工事項目の積み上げです。
例えば、
- 間仕切りを何m撤去するのか
- 床を何㎡復旧するのか
- 照明を何台撤去・復旧するのか
- 空調設備を何台処理するのか
- 廃材がどれだけ出るのか
といった数量に、材料費・施工費等が組み合わさります。
さらに、現場管理、共用部養生、搬出入、夜間作業などの間接的な費用が加わる場合があります。
そのため、総額や坪単価だけではなく、どの項目がどのように積み上がっているかを見る必要があります。
内訳を見る前に「その工事が必要か」を確認する
内訳が細かく書かれていても、契約上必要のない工事が含まれていれば意味がありません。
先に、
- 賃貸借契約書
- 原状回復特約
- 工事区分表
- 入居時図面
- 現在の図面
- 入居時写真
などと見積を照合します。
例えば床全面張替えが見積に入っている場合、「床工事の単価が適正か」を見る前に、そもそも今回の契約で全面張替えが必要なのかを確認します。
必要な工事範囲を確定してから、数量・単価へ進みます。
内装解体・間仕切り撤去
オフィスや店舗でよく出てくるのが、借主が設置した造作物の解体です。
例えば、
- 間仕切り壁
- 会議室
- 受付
- カウンター
- 造作家具
- バックヤード
- 厨房区画
などです。
確認するのは、対象範囲と数量です。
間仕切りであれば長さや高さ、造作であれば数量や施工範囲を確認します。
解体工事については、
- 解体だけなのか
- 搬出まで含むのか
- 廃棄物処分まで含むのか
- 解体後の下地補修まで含むのか
も確認します。
「解体」と「搬出」「処分」「復旧」が別項目になっていることもあるため、見積名称だけを見て重複と判断しないようにします。
床工事
床は原状回復費用の中でも金額が大きくなりやすい項目です。
オフィスでは、
- タイルカーペット
- OAフロア
- 長尺シート
などがあります。
店舗では、
- フロアタイル
- 塩ビシート
- 木質系床材
- モルタル
- 厨房床
など、使用されている仕上げ材が多様です。
床工事を見るときは、
- 対象面積
- 既存床材の撤去
- 下地処理
- 新しい床材
- 施工費
- 廃材処分
のどこまでを含むか確認します。
特に「床○○㎡」という数量が、そのまま賃貸面積と一致するとは限りません。
施工範囲を図面と照合します。
壁・天井工事
壁や天井では、
- クロス貼替え
- 塗装
- 石膏ボード補修
- 天井材交換
などが見積に入ります。
確認するのは対象面積です。
床面積と壁面積は別物なので、「100㎡の事務所だから壁も100㎡程度だろう」とは判断できません。
壁面積は、壁の長さと天井高によって変わります。
また、ドアや窓などの開口部をどう扱っているかによって数量が変わることもあります。
全面施工になっている場合は、契約上どの範囲まで復旧する必要があるのかも確認します。
建具・ドア・造作
借主側で、
- ドア
- ガラス間仕切り
- 造作収納
- 受付カウンター
などを設置している場合、その撤去や復旧費が入ることがあります。
一方で、入居前から存在する建具まで撤去対象になっていないか確認します。
見積名称が「建具工事一式」になっている場合は、対象となる建具の数や場所を確認します。
電気・照明工事
原状回復では、入居後に変更した電気設備を元に戻す工事が発生することがあります。
例えば、
- 照明器具
- コンセント
- スイッチ
- 電源回路
- 分電盤
- 配線
- LAN・弱電配線
などです。
確認したいのは、何を増設・変更したのかと、今回どこまで撤去・復旧するのかです。
数量であれば、
- 器具台数
- 回路数
- コンセント数
- 配線距離
などが判断材料になります。
電気工事は「一式」とまとめられることも多いため、金額が大きい場合は主要な作業内容と数量を確認します。
空調・換気工事
空調工事では、
- 空調機器
- 吹出口
- 吸込口
- ダクト
- 冷媒配管
- ドレン配管
- 換気設備
- 制御設備
などが関係します。
特にオフィスビルでは、建物側の空調設備に接続している部分がB工事になっている場合があります。
そのため、原状回復見積の中でも、
- 借主側工事なのか
- B工事なのか
- 別見積なのか
を確認します。
見積総額だけを比較していると、片方はB工事を含み、もう片方は含んでいないということもあります。
給排水工事
飲食店、美容室、クリニックなどでは、給排水設備の工事が大きくなることがあります。
例えば、
- 給水管
- 排水管
- シンク
- 厨房設備接続
- 洗面設備
- 給湯設備
などです。
原状回復時には、設備を撤去するだけではなく、残す配管を安全な状態に処理する工事が必要になる場合があります。
確認したいのは、
- 撤去対象
- 配管距離
- 接続箇所
- 閉栓・止水処理
- 床や壁の復旧
まで含むかです。
消防・防災設備工事
間仕切りやレイアウトを変更していた場合、消防・防災設備も移設・増設されていることがあります。
例えば、
- スプリンクラーヘッド
- 煙感知器
- 熱感知器
- 非常照明
- 誘導灯
などです。
原状回復時には、入居時の配置へ戻す工事が必要になる場合があります。
数量だけではなく、建物側設備との接続や検査・確認まで含むかを確認します。
サイン・看板工事
店舗では、看板やサインの撤去も原状回復費用へ入ることがあります。
- 外壁看板
- 袖看板
- 入口サイン
- ウインドウシート
- 館内サイン
などです。
撤去だけでなく、
- ビス穴補修
- 外壁補修
- 配線撤去
- 塗装
まで必要になる場合があります。
「看板撤去一式」の場合は、撤去後の補修まで含むか確認します。
廃棄物の搬出・運搬・処分
原状回復工事では、多くの廃棄物が発生します。
例えば、
- 石膏ボード
- 床材
- 木材
- 金属
- ガラス
- 断熱材
- 設備部材
などです。
見積では、
- 場内搬出
- 積込
- 運搬
- 処分
が別項目になっている場合も、まとめられている場合もあります。
確認したいのは、何の廃棄物を、どの程度の量で見積もっているかです。
「廃材処分一式」と大きな金額になっている場合は、主な廃棄物の種類と数量の根拠を確認します。
仮設・養生工事
実際の原状回復工事とは別に、施工するための準備費用が発生します。
例えば、
- 共用廊下の養生
- エレベーター養生
- 搬出経路の養生
- 仮設電源
- 仮設照明
- 防塵・防音対策
などです。
大型ビルや商業施設では、建物側のルールによって養生方法が指定されていることもあります。
そのため、一般的な小規模店舗の工事と単純に比較できない部分です。
クリーニング
工事完了後の清掃費用も原状回復見積に入ることがあります。
確認したいのは、通常の工事後清掃なのか、契約上求められる特別な清掃まで含むのかです。
例えば、
- 床清掃
- ガラス清掃
- 設備清掃
- 厨房清掃
- 空調清掃
では作業内容が異なります。
「クリーニング一式」となっている場合は、対象範囲を確認します。
現場管理費
原状回復工事では、職人が作業する直接工事費だけでなく、工事全体を管理する費用が発生します。
例えば、
- 工程管理
- 安全管理
- 品質管理
- 各工事会社との調整
- ビル管理会社との調整
- 現場確認
- 検査対応
などです。
現場管理費が入っているから不当というわけではありません。
ただし、金額が大きい場合は、何の管理業務を含むのか、他の「管理費」「諸経費」と役割が重複していないかを確認します。
諸経費
見積の最後に「諸経費」が計上されることがあります。
諸経費の内容は会社や案件によって異なり、
- 書類作成
- 交通・通信
- 各種手配
- 会社運営に必要な間接費
などが含まれる場合があります。
こちらも存在すること自体を問題視するのではなく、現場管理費や他の共通費用との違いを確認します。
店舗ではオフィスにない内訳が増えやすい
店舗では、業態によって原状回復工事の内容が大きく変わります。
特に飲食店では、
- 厨房設備
- 排気ダクト
- グリストラップ
- 給排水設備
- ガス設備
- 厨房床
- 防水
などが関係します。
美容室では、シャンプー設備、給排水、給湯設備などが加わります。
そのため、「50坪だからオフィスと同程度」という比較はできません。
業態特有の設備をどこまで撤去・復旧するのかを確認します。
数量は図面と現況から確認する
内訳が分かっても、数量が正しいとは限りません。
例えば、
- 床面積
- 壁面積
- 間仕切り延長
- 照明台数
- 空調台数
- 配管距離
などは、図面や現況から確認できる場合があります。
数量に疑問があれば、
「この150㎡はどの施工範囲から算出していますか」
「照明器具30台の対象位置を図面で確認できますか」
といった形で確認します。
単価だけをネット相場と比較しない
工事項目と数量が分かると、次に単価を比較したくなります。
ただし、同じ工事項目でも、
- 施工時間
- 建物グレード
- 搬入条件
- 養生条件
- 指定材料
- 工期
- 設備との接続条件
によって単価は変わります。
インターネット上の単価表は、違和感のある項目を探す参考にはなりますが、それだけで適正・不適正を決める材料にはしません。
同じ費用が二重に入っていないか確認する
見積項目が多くなると、似た名称の費用が複数現れることがあります。
例えば、
- 解体工事費
- 廃材搬出費
- 廃棄物処分費
は、それぞれ別作業である可能性があります。
また、
- 現場管理費
- 施工管理費
- 諸経費
も役割が異なる場合があります。
名称が似ているだけで二重計上と判断せず、各項目に何が含まれているかを確認します。
逆に、同じ作業が複数項目に含まれていることが確認できた場合は、再積算を依頼します。
見積に入っていない工事も確認する
原状回復見積で重要なのは、記載されている内訳だけではありません。
次のような表現も確認します。
- 別途
- 見積外
- 含まず
- 実費精算
- 現場確認後
- 追加協議
例えば、B工事、夜間工事、廃棄物処分、消防工事などが別途なら、現在の見積総額が最終金額ではありません。
工事項目の内訳と同時に、見積外項目も一覧にします。
内訳が分かった後に相見積もりを取る
他社見積と比較するときも、内訳を分解できていることが前提です。
A社は、
- 解体
- 処分
- 養生
- 夜間作業
まで含んで500万円。
B社は、解体・内装復旧だけで400万円という場合、総額だけでは比較できません。
同じ工事項目、同じ数量、同じ仕様、同じ施工条件へ揃えて比較します。
具体的な相見積もりの取り方は、次の記事で詳しく解説します。
原状回復見積の内訳についてよくある質問
原状回復費用には何が含まれますか?
物件や契約によって異なりますが、内装解体、床・壁・天井、電気、空調、給排水、防災設備、廃棄物処分、仮設・養生、クリーニング、現場管理、諸経費などが含まれることがあります。
内訳をもっと細かく出してもらえますか?
施工範囲、数量、仕様など、発注判断に必要な情報について説明を求めることはできます。何を確認したいのか具体的に伝えると進めやすくなります。
見積の数量が正しいかどう確認しますか?
床・壁面積、間仕切り、設備台数など、図面や現況と照合できる項目は確認します。算定根拠が分からない場合は、施工会社へ対象範囲を確認します。
単価が相場より高ければ不適切ですか?
単価だけでは判断できません。夜間工事、指定材料、搬入制限、建物設備との接続など、施工条件が異なれば価格も変わります。
解体費と廃棄物処分費が両方あるのは二重計上ですか?
必ずしも二重ではありません。解体作業と、撤去した廃棄物の運搬・処分は別工程です。各項目に含まれる作業を確認してください。
B工事費も原状回復見積に含まれますか?
物件によります。原状回復見積へ含まれている場合も、ビル指定業者から別見積として提示される場合もあります。総額比較をするときはB工事を含むか確認します。
内訳を確認したら次は何をすればよいですか?
必要な工事範囲、数量、仕様に疑問がなければ発注判断へ進みます。比較したい場合は、同じ条件を整理したうえで相見積もりを取ります。
原状回復見積は「項目名」だけでなく数量の根拠まで見る
店舗・オフィスの原状回復見積では、主に、
- 内装解体
- 床
- 壁・天井
- 電気・照明
- 空調・換気
- 給排水
- 消防・防災
- 廃棄物
- 仮設・養生
- クリーニング
- 現場管理費
- 諸経費
などを分けて確認します。
重要なのは項目名を理解することだけではありません。
何を施工するのか、数量は何から算出されたのか、単価には何が含まれるのか、見積外の費用はないかまで確認できると、発注判断や他社比較がしやすくなります。
「一式」と書かれていて内訳そのものを確認できない場合は、原状回復の見積で「一式」と書かれていたら?をご覧ください。
見積書全体の確認順序については、原状回復の見積書の見方で整理しています。
原状回復工事全体の進め方については、店舗・オフィスの原状回復ガイドをご覧ください。
すでに原状回復見積を受け取っており、自社だけでは工事範囲・数量・設備工事の内訳を判断できない場合は、お問い合わせから現在の状況をご連絡ください。
