原状回復の見積書を見ると、「坪単価」「㎡単価」「m単価」「台単価」「一式」など、複数の単位が混在しています。
このとき、総額だけを見て「高い・安い」と判断すると、比較を誤りやすくなります。
例えば同じ50坪の物件でも、壁紙は㎡、巾木はm、照明は台、養生や現場管理は一式で計上されることがあります。さらに、店舗とオフィスでは設備量や返還条件が違うため、同じ坪単価でも工事内容が同じとは限りません。
この記事では、坪単価・㎡単価の換算、工事項目ごとの単位の読み方、「一式」表記の確認方法、単価比較で見落としやすいポイントを整理します。
原状回復費用全体の考え方は店舗・オフィスの原状回復費用を先に確認してください。
坪単価と㎡単価は何を表している?
原状回復で使われる「坪単価」は、一般に工事総額を賃貸面積の坪数で割った参考値です。
坪単価 = 原状回復工事費 ÷ 賃貸面積(坪)
一方、「㎡単価」は、工事項目ごとの施工面積や、物件全体の面積を平方メートルで割って表す場合があります。
㎡単価 = 対象工事費 ÷ 対象面積(㎡)
ただし、同じ「㎡単価」でも、
- 物件全体の総工事費を床面積で割った単価
- クロス張替え部分だけの施工単価
- 床材撤去部分だけの施工単価
では意味が違います。
単価を見る前に、何の数量で割った単価なのかを確認してください。
1坪は何㎡?坪と㎡の換算方法
1坪は約3.306㎡です。
反対に、1㎡は約0.3025坪です。
| 換算 | 式 |
|---|---|
| 坪 → ㎡ | 坪数 × 約3.306 |
| ㎡ → 坪 | ㎡数 × 約0.3025 |
例えば100㎡のオフィスは、約30.25坪です。
50坪の店舗は、約165.3㎡です。
ただし、賃貸借契約の面積表示と、実際にクロスや床を施工する面積は同じではありません。
床面積100㎡の物件でも、壁紙の施工面積は壁の高さ・間仕切り数によって100㎡を大きく超えることがあります。
「坪単価10万円」と「クロス㎡単価」は同じ種類の単価ではない
| 単価 | 主な用途 | 比較時の注意 |
|---|---|---|
| 坪単価 | 原状回復総額の大まかな比較 | 工事範囲・用途・設備条件が同じか確認 |
| ㎡単価 | クロス、床、塗装、解体面積等 | 材料・下地・撤去・処分を含むか確認 |
| m単価 | 巾木、配線、配管等 | 総延長と施工条件を確認 |
| 台単価 | 照明、空調、設備機器等 | 撤去のみか復旧・処分込みか確認 |
| 箇所単価 | コンセント、感知器、補修等 | 1箇所の作業範囲を確認 |
| 一式 | 仮設、養生、管理、複合工事等 | 数量・範囲が見えにくいため内訳確認 |
「坪単価が安いから、クロスや床の単価も安い」という関係ではありません。
坪単価は複数工事をまとめた結果であり、個々の工事項目は別の単位で積算されます。
坪単価はどう計算する?
例えば、原状回復工事の見積総額が600万円、賃貸面積が60坪なら、単純計算では坪10万円です。
600万円 ÷ 60坪 = 10万円/坪
ただし、不要什器の処分、空調・電気・防災のB工事、夜間・休日工事、共用部養生、廃棄物処理、現場管理費、諸経費などが見積に含まれているかで単価の意味は変わります。
他社事例と比較するときは、「総額に何が含まれているか」をそろえてください。
㎡単価は「数量×単価」で確認する
工事項目金額 = 数量 × 単価
例えば、クロス張替えが300㎡、単価が1,800円/㎡なら、単純計算では54万円です。
ここで確認するのは、単価だけではありません。
- 300㎡という数量が現況に合っているか
- 既存クロス撤去を含むか
- 下地補修を含むか
- 材料費を含むか
- 廃材処分を含むか
- 夜間施工等の割増を含むか
同じ1,800円/㎡でも、含まれる作業が違えば比較できません。
クロスの㎡単価を見るポイント
- 既存クロス剥がしの有無
- 下地パテ処理の量
- 材料グレード
- 天井面を含むか
- 高所作業の有無
- 夜間施工
壁面積は床面積と一致しません。床面積からクロス施工面積を単純に推測しないようにしてください。
床工事の㎡単価を見るポイント
- タイルカーペット
- 長尺シート
- フロアタイル
- 塩ビタイル
- 既存床材撤去
- 接着剤除去
- 下地補修
「床張替え○円/㎡」とだけ書かれていても、既存床の撤去・処分・下地補修が別項目なら、実質的な㎡単価は高くなります。
解体工事は㎡単価だけでは比較しにくい
間仕切りや造作の解体は、同じ面積でも構造によって作業量が違います。
- 軽量鉄骨+石膏ボード
- ガラスパーティション
- 造作壁
- 厨房区画
- 防音壁
撤去対象の仕様と、搬出・廃棄まで含むかをそろえて比較します。
電気・空調・防災は「台」「箇所」「一式」が増えやすい
- 照明器具:台
- コンセント:箇所
- 感知器:個・箇所
- 空調機:台
- 配線:m
- 盤改修:面・一式
特にB工事では、内装見積とは別に設備工事が計上される場合があります。
原状回復全体の坪単価だけでは、設備工事が高いのか内装工事が高いのか分からないため、工事項目別に分解します。
「一式」表記は高いという意味ではない
見積書の「一式」は、それだけで不適切な見積という意味ではありません。
現場管理、申請・調整、小規模な複合作業、仮設、清掃などでは、一式計上が合理的な場合があります。
一方で、金額が大きい工事項目まで一式だけで記載されていると、数量・仕様・対象範囲を比較しにくくなります。
- 何を含む一式か
- 対象範囲
- 数量の根拠
- 別項目との重複がないか
を確認してください。
詳しくは原状回復見積の「一式」表記を確認してください。
坪単価を相場表へ当てはめるだけでは危険な理由
2026年の公開情報でも、オフィスや店舗の原状回復坪単価には大きな幅があります。
RCAA協会は、指定業者の初回提示額について中央値10万〜12万円/坪という取扱実績を公開し、査定後に当事者が合意した金額の中央値を5.8万〜7万円/坪としています。
また、店舗については、物販・小売で2万〜6万円/坪、美容室・サロンで3万〜8万円/坪、重飲食で5万〜12万円/坪などの公開例があります。
しかし、これらの数値は対象物件・工事内容・見積段階が異なります。
「自社は坪12万円だから高すぎる」「坪5万円だから適正」と単価だけで判断することはできません。
総費用の相場・増減要因は原状回復費用の相場と内訳を確認してください。
店舗とオフィスの坪単価は直接比較しない
オフィス
パーティション、OAフロア、照明、空調、防災、LAN・電源、基準階仕様などが費用差の中心になります。
オフィス専用の費用はオフィスの原状回復費用を確認してください。
店舗
店舗は業態による差が大きく、飲食店なら厨房・給排水・ガス・排気・防水、美容室なら給排水や設備、物販なら什器・造作・看板などが影響します。
店舗専用の費用は店舗の原状回復費用を確認してください。
同じ坪数でも総額が違う5つの理由
- 返還範囲が違う:スケルトン、基準階仕様、入居時戻しなど
- 造作量が違う:間仕切り、厨房、受付、造作家具等
- 設備量が違う:空調・防災・電気・給排水等
- 施工条件が違う:夜間、搬出、養生、短工期等
- 見積に含む費目が違う:B工事、廃棄、諸経費等
見積の単価を比較するときの7ステップ
- 工事範囲をそろえる
- 数量を確認する
- 単位を確認する
- 材料・仕様をそろえる
- 撤去・処分・下地補修を含むか確認する
- B工事・指定工事との重複を確認する
- 管理費・諸経費を含む総額でも比較する
単価だけを横一列にして最安値を選ぶのではなく、数量×単価×工事範囲で比較します。
相見積もりでは単価表より「比較条件表」を作る
| 比較項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| クロス施工面積 | 確認 | 確認 |
| 床撤去面積 | 確認 | 確認 |
| 下地補修 | 含む/別 | 含む/別 |
| 廃材処分 | 含む/別 | 含む/別 |
| 設備復旧 | 含む/別 | 含む/別 |
| 夜間作業 | 含む/別 | 含む/別 |
| 管理・諸経費 | 確認 | 確認 |
条件がそろっていなければ、単価差がそのまま価格競争力の差とはいえません。
㎡単価が安ければ総額も安いとは限らない
単価が安くても、数量が多く計上されていれば総額は高くなります。
反対に、㎡単価が高めでも、必要な工事範囲だけに絞られていれば総額が抑えられることがあります。
数量 × 単価 = 金額
の3点をセットで確認してください。
原状回復の坪単価・㎡単価FAQ
原状回復の坪単価はいくらですか?
用途・契約・工事範囲によって大きく変わります。2026年の公開情報でも、オフィス・店舗とも広いレンジが示されているため、全国一律の標準坪単価としては扱えません。
1坪は何㎡ですか?
1坪は約3.306㎡です。1㎡は約0.3025坪です。
坪単価を㎡単価へ換算できますか?
物件全体の面積単価として換算することはできますが、クロスや床など工事項目の㎡単価とは意味が異なります。単純に置き換えないでください。
見積の㎡単価が相場より高ければ不当ですか?
単価だけでは判断できません。材料、下地、撤去、処分、夜間作業など、単価に含まれる作業範囲を確認してください。
「一式」と書いてある項目は分解してもらえますか?
金額が大きい項目や比較に必要な項目では、対象範囲や数量根拠を確認すると判断しやすくなります。ただし、現場管理など一式計上が合理的な項目もあります。
坪単価と平米単価のどちらで比較すべきですか?
物件全体の概算は坪単価、工事項目ごとの積算は㎡・m・台・箇所など、見積で実際に使われている単位で確認するのが適しています。
指定業者の単価が高い場合はどうしますか?
まず契約・工事区分を確認し、数量・仕様・施工条件・諸経費を分解します。指定業者であることだけを理由に高い・不当とは判断しないでください。
単価表より「数量・単位・含まれる作業」を確認する
原状回復見積で坪単価・㎡単価を見る目的は、最安値を探すことではありません。
数量 → 単位 → 単価 → 含まれる作業 → 総額
の順で確認し、見積が実際の施工範囲と一致しているかを見ることが重要です。
総費用全体は原状回復費用、見積書全体の読み方は原状回復見積書の見方、費目別の詳細は原状回復見積の内訳もあわせて確認してください。
坪単価・㎡単価だけでは見積の妥当性を判断しにくい場合は、お問い合わせから相談できます。
