オフィスの内装解体はどう進める?原状回復との違いと発注前の8項目

オフィスの移転・退去では、間仕切り、床、天井、造作、配線などを撤去する「内装解体」が必要になることがあります。

ただし、オフィスを退去するからといって、必ず室内をすべてスケルトン状態まで解体するわけではありません。

どこまで撤去するかは、賃貸借契約、原状回復特約、入居時の状態、ビルの工事区分、貸主・管理会社との合意によって変わります。

必要範囲を確認せずに解体を発注すると、本来残してよかった設備まで撤去したり、反対に貸主が求める復旧工事が見積から漏れたりする可能性があります。

オフィスの内装解体では、先に「何を壊すか」を決めるのではなく、「どの状態まで戻して返すか」を確定してから解体範囲を決めることが重要です。

目次

オフィスの内装解体とは?原状回復との違い

内装解体と原状回復は、同じ意味ではありません。

項目 主な内容
内装解体 間仕切り、床材、天井材、造作、設備等を撤去する工事
スケルトン工事 構造体等を残し、内装・設備を大きく撤去して躯体に近い状態へ戻す工事
原状回復 賃貸借契約等で定められた返還状態へ戻す一連の工事

原状回復には、解体だけでなく、補修、塗装、床・天井の復旧、設備調整、清掃などが含まれることがあります。

つまり、内装解体は原状回復を構成する工事の一部になる場合があります。

逆に、内装変更がほとんどないオフィスであれば、大規模な解体を行わず、床・壁・設備の復旧だけで返還できることもあります。

オフィス原状回復全体の費用については、オフィスの原状回復費用で分けて解説しています。

「スケルトン返し」と言われても、撤去範囲を具体化する

契約書や貸主から「スケルトン返し」と言われた場合でも、その言葉だけで施工会社へ「全部撤去してください」と発注しない方が安全です。

実際には、物件によって、

  • 床仕上げまで撤去するか
  • OAフロアを残すか
  • 天井を撤去するか
  • 照明を残すか
  • 空調設備を残すか
  • 防災設備を残すか
  • 配線・配管をどこまで撤去するか
  • 貸主設置設備を残すか

などが異なります。

「スケルトン」という言葉のイメージではなく、返還図面や工事仕様書を使って撤去範囲を確定してください。

オフィス内装解体を発注する前に確認する8項目

1.賃貸借契約と原状回復範囲を確認する

最初に確認するのは解体業者ではなく、賃貸借契約です。

確認する資料には、

  • 賃貸借契約書
  • 原状回復特約
  • 入居工事資料
  • 入居時図面
  • 工事区分表
  • 退去工事仕様書
  • 貸主・管理会社からの退去案内

などがあります。

特に、入居時に借主が設置した物と、もともと建物に存在した物を分けます。

たとえば、

  • 会議室の間仕切り
  • 造作受付
  • 追加した照明
  • 床仕上げ
  • 専用配線
  • 追加空調

などです。

一方、貸主所有の空調、防災設備、OAフロア等を借主判断で撤去すると、復旧費が発生する可能性があります。

事業用オフィスでは契約・特約・物件ごとの返還条件の確認を優先し、住宅用の原状回復ルールをそのまま当てはめないようにします。

2.指定業者・A工事・B工事・C工事を確認する

オフィスビルでは、工事内容によって施工会社が指定される場合があります。

実務ではA工事・B工事・C工事という区分が使われることがあります。

ただし、これは全国一律に内容が決まった法定分類ではありません。

実際の区分はビルの工事区分表や管理ルールを確認します。

一般的には、

  • 貸主側が費用・施工とも負担する工事
  • 借主負担だが貸主指定会社が施工する工事
  • 借主が施工会社を手配できる工事

などに分けられます。

たとえば内装間仕切りは借主業者で撤去できても、空調・防災・電気設備の一部は指定会社しか施工できない場合があります。

解体業者を探す前に、今回の工事を自社で発注できる範囲か確認します。

B工事・指定業者の基本は、B工事とは?も参照してください。

3.部分解体かスケルトン工事かを決める

内装解体の範囲は、大きく分けると部分撤去と全面的なスケルトン工事があります。

工事
部分解体 間仕切り、造作受付、追加床、特定設備等のみ撤去
広範囲の内装解体 借主施工部分を広く撤去
スケルトン工事 壁・床・天井・設備等を大きく撤去し躯体に近い状態へ戻す

必要以上に解体範囲を広げれば、解体作業費だけでなく、搬出、廃材処理、補修、設備復旧なども増えます。

反対に、必要範囲を残せば貸主検査で追加撤去を求められる可能性があります。

見積前に貸主・管理会社と現地を確認し、撤去範囲を図面や写真で明確にしておきます。

4.家具・OA機器・残置物を先に仕分ける

内装解体工事の開始時点で、大量のデスク、チェア、書庫、PC、複合機等が残っていると、工事を進めにくくなります。

そのため、基本的には、

  1. 新オフィスへ移転する物
  2. リース・レンタルで返却する物
  3. 買取へ出す物
  4. 廃棄する物
  5. 貸主承認のうえ残す物

に分けてから解体へ進みます。

オフィス家具やOA機器を「解体工事の廃材」として一括処理する前に、所有権・資産管理・データ処理も確認してください。

閉鎖準備段階の仕分けは、オフィスの不用品処分、最終的に室内へ残った物の撤去はオフィスの残置物撤去で詳しく整理しています。

5.図面・配線・配管・設備の撤去範囲を確認する

オフィス解体では、目に見える壁や床だけでなく、天井裏・床下の設備が関係します。

たとえば、

  • 電源配線
  • LAN・通信配線
  • 電話配線
  • 空調ダクト
  • 給排水
  • 照明
  • 火災報知設備
  • スプリンクラー
  • セキュリティ設備

などです。

単純にケーブルを切ったり、天井設備を撤去したりすると、他テナントや共用設備へ影響する可能性があります。

また、床下配線が大量に残っている、間仕切り移設に伴って防災設備も変更している、といったオフィスでは工事範囲が広がります。

入居時の工事図面、竣工図、設備図があれば、現地調査時に施工会社へ共有します。

6.石綿の事前調査を工事前に行う

オフィス内装解体では、床材、天井材、壁材、下地材など既存建材へ手を加えることがあります。

解体・改修工事を行う場合は、工事の規模の大小にかかわらず、原則として対象部分の材料について石綿含有の有無を事前調査する必要があります。

一定規模以上の工事については、事前調査結果の行政報告も必要です。

ここで注意したいのは、行政への報告基準と、事前調査そのものの必要性を混同しないことです。

小規模なオフィスだから自動的に石綿調査が不要になるわけではありません。

見積時には、

  • 書面調査
  • 現地・目視調査
  • 必要に応じた分析調査
  • 調査報告書
  • 石綿含有時の工事方法

を確認します。

詳しくは、内装解体・原状回復のアスベスト事前調査を確認してください。

7.見積は解体費だけでなく周辺費用まで確認する

「内装解体工事100万円」という総額だけでは、何が含まれているか判断できません。

オフィス内装解体では、たとえば次の項目を確認します。

見積項目 確認内容
解体作業 壁・床・天井・造作等の範囲
設備撤去 電気・空調・防災・給排水等
養生 共用廊下・EV・床・壁等
搬出 人員、階数、EV、搬出距離
車両 台数・駐車・荷捌き条件
廃材処理 種類・数量・運搬・処分
石綿 調査・分析・含有時の対応
夜間・休日 ビル指定時間による割増等
追加工事 何が別途になるか
清掃・検査 工事後清掃、貸主検査、是正範囲

公開されている坪単価・平米単価には幅があり、オフィスの規模、解体範囲、階数、設備量、搬出条件、夜間工事、廃材量などによって大きく変わります。

そのため、インターネット上の単価をそのまま自社の総額へ掛けるより、今回の返還範囲に合わせた現地見積を取ります。

内装解体見積の内訳は、内装解体の見積内訳、着工後の増額については内装解体の追加費用も参照してください。

8.搬出・解体・貸主検査まで一つの工程にする

内装解体工事だけの日程を組んでも、オフィス退去全体は完了しません。

実際には、

  1. 社員・業務機能の移転
  2. 家具・OA機器の移転
  3. リース品返却
  4. 買取・不用品撤去
  5. 石綿事前調査
  6. 内装解体
  7. 設備・原状回復工事
  8. 清掃
  9. 貸主・管理会社検査
  10. 是正工事
  11. 鍵返却・明渡し

という工程になります。

内装解体が完了した日を退去完了日と考えず、貸主検査と是正期間まで含めて明渡期限から逆算します。

オフィス内装解体の費用を左右する主な条件

オフィス内装解体の費用は面積だけでは決まりません。

主な変動要因は次のとおりです。

  • 施工面積
  • 部分撤去かスケルトンか
  • 間仕切り・造作量
  • 床・天井の仕様
  • 設備撤去量
  • 廃材の種類・量
  • 階数
  • 貨物用エレベーターの有無
  • 搬出距離
  • 養生範囲
  • ビルの作業可能時間
  • 夜間・休日作業
  • 短納期対応
  • 石綿調査・除去
  • 残置物の有無

同じ50坪のオフィスでも、間仕切りが少なく床・天井を残せるオフィスと、造作会議室や設備を広く撤去するオフィスでは工事内容が違います。

坪数だけで見積を比較せず、施工範囲と条件をそろえてください。

オフィス内装解体の見積で特に見る5項目

撤去範囲が図面・数量で分かるか

「内装解体一式」だけでは、比較しにくくなります。

間仕切り、床、天井、造作、設備などの範囲を確認します。

廃材処理まで含まれているか

解体した材料を現場から搬出し、適切に処理する費用が含まれているか確認します。

養生・搬出費が含まれているか

オフィスビルでは共用部養生や貨物EVの利用条件が工数へ影響します。

石綿事前調査が計上されているか

対象工事で必要な事前調査を、見積から抜いたまま価格だけを比較しないようにします。

追加料金になる条件が書かれているか

隠蔽部、残置物増加、数量精算、夜間工事、貸主追加指示など、何が別途になるか確認します。

内装解体業者を選ぶ前に「自社で選べるか」を確認する

オフィスでは、価格や施工実績を比較する前に、借主側で施工会社を選べる工事なのか確認します。

貸主指定会社・B工事に該当する部分であれば、借主が自由に別の施工会社へ発注できない場合があります。

一方、借主側で選定できる工事なら、次のような項目を比較します。

  • 事業用オフィスの施工実績
  • 現地調査の精度
  • ビル工事ルールへの対応
  • 見積の範囲・内訳
  • 石綿事前調査への対応
  • 廃棄物処理体制
  • 安全・施工管理
  • 貸主検査・是正対応
  • 追加費用条件
  • 明渡期限に合わせた工程管理

オフィス原状回復会社全体の選定は、オフィスの原状回復業者の選び方も参照してください。

解体工事から出る廃材は適正な処理ルートを確認する

内装解体によって、石膏ボード、金属、ガラス、木材、床材などの建設廃棄物が発生します。

建設工事に伴って発生する廃棄物については、原則として発注者から工事を直接請け負った元請業者が排出事業者となり、適正処理を行う責任を負います。

そのため、発注者側でも、見積に廃材処理が含まれているか、誰が元請として施工・廃棄物管理を行うのか確認しておくとよいでしょう。

価格だけを下げるため、処理ルートが不明な会社へ廃材処分だけを任せることは避けます。

家具・PCと解体廃材を同じ扱いにしない

解体工事で発生した建設廃棄物と、工事前からオフィスに存在していたデスク、PC、書類等は分けて考えます。

PC等にはデータ処理が必要になる場合があり、リース家具には返却契約が残っている場合があります。

原状回復を一社へまとめて発注する場合でも、

  • 家具・OA機器
  • 残置物
  • 建設工事から発生する廃材

をどのように仕分けて処理するか確認してください。

オフィス内装解体についてよくある質問

オフィスを退去するときは必ずスケルトンにする必要がありますか?

必ずではありません。

賃貸借契約、特約、入居時の状態、貸主との合意によって返還状態は変わります。

スケルトン返しが必要なのか、借主施工部分だけ撤去すればよいのか確認してください。

パーティションとカーペットだけ撤去することもできますか?

契約上の返還状態がその範囲で足りるなら、部分解体で済む場合があります。

施工会社だけで判断せず、貸主・管理会社と撤去範囲を確定してください。

B工事を自社で選んだ解体業者へ頼めますか?

一律には言えません。

A・B・C工事の区分や施工会社の指定は物件ごとに異なります。

今回のビルの工事区分表・管理規則を確認してください。

家具・OA機器の処分も解体業者へ任せられますか?

一括対応する会社はあります。

ただし、リース・レンタル品、データ保持機器、買取可能品などは解体廃材とは分けて管理します。

小さなオフィスでもアスベスト事前調査は必要ですか?

工事の規模が小さいことだけを理由に、事前調査自体が不要になるわけではありません。

解体・改修対象部分の材料について工事前に事前調査を行います。

一定規模以上の場合に必要となる行政への調査結果報告とは分けて考えてください。

内装解体の工期は何日くらいですか?

面積、撤去範囲、設備量、搬出時間、階数、石綿対応、作業可能時間等で異なります。

一律の日数ではなく、現地調査後に工程表を確認してください。

夜間・休日に工事する必要がありますか?

物件によります。

オフィスビルでは、他テナントへの騒音や共用部利用の都合から、解体・搬出時間を指定していることがあります。

管理会社の工事ルールを確認します。

工事中に追加費用が発生することはありますか?

当初見積外の残置物、隠蔽部、設備、数量変更、貸主からの追加指示等によって追加工事が生じることがあります。

追加費用が提示された場合は、追加理由、当初見積との関係、範囲、数量・単価、工期への影響を確認してください。

オフィス内装解体は「何を壊すか」より「どこまで戻すか」から決める

オフィスの内装解体で先に決めるべきなのは、解体業者や坪単価ではありません。

発注前には、

  1. 契約上の返還状態を確認する
  2. 貸主・ビルの工事区分を確認する
  3. 部分解体かスケルトンかを決める
  4. 家具・OA機器・残置物を仕分ける
  5. 設備・配線・配管の撤去範囲を確認する
  6. 石綿事前調査を行う
  7. 解体・搬出・廃材・追加条件を含む見積を確認する
  8. 貸主検査・是正まで含めて工程を組む

という順番で整理します。

必要範囲が決まっていない状態で最安値の解体業者を探しても、会社ごとの見積条件が違えば正しく比較できません。

契約・図面・貸主条件をそろえたうえで現地調査を行い、同じ工事範囲で見積を比較してください。

オフィスの内装解体・原状回復について相談する

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