オフィスを移転・閉鎖・縮小すると、デスク、チェア、書庫、ロッカー、会議テーブル、複合機、パソコン、モニター、備品など、多くの物が不要になります。
このとき、最初から「全部処分する」と決める必要はありません。
新オフィスへ持っていく物、リース会社へ返却する物、中古として売却できる物、データ処理が必要な機器、廃棄する物が混在しているためです。
特にオフィスでは、家具とOA・IT機器を同じ「不用品」として扱うと、リース品の誤処分、資産管理の漏れ、情報漏えいなどにつながる可能性があります。
オフィスの不用品処分は、「捨てる」作業ではなく、「移す・返す・売る・安全に処理する・廃棄する」へ仕分ける作業から始めます。
オフィスの不用品処分と残置物撤去は分けて考える
「不用品処分」と「残置物撤去」は似ていますが、退去実務では役割を分けて考えると整理しやすくなります。
| 作業 | 主な目的 |
|---|---|
| 不用品処分 | 移転・閉鎖準備中に不要な家具・備品・機器を段階的に整理する |
| 残置物撤去 | 退去直前に旧オフィスへ残った物を撤去し、室内を明渡せる状態にする |
| 内装解体 | 間仕切り、床、天井、造作等を撤去する |
| 原状回復 | 賃貸借契約で求められた状態へ室内を戻す |
たとえば移転2か月前に不要になったデスク100台を売却・処分するのは、不用品処分の段階です。
一方、社員や設備の移転後、旧オフィスにロッカー、段ボール、OA機器等が残り、原状回復工事までに室内を空にする作業は、オフィスの残置物撤去として管理した方が分かりやすくなります。
オフィスの不用品を処分する8手順
1.移転先へ持っていく物を先に確定する
最初に「捨てる物」ではなく「残す物」を決めます。
新しいオフィスで使用する家具・備品を一覧化し、処分候補から外します。
確認したいのは、
- 新オフィスの面積
- 新しいレイアウト
- デスク数
- チェア数
- 会議室数
- 書庫・ロッカーの必要数
- 複合機等の設置台数
- 在宅勤務等による必要席数の変化
です。
旧オフィスに50台あるデスクのうち30台だけ新オフィスへ持っていくのであれば、残り20台が売却・処分候補になります。
この数量を先に確定しておくと、移転業者、買取業者、処分業者へ同じ条件で見積を依頼できます。
2.リース・レンタル・貸与品を処分対象から外す
オフィス内にある物すべてが自社所有とは限りません。
特に、
- 複合機
- ビジネスフォン
- ネットワーク機器
- サーバー
- オフィス家具
- ウォーターサーバー
- 通信機器
などにリース・レンタル・貸与契約が残っている場合があります。
不要になったからといって、自社に所有権がない物を勝手に廃棄・売却することはできません。
固定資産台帳、リース契約一覧、レンタル契約などを確認し、次のように整理します。
| 所有関係 | 対応 |
|---|---|
| 自社所有 | 移転・買取・廃棄を判断 |
| リース | リース会社へ返却・契約変更等を確認 |
| レンタル | レンタル会社へ返却 |
| 貸主所有 | 借主判断で撤去しない |
| 通信会社等の貸与 | 所有者へ返却方法を確認 |
処分業者へ依頼する前に所有権を確定しておけば、作業当日の誤搬出を防ぎやすくなります。
3.まだ使える家具・什器は買取へ回す
自社所有で、新オフィスでは使用しない家具でも、中古市場で再利用できる可能性があります。
たとえば、
- オフィスチェア
- デスク
- ワゴン
- 書庫・キャビネット
- ロッカー
- 会議テーブル
- パーテーション
- 応接家具
などです。
現在のオフィス家具買取市場では、処分だけでなく買取・リユースと搬出をまとめて扱う事業者があります。
査定では、メーカー、シリーズ、状態、数量、年式、同一製品がまとまっているか、搬出条件などが見られます。
そのため、廃棄見積を取る前に、買取可能な物を先に分ける方法があります。
詳しくは、オフィス家具は買取できる?を確認してください。
4.OA・IT機器は家具と分けて処理する
パソコン、サーバー、複合機、ストレージ等は、単なる物品処分として扱わない方がよいでしょう。
これらには、
- 個人情報
- 顧客データ
- 従業員情報
- 契約情報
- 営業資料
- アカウント情報
- 社内機密
が保存されている可能性があります。
個人データを記録した機器・電子媒体を廃棄する場合は、復元できない方法でデータを消去する必要があります。
単にファイルを削除したり、画面上でデータが見えなくなったりしたことだけで判断しません。
データ消去を外部業者へ委託する場合は、委託先の管理体制を確認し、必要に応じて処理結果を証明書等で確認します。
ただし、すべてのパソコンやストレージを物理破壊しなければならないという意味ではありません。
再利用・売却する機器では、用途と媒体に適したデータ消去方法を選びます。
OA・IT機器の処分については、オフィスのOA機器を処分する方法で詳しく整理しています。
買取できる機器については、オフィスのOA機器は買取できる?も確認してください。
5.サーバーは他の不用品より先に処理計画を決める
旧オフィスにサーバーがある場合は、最終搬出日に処分方法を決めるのでは遅いことがあります。
サーバー撤去前には、
- 稼働サービス
- バックアップ
- 新環境への移行
- 停止日時
- 管理アカウント
- ストレージ
- 資産番号・シリアル番号
- ラック・UPS
などを確認します。
移行完了前にサーバーを撤去すると、業務システムやデータへアクセスできなくなる可能性があります。
処分・撤去の詳細は、オフィスのサーバーを処分する方法を参照してください。
6.廃棄する家具・備品を廃棄物区分ごとに分ける
オフィスから出る不用品を「法人のごみだから全部産業廃棄物」と考えるのは適切ではありません。
事業活動から出る廃棄物のうち、法令で産業廃棄物とされるものが産業廃棄物となり、それ以外は事業系一般廃棄物となります。
たとえば東京都は、一般的な事務所から排出する事務机について、金属やプラスチック等からなるものは産業廃棄物、木製の机は一般廃棄物となる例を示しています。
したがって、同じ「オフィス家具」でも材質によって処理区分が異なる場合があります。
廃棄物の仕分けでは、たとえば、
- 金属製家具
- プラスチック製品
- 木製家具
- 紙類
- ガラス類
- 電気機器
などを確認します。
さらに、一般廃棄物の収集方法や事業者による持込みの可否は自治体によって異なります。
店舗やオフィスの所在地を管轄する自治体と、実際に処理を依頼する事業者へ確認してください。
7.PC等はメーカー回収・リサイクルも比較する
企業や法人から排出される使用済みパソコンには、事業系PCのメーカー回収・リサイクル制度があります。
パソコン3R推進協会の事業系PC小口回収スキームでも、対象メーカーの使用済みPCを回収・再資源化しています。
ただし、どのメーカー・機器でも同じ窓口へ出せるわけではありません。
メーカーや製品ごとに対象範囲を確認します。
また、この回収スキームでは回収前に利用者側でデータ消去する工程が示されています。
そのため、「メーカーリサイクルへ出せばデータ処理も自動的に終わる」とは考えず、データ消去の責任範囲を確認します。
PC以外のプリンター、複合機、サーバー、ネットワーク機器などについては、メーカー、買取、ITAD、廃棄物処理等、それぞれ適切な出口を確認します。
8.原状回復着工日から逆算して処分日を決める
不用品の処分期限は、オフィスの契約終了日と同じとは限りません。
家具・備品が残ったままでは、床や壁、間仕切りなどの原状回復工事を進められない場合があります。
実際の工程は、
- 新オフィスへ移転する物を搬出
- リース・レンタル品を返却
- 家具・OA機器を売却
- OA・IT機器のデータ処理
- 不用品を廃棄
- 残置物を最終撤去
- 内装解体・原状回復
- 清掃
- 貸主検査
- 明渡し
となる場合があります。
処分業者へは「契約終了日は○日」だけではなく、「原状回復工事が○日に始まるので、それ以前に搬出を完了したい」と伝えます。
オフィス不用品の処分費は何で決まる?
オフィス不用品の処分に、すべての会社・地域へ使える一律料金はありません。
費用は、処分品の量だけでなく搬出条件や作業内容でも変わります。
| 費用要素 | 確認内容 |
|---|---|
| 物量 | デスク・チェア・書庫等の数量 |
| 材質・品目 | 金属、木材、プラスチック、OA機器等 |
| 重量物 | 大型書庫、金庫等 |
| 分別 | 事前に仕分け済みか |
| 階数 | 高層階・地下等 |
| エレベーター | 貨物用EVの有無・利用時間 |
| 養生 | 共用部・床・壁・EV等 |
| 車両 | 台数・積載量 |
| IT処理 | データ消去・個体管理・証跡等 |
| 作業時間 | 夜間・休日・短納期 |
「オフィス不用品処分一式」という総額だけではなく、作業費、車両費、処分費、搬出費、データ消去費等の内訳を確認すると比較しやすくなります。
買取と処分を同時に頼むときは最終差額を見る
オフィス移転では、売れる家具と処分する家具が混在することがあります。
買取・処分の両方を扱う事業者であれば、一度の現地調査で、
- 買取品
- 無料・低額回収品
- 有料処分品
へ仕分けられる場合があります。
このとき「買取額が一番高い会社」をそのまま選ぶのではなく、
買取額 − 搬出費 − 養生費 − 車両費 − 処分費 − データ処理費
を含む最終差額で比較します。
買取額が高くても、大量の買取不可品に高い処分費が加算されれば、総額では他社より不利になる可能性があります。
オフィス家具を自治体の粗大ごみに出せる?
家庭向けの粗大ごみ制度を、法人・事業所の家具へそのまま利用できるとは限りません。
事業系一般廃棄物や、中小事業者向けの持込み・収集制度等は自治体によって異なります。
また、材質によって産業廃棄物となる家具もあります。
「家庭の粗大ごみより安いから」という理由で自己判断せず、所在地の自治体へ「事業所で使用したデスク・チェア・書庫を処分したい」と伝えて確認してください。
書類も不用品と一緒に捨てない
移転・閉鎖では、家具と同時に大量の紙書類が不要になることがあります。
書類は、まず保存すべき物と廃棄してよい物を分けます。
個人データが記載された書類を廃棄する場合は、復元できない方法で処理します。
大量に外部委託する場合は、
- 回収方法
- 輸送中の管理
- 保管方法
- 溶解・裁断等の処理方法
- 再委託の有無
- 処理確認方法
も確認します。
通常の古紙回収へ出せる紙と、機密処理が必要な書類を混ぜないようにします。
不用品回収業者へ一括依頼するときの確認項目
家具、OA機器、書類などを一括して処理できる事業者を利用すると、担当者の手配負担を減らせる場合があります。
ただし、「何でも回収できます」という説明だけでは判断せず、
- 買取品を査定できるか
- リース・返却品を除外管理できるか
- 一般廃棄物の処理体制
- 産業廃棄物の処理体制
- OA・IT機器の処理方法
- データ消去への対応
- 再委託先
- 搬出・養生
- ビル作業申請
- 作業後の証跡
- 追加料金の条件
を確認します。
窓口を一社にまとめる場合でも、実際にどの物を誰が処理するか把握しておくことが重要です。
処分見積を依頼する前に用意するもの
見積条件をそろえるため、問い合わせ前に次を整理します。
- オフィス所在地
- 面積
- フロア
- 家具・什器一覧
- 数量
- OA・IT機器一覧
- リース・返却品一覧
- 買取希望品
- 廃棄希望品
- 室内写真
- 搬出経路写真
- 貨物用エレベーター条件
- 荷捌き場・駐車条件
- 作業可能時間
- 原状回復開始日
- 明渡し期限
物量が多い場合は、写真見積だけではなく現地調査を依頼すると、車両・人員・搬出方法まで確定しやすくなります。
オフィス不用品処分でよくある質問
オフィス家具は全部産業廃棄物ですか?
全部とは限りません。
廃棄物の種類は材質・品目・排出する業種等で判断します。
東京都の例では、一般的な事務所から出る金属・プラスチック製の事務机等は産業廃棄物、木製机は一般廃棄物として案内されています。
実際の処理は所在地の自治体・処理業者へ確認してください。
リース中の家具・OA機器も処分できますか?
自社に所有権がなければ、自社判断で売却・廃棄することはできません。
リース・レンタル会社へ返却方法や契約終了条件を確認します。
パソコンは初期化すれば処分できますか?
操作画面上の初期化だけで、常にデータが復元不可能になるとは限りません。
個人データ等が保存されている機器は、記憶媒体と処分・再利用方法に合ったデータ消去を行います。
データ消去証明書は必須ですか?
あらゆる機器について一律の書式の証明書が必須という意味ではありません。
ただし、外部委託したデータ消去・廃棄が確実に行われたことを証明書等で確認することは、管理方法の一つとして重要です。
自社の情報セキュリティ規程や監査要件も確認します。
パソコンをメーカーへ回収してもらえばデータ消去も任せられますか?
回収制度によります。
パソコン3R推進協会の事業系PC小口回収では、回収前に利用者側でデータ消去する工程が示されています。
利用するメーカー・回収サービスごとにデータ処理範囲を確認してください。
移転業者へ不用品処分も一緒に頼めますか?
不用品回収・買取までワンストップで扱う移転会社があります。
一括発注する場合も、買取対象、処分対象、廃棄物処理、OA機器処理等の担当範囲と費用を分けて確認します。
買取できない家具はどうすればよいですか?
材質・品目に応じた適切な廃棄ルートへ切り替えます。
買取不可だからそのまま家庭向け粗大ごみへ出せるとは限りません。
いつまでに不用品処分を終えるべきですか?
契約終了日ではなく、原状回復工事の開始日から逆算する方が安全です。
最終的に残った物については、オフィス残置物撤去へ工程を切り替えます。
オフィスの不用品は「移す・返す・売る」を済ませてから廃棄する
オフィス移転・閉鎖で不要品が大量に出ても、最初からすべてを廃棄物として扱う必要はありません。
進める順番は、
- 新オフィスへ持っていく物を決める
- リース・レンタル・貸与品を返却する
- 再利用・買取できる家具を分ける
- OA・IT機器をデータ処理する
- サーバー等の移行・停止を完了する
- 残った物を適切な廃棄物区分へ分ける
- 処理ルートと見積を確認する
- 原状回復開始前までに搬出を終える
という流れが整理しやすくなります。
処分量を確定する前に売却・返却できる物を除外すれば、処分費を減らせる可能性があります。
また、OA・IT機器や機密書類を一般家具と別管理することで、情報漏えいリスクも下げられます。
退去直前に一度に処理するのではなく、移転・閉鎖が決まった段階から不要品を減らしておき、最後に残った物だけを残置物撤去へ回す工程にすると進めやすくなります。
