オフィスの残置物撤去はどう進める?退去前に確認する8項目

オフィスを移転・閉鎖するとき、社員の引っ越しが終わっても退去作業は終わりません。

デスク、チェア、書庫、会議テーブル、複合機、パソコン、モニター、ネットワーク機器、サーバー、書類、備品などが旧オフィスに残っていれば、明渡しまでに撤去・返却・売却・処分を進める必要があります。

オフィスの残置物撤去で店舗以上に注意したいのが、「物をなくすこと」と「会社の資産・情報を安全に処理すること」を同時に行わなければならない点です。

家具と一緒にPCをそのまま回収へ出したり、資産台帳を確認せずリース品を搬出したり、機密書類を一般の紙ごみへ混ぜたりすると、退去後に問題が残る可能性があります。

そのため、オフィス残置物は、家具・備品、会社資産、IT機器、書類、廃棄物を分けて管理し、原状回復工事の開始日から逆算して撤去します。

目次

オフィスの「残置物」とは

退去時の実務では、移転後や閉鎖後に旧オフィスへ残っている家具、備品、機器、書類などをまとめて残置物と呼ぶことがあります。

たとえば次のような物です。

  • デスク・チェア
  • 書庫・ロッカー
  • 会議テーブル
  • キャビネット
  • パーティション
  • 複合機・プリンター
  • パソコン・モニター
  • サーバー・ネットワーク機器
  • 電話機
  • シュレッダー
  • 冷蔵庫・電子レンジ等
  • 書類・ファイル
  • 文房具・備品
  • 段ボール・梱包資材

ただし、室内に残っているからといって、すべて廃棄してよいわけではありません。

自社所有物だけでなく、貸主所有設備、リース・レンタル機器、移転先へ持っていく資産、保存義務のある書類などが混在している場合があります。

「オフィス不用品処分」と「残置物撤去」は目的が違う

作業 主な目的
不用品処分 移転・閉鎖準備中に不要な家具や備品を段階的に減らす
残置物撤去 明渡し前に旧オフィスへ残った物を指定範囲から撤去する
内装解体 間仕切り、床、天井、造作等を撤去する
原状回復 契約で定められた状態へ室内を戻す

たとえば、移転3か月前に余ったデスクを売却するのは不用品整理です。

一方、新オフィスへの移転が終了した後、旧オフィスにデスク、書庫、モニター、書類等が残り、原状回復開始までに全部空ける必要がある状態は残置物撤去の性格が強くなります。

閉鎖準備段階から処分方法を整理する場合は、オフィスの不用品処分と役割を分けて考えます。

オフィス残置物撤去で確認する8項目

1.貸主へ返す状態を確認する

最初に確認するのは撤去会社ではなく、賃貸借契約上の返還状態です。

確認する資料には、

  • 賃貸借契約書
  • 原状回復条項・特約
  • 工事区分表
  • 退去工事仕様書
  • 貸主・管理会社からの退去案内
  • 入居時の図面・写真

などがあります。

デスクやロッカーなど明らかな自社什器は撤去対象でも、設備・内装の一部は貸主所有の場合があります。

また、居抜き・セットアップ等の条件により、貸主が一部家具・設備の残置を認めるケースもあります。

何を撤去し、何を残すかを品目単位で確認し、借主判断だけで設備を壊したり残したりしないようにします。

2.資産台帳と所有権を照合する

オフィス撤去では「不要かどうか」と同時に「誰の物か」を確認します。

特に注意したいのが、

  • リース中の複合機
  • レンタル家具
  • 通信会社等の機器
  • 保守契約中のネットワーク機器
  • 貸主側設備
  • 親会社・別拠点所有の機器

です。

会社で管理している固定資産台帳、リース契約、機器管理台帳等があれば、撤去対象一覧と照合します。

確認項目 記録例
品名 ノートPC、デスク、複合機等
管理番号 資産管理番号
メーカー・型番 機器識別用
シリアル番号 IT機器等
所有者 自社・リース会社・貸主等
処理方法 移転・返却・売却・廃棄
処理完了日 搬出・返却日

撤去後に「リース返却品がない」「資産台帳上は残っているが現物が見つからない」とならないよう、搬出前に照合します。

3.移転・返却・買取できる物を先に除外する

自社所有物だからといって、すべて処分する必要はありません。

最初に次の順で仕分けます。

  1. 新オフィスへ持っていく物
  2. リース・レンタル会社へ返却する物
  3. グループ会社・別拠点へ移す物
  4. 中古買取へ出す物
  5. リユース・譲渡する物
  6. 廃棄する物

オフィス家具では、デスク、チェア、書庫、ロッカー、会議テーブルなどが、メーカー・シリーズ・状態・数量によって買取対象になる場合があります。

OA・IT機器も、機種・年式・状態・データ処理条件等によって売却できる可能性があります。

家具を売却できるか確認する場合は、オフィス家具の買取、OA・IT機器についてはオフィスOA機器の買取も確認してください。

買取可能品を有料廃棄へ入れなければ、処分量を減らせます。

4.PC・OA・IT機器を一般の家具と分ける

オフィス残置物で特に分けて管理したいのが、データを保存する可能性がある機器です。

たとえば、

  • デスクトップPC
  • ノートPC
  • サーバー
  • 外付けHDD・SSD
  • NAS
  • 一部の複合機
  • スマートフォン・タブレット
  • ネットワーク機器

などです。

これらを「残置物一式」として家具と一緒に回収へ出す前に、保存されているデータ、管理アカウント、資産番号、処理方法を確認します。

個人データを記録した機器・電子媒体を廃棄する場合は、復元できない方法でデータを消去する必要があります。

単純なファイル削除や、機器の操作画面上でデータが見えなくなったことだけで判断しません。

外部業者へデータ消去・廃棄を委託する場合は、委託先の管理体制を確認し、実際に削除・廃棄が行われたことを証明書等で確認することも検討します。

ただし、すべてのIT機器で物理破壊が必須という意味ではありません。

再利用するPCなどでは、記憶媒体や利用目的に適したデータ消去方法を選びます。

詳しくは、オフィスのOA機器を処分する方法を確認してください。

5.サーバー・ネットワーク機器は停止工程から管理する

サーバーが旧オフィスに残っている場合、「最終日にラックから外して回収する」という進め方では遅いことがあります。

撤去前には、

  • 稼働しているサービス
  • バックアップ
  • クラウド・新環境への移行
  • IP・DNS等の切替
  • 管理アカウント
  • ストレージ内データ
  • サーバー・ドライブのシリアル番号
  • UPS・ラック・ケーブル

などを確認します。

サーバーを停止した後で必要データが残っていたことに気付くと、撤去全体へ影響します。

サーバー固有の処理については、オフィスのサーバーを処分する方法で分けて整理しています。

6.機密文書・個人情報を含む書類を一般の紙ごみから分ける

オフィス撤去では、大量の紙ファイルが残ることがあります。

その中には、

  • 顧客情報
  • 従業員情報
  • 契約書
  • 見積書・請求書
  • 人事資料
  • 営業資料
  • 設計・技術資料

などが含まれている可能性があります。

まず、保存が必要な書類と廃棄してよい書類を社内ルール・法令・契約等に沿って分けます。

個人データが記載された書類を廃棄する場合は、容易に復元できない方法で処理します。

シュレッダー、溶解等を利用する場合も、委託先へ渡した時点で管理が終わるのではなく、回収・保管・処理方法を確認します。

大量の文書処理を外部委託する場合は、

  • 施錠容器等で回収するか
  • 搬送中の管理方法
  • 再委託の有無
  • 処理方法
  • 処理完了を確認できるか

なども比較材料になります。

なお、すべての社内文書が個人情報保護法上の個人データというわけではありません。個人情報以外の機密資料についても、自社の情報管理規程や契約上の秘密保持義務に沿って処理します。

7.廃棄する家具・備品の処理ルートを確認する

オフィスのデスク、チェア、書庫、プラスチック用品、電気機器等を廃棄するとき、「法人の物は全部産業廃棄物」と一括りにはできません。

事業活動に伴って生じた廃棄物でも、材質・品目・業種等によって一般廃棄物と産業廃棄物の扱いが異なります。

撤去会社へ一括依頼する場合も、

  • 何を中古品として売却・リユースするか
  • 何を一般廃棄物として扱うか
  • 何を産業廃棄物として扱うか
  • 誰が収集運搬するか
  • 誰が処分するか
  • 必要な許可・委託関係を満たしているか

を確認します。

事業活動に伴う廃棄物は、外部へ委託したから排出側の確認が不要になるわけではありません。

所在地の自治体ルールと、実際の品目に応じた処理方法を確認してください。

8.ビル搬出ルールと原状回復工程を同時に組む

オフィスの残置物撤去では、物量だけでなくビル側の搬出ルールが作業時間へ大きく影響します。

特に確認したいのは、

  • 搬出作業の事前申請
  • 作業可能日
  • 平日・休日の制限
  • 作業可能時間
  • 貨物用エレベーター
  • エレベーターのサイズ・耐荷重
  • 共用部の養生
  • 搬出ルート
  • 搬入口・荷捌き場
  • トラックの駐車・入館申請
  • 作業員の入館手続き
  • 警備・セキュリティ解除

などです。

たとえば100台のデスクを撤去できる人員を確保しても、エレベーターを短時間しか使用できなければ作業日は伸びます。

また、残置物撤去が終わらないと、床・壁・間仕切りの原状回復工事を進められない部分があります。

明渡し日から逆算して、

  1. 新オフィスへの移転
  2. リース・レンタル返却
  3. 家具・OA機器の買取
  4. データ機器・機密文書の処理
  5. 残置物撤去
  6. 内装解体・原状回復
  7. 清掃
  8. 貸主検査
  9. 是正
  10. 明渡し

の順番を組みます。

オフィス残置物撤去の費用は何で変わる?

オフィス残置物撤去に全国一律の相場はありません。

同じ100坪でも、デスク中心のオフィスと、サーバー・書庫・大量文書が残るオフィスでは作業内容が異なります。

費用要素 確認内容
物量 家具・備品等の数量
重量物 大型書庫・金庫・サーバーラック等
分別 事前仕分け済みか
階数・EV 搬出能力・利用時間
養生 共用部・EV・床・壁
車両 台数・積載量・駐車条件
IT処理 データ消去・証跡・個体管理
書類 機密文書処理の量・方法
特殊作業 解体・重量物搬出等
作業時間 夜間・休日・短納期
ビル条件 搬出申請・警備・指定時間等

「オフィス残置物撤去一式」とだけ書かれた見積では、どこに費用がかかっているか判断しにくくなります。

家具撤去、IT機器処理、書類処理、車両、作業員、養生、処分費等を分けて確認すると比較しやすくなります。

買取できる物は撤去費と別に見る

オフィス閉鎖では、大量の家具やOA機器がまとめて不要になることがあります。

再販できる物があれば、廃棄量を減らせる可能性があります。

ただし、買取価格だけで業者を決めるのではなく、

  • 買取額
  • 搬出費
  • データ消去費
  • 撤去費
  • 買取不可品の処分費

まで含めた最終差額で比較します。

また、資産台帳上は廃棄・売却処理が必要になる場合があるため、会社の経理・資産管理担当とも連携します。

事業系パソコンは家庭用PCと同じ処分ルートとは限らない

企業・法人から排出されるパソコンは、事業系パソコンとしてメーカーによる回収・リサイクル制度があります。

パソコン3R推進協会にも、参加メーカーの事業系PCを回収する仕組みがあります。

ただし、オフィス内にある電子機器がすべて同じ制度の対象になるわけではありません。

対象メーカー・製品を確認し、プリンター、複合機、サーバー、ネットワーク機器などは、それぞれメーカー回収、買取、ITAD、適正処理業者等の対象範囲を確認します。

また、回収制度を利用する場合でも、データ消去を誰が行うのか事前に確認します。

残置物撤去業者を選ぶときの確認項目

オフィス撤去を一括で扱う会社もあります。

窓口を一本化できれば、家具・IT機器・書類・原状回復の日程調整を減らせる場合があります。

ただし「全部任せられる」という言葉だけではなく、次を確認します。

  • オフィス撤去実績
  • 家具・什器の買取対応
  • OA・IT機器の取扱い
  • データ消去方法
  • 消去・廃棄証跡
  • 機密書類の処理方法
  • リース品の除外管理
  • 廃棄物の処理体制
  • 再委託先の役割
  • ビル搬出申請への対応
  • 養生・夜間作業への対応
  • 内装解体・原状回復との工程調整

一社がすべてを自社内で処理する必要があるという意味ではありません。

専門会社と連携する場合でも、資産・データ・書類・廃棄物がそれぞれ誰の管理下に入り、どこで処理されるのかが明確かを確認します。

撤去前に写真と一覧を作る

現地見積を依頼する前に、旧オフィスの残置物一覧を作ると比較しやすくなります。

業者へ伝える情報は次のようなものです。

  • 所在地
  • フロア・面積
  • 搬出希望日
  • 原状回復着工日
  • 明渡し期限
  • デスク・チェア等の数量
  • 書庫・ロッカーの数量
  • OA・IT機器一覧
  • サーバー・ラックの有無
  • 機密書類の概算量
  • 売却希望品
  • リース・返却品
  • 貨物EV条件
  • 荷捌き場
  • 作業可能時間
  • ビル側申請条件

写真は、家具だけでなく搬出経路、エレベーター、廊下、搬入口も用意します。

オフィス残置物撤去でよくある質問

オフィスの家具は全部産業廃棄物ですか?

一律には言えません。

事業活動から出る廃棄物でも、品目・材質・業種等によって一般廃棄物と産業廃棄物の扱いが異なります。

所在地の自治体ルールと処理会社へ確認してください。

PCは初期化してから回収へ出せば十分ですか?

操作上の初期化だけで、常に復元不可能な状態になるとは限りません。

個人データ等が保存されている機器では、記憶媒体や再利用方法に適した復元困難な消去方法を選びます。

外部業者へ委託する場合は、消去方法と処理確認方法も確認してください。

PCは必ず物理破壊する必要がありますか?

一律に物理破壊が必須ではありません。

個人情報保護委員会は、専用のデータ削除ソフトウェア利用や物理的破壊などを方法の例として示しています。

再利用・売却する機器では、適切なデータ消去によって再利用する選択肢もあります。

データ消去証明書は必須ですか?

すべてのケースについて一律の書式の証明書が法令上必須という意味ではありません。

ただし、外部へデータ削除・廃棄を委託する場合、確実に処理したことを証明書等で確認することは重要な管理方法の一つです。

自社の情報セキュリティ規程や監査要件に応じて、シリアル単位の証跡等も確認します。

サーバーも家具と一緒に回収してもらえますか?

一括対応できる事業者はありますが、家具と同じ処理フローにすることは避けた方がよいでしょう。

稼働サービス、バックアップ、データ消去、ストレージ管理、ラック撤去等を先に確認します。

機密文書を一般の古紙回収へ出してよいですか?

含まれる情報と社内ルールによります。

個人データを含む文書を不要として廃棄する場合は、復元できない方法で処理する必要があります。

契約情報・営業秘密等についても、自社の機密情報管理ルールに沿って処理してください。

貸主へ家具を残したまま退去できますか?

貸主が明確に承諾すれば残せる場合があります。

借主判断で放置するのではなく、残す品目、所有権、将来の撤去義務等を確認します。

撤去会社へ全部一括で頼めば資産管理まで任せられますか?

作業を一括委託できても、自社側で資産台帳やリース契約、情報管理の確認が必要です。

何を移転し、何を返却し、何を売却・廃棄したか、自社でも最終記録を残します。

オフィス残置物は「物・資産・情報」の3つに分けて撤去する

オフィス退去時の残置物撤去では、単に部屋を空にすれば終わりではありません。

実務上は、

  1. 貸主へ返す状態を確認する
  2. 資産台帳・所有権を確認する
  3. 移転・返却・買取品を除外する
  4. PC・OA機器のデータを処理する
  5. サーバー等のIT機器を停止・撤去する
  6. 機密文書を安全に処理する
  7. 残る家具・備品を適切なルートで処理する
  8. ビル搬出ルールと原状回復工程を合わせる

という流れで進めると整理しやすくなります。

特にPCや書類を家具と同じ「不用品」として扱わず、情報資産として処理した後に搬出することが重要です。

移転・閉鎖が決まった段階から不用品を減らし、最終退去時には残置物撤去と原状回復だけが残る状態にしておくと、明渡し直前の作業集中を避けやすくなります。

オフィス残置物の撤去・データ機器処理について相談する

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