クリニックの内装解体はどう進める?X線室・医療機器で確認する8項目

クリニックを閉院・移転するとき、テナントの内装を撤去して原状回復しなければならない場合があります。

ただし、クリニックの内装解体は一般的な店舗やオフィスと同じ手順だけでは進めにくいことがあります。

診療科や設備によっては、診療台、医療機器、X線装置、X線診療室の遮蔽、医療ガス、専用給排水、電源設備などが設置されているためです。

さらに、閉院まで診療を行っていた施設では、注射針や血液等が付着した物など感染性廃棄物の処理を、内装解体の廃材とは分けて終わらせる必要があります。

クリニックの内装解体では、「壁や床を壊す」前に、医療設備・廃棄物・届出・原状回復範囲を整理することが重要です。

目次

クリニックの内装解体は一般店舗と何が違う?

受付、待合室、診察室の間仕切り、床、天井などだけを見れば、一般的なテナントの解体と共通する部分があります。

一方、クリニックでは診療内容によって次のような設備が加わります。

  • 診療用エックス線装置
  • X線診療室の遮蔽構造
  • CT等の画像診断機器
  • 診療台・歯科ユニット
  • 専用給排水
  • コンプレッサー・吸引設備
  • 医療ガス設備
  • 滅菌機器
  • 各種医療機器
  • 大型電源・専用回路
  • 院内看板・外部サイン

すべてのクリニックにこれらがあるわけではありません。

内科、歯科、整形外科、眼科、美容クリニックなどでは設備構成が大きく違うため、「クリニック○坪」という面積だけで解体内容を決めないようにします。

内装解体と原状回復は同じではない

項目 主な内容
内装解体 壁、床、天井、造作、設備等を撤去する工事
スケルトン工事 内装・設備を広く撤去し、躯体に近い状態へ戻す工事
原状回復 契約上定められた状態へ物件を返すための一連の工事

原状回復には、解体だけでなく補修、塗装、設備復旧、清掃、貸主検査後の是正などが含まれる場合があります。

クリニックだから必ずスケルトン返しになるわけでもありません。

最初に賃貸借契約と貸主・管理会社の返還条件を確認します。

クリニックの内装解体で確認する8項目

1.賃貸借契約と返還状態を確定する

施工会社を探す前に、どの状態まで戻す必要があるかを確認します。

主に見る資料は次のとおりです。

  • 賃貸借契約書
  • 原状回復特約
  • 入居時図面
  • 工事区分表
  • 貸主・管理会社の退去工事仕様
  • 入居時・改装時の工事資料

特に、医療用として後から追加した設備と、もともと建物側にあった設備を分けます。

たとえばX線室、専用電源、給排水、医療ガス設備、空調、看板などについて、借主側がどこまで撤去するのかを明確にします。

「クリニックで使っていた物だから全部撤去」と自己判断せず、貸主所有物まで壊さないようにしてください。

店舗原状回復全体については、店舗閉店時の原状回復も参照してください。

2.医療機器を「移転・売却・返却・廃棄」へ分ける

内装解体へ入る前に、院内の機器を一覧にします。

たとえば、

  • 診療台
  • 歯科ユニット
  • X線装置
  • CT
  • 超音波診断装置
  • 滅菌器
  • 検査機器
  • コンプレッサー
  • 吸引設備
  • 医療用冷蔵庫
  • 事務用PC・サーバー

などです。

そのうえで、

区分 対応
移転先で使用 専門業者による移設を検討
中古売却 査定後に搬出
リース・レンタル 所有者へ返却方法を確認
廃棄 機器の種類に合った処理方法を確認
貸主所有 勝手に撤去しない

まだ価値がある医療機器を、内装解体業者へ先に廃棄してもらう必要はありません。

解体対象から外せる機器は先に査定し、売却・移転・返却を完了させてから解体範囲を確定します。

一般的な設備買取については、設備・什器買取も確認してください。

3.X線装置とX線診療室を別々に整理する

X線設備があるクリニックでは、

「X線装置そのもの」と「X線診療室の内装・遮蔽構造」

を分けて考えます。

診療用エックス線装置を廃止する場合には、医療法に基づく届出が必要になります。

実際の届出先・様式は所在地によりますので、閉院・装置撤去前に所管保健所等へ確認してください。

また、X線診療室は、周囲への放射線を一定以下に抑えられる遮蔽構造が求められています。

ここで注意したいのは、「X線室なら壁はすべて鉛板」と決めつけないことです。

実際の遮蔽方法は、壁構成、材料、厚さ、装置、室の設計等によって異なります。

解体前には、

  • 入居時のX線室図面
  • 遮蔽計算・施工資料
  • 壁・扉・天井・床の構成
  • 鉛板等の遮蔽材の有無
  • 貸主側へ残す構造
  • 装置撤去後の室用途

を確認します。

見た目だけで通常の間仕切り壁として壊すのではなく、実際の構造を把握したうえで解体見積へ反映します。

4.歯科ユニットなど床下配管を確認する

歯科医院などでは、診療台まで、

  • 給水
  • 排水
  • エア
  • 吸引
  • 電源
  • 通信配線

などが床下を通っている場合があります。

そのため、診療台を搬出するだけでは原状回復が終わりません。

床をかさ上げして配管している場合は、

  • かさ上げ床を撤去するか
  • 配管をどの位置まで撤去するか
  • 床開口をどう復旧するか
  • 貸主側の配管を残すか

まで確認します。

特に歯科医院では、内装面積だけを伝えて概算見積を取るより、ユニット数、機械室、配管経路等も伝えた方が実際の工事内容に近い見積になります。

5.医療ガス設備がある場合は専門設備として扱う

一部の医療機関では、酸素等の医療ガスを供給する設備・配管があります。

該当設備がある場合、一般の給水管や空調配管と同じ感覚で切断しないようにします。

解体前には、

  • どの医療ガスを使用しているか
  • ボンベ供給か中央配管か
  • 供給設備の停止方法
  • 配管内の状態
  • 貸主設備と借主設備の境界
  • どの専門事業者が切離しを担当するか

を確認します。

医療ガスは医療安全上も専門的な管理対象となっているため、設備を設置・管理している会社や専門設備業者と工程を調整します。

内装解体会社が窓口になる場合でも、「誰が安全確認と切離しを担当するのか」を明確にしてください。

6.感染性廃棄物・薬品等を解体廃材へ混ぜない

閉院する医療機関で特に注意したいのが、診療に伴って発生した廃棄物です。

たとえば感染性がある、またはそのおそれがある、

  • 注射針
  • 血液等が付着した物
  • 一部の検査・処置用品
  • その他感染性廃棄物

は、通常の内装解体廃材とは分けて処理します。

工事会社が壁・床を解体する日に、診療で使った廃棄物が室内へ残っている状態は避けます。

閉院側で事前に、

  1. 診療物品を確認する
  2. 感染性・非感染性を分別する
  3. 薬品等の処理先を確認する
  4. 必要な処理業者へ委託する
  5. 解体業者へ空の状態で引き渡す

という工程を組みます。

「クリニックから出た物はすべて感染性廃棄物」という意味ではありません。

医療機関から出る廃棄物にも感染性・非感染性があり、品目・性状ごとに処理します。

7.石綿事前調査を内装解体前に行う

クリニックであっても、既存の壁、床、天井、下地等を解体・改修するなら石綿事前調査の対象になります。

解体・改修工事では、規模の大小だけで事前調査の要否を判断しません。

工事対象部分の材料について、工事前に石綿含有の有無を調査します。

一定規模以上の場合は、調査結果の行政報告も必要になります。

見積時には、

  • 事前調査を誰が行うか
  • 既存図面があるか
  • 分析が必要か
  • 調査費が見積に含まれるか
  • 含有が確認された場合の工法・費用・工期

を確認します。

詳しくは、内装解体・原状回復のアスベスト事前調査を参照してください。

8.医療設備撤去から貸主検査まで一つの工程にする

クリニックの退去では、内装解体だけの日程を決めても十分ではありません。

実際には、

  1. 最終診療
  2. 医療機器の移転・売却・返却
  3. X線装置等の停止・撤去手続
  4. 医療ガス等の特殊設備停止
  5. 感染性廃棄物・薬品等の処理
  6. 一般残置物撤去
  7. 石綿事前調査
  8. 特殊設備・配管の撤去
  9. 内装解体
  10. 廃材搬出・処理
  11. 原状回復・補修
  12. 看板撤去
  13. 清掃
  14. 貸主検査
  15. 是正
  16. 明渡し

という工程になる場合があります。

内装工事だけでなく、医療設備側の業者・行政手続・廃棄物処理のスケジュールも合わせます。

クリニックの内装解体費用は何で変わる?

クリニックの解体費用は面積だけでは決まりません。

主な変動要因には次があります。

  • 施工面積
  • 部分解体かスケルトンか
  • 診察室・処置室等の間仕切り量
  • 医療機器の量
  • X線室の有無
  • 遮蔽構造の内容
  • 床下配管・かさ上げ床
  • 医療ガス設備
  • 専用電源・設備
  • 看板・外部サイン
  • 石綿対応
  • 廃材量
  • 階数
  • エレベーター
  • 搬出時間
  • 夜間・休日施工

たとえば同じ30坪でも、診察室と受付だけのクリニックと、X線室・歯科ユニット・機械室を備える医院では撤去内容が異なります。

そのため、固定の坪単価だけで予算を決めず、特殊設備を一覧化したうえで現地調査を依頼します。

一般的な店舗解体費については、店舗の解体費用も参考になります。

クリニック解体の見積で分けて確認したい項目

費目 確認内容
一般内装解体 壁・床・天井・造作
医療機器搬出 解体見積に含むか、別業者か
X線室 装置・遮蔽材・扉・壁等の範囲
床下設備 給排水、吸引、エア、電源等
医療ガス 停止・切離し・配管撤去
看板 院名サイン、外壁、高所作業等
残置物 家具・備品・非医療設備
石綿 事前調査・分析・含有時対応
養生・搬出 共用部、EV、作業時間等
廃材処理 種類・数量・運搬・処分

「クリニック内装解体一式」という総額だけでは、X線室や医療機器まで含まれているのか分かりません。

見積の内訳については、内装解体の見積内訳も確認してください。

X線室は「鉛板がある前提」で見積を固定しない

X線診療室には放射線防護のための遮蔽性能が必要ですが、具体的な壁構造は施設ごとに異なります。

実際の施工では鉛板等が使われているケースがありますが、すべての面が同じ材料・厚さとは限りません。

そのため、

  • 図面
  • 施工記録
  • 壁構成
  • 天井

を確認してから撤去数量を決めます。

「X線室だから鉛○kg」と概算しただけの見積より、実際の遮蔽構造を確認した見積の方が追加費用の可能性を減らしやすくなります。

診療用エックス線装置を廃止するときは届出も確認する

診療用エックス線装置は、単にコンセントを抜き、解体会社へ搬出してもらえば行政手続まで終了するわけではありません。

装置を廃止する場合は医療法上の届出があります。

東京都では診療用エックス線装置廃止届について「廃止後10日以内」と案内しています。

所在地によって提出先・様式等が異なるため、実際の閉院・撤去では所管保健所等へ確認してください。

装置を移転先へ移す、入れ替える、売却する場合なども、現在の施設と移転先それぞれで必要な手続きを医療機器会社や所管行政へ確認します。

感染性廃棄物は工事業者が来る前に整理する

解体工事へ入った後に、診察室の棚や処置室から注射針等が出てくる状態は避けたいところです。

環境省の感染性廃棄物処理マニュアルでは、医療関係機関が感染性廃棄物を適切に分別・保管・委託処理することを求めています。

閉院時は、通常営業時より大量の物品を一度に整理するため、医療廃棄物と一般の備品が混ざりやすくなります。

「解体時に全部持っていってもらう」のではなく、診療由来廃棄物を先に整理した後で、内装解体へ現場を渡します。

解体工事で出た廃材と医療廃棄物は別に考える

壁、天井、床、下地等を解体して生じた建設廃棄物と、閉院前から院内に存在していた医療廃棄物・医療機器・薬品等は同じものではありません。

建設工事から発生する廃棄物については、原則として発注者から工事を直接請け負った元請業者が排出事業者となります。

一方、医療機関の診療活動から発生していた感染性廃棄物等は、医療機関側で適正処理を進めます。

一括窓口の会社を利用する場合でも、

  • 医療廃棄物
  • 医療機器
  • 一般残置物
  • 建設廃棄物

を誰が、どの処理ルートで扱うのか確認してください。

クリニックの内装解体業者を選ぶときの確認項目

価格だけでなく、今回の設備に対応できるかを確認します。

  • クリニック・医院の解体実績
  • X線室等の特殊設備を把握できるか
  • 医療機器搬出の範囲
  • 給排水・電気等の設備工事体制
  • 医療ガス設備がある場合の対応体制
  • 石綿事前調査への対応
  • 廃棄物処理体制
  • 共用部養生・搬出計画
  • 看板・高所撤去への対応
  • 貸主検査・是正までの対応
  • 追加費用となる条件

内装解体会社がすべてを自社施工する必要があるという意味ではありません。

医療機器会社、設備会社、医療ガス会社等と連携する場合も含め、誰が全体工程を管理するかを確認します。

業者選定全般については、内装解体業者の選び方を参照してください。

工事中の追加費用が出やすい場面

クリニックでは特殊設備の確認不足が追加工事につながる場合があります。

たとえば、

  • X線室の遮蔽構造が見積想定と違った
  • 床下に多数の配管が残っていた
  • 貸主から配管撤去範囲を追加指定された
  • 大型医療機器が搬出口を通らず分解が必要になった
  • 看板撤去で足場・夜間作業が必要になった
  • 石綿調査結果により施工方法が変わった
  • 見積後に処分対象機器が増えた

などです。

追加費用が提示された場合は、当初見積、追加理由、現場写真、数量・単価、工期への影響を確認してください。

詳しくは、内装解体の追加費用で整理しています。

クリニックの内装解体についてよくある質問

クリニックは必ずスケルトン返しですか?

必ずではありません。

賃貸借契約、特約、入居時の状態、貸主との合意によって返還範囲は変わります。

X線室の壁はすべて鉛板ですか?

一律ではありません。

X線診療室には必要な遮蔽性能が求められますが、実際の材料・壁構成は施設ごとに異なります。

解体前に図面や施工資料を確認してください。

X線装置を撤去するときは届出が必要ですか?

診療用エックス線装置を廃止する場合は医療法上の届出があります。

具体的な提出先・時期・様式は施設所在地の所管保健所等へ確認してください。

注射針や感染性廃棄物を解体会社へ一緒に渡してよいですか?

内装解体廃材と一緒に扱わず、医療機関側で感染性廃棄物として適切な処理ルートへ出します。

一括対応する事業者であっても、どの許可・処理ルートで処理するか確認してください。

医療機器は全部産業廃棄物ですか?

一律には言えません。

まだ使用できる機器は移転・売却できる場合があり、リース品は返却が必要です。

廃棄する場合も材質・機器の種類・含有物等に応じた処理方法を確認します。

医療ガス配管も解体業者に切ってもらえますか?

医療ガス設備がある場合は、一般内装配管と同じ感覚で切断せず、設備を管理する事業者や専門業者と停止・安全確認・切離し方法を決めます。

小規模なクリニックでもアスベスト調査は必要ですか?

工事が小さいという理由だけで、石綿事前調査そのものが不要になるわけではありません。

解体・改修対象部分について工事前に確認します。

内装解体には何日かかりますか?

面積だけでは判断できません。

医療機器、X線室、配管、看板、石綿、搬出条件、ビル工事時間等によって変わります。

現地調査後に、貸主検査・是正まで含めた工程表を確認してください。

クリニックの内装解体は「医療設備を整理してから壊す」

クリニックの閉院・移転では、一般店舗と同じように「解体業者へ全部撤去してもらう」と考える前に、医療施設として残っている設備を整理します。

発注前には、

  1. 契約上の返還状態を確定する
  2. 医療機器を移転・売却・返却・廃棄へ分ける
  3. X線装置とX線室の遮蔽構造を確認する
  4. 床下給排水・専用設備を確認する
  5. 医療ガス設備があれば専門対応を組む
  6. 感染性廃棄物等を先に処理する
  7. 石綿事前調査を行う
  8. 特殊設備撤去から貸主検査まで工程化する

という順番で進めると整理しやすくなります。

特にX線室、医療機器、医療ガス、感染性廃棄物の有無を見積前に伝えておけば、一般的なテナント解体との違いを施工会社側も把握しやすくなります。

面積だけで比較するのではなく、特殊設備と返還条件をそろえたうえで現地見積を取り、施工範囲、処理方法、法令対応、追加費用条件まで確認してください。

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