店舗やオフィスの退去で内装解体が必要になったとき、施工会社を「見積が一番安かった会社」だけで決めるのは避けた方がよい場合があります。
内装解体では、壁や床を撤去する作業だけでなく、設備の切り離し、養生、搬出、廃材処理、石綿の事前調査、ビル側との工事調整、貸主検査まで関係することがあります。
金額が安くても、見積から必要な工事が抜けていれば、着工後に追加費用が発生する可能性があります。反対に、価格が高いという理由だけで候補から外すと、廃材処理や建物側との調整まで含んだ見積だった、ということもあります。
内装解体業者を選ぶときは、同じ工事範囲で価格を比較したうえで、法令対応、施工管理、廃棄物処理、工期まで含めて発注先を判断することが大切です。
内装解体業者を探す前に「どこまで壊すか」を決める
業者選びより先に確認したいのが、退去時にどの状態まで戻す必要があるかです。
同じ30坪の店舗でも、壁や床だけを撤去する案件と、厨房設備、給排水、ガス、ダクト、天井、電気設備まで撤去してスケルトンへ戻す案件では、必要な施工会社も工期も大きく変わります。
見積依頼前に、少なくとも次を確認します。
- 賃貸借契約書の原状回復条項
- 退去時の返還状態
- 貸主・管理会社から渡された原状回復仕様
- 工事区分表
- 指定業者・指定工事の有無
- 残置してよい設備と撤去する設備
- 貸主検査・明渡し期限
原状回復範囲が確定していない状態で3社へ見積を依頼しても、各社が別の工事内容を見積もれば金額を正しく比較できません。
まず見積条件を整理したい場合は、店舗の内装解体見積の確認方法も参照してください。
内装解体業者を選ぶ8つの確認項目
1.工事内容に必要な許可・登録を確認する
内装解体業者を比較するとき、会社のホームページに「許可取得済み」と書かれているかだけを見るのではなく、今回依頼する工事に必要な許可・登録が整っているかを確認します。
建設工事を請け負う事業者には建設業許可制度がありますが、軽微な工事のみを請け負う場合には許可が不要となる場合があります。
また、解体工事には建設リサイクル法に基づく解体工事業者の登録制度があります。
そのため、単純に「建設業許可がないから依頼できない」「許可番号があるから何でも施工できる」と判断するのではなく、次を確認します。
- 今回の工事内容
- 請負金額
- 保有している建設業許可の業種
- 解体工事業登録の要否と登録状況
- 設備工事等を別会社へ依頼する場合の施工体制
ホームページ上の許可番号だけで判断せず、必要であれば許可行政庁等の公開情報も確認します。
2.現地調査をしたうえで見積しているか
内装解体では、平面図と坪数だけでは分からない条件が多くあります。
たとえば次のような条件です。
- 壁や床の構造
- 天井裏の設備
- 床下配管
- 厨房設備
- 搬出経路
- エレベーターの有無
- 階段作業
- 共用部の養生範囲
- トラックを停められる場所
- 夜間工事の必要性
こうした条件を確認せず概算金額だけで契約すると、実際に現場へ入った後で追加作業が見つかる可能性があります。
問い合わせ時の概算見積は比較材料として利用できますが、最終発注前には現地調査を行い、工事範囲と施工条件をそろえた見積を確認します。
3.見積に工事範囲・数量・除外項目が書かれているか
業者選びで特に比較しやすいのが見積書です。
「内装解体工事一式 150万円」のように総額しか分からない見積より、どの作業に何が含まれているか分かる見積の方が、発注後の認識違いを減らしやすくなります。
確認したい項目には次があります。
- 仮設・養生
- 壁・間仕切り撤去
- 床撤去
- 天井撤去
- 造作物撤去
- 設備撤去
- 廃材搬出
- 車両・運搬
- 廃材処理
- 現場管理
- 清掃
- 見積外・別途工事
数量、単位、単価まで記載されていれば、複数社を比較するときに差の理由を確認しやすくなります。
見積の細かい読み方については、内装解体見積の内訳を参照してください。
4.廃材をどのように処理するか確認する
内装解体では、石膏ボード、木材、金属、ガラス、プラスチック類など多くの建設廃棄物が発生します。
建設工事から生じる廃棄物については、原則として発注者から直接工事を請け負う元請業者が排出事業者となります。
そのため、業者選びでは施工価格だけでなく、廃棄物処理の責任関係を確認することが重要です。
確認したいのは次のような点です。
- 今回の工事で誰が元請業者になるか
- 廃材をどこで分別するか
- 収集運搬を誰が行うか
- 中間処理・最終処分を誰へ委託するか
- 必要な許可を持つ処理業者へ委託する体制か
- マニフェスト等で処理状況を管理するか
- 処分費が見積に含まれているか
「産廃も全部対応します」という説明だけで終わらず、実際の処理体制を確認します。
特に、施工会社とは別の会社が廃材を運搬・処分する場合は、その委託関係を確認します。
5.石綿の事前調査をどう行うか確認する
建築物の解体・改修工事では、工事対象部分について石綿含有の有無を事前に調査する必要があります。
「小さな店舗だから不要」「内装だけだから不要」と面積だけで判断しないようにします。
業者へは、次を確認します。
- 石綿事前調査を誰が行うか
- 必要な資格を持つ調査者が担当するか
- 図面・書面調査と現地目視をどう行うか
- 含有の有無が分からない場合に分析するか
- 石綿含有建材が見つかった場合の施工方法
- 追加費用・工期への影響
- 行政への結果報告が必要な案件か
石綿調査を「追加料金が発生するから省く」という考え方ではなく、工事前に必要な法令対応として見積条件へ含めます。
6.安全管理・保険・ビルルールへの対応を確認する
内装解体では、作業員だけでなく他テナント、来館者、建物設備への影響も考える必要があります。
特に営業中の商業施設やオフィスビルでは、騒音、粉じん、搬出、エレベーター、火気使用、共用部養生などに独自の工事ルールが設定されていることがあります。
発注前に次を確認します。
- 現場責任者・施工管理体制
- 作業員の安全管理
- 共用部の養生
- 粉じん・騒音対策
- ビルへの工事申請
- 夜間・休日施工への対応
- 事故時の連絡体制
- 工事に関する保険加入状況
保険については「加入しているか」だけでなく、今回の工事で想定される事故や損害が補償対象になるかも確認すると判断しやすくなります。
7.追加費用が発生する条件を契約前に確認する
見積時点では分からない条件が施工開始後に判明することはあります。
問題になるのは、追加費用が発生すること自体ではなく、どの条件で、どの手順で金額が増えるのか分からない状態です。
契約前に次を確認します。
- 見積に含まれていない工事
- 残置物が増えた場合
- 想定外の下地・設備が見つかった場合
- 石綿含有建材が見つかった場合
- 貸主から追加復旧を求められた場合
- 夜間作業へ変更する場合
- 工期が変更された場合
- 追加工事を誰が承認するか
追加作業が必要になったときは、施工後にまとめて請求するのではなく、原則として内容と金額を確認したうえで進める運用になっているか聞いておきます。
すでに見積が高いと感じている場合は、内装解体の見積が高いときの確認方法も参照してください。
8.退去期限から逆算した工期と貸主検査まで対応できるか
内装解体は「工事が終わった日」がゴールとは限りません。
退去案件では、工事完了後に貸主・管理会社による検査があり、指摘事項が出れば是正工事が必要になる場合があります。
そのため業者へは、次の日程まで含めて確認します。
- 工事申請
- 着工
- 解体・撤去
- 設備復旧
- 清掃
- 施工会社による自主確認
- 貸主・管理会社検査
- 是正工事
- 最終引渡し
見積が最も安くても、退去期限へ間に合わなければ追加賃料や別の損失が生じる可能性があります。
価格だけでなく、必要な日までに工事・検査・是正まで完了できる体制かを確認します。
相見積もりでは総額だけを並べない
内装解体業者を比較する場合、2〜3社など複数社へ見積を依頼する方法があります。
ただし、A社は設備撤去まで含み、B社は内装だけ、C社は廃材処理が別料金という状態では、総額の比較に意味がありません。
比較するときは条件をそろえます。
| 比較項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 返還状態 | どこまで解体・復旧するか |
| 解体範囲 | 壁・床・天井・造作等 |
| 設備 | 電気・空調・防災・給排水等 |
| 数量 | 面積・台数・廃材量等 |
| 廃材処理 | 運搬・処分を含むか |
| 石綿 | 事前調査・分析・除去の扱い |
| 施工条件 | 夜間・養生・搬出・警備等 |
| 追加条件 | 何が別途料金になるか |
| 工程 | 着工日・完了日・検査日 |
相見積もりの具体的な取り方については、内装解体の相見積もりで詳しく整理しています。
安い見積だから問題がある、高い見積だから安心とは限らない
内装解体業者を選ぶとき、価格差が大きいと安い会社を選びたくなります。
ただし、価格差には複数の理由があります。
- 工事範囲が違う
- 廃材処理費が含まれていない
- 設備工事が別途になっている
- 石綿対応を含んでいない
- 夜間・養生費が入っていない
- 作業人数や工期が違う
- 元請・下請構造が違う
したがって、「坪単価が一番安い会社」ではなく、必要な工事を同じ条件で比較したときに、価格と施工体制のバランスが取れているかを見る方が実務的です。
内装解体業者へ見積を依頼するときに渡す資料
最初から情報をそろえて渡すことで、各社の見積条件を合わせやすくなります。
- 店舗・オフィス所在地
- 床面積
- 平面図
- 現況写真
- 入居時の写真・図面
- 賃貸借契約書の原状回復条件
- 原状回復仕様書
- 工事区分表
- ビル工事ルール
- 撤去する設備一覧
- 残置する設備
- 閉店・営業終了日
- 原状回復着工可能日
- 明渡し期限
- 貸主検査予定日
工事内容が決まっていない状態で「30坪の店舗ですが、いくらですか」と問い合わせるより、返還条件まで提示した方が実際の発注額に近い見積を取りやすくなります。
指定業者がいる場合は自由に業者を選べるとは限らない
店舗・オフィスによっては、原状回復または設備工事について貸主指定施工会社が設定されている場合があります。
この場合、借主が安い解体会社を見つけても、その会社へ工事全体を発注できるとは限りません。
まず契約書・工事区分表を確認し、
- 指定業者が施工する範囲
- 借主側で選べるC工事範囲
- 指定業者変更の可否
- 他社参考見積を取得できるか
を整理します。
退去時のB工事とC工事の分け方については、B工事で原状回復・解体はどこまでかも参照してください。
こんな見積・説明は発注前に確認を増やす
次のような状態がある場合は、その会社を直ちに除外するというより、発注前に説明を求める項目が残っていると考えます。
- 現地を見ずに最終金額を確定している
- 見積の大部分が「一式」
- 廃材の処理方法が分からない
- 石綿事前調査について説明がない
- 追加料金の条件が書かれていない
- 貸主・管理会社との工事調整範囲が不明
- 工期が極端に短いが施工計画の説明がない
- 検査で指摘された場合の対応が不明
価格の高低そのものより、疑問点に対して根拠を示して回答できるかを確認します。
内装解体業者の選び方についてよくある質問
建設業許可がない解体業者には依頼できませんか?
一律には言えません。
建設業法では軽微な建設工事のみを請け負う場合に建設業許可が不要となる場合があります。また、解体工事には建設リサイクル法上の解体工事業登録制度があります。
今回の工事内容、請負金額、施工地域、保有している許可・登録を確認し、その工事を適法に請け負える事業者かを判断してください。
産業廃棄物収集運搬業の許可を持つ会社なら安心ですか?
許可の有無だけで施工会社全体の良し悪しは判断できません。
また、建設工事で発生する廃棄物については原則として元請業者が排出事業者となるため、誰が元請となり、収集運搬・処分をどこへ委託し、どのように処理を管理するかまで確認します。
一番安い業者へ依頼しても問題ありませんか?
同じ工事範囲・数量・施工条件で比較できており、必要な法令対応や廃材処理、安全管理、工期まで含まれているのであれば、価格は重要な判断材料です。
ただし、見積から必要な作業が抜けているだけで安く見えている場合もあるため、総額だけで決めない方がよいでしょう。
何社から相見積もりを取るべきですか?
全国共通で「必ず○社」という決まりはありません。
複数社を比較する場合は、社数を増やすことより、同じ返還状態・工事範囲・施工条件で見積を取ることを優先します。
小規模な内装解体でも石綿調査は必要ですか?
建築物の解体・改修作業では、工事対象部分について石綿使用の有無を事前調査する必要があります。
行政への調査結果報告には別の規模基準がありますが、「小規模だから事前調査そのものが不要」とは考えないようにします。
工事保険は確認した方がよいですか?
事故や建物設備への損傷等に備える施工会社の補償体制を確認する材料になります。
単に「保険加入済み」という表示だけでなく、必要に応じて補償内容や対象工事を確認してください。
内装解体業者は「価格・工事・処理・期限」の4点で比較する
内装解体業者を選ぶときは、会社規模や見積総額だけで決める必要はありません。
実務上は、次の4つに整理すると比較しやすくなります。
- 価格:同じ工事範囲で妥当な見積になっているか
- 工事:必要な許可・登録、施工体制、安全管理が整っているか
- 処理:廃材・石綿等を適切に処理できる体制か
- 期限:貸主検査・是正まで含めて明渡日に間に合うか
この4点をそろえて比較したうえで、自社の物件条件に合う施工会社を選びます。
まだ各社の見積条件が揃っていない場合は、内装解体の相見積もりから確認してください。
すでに見積を受け取っており、内容そのものを確認したい場合は、店舗内装解体の見積と内装解体見積の内訳を先に確認すると整理しやすくなります。
