店舗を閉店・移転すると、業務用冷蔵庫、製氷機、調理機器、シンク、作業台、テーブル、椅子、棚、POS機器など、さまざまな設備を撤去する必要があります。
このとき、「店舗設備の処分はいくらくらいかかるのか」と調べても、金額にはかなり幅があります。
理由は、処分費用が単純な「設備1台の廃棄代」ではないためです。
実際の見積には、設備そのものの処理費だけでなく、取り外し、搬出人員、養生、車両、運搬、階段作業、フロン回収などが加わることがあります。
そのため、店舗設備の処分費は「1台いくら」という相場だけを見るのではなく、何にいくらかかっているのかを分解して確認することが重要です。
店舗設備の処分費用には全国一律の相場がない
店舗設備には、数kgの小型機器から数百kgある業務用冷蔵庫、大型厨房設備、造作什器まで含まれます。
さらに、1階の路面店からそのまま搬出できる場合と、地下店舗やエレベーターのない上階から搬出する場合では作業条件が異なります。
2026年9月時点で確認できる公開料金例でも、業務用冷蔵庫等の処分について1台1万円前後から数万円台、条件によってはそれ以上まで幅があります。
したがって、特定の金額を「店舗設備の一般相場」として自社店舗へそのまま当てはめるのは適切ではありません。
概算を考えるときは、次の構造で整理すると分かりやすくなります。
| 費用 | 主な内容 |
|---|---|
| 機器・設備の処理費 | 廃棄・リサイクルする設備そのものの処理 |
| 取り外し費 | 電気・ガス・給排水・固定設備等の切離し |
| 搬出作業費 | 作業員、人員追加、分解等 |
| 養生費 | 床・壁・エレベーター・共用部の保護 |
| 車両・運搬費 | トラック、運搬距離等 |
| 特殊作業費 | 階段、クレーン、吊り下げ、狭所等 |
| 法令対応費 | フロン回収等、品目ごとに必要な処理 |
| 追加条件 | 夜間・早朝、緊急対応、短工期等 |
一方、売却できる設備があれば、買取額を処分費から実質的に相殺できる場合があります。
まだ売却できるか確認していない場合は、処分業者へすべて引き渡す前に店舗設備を買取と処分のどちらにするかを確認してください。
店舗設備の処分見積を決める8つの項目
1.設備の種類・大きさ・重量
同じ「厨房機器」でも、卓上機器と4枚扉の業務用冷蔵庫では搬出方法が違います。
処分見積では、少なくとも次の情報が必要です。
- 設備の種類
- メーカー
- 型番
- おおよその寸法
- 重量
- 台数
- 設置場所
型番が分かれば、業者側で寸法や重量、冷媒等を確認できる場合があります。
閉店時は、まず設備一覧を作り、銘板の写真を残しておくと見積依頼がしやすくなります。
2.設備を外す工事が必要か
床に置いてあるテーブルと、ガス・電気・給排水へ接続された厨房機器では撤去作業が異なります。
たとえば次のような設備では、単純に運び出すだけでは終わらない場合があります。
- ガスレンジ
- 食器洗浄機
- 大型製氷機
- 給湯設備
- 業務用エアコン
- ダクト・排気設備
- 給排水に接続した設備
- 床・壁へ固定した什器
切離し工事が処分見積に含まれるのか、別業者へ依頼する必要があるのかを確認します。
特に原状回復工事と同時に設備を撤去する場合は、設備処分と内装解体の工事範囲が重複しないようにします。
3.搬出に何人必要か
大型設備では、処分費そのものより搬出人件費が金額へ影響することがあります。
次のような条件では人数が増えやすくなります。
- 大型・重量物
- 分解しなければ出口を通らない
- 階段で搬出する
- 厨房内の通路が狭い
- 床や壁を傷付けられない
- 人力で持ち上げる必要がある
電話で「冷蔵庫1台」と伝えるだけでは正確な見積が出にくいため、設備本体だけでなく搬出経路の写真も送ります。
4.店舗からトラックまでの搬出条件
設備を店舗から外へ出した後も、トラックへ積載するまでの条件によって費用が変わります。
確認したいのは次のような項目です。
- 店舗が何階か
- エレベーターがあるか
- エレベーターのサイズ
- 店舗前へトラックを停められるか
- 搬出距離
- 商業施設の搬出ルール
- 共用部の養生が必要か
- 搬出可能な時間帯
大型商業施設では、バックヤードから指定搬出口まで長い距離を運ぶケースもあります。
また、営業時間中に搬出できず、夜間・早朝作業になる場合は追加費用の有無を確認します。
5.フロン類を使用する機器か
業務用冷蔵庫、冷凍庫、冷蔵ショーケース、製氷機、業務用エアコンなどでは、冷媒としてフロン類が使用されている場合があります。
フロン類を使用する業務用冷凍空調機器を廃棄する場合は、通常の廃棄物処理だけでなく、フロン排出抑制法に基づく対応が必要です。
そのため、見積では次の点を確認します。
- フロン使用機器か
- 誰がフロン回収を行うか
- 回収費用が見積に含まれているか
- 回収依頼書・委託確認書等を誰が管理するか
- 引取証明書を受け取れるか
「冷蔵庫の処分費○円」だけでは、フロン回収まで含んでいるか分からないことがあります。
業務用冷蔵庫については、処分する前に業務用冷蔵庫の買取可能性も確認してください。
6.廃棄物として誰がどのルートで処理するか
店舗から出た物だからといって、家庭の粗大ごみと同じように処分できるとは限りません。
事業活動に伴って生じた廃棄物については、事業者に適正処理の責任があります。
また、産業廃棄物に該当するものを外部へ処理委託する場合は、許可を持つ収集運搬業者・処分業者への委託や、委託契約、マニフェスト等の確認が必要になります。
一括撤去会社へ依頼する場合でも、次の点を確認します。
- 何を中古品として再利用するか
- 何を廃棄物として処理するか
- 廃棄物を誰が収集運搬するか
- 誰が処分するか
- 必要な許可範囲を満たしているか
- 処理の証跡を確認できるか
「全部まとめて持っていきます」という説明だけでなく、買取品と廃棄物の処理ルートを分けて確認します。
撤去・廃棄全体については、店舗・オフィスの撤去・廃棄も参照してください。
7.家電リサイクル法の対象機器か
店舗にある冷蔵庫やエアコンについては、「店舗で使っていたからすべて業務用」とは限りません。
家電リサイクル法では、対象となる家庭用機器であれば、事業所で使用していたものでも対象になります。
一方、業務用として製造された冷蔵庫・冷凍庫などは、家電リサイクル法の対象外です。
見た目だけで判断しにくい場合は、型番を確認し、家庭用機器か業務用機器かを確認します。
つまり、同じ「店舗の冷蔵庫」でも、機器によって処分ルートが同じとは限りません。
8.回収日時・期限・特殊条件
閉店時の設備処分は、通常の買い替えと違い、明渡期限があります。
次の条件では費用が増える場合があります。
- 翌日・即日回収
- 夜間・早朝作業
- 土日・施設休館日の作業
- 複数台の車両が必要
- 短時間で店舗を空にする必要がある
- クレーンや特殊搬出が必要
原状回復工事が始まってから設備が残っていると、解体工程に影響する場合があります。
閉店日ではなく、原状回復工事の着工日から逆算して設備搬出日を決めるのがポイントです。
店舗設備の処分見積は総額ではなく内訳を見る
2社から見積を取ったとき、総額だけを比べると条件が違うことがあります。
たとえば次のように分けて確認します。
| 見積項目 | 確認すること |
|---|---|
| 設備処理費 | 何台・何品目を処理する金額か |
| 取り外し費 | 電気・ガス・給排水等を含むか |
| 搬出費 | 人数・作業時間を含むか |
| 養生費 | 店舗内・共用部の養生範囲 |
| 運搬費 | 車両台数・距離 |
| 特殊作業 | 階段・クレーン・分解等 |
| フロン対応 | 回収・証明等を含むか |
| 追加料金 | 夜間・緊急・作業条件変更時 |
「店舗設備撤去一式 30万円」という見積より、何が含まれているか分かる見積の方が比較しやすくなります。
設備を処分する前に買取査定を入れる
閉店費用を減らすという意味では、処分費を値切るより、まだ売却できる設備を処分対象から外す方が効果が大きい場合があります。
売却候補になりやすいのは、たとえば次のような設備です。
- 比較的新しい業務用冷蔵庫
- 製氷機
- コールドテーブル
- 食器洗浄機
- フライヤー
- オーブン
- ステンレス作業台
- 店舗什器
- ブランド家具
- 一部OA機器
実際に売れるかは、メーカー、年式、型番、状態、中古需要、搬出条件等によって変わります。
店舗全体で何が売却できるかを確認したい場合は、店舗閉店時の買取から確認してください。
買取可能性がある物と処分すべき物を先に分けることで、処分量そのものを減らせます。
店舗設備の処分費を抑える5つの方法
売れる設備を先に分ける
買取対象品まで有料処分へ入れないことが最も基本です。
同じ日にまとめて搬出する
車両・作業員の基本費用が発生する場合、設備を何度も分けて回収するより、まとめて搬出した方が効率的なケースがあります。
設備情報を事前に正確に伝える
型番、寸法、台数、階数、エレベーター、搬出経路の写真を事前に渡すことで、当日の追加費用リスクを減らせます。
原状回復業者との工事範囲を重複させない
設備撤去業者と原状回復業者の両方の見積に同じ作業が入っていないか確認します。
退去直前まで待たない
時間がなくなるほど、業者や日程の選択肢が減ります。
閉店費全体を減らす進め方については、店舗閉店費用を抑える方法も参照してください。
見積依頼時に送る情報
店舗設備の処分見積を取るときは、最初から次の情報を送るとやり取りを減らせます。
- 店舗所在地
- 店舗階数
- エレベーターの有無
- 設備一覧
- メーカー・型番
- 台数
- 設備本体の写真
- 銘板の写真
- 搬出経路の写真
- 階段や段差
- トラック駐車位置
- 希望搬出日
- 原状回復工事開始日
- 買取査定も希望するか
現地調査が必要な案件でも、事前情報が多いほど見積条件を揃えやすくなります。
店舗設備の処分についてよくある質問
店舗設備の処分費用はいくらくらいですか?
設備の種類、大きさ、重量、台数、搬出条件、地域、フロン対応等で変わるため、一律の金額では決まりません。
公開料金例では業務用冷蔵庫1台でも1万円前後から数万円台、条件によってはそれ以上まで幅があります。
自店の費用を確認するときは、設備処理費だけでなく取り外し・搬出・運搬等を含む総額で比較してください。
店舗の設備は自治体の粗大ごみに出せますか?
事業活動から生じた廃棄物は家庭ごみとは扱いが異なります。
品目や廃棄物区分によって処理方法が異なるため、自治体や適切な処理業者へ確認してください。
業務用冷蔵庫の処分にはフロン回収が必要ですか?
フロン類を使用する業務用冷凍・冷蔵機器であれば、廃棄時にフロン排出抑制法に基づく対応が必要です。
ノンフロン機器など対象外の機器もあるため、型番・冷媒を確認します。
店舗で使っていた冷蔵庫は家電リサイクル法の対象ですか?
「店舗で使ったか」ではなく、家庭用として製造された機器か、業務用機器かで確認します。
家電リサイクル法対象の家庭用機器であれば、事業所で使用していたものでも対象になります。業務用機器は同法の対象外です。
リース中の設備は処分できますか?
自社に所有権がない設備を独断で処分することはできません。
リース会社へ返却、契約終了、買取等の条件を確認してください。
産業廃棄物のマニフェストは必要ですか?
産業廃棄物を外部の処理業者へ委託する場合には、マニフェスト等によって処理の流れを確認する仕組みがあります。
実際の設備がどの廃棄物区分になるか、誰が排出事業者になるかを確認したうえで適切に処理します。
買取と処分を同じ会社へ依頼できますか?
買取と撤去・処分を一括対応する事業者もあります。
その場合でも、買取品と廃棄物を分け、処分部分を誰がどの許可・委託関係で処理するか確認してください。
店舗設備の処分費は「設備代」より作業条件を見る
店舗設備の処分費を確認するとき、設備1台の処分価格だけを比較しても、自店の総額は分かりません。
最終的な費用は、
- 何を処分するか
- 取り外しが必要か
- 何人で搬出するか
- どこから搬出するか
- 特殊設備やフロン対応があるか
- いつまでに撤去する必要があるか
によって変わります。
また、処分を決める前に買取・再利用できる設備を分けておけば、廃棄量そのものを減らせます。
店舗設備の処分見積を比較するときは、設備一覧と搬出条件をそろえ、処理費・取り外し・搬出・運搬・法令対応を分けて確認してください。
