B工事や原状回復の見積を受け取ったとき、「この会社しか使えません」と管理会社から説明されることがあります。
見積が想定より高ければ、自社で付き合いのある施工会社や、別の内装会社へ変更できないか考えるのは自然です。
ただし、指定業者を変更できるかどうかは、「B工事だから変更できない」「費用を負担する借主だから自由に選べる」といった一律のルールでは決まりません。
確認すべきなのは、その工事について誰が施工会社を選ぶことになっているのか、その根拠がどの資料にあるのかです。
この記事では、B工事や退去時の指定業者について、変更できる可能性があるケース、変更しにくいケース、変更できない場合に検討できる代替策を整理します。
B工事そのものの仕組みから確認したい場合は、先にB工事・指定業者の総合ガイドをご覧ください。
B工事の指定業者は必ず変更できないわけではない
A工事・B工事・C工事という呼び方は、建物の工事実務で広く使われています。
ただし、全国のすべてのビルについて「B工事はこの業者が施工しなければならない」と法律で一律に決められているわけではありません。
実際の工事区分や施工者は、物件ごとに、
- 賃貸借契約書
- 原状回復に関する特約
- 工事区分表
- 館内工事規則
- 施工要領
- 貸主・管理会社との個別合意
などによって定められています。
そのため、「B工事だから変更できません」と説明された場合も、まず何を根拠に指定されているのかを確認します。
最初に賃貸借契約書を確認する
指定業者を変更できるか考えるとき、最初に見るのは見積書ではなく賃貸借契約書です。
例えば、契約書や特約に、
- 原状回復工事は貸主指定業者が施工する
- 設備工事は貸主が指定する施工会社へ発注する
- 工事は貸主または管理会社が承認した業者に限る
- 工事会社は別紙工事区分表による
といった定めがあるか確認します。
明確に指定業者による施工へ合意している場合、借主だけの判断で別業者へ変更するのは難しくなります。
一方、契約書に単に「借主は原状回復を行う」としか記載されておらず、施工会社について定めがない場合は、指定業者とする根拠を改めて確認する余地があります。
契約書だけでなく工事区分表も確認する
賃貸借契約書の本文には細かい工事区分を書かず、別紙の工事区分表で定めている物件もあります。
工事区分表では、工事項目ごとに、
- 誰が発注するか
- 誰が施工会社を選ぶか
- 誰が費用を負担するか
- 誰の資産になるか
などを整理していることがあります。
例えば、空調・防災・電気設備など建物全体に影響する部分だけ指定業者となり、内装解体や仕上げ工事については借主側で施工会社を選べるケースもあります。
「今回の工事全体がB工事」とまとめて考えず、工事項目単位で確認することが大切です。
なぜ建物側が施工会社を指定するのか
指定業者には、単に施工会社を固定するだけではなく、建物管理上の理由があります。
特に、
- 中央空調設備
- 受変電設備
- 分電盤・幹線
- 消防・防災設備
- スプリンクラー
- 給排水設備
- ビル管理システム
- 共用部
などへ工事が及ぶ場合、施工ミスが自社区画だけでなく、建物全体や他テナントへ影響する可能性があります。
また、建物の設備仕様や既存配管・配線、過去の工事履歴を把握している施工会社を継続して使うことに合理的な理由がある場合もあります。
そのため、見積が高いという理由だけで、指定制度自体をなくせるとは限りません。
指定業者を変更できる可能性があるケース
契約書に指定業者の定めがない
まず確認したいケースです。
契約書、特約、工事区分表、館内規則を確認しても指定施工会社について明確な記載がない場合は、「なぜ今回この会社でなければならないのか」を貸主や管理会社へ確認します。
ただし、契約書に記載がないから自動的に好きな会社へ発注してよい、と判断するのも危険です。
建物設備への工事については、別途承認手続きや施工基準が存在することもあります。
貸主・管理会社が例外を承認する
契約上は指定業者であっても、貸主側が個別に承認すれば、別の施工会社を使える可能性があります。
例えば、
- 同等の施工資格・実績を持つ
- ビルの施工基準を満たす
- 必要な保険へ加入している
- 管理会社の工事申請へ対応できる
- 指定業者による立会いや接続工事を受け入れる
といった条件を満たすことが求められる場合があります。
変更を希望する場合は、候補会社の会社概要、施工実績、保険、許可、施工体制などを示した方が協議しやすくなります。
工事の一部をC工事へ切り分けられる
指定業者そのものを変更できなくても、工事範囲を見直せる場合があります。
例えば、建物設備との接続部分は指定業者が施工し、それ以外の内装工事や解体工事を借主側の施工会社が担当する形です。
この場合、指定業者を全面的に変更するのではなく、指定が本当に必要な部分だけをB工事として残すことになります。
工事範囲の切り分けは、B工事費を見直す方法の一つです。
詳しくはB工事を減額する方法でも整理しています。
管理会社が複数の承認業者を用意している
物件によっては、特定の1社だけではなく、複数の登録・承認業者の中から選べる場合もあります。
「指定業者」と言われた場合でも、
- 1社のみなのか
- 複数の指定会社から選べるのか
- 新規に承認を受ける余地があるのか
を確認します。
指定業者を変更しにくいケース
契約書に施工会社指定が明確に書かれている
契約締結時に指定業者による施工へ合意している場合、借主側が一方的に別会社へ変更するのは難しくなります。
「自社の施工会社なら半額になる」という事情だけで、契約上の指定がなくなるわけではありません。
建物の基幹設備へ直接工事する
空調、防災、電気、給排水、ビル管理システムなど、他区画や建物全体に影響する設備では、建物側が施工会社を限定する必要性が高くなります。
この場合、施工会社の変更より、見積内容や仕様を精査する方が現実的なことがあります。
保証や責任分界の問題がある
複数の施工会社が同じ設備へ介入すると、故障や不具合が発生した際に責任範囲が分かりにくくなります。
そのため、建物側が設備施工を特定会社へ集約している場合があります。
退去・開業まで時間がない
施工会社を変更する場合、
- 新規会社の審査
- 施工計画確認
- 工事申請
- 工程調整
- 保険・許可確認
などが必要になることがあります。
退去期限や開業日が迫っていると、変更できる可能性があってもスケジュール上難しくなることがあります。
「見積が高い」は指定業者変更の根拠になるのか
高額な見積は、内容を確認する十分な理由になります。
ただし、見積が高いことと、施工会社を変更できることは別の問題です。
例えば、契約上指定業者となっている場合は、
- 工事範囲
- 数量
- 仕様
- 一式項目
- 諸経費
- 管理費
- B工事とC工事の境界
を確認し、現在の指定業者のまま見積を見直す方法もあります。
見積の確認方法はB工事の見積が高いときに確認する7項目、見積書の読み方はB工事の見積内訳の見方で詳しく解説しています。
指定業者変更を相談するときの進め方
1.指定の根拠を確認する
まず管理会社へ、
- どの契約条項による指定か
- どの工事項目が指定対象か
- 工事区分表のどこに該当するか
を確認します。
「B工事なので」という説明だけで終わらせず、具体的な対象範囲を確認します。
2.変更したい理由を整理する
単に「安い会社を使いたい」だけでなく、
- 見積金額に大きな差がある
- 工期上の問題がある
- 同一会社で内装工事全体を管理したい
- 専門設備について既存取引先を使いたい
など、変更を希望する理由を整理します。
3.候補業者の条件を示す
別会社を使いたいのであれば、管理会社が判断できる情報を用意します。
- 会社概要
- 建設業許可等
- 施工実績
- 類似建物での経験
- 保険加入状況
- 施工体制
- 工程表
「別会社なら安い」という金額だけでは、建物側が承認しにくい場合があります。
4.全部変更ではなく部分変更も検討する
建物側が懸念する部分だけ指定業者へ残し、それ以外を借主側施工へできないか確認します。
例えば、
- 設備接続は指定業者
- 内装解体は借主側業者
- 仕上げ工事は借主側業者
という分担です。
全面変更が難しい案件でも、工事区分を調整できる可能性があります。
5.承認内容は書面で残す
施工会社や工事区分を変更できることになった場合は、口頭だけで進めない方が安全です。
少なくとも、
- 承認された施工会社
- 施工範囲
- 指定業者が担当する範囲
- 借主側業者が担当する範囲
- 検査方法
- 責任分界
をメール、議事録、承認書などで確認できる状態にします。
指定業者を変更できない場合に検討する5つの方法
1.工事範囲を見直す
指定会社を変更できなくても、その会社へ発注する工事範囲まで固定されているとは限りません。
工事区分表と見積を照合し、必要な部分だけがB工事になっているか確認します。
2.仕様を見直す
同じ性能を確保できる別仕様や施工方法が認められるなら、費用が変わることがあります。
指定会社を変えずに、VE・仕様変更でコストを調整する方法です。
3.数量・内訳を確認する
数量、一式項目、管理費、諸経費などを確認し、見積自体の前提を整理します。
指定業者であることと、その見積を無条件で承認することは同じではありません。
4.第三者査定を使う
自社で妥当性を判断できない場合は、第三者に見積を確認してもらう方法があります。
施工会社の変更ができなくても、査定結果を再見積や仕様協議の材料として使える場合があります。
詳しくはB工事の見積査定とは?をご覧ください。
5.指定業者と値下げ・再見積を協議する
工事範囲、数量、仕様などの確認材料が揃ったら、指定業者へ再見積を依頼します。
会社そのものを変更できなくても、発注内容や金額を見直せる可能性はあります。
指定業者との具体的な値下げ交渉については、別記事で詳しく扱います。
指定業者以外へ無断で発注するのは避ける
指定条件に納得できないからといって、貸主・管理会社の承認を得ずに別会社へ施工させるのは避けた方がよいでしょう。
無承認工事を行うと、
- 工事停止
- 再施工
- 復旧要求
- 退去スケジュールの遅延
- 追加費用
- 責任範囲をめぐるトラブル
につながる可能性があります。
特に退去期限を超えると、工事費以外の損失が発生することもあります。
変更を希望する場合は、着工前に承認条件を整理します。
契約書の記載が曖昧な場合
実務では、「貸主の指定する方法で原状回復する」「貸主の承認する施工者を使用する」など、判断範囲が広い表現が使われている場合もあります。
また、賃貸借契約書と工事区分表の内容が分かりにくいケースもあります。
このような場合は、まず管理会社へ書面で確認し、
- どの工事項目について
- どの資料を根拠に
- 誰が施工会社を指定するのか
を整理します。
契約解釈そのものについて貸主と争いが生じている場合は、建築会社だけで判断せず、必要に応じて弁護士など法律専門家への相談も検討します。
次の物件では契約前に指定業者条件を確認する
B工事の問題は、見積が出た後になって初めて認識されることが少なくありません。
しかし、施工会社の指定条件は、入居前の契約時点で確認できる場合があります。
次の店舗・オフィスを契約するときは、
- B工事になる範囲
- 指定施工会社
- 工事区分表
- 指定会社の見積方法
- 相見積もりの可否
- 別業者承認の余地
- 原状回復時の施工会社指定
を確認しておくと、退去時やレイアウト変更時の費用を想定しやすくなります。
指定業者の変更についてよくある質問
B工事の指定業者は変更できますか?
物件ごとの契約内容と建物ルールによります。契約上明確に指定されている場合は借主だけで変更するのは難しい一方、貸主の承認によって変更できる場合や、工事の一部を借主側施工へ切り分けられる場合があります。
見積が高ければ指定業者を断れますか?
高額であることだけで、契約上の施工会社指定が当然になくなるわけではありません。まず見積内容を確認し、施工会社変更、工事区分変更、再見積のどれを協議するか整理します。
契約書に指定業者の記載がなければ自由に選べますか?
施工会社指定の根拠を確認する重要な材料にはなりますが、直ちに自由施工と決めつけるのは避けます。工事区分表、館内工事規則、設備工事の承認条件も確認してください。
自社の取引先へ変更したい場合はどうすればよいですか?
まず管理会社へ変更可能か確認し、候補会社の実績、許可、保険、施工体制などを提出します。必要に応じて指定業者との工事分担も提案します。
指定業者を変更できない場合は諦めるしかありませんか?
施工会社そのものを変更できなくても、工事範囲、数量、仕様、B/C工事区分、諸経費などを確認し、再見積を求められる場合があります。
変更承認は口頭でも大丈夫ですか?
後の工事範囲や責任分界のトラブルを避けるため、変更内容はメール、議事録、承認書など書面で残しておく方が安全です。
指定業者を変える前に「何が指定されているのか」を確認する
指定業者を変更できるか考えるときは、会社名だけを見るのではなく、指定の範囲を確認します。
- 賃貸借契約書を確認する
- 特約を確認する
- 工事区分表を確認する
- 館内工事規則を確認する
- 指定対象となる工事を分ける
- 変更承認の余地を管理会社へ確認する
- 難しい場合はB/C工事の切り分けや見積見直しを検討する
指定業者を全面的に変更できなくても、工事範囲や発注条件まで何も変更できないとは限りません。
すでに高額な見積を受け取っている場合は、B工事の見積が高いときに確認する7項目から見積内容を整理してください。
B工事費そのものを見直したい場合は、B工事を減額する方法もあわせて確認できます。
契約書・工事区分表・見積書を見ても、自社だけでは指定範囲や見積内容を判断できない場合は、お問い合わせから現在の状況をご連絡ください。
