カフェを閉店・移転するとき、エスプレッソマシンや冷蔵設備、カウンター、客席内装などを撤去して原状回復する前に、現在の店舗を居抜きで次の出店者へ引き継げる可能性があります。
カフェは大型厨房設備が少ない店舗もありますが、だからといって居抜き価値が低いとは限りません。
コーヒー設備、給排水・電源、カウンター、客席レイアウト、照明、自然光、入口からレジまでの導線、テイクアウトの受け渡し位置など、店舗全体の完成度が次の出店者にとって価値になる場合があります。
一方、高額なエスプレッソマシンが置いてあるだけで高く売れるわけでもありません。
居抜き売却では、設備・内装を「いくらで買ったか」ではなく、次の出店者がどこまでそのまま利用できるかを整理して見せることが重要です。
カフェの居抜き売却では何を引き継ぐ?
賃貸店舗の居抜き売却では、建物そのものを売却するのではなく、現在の借主が所有する内装・設備・什器などを次の借主候補へ造作として譲渡する形があります。
カフェで譲渡候補になり得るものには、たとえば次があります。
- エスプレッソマシン
- コーヒーグラインダー
- コーヒーブリューワー
- 業務用冷蔵庫・冷凍庫
- 製氷機
- オーブン・トースター等
- 食器洗浄機
- シンク・作業台
- カウンター
- テーブル・椅子
- 造作棚
- 照明
- レジ・POS周辺
- 看板
- その他の内装造作
ただし、店舗内にあるからといってすべて現在の借主が売却できるとは限りません。
貸主所有設備、リース品、レンタル品、コーヒー会社や仕入先等から貸与されている機器が混在している場合があります。
店舗居抜き売却全体の仕組みは、店舗を居抜きで売却する方法も参照してください。
カフェの居抜き査定で確認する8項目
1.貸主・管理会社が居抜きを認めるか
カフェ設備の査定より先に、現在の賃貸借契約と返還条件を確認します。
特に確認したいのは、
- 解約予告期間
- 退去時の原状回復範囲
- スケルトン返しの特約
- 造作譲渡に関する条件
- 貸主承諾の必要性
- 後継テナントの業態条件
- 原状回復へ切り替える期限
です。
現在カフェとして営業していても、後継者が自動的に同じ条件で入居できるわけではありません。
居抜き募集を本格化する前に、貸主・管理会社へどのような条件なら設備・造作を残したまま退去できる可能性があるか確認します。
貸主との調整については、居抜き退去で貸主の承諾を得る方法も確認してください。
2.エスプレッソマシン等の所有権を整理する
カフェでは、エスプレッソマシンやコーヒー関連設備が造作価値の一部になる場合があります。
ただし、まず確認すべきなのは中古価格ではなく所有権です。
| 区分 | 対応 |
|---|---|
| 自社購入 | 造作譲渡候補として整理 |
| リース | リース会社へ返却・承継等を確認 |
| レンタル | 契約会社へ確認 |
| 仕入先等からの貸与 | 所有者へ返却・引継ぎ可否を確認 |
| 貸主所有 | 勝手に譲渡しない |
設備一覧には、
- 機器名
- メーカー
- 型番
- 製造年
- 動作状態
- 所有者
まで記載しておくと、査定と買い手への説明を進めやすくなります。
3.コーヒー設備の電源・給排水条件を確認する
業務用エスプレッソマシンは機種によって、電源や給排水の条件が大きく異なります。
200V電源や給排水接続を必要とする業務用機種もあります。
そのため、買い手に伝えるときは「業務用エスプレッソマシンあり」だけではなく、可能な範囲で次を整理します。
- メーカー・型番
- 電源仕様
- 消費電力
- 給水方法
- 排水の有無
- 浄水器の有無
- 設置位置
- メンテナンス履歴
- 正常に動作するか
次の出店者が別メーカーの機器へ交換する場合でも、必要な電源・給排水がすでにカウンター付近へ整備されていれば、店舗計画の判断材料になります。
反対に、現在の機器にしか適合しない設備なら改修が必要になる可能性があります。
4.冷蔵・製氷・給排水・電気容量を整理する
カフェは大規模な加熱調理設備を使わない店舗もありますが、実際の設備条件はメニューによって異なります。
たとえば、
- 冷蔵庫・冷凍庫
- 製氷機
- 食器洗浄機
- オーブン
- IH・電気調理機器
- 給湯器
- シンク
などを利用していれば、給排水や電気容量も次の買い手の確認事項になります。
不動産実務ではカフェを「軽飲食」と表現することがありますが、軽飲食・重飲食という言葉だけで設備適合性を判断しない方が安全です。
次の買い手が焼菓子、パン、温かいフード等を増やす場合、現在より電気容量や排気設備が必要になることがあります。
売主側は「次も必ず営業できます」と保証するのではなく、現在の設備仕様を整理し、買い手側で営業計画との適合を確認できる状態にします。
5.カウンター・客席・内装の再利用性を見る
カフェでは厨房機器だけでなく、店舗の雰囲気や客席造作も居抜き価値になり得ます。
確認したいのは、
- カウンターの位置・長さ
- レジ位置
- 客席数
- 2名席・4名席等の内訳
- ベンチ席
- コンセント位置
- 照明
- 自然光
- 家具・インテリア
- 入口から客席までの見え方
などです。
カフェでは空間そのものが営業コンセプトの一部になることがあります。
一方、売主が高額な内装工事を行っていても、買い手が全面的にデザインを変更するなら、その工事原価がそのまま造作価格になるわけではありません。
造作価格全体の考え方は、造作譲渡価格の決め方も参照してください。
6.テイクアウト導線と少人数運営のしやすさ
カフェでは、店舗面積が大きくなくても、テイクアウトや少人数運営に適した導線そのものが次の出店者の判断材料になります。
たとえば、
- 入口から注文カウンターまで分かりやすい
- 注文と受け渡しが交差しにくい
- テイクアウト客が客席奥まで入らず受け取れる
- レジ・エスプレッソマシン・受渡口が近い
- 1〜2人でも厨房と客席を見やすい
- 入口付近に商品陳列スペースがある
といった点です。
店舗写真を用意するときは、内装の雰囲気だけでなく、入口からカウンター、厨房、客席までの位置関係が分かる写真も残します。
7.買い手が使える設備と「不要設備」を分ける
カフェ同士の譲渡でも、営業スタイルが同じとは限りません。
スペシャルティコーヒー中心、喫茶店、ベーカリーカフェ、スイーツ、テイクアウト専門などでは、必要な設備が変わります。
そのため、既存設備をすべて「価値がある物」として一括するのではなく、
- そのまま使える設備
- 買い手が選べる設備
- 不要なら売主側で撤去できる設備
- 所有権上、譲渡できない設備
に整理します。
同じカフェ業態の買い手なら設備を再利用しやすい場合がありますが、別の飲食業態でも内装・客席・給排水等を利用できる可能性があります。
売却先を「同じカフェだけ」に絞りすぎず、既存設備を活用できる周辺業態まで含めて募集条件を考えます。
8.居抜きが成立しない場合の期限を決める
買い手が見つかるまで無期限に居抜き募集を続けることはできません。
現在の賃貸借契約で原状回復が必要なら、最終的に、
- 設備の個別売却
- リース・貸与品の返却
- 残置物処分
- 内装撤去
- 原状回復工事
- 貸主検査
- 是正工事
へ切り替える時間が必要です。
解約日から必要日数を逆算し、「この日までに買い手が決まらなければ通常退去へ切り替える」という期限を決めます。
居抜き売却を始める時期については、居抜き売却はいつから始める?を確認してください。
カフェの造作譲渡価格は何で決まる?
カフェの居抜き売却に、全国一律の「坪○万円」という価格基準はありません。
造作価値を考えるときは、
- コーヒー機器の状態
- 厨房・冷蔵設備の状態
- 給排水・電気設備
- 内装の再利用性
- カウンター・客席造作
- テイクアウト導線
- 店舗の視認性・入口条件
- 立地
- 賃料・保証金等の契約条件
- 後継テナント需要
- 募集できる期間
などをまとめて見ます。
新しいエスプレッソマシンだけで価格が決まるわけでも、内装工事に高額な費用を使ったからその金額を回収できるわけでもありません。
買い手が「この状態からなら追加工事を抑えて営業できる」と判断できるほど、店舗全体として検討しやすくなります。
査定項目全般については、造作譲渡の査定は何を見る?も参照してください。
エスプレッソマシンを先に売らない
閉店を決めると、高額で売れそうなエスプレッソマシンや製氷機を先に中古買取へ出したくなることがあります。
しかし、居抜き売却の可能性が残っている段階で主要設備を撤去すると、店舗全体の魅力が変わる場合があります。
たとえばカフェ開業希望者が「エスプレッソマシン・グラインダー・冷蔵設備までそのまま使える」ことを前提に検討している場合、機器を先に売れば設備導入費が新たに必要になります。
基本的には、
- 居抜きで残す可能性を確認する
- 造作・設備の所有権を整理する
- 店舗全体を査定する
- 居抜きで募集する
- 譲渡対象から外す設備を個別買取へ回す
- 売却できない物を撤去・処分する
という順番にすると選択肢を残しやすくなります。
設備を個別に売却する場合は、設備・什器買取も確認してください。
営業中に設備の動作と店舗状態を記録する
居抜き売却では、閉店後に写真だけを撮るより、営業できている状態の設備情報を残しておく方が買い手へ説明しやすくなります。
特に、
- エスプレッソマシン
- グラインダー
- 製氷機
- 冷蔵庫
- 食器洗浄機
- オーブン等
は、ライフライン停止後には正常動作を確認しにくくなる場合があります。
機器本体、銘板、稼働状況、給排水接続などを写真・動画で記録しておくと査定資料に使えます。
また、客席・入口・カウンターも営業中の状態を撮影しておけば、店舗の使われ方を伝えやすくなります。
食品営業の許可は造作譲渡と分けて確認する
カフェの居抜きでは、「現在飲食店として営業しているから、買い手もそのまま営業許可を使える」と考えない方が安全です。
食品衛生法では、許可を受けている営業そのものが譲渡された場合に、譲受人が許可営業者の地位を承継し、届出を行う制度があります。
一方、内装・厨房機器などの造作だけを売買する取引が、当然に「営業そのものの譲渡」と同じ扱いになるわけではありません。
そのため、後継テナントは、
- 造作だけを買うのか
- 営業そのものの事業譲渡なのか
- 既存許可の地位承継手続を利用できるのか
- 施設変更により追加確認が必要か
を整理し、店舗所在地を管轄する保健所等へ必要手続きを確認します。
「居抜き物件だから営業許可まで付いてくる」と募集時に断定しないようにします。
査定・募集前に準備する資料
カフェの居抜き査定を相談するときは、次をそろえておくと進めやすくなります。
- 店舗平面図
- 店舗内写真
- 入口・外観写真
- カウンター・客席写真
- 厨房・バックヤード写真
- 主要設備一覧
- メーカー・型番・年式
- 設備銘板写真
- 電源仕様
- 給排水情報
- リース・貸与品一覧
- 席数・客席構成
- テイクアウト導線
- 賃貸借契約の原状回復条件
- 解約予告日・退去期限
設備だけでなく、「次の出店者がどのように店舗を使えるか」が分かる資料を用意します。
カフェの居抜き売却についてよくある質問
エスプレッソマシンがあれば高く売れますか?
それだけでは決まりません。
メーカー・型番・年式・状態・所有権・中古需要に加えて、買い手がその機器を使うか、必要な電源・給排水が店舗側に整っているかなども関係します。
古いコーヒーマシンでも居抜き価値になりますか?
年式だけでは判断できません。
正常に動作するか、中古需要があるか、次の買い手が再利用するかなどを含めて評価されます。
リースや貸与のエスプレッソマシンも譲渡できますか?
自社に所有権がない場合、借主の判断だけで売却することはできません。
リース会社、レンタル会社、仕入先等へ返却・契約承継等の条件を確認してください。
軽飲食可の物件なら次のカフェも営業できますか?
「軽飲食可」という表示だけでは判断できません。
次のカフェが提供するメニュー、加熱調理、排気・臭気、電気容量、給排水、営業時間などを貸主・管理会社へ具体的に確認します。
飲食店営業許可はそのまま引き継げますか?
営業そのものの譲渡では、食品衛生法上、許可営業者の地位を承継する制度があります。
ただし、造作・設備を買うだけの取引と事業譲渡は同じではありません。
後継者は契約内容を整理し、所管保健所等へ必要な届出・許可手続を確認してください。
カフェを居抜きで売れば原状回復費はゼロですか?
必ずゼロにはなりません。
貸主が残置を認めない設備、看板、私物、部分補修などが残る場合があります。
また、居抜きが不成立になれば契約どおり原状回復が必要になる可能性があります。
営業中でも売却募集できますか?
営業中から査定・募集できるサービスはあります。
閉店情報を顧客・従業員・取引先へ早く知られたくない場合は、匿名募集や住所・店舗名を開示するタイミングを確認します。
カフェの居抜き売却相場はいくらですか?
全国一律の相場はありません。
設備、内装、立地、賃貸条件、客席・導線、買い手需要、募集できる期間などによって変わります。
公開されている希望譲渡額や過去の個別成約額を、そのまま自店舗の価格として使わず、現在の店舗条件で査定します。
カフェは「機器+空間+導線」を一体で見せて売る
カフェの居抜き売却では、エスプレッソマシンや冷蔵庫だけを査定するのではなく、店舗全体を次の出店者がどう利用できるかを整理します。
確認したいのは、
- 貸主が居抜きを認めるか
- 設備の所有権が明確か
- コーヒー設備の電源・給排水が分かるか
- 冷蔵・製氷・厨房設備を再利用できるか
- 客席・内装を活かせるか
- テイクアウト・少人数運営の導線が使いやすいか
- 買い手が不要な設備を分けられるか
- 退去期限までに譲渡を成立できるか
という点です。
閉店を決めた時点で設備を先に撤去・売却せず、現在のカフェを一体として引き継げる買い手がいないか確認してから、居抜き売却、設備単品買取、原状回復の順番を決めると選択肢を残しやすくなります。
