造作譲渡価格はいくら?相場の見方と価格を決める7項目

店舗を居抜きで譲渡するとき、「造作はいくらで売れるのか」「いくらで募集すればよいのか」は、売主にとって大きな問題です。

内装工事に1,000万円かけた店舗なら、できるだけ高い金額で譲渡したいと考えるのは自然です。

しかし、造作譲渡価格は過去にいくら投資したかだけでは決まりません。

次のテナントから見れば重要なのは、その内装・厨房設備・什器をこれからどの程度使えるか、それを引き継ぐことで新規開業費をどれだけ減らせるかです。

さらに、賃料、保証金、追加改装費、店舗の立地、後継テナントを探せる期間なども価格へ影響します。

造作譲渡価格は「設備の中古価格」だけでなく、「その店舗を引き継ぐ買い手にとっての利用価値」と「売主が退去までに残された時間」の両方で決まります。

この記事では、公開されている造作譲渡相場の見方から、自店舗の募集価格を決める7項目、高く設定しすぎた場合のリスクまで整理します。

造作そのものの査定項目を詳しく知りたい場合は、造作譲渡の査定は何を見る?をご覧ください。

目次

造作譲渡価格とは?

造作譲渡価格とは、現在の借主が店舗内に所有している内装・設備・什器などを、後継テナントへ譲渡するときに設定する価格です。

譲渡対象には、例えば、

  • 厨房設備
  • カウンター
  • 客席
  • 空調設備
  • 給排水設備
  • 照明
  • 看板
  • 店舗什器
  • 美容設備

などがあります。

何を造作譲渡へ含めるかは店舗ごとに異なります。

造作譲渡価格と店舗そのものの売却価格は違う

造作譲渡では、基本的に内装・設備等の価値を後継テナントへ引き継ぎます。

一方、会社・事業そのものを売却するM&Aでは、

  • 売上
  • 利益
  • ブランド
  • 顧客
  • 従業員
  • ノウハウ

などの事業価値まで対象になることがあります。

「店舗売却で1,000万円」という事例があっても、それが造作譲渡なのか事業譲渡なのかを分けて考えます。

造作譲渡の相場はいくら?

造作譲渡については、数十万円から数百万円程度までさまざまな価格例が公開されています。

100万円〜300万円程度を一つの目安として紹介する情報もありますが、すべての店舗に使える価格帯ではありません。

実際には、

  • 0円の無償譲渡
  • 数十万円
  • 100万円台
  • 数百万円
  • 条件のよい店舗ではさらに高額

まで幅があります。

公開されている「相場」が募集価格か成約価格か確認する

特に注意したいのが、インターネットで公開されている造作譲渡価格です。

物件情報サイトの地域別相場には、実際の成約価格ではなく「募集時の希望譲渡額」を集計したものがあります。

例えば、

募集価格300万円

でも、実際には交渉して200万円で成約している可能性があります。

募集価格の平均を、そのまま「実際に売れる価格の平均」と考えないようにします。

地域別相場も参考値にとどめる

同じ東京都内でも、

  • 商圏
  • 路面・空中階
  • 賃料
  • 店舗面積
  • 業態

が違えば、買い手の需要は変わります。

地域平均は価格感を見る材料にはなりますが、最終的には自店舗の条件へ置き換えます。

造作譲渡価格を決める7項目

  1. 譲渡する設備・造作と所有権
  2. 設備・内装の再利用価値
  3. 次の業態への適合性
  4. 賃料・保証金など物件条件
  5. 買い手に必要な追加改装費
  6. 退去期限と原状回復回避額
  7. 仲介手数料等を引いた最終手取り

1.譲渡する設備・造作と所有権を確定する

価格を決める前に、何を売れるのかを整理します。

店舗内にある物でも、すべて現在の借主が所有しているとは限りません。

例えば、

  • 貸主所有の空調
  • リース中の食洗機
  • レンタル機器
  • メーカー貸与品

などを勝手に造作譲渡価格へ含めることはできません。

譲渡対象一覧を作る

少なくとも、

  • 品名
  • メーカー
  • 型式
  • 年式
  • 状態
  • 所有者
  • 譲渡対象か

を整理します。

譲渡対象が明確になれば、買い手側も価格を判断しやすくなります。

2.設備・内装の再利用価値を見る

造作価格は「何円かけて作ったか」ではなく、「これから何円分使えるか」に近い考え方で見ます。

例えば、5年前に500万円かけた厨房でも、

  • 冷蔵庫が故障寸前
  • 製氷機が古い
  • ダクトの清掃が必要
  • 空調更新が必要

なら、買い手にとっての価値は低くなります。

取得原価をそのまま価格にしない

内装1,000万円だから造作500万円、というように単純な割合で決めることはできません。

内装費には、

  • デザイン費
  • 施工人件費
  • その店舗専用の工事

なども含まれており、次の借主に同じ価値があるとは限らないためです。

簿価もそのまま市場価格にはならない

会社の帳簿に残っている資産価額と、後継テナントが払いたい価格も別です。

簿価100万円の設備でも中古需要が高ければ100万円以上の利用価値を持つ場合があります。

反対に帳簿価額が残っていても、中古需要がなければ譲渡価格は低くなります。

3.次の業態への適合性を見る

造作は、次の事業者がそのまま利用できるほど価値が高くなりやすくなります。

例えば居酒屋の跡地へ居酒屋が入るなら、

  • 厨房
  • ダクト
  • グリストラップ
  • カウンター
  • 客席

をそのまま利用できる可能性があります。

一方、居酒屋から物販店へ変えるなら、多くの設備が不要になる可能性があります。

汎用性が高い造作は買い手候補が広がる

特殊なコンセプトに特化した内装より、複数の業態に転用しやすい店舗の方が買い手候補を増やせる場合があります。

価格だけでなく「誰に売れるのか」を考えます。

高額設備があるから高く売れるとは限らない

例えば300万円の特殊厨房設備があっても、その設備を必要とする業態が非常に限定されれば、買い手候補が少なくなります。

逆に、単価の低い設備でも多くの飲食店がそのまま利用できれば、店舗全体としての価値を高める場合があります。

4.賃料・保証金など物件条件を見る

造作譲渡では、設備だけで価格が決まりません。

後継テナントは造作を買うだけではなく、その物件を新たに借りる必要があります。

したがって、

  • 月額賃料
  • 共益費
  • 保証金・敷金
  • 礼金
  • 契約期間
  • 業態制限

なども造作価格へ影響します。

造作300万円でも物件条件が重ければ買い手が減る

例えば、

  • 造作300万円
  • 保証金600万円
  • 仲介等100万円
  • 追加改装200万円

なら、買い手の初期投資は造作価格だけではありません。

造作代金だけを見て「300万円なら安い」と判断できないためです。

賃料が高い物件では造作価格を下げても決まりにくいことがある

後継テナントにとって長期的な負担は賃料です。

造作価格を50万円下げても、毎月の賃料が市場と大きく合っていなければ出店判断につながらない場合があります。

価格交渉だけでは解決しない条件もあります。

5.買い手に必要な追加改装費を見る

買い手は現在の店舗を100%そのまま使うとは限りません。

例えば、

  • 看板変更
  • 壁・床変更
  • 厨房レイアウト変更
  • 設備更新
  • 電気容量変更
  • 空調修理

などが必要になることがあります。

買い手は「造作価格+追加工事」で考える

例えば、

A店舗:造作300万円、追加改装50万円

B店舗:造作100万円、追加改装300万円

なら、買い手の負担は、

A店舗:350万円

B店舗:400万円

です。

造作価格だけならB店舗の方が安くても、開業までの総額では逆転します。

修理が必要な設備は先に開示する

設備状態を良く見せて高値で成約しても、引渡し後に故障が判明すればトラブルになる可能性があります。

例えば、

  • 冷蔵庫の冷却不良
  • 食洗機のエラー
  • 空調の故障
  • 給排水不具合

などは、分かっている範囲で伝えます。

6.退去期限と原状回復回避額を見る

売主側で特に重要なのが、あと何日・何か月募集できるかです。

造作価格500万円を希望していても、その価格にこだわるうちに契約終了日が近づけば、最終的に買い手が見つからず原状回復へ切り替える可能性があります。

高く売ることより早く決める方が得な場合がある

例えば、

ケースA

  • 造作譲渡:300万円
  • 原状回復回避:400万円
  • 追加賃料:0円

ケースB

  • 造作譲渡:400万円
  • 高値を待つため追加賃料:100万円
  • 仲介等追加費用:20万円

なら、売却価格が100万円高くてもBの方が必ず得とは限りません。

造作価格0円でも合理的な場合がある

造作を無料で譲ると、「せっかく設備にお金をかけたのに損だ」と感じるかもしれません。

しかし、

  • 原状回復費400万円
  • 廃棄費100万円

を回避できるなら、造作譲渡代金が0円でも500万円分の退去コストを避けられる可能性があります。

売主にとって造作の価値は、受け取る譲渡代金だけではありません。

居抜きと原状回復の比較については、店舗閉店は居抜きと原状回復のどちらを選ぶ?をご覧ください。

退去期限が近いほど価格交渉力は下がりやすい

買い手側から見れば、売主が「あと1週間で決めなければ原状回復する」と分かれば、値下げ交渉をしやすくなります。

そのため、閉店直前から募集するより、貸主へ相談したうえで早く動ける方が価格面でも有利になりやすくなります。

後継テナント探しの期間については、居抜きの後継テナント探しは何ヶ月必要?をご覧ください。

7.手数料を引いた最終手取りを見る

造作譲渡が300万円で成立しても、300万円がそのまま手元に残るとは限りません。

例えば、

  • 造作譲渡手数料
  • 仲介関連費用
  • 譲渡しない設備の撤去
  • 残置物処分
  • 設備補修

などが発生する場合があります。

最終手取りで比較する

例えば、

A社

  • 成約価格:300万円
  • 手数料等:50万円
  • 最終手取り:250万円

B社

  • 成約価格:270万円
  • 手数料等:10万円
  • 最終手取り:260万円

なら、成約価格が高いA社よりB社の方が多く残ります。

居抜き仲介の料金については、居抜きの仲介手数料はいくら?をご覧ください。

造作譲渡価格は3つの数字を決める

売却前に、価格を一つだけ決めるのではなく、次の3つを分けると判断しやすくなります。

1.募集希望価格

最初に市場へ提示する価格です。

査定額、近隣募集額、設備状態、募集期間を踏まえて設定します。

2.現実的な成約目標価格

買い手から値下げ交渉が入ることを考えたときに、実際に成約させたい価格です。

3.最低許容価格

これより下なら、

  • 設備を個別売却する
  • 無償譲渡する
  • 原状回復する

など別の選択肢を取るというラインです。

最低価格を決めずに交渉すると、その場で感覚的に値下げすることになります。

最低許容価格は「造作価値」だけで決めない

例えば設備だけなら100万円で売却できるとしても、後継テナントへ一括で無償譲渡することで400万円の原状回復を回避できるなら、0円譲渡の方が有利な可能性があります。

最低価格は、

個別売却時の手取り・原状回復費・廃棄費・残り賃料

を比較して設定します。

造作価格を高く設定しすぎるとどうなる?

高値で募集すること自体が悪いわけではありません。

退去まで十分な期間があり、設備状態や立地条件がよければ、高めの価格から市場反応を見る方法もあります。

ただし、反応がない状態を長く放置することにはリスクがあります。

問い合わせが少なくなる

買い手は他の居抜き物件とも比較します。

賃料・立地・設備が近い店舗より造作価格だけ突出して高ければ、内見前に候補から外される可能性があります。

募集可能期間が減る

高値のまま1か月、2か月と経過すれば、原状回復へ切り替えるまでの期間が短くなります。

最後に大幅値下げすることになる

退去期限直前になれば、買い手側にも売主の時間がないことが分かります。

最初から適正に価格調整していれば成立した条件より、大きな値下げを求められる可能性もあります。

募集後は価格だけでなく反応を確認する

一定期間募集したら、

  • 問い合わせ数
  • 内見数
  • 申込み数
  • 価格への反応
  • 設備への反応
  • 賃貸条件への反応

を確認します。

問い合わせがゼロなら価格以外の原因もある

例えば、

  • 賃料が高い
  • 募集情報が不足している
  • 業種制限が厳しい
  • 公開写真が少ない
  • 募集チャネルが合っていない

可能性があります。

価格を下げる前に原因を分けます。

内見は多いが申込みがない場合

この場合は、

  • 造作価格
  • 設備状態
  • 追加改装費
  • 保証金等の初期費用

が障壁になっている可能性があります。

造作譲渡価格の査定は複数の視点で見る

査定会社から「300万円」と言われても、それが唯一の正解ではありません。

査定会社によって、

  • 持っている買い手
  • 得意な業態
  • 対象エリア
  • 売却期間

が違うためです。

必要に応じて複数の査定・募集条件を確認します。

ただし、同時に複数社へ募集を依頼できるかは契約条件を確認してください。

査定価格と買取価格も同じではない

居抜き仲介会社の「造作300万円で募集できる」という査定と、厨房機器買取会社が「設備一式100万円で買い取る」という価格は意味が違います。

居抜きの造作譲渡では、

  • 店舗全体の利用価値
  • 立地
  • 業態適合
  • 原状回復回避価値

まで含まれます。

一方、厨房機器買取は、設備を店舗から搬出して中古商品として再販売する価値を中心に見ます。

両方の価格を比較して退去方法を決めます。

造作譲渡価格を決めるチェックリスト

  • 譲渡対象設備を一覧化した
  • 設備の所有権を確認した
  • リース品を除外した
  • メーカー・型式・年式を確認した
  • 故障・不具合を確認した
  • 査定を受けた
  • 地域の募集価格を確認した
  • 募集価格と成約価格の違いを理解した
  • 賃料・保証金等を確認した
  • 買い手の追加改装費を考えた
  • 原状回復費を見積もった
  • 廃棄費を確認した
  • 募集できる残り期間を確認した
  • 居抜きから原状回復へ切り替える期限を決めた
  • 仲介・造作譲渡手数料を確認した
  • 希望価格を決めた
  • 成約目標価格を決めた
  • 最低許容価格を決めた

造作譲渡価格についてよくある質問

造作譲渡の相場はいくらですか?

数十万円から数百万円まで幅があります。100万円〜300万円程度を目安として紹介する情報もありますが、設備、立地、賃貸条件、業態、退去期限などによって大きく変わるため、一律の相場とは考えない方がよいでしょう。

公開されている造作譲渡相場をそのまま使えますか?

公開データが募集価格なのか実際の成約価格なのか確認してください。募集価格データなら、実際には値下げ交渉後に成約している可能性があります。

内装に1,000万円かけたら500万円くらいで売れますか?

取得原価から一定割合で決めることはできません。次のテナントがどれだけその内装・設備を利用できるか、中古需要や追加改装費などで価格は変わります。

造作譲渡価格は誰が決めますか?

売主が希望価格を設定し、査定会社・仲介会社の意見や買い手との交渉を通じて最終的な価格が決まるのが一般的です。貸主の承諾や賃貸借成立も必要になります。

査定額と成約価格は同じですか?

同じとは限りません。査定額は募集・交渉の参考であり、実際の成約価格は買い手との交渉や募集期間、賃貸条件等で変わります。

造作価格を高く設定して後から下げてもよいですか?

可能ですが、退去期限までの時間を消費します。市場反応が弱ければ、原状回復へ切り替える期限を考えながら早めに条件を見直します。

造作を無料で譲るのは損ですか?

必ずしも損ではありません。無償譲渡によって高額な原状回復費・廃棄費を回避できるなら、退去全体では有利になる場合があります。

厨房機器だけ別に売った方が高くなりますか?

設備単品では専門買取会社の方が高いケースがあります。ただし設備を外すことで居抜き物件としての魅力が下がり、原状回復費が増える可能性もあります。店舗全体の退去収支で比較します。

買い手が値下げを求めてきたらどこまで下げればよいですか?

事前に最低許容価格を決めておきます。造作単品価値だけでなく、原状回復費、追加賃料、仲介手数料、設備買取価格などと比較して判断します。

造作譲渡価格は「最も高く売れる金額」ではなく「退去全体で最も残る金額」で決める

造作譲渡価格を決めるときは、

  1. 譲渡対象・所有権
  2. 設備・内装の再利用価値
  3. 業態適合性
  4. 賃貸条件
  5. 追加改装費
  6. 退去期限・原状回復回避額
  7. 最終手取り

を確認します。

公開されている造作譲渡相場は参考になりますが、募集価格と成約価格を分けて見る必要があります。

また、取得時に1,000万円かけた店舗だから高く売れるとも限りません。

反対に造作価格自体が低くても、高額な原状回復・撤去費を回避できれば、売主にとって大きな経済価値があります。

造作譲渡では「500万円で売れるか」ではなく、「いくらなら期限内に成立し、原状回復・賃料・手数料まで含めて最も多く手元に残るか」を基準に価格を決めることが重要です。

居抜き・造作譲渡全体については、居抜き・造作譲渡ガイドをご覧ください。

具体的な査定項目については、造作譲渡の査定は何を見る?で整理しています。

後継テナントの探し方については、居抜きで後継テナントを探す方法をご覧ください。

現在すでに造作査定・希望価格の提示を受けており、その金額で募集すべきか、原状回復へ切り替えるべきか判断できない場合は、お問い合わせから店舗業態、造作査定額、原状回復見積、退去期限をご連絡ください。

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