店舗の原状回復費用はいくら?業種別の相場目安と見積で確認する8項目

店舗を閉店・移転するとき、原状回復にいくら必要なのかは早い段階で把握しておきたい費用の一つです。

ただ、店舗の原状回復費用は「30坪だから○万円」「飲食店だから坪○万円」と面積だけで正確に決まるものではありません。同じ広さでも、物販店、美容室、飲食店では撤去する設備が違い、入居時の状態や賃貸借契約、スケルトン返しの有無、商業施設側の工事ルールでも金額が変わります。

店舗の場合は、坪単価を予算の参考にしながら、契約上どこまで戻すのか、何を撤去するのか、誰が工事を行うのかを確認して見積を読む必要があります。

目次

店舗の原状回復費用は坪単価だけでは判断できない

店舗の原状回復費用について公開されている情報を見ると、一般的な店舗で坪3万〜10万円前後、飲食店など設備の多い業態では坪5万〜15万円以上とする例があります。

ただし、これは契約条件や工事範囲をそろえた統一価格ではありません。指定工事、特殊設備、大規模な厨房、夜間工事、搬出制限などが加われば、これを上回ることもあります。

店舗の種類 公開情報で見られる参考レンジ 費用が増えやすい項目
物販・小売店 坪3〜6万円前後の例 造作棚、床、照明、看板、什器撤去
美容室・サロン 坪3〜10万円前後の例 給排水、シャンプー台、給湯、間仕切り
飲食店 坪5〜15万円以上の例 厨房、ガス、給排水、ダクト、防水、グリストラップ
特殊設備のある店舗・商業施設 個別確認 指定工事、夜間作業、特殊設備、搬出条件

この表は見積予算を確定するための価格表ではありません。特に飲食店や大型商業施設では、公開されている一般的な坪単価から大きく離れる案件があります。

店舗・オフィスを横断した費用構造については、店舗・オフィスの原状回復費用の見方も参照してください。

30坪の店舗なら原状回復はいくらかかる?

坪単価から単純計算すると、30坪の場合、坪3万円なら90万円、坪10万円なら300万円、坪15万円なら450万円です。

ただし、ここから「自分の店は300万円程度」と判断するのは早すぎます。

店舗では、次のような条件が総額を大きく変えます。

  • 入居時がスケルトンだったか居抜きだったか
  • 退去時にどの状態まで戻す契約か
  • 厨房や給排水などをどこまで撤去するか
  • 貸主指定業者や指定工事があるか
  • 看板や外部設備まで撤去対象か
  • 廃材・残置物がどれだけあるか
  • 夜間・休日工事を指定されているか
  • エレベーターや搬出経路に制限があるか

面積は費用を決める要素の一つにすぎません。

店舗の業態によって原状回復費用が変わる理由

物販店・小売店

物販店では、造作棚、レジカウンター、床材、照明、壁面什器、看板などの撤去が中心になります。

厨房や大規模な給排水設備がない店舗であれば、飲食店より工事項目が少なくなる場合があります。ただし、内装を大きく変更している店舗や商業施設内の店舗では、指定仕様への復旧や夜間作業によって費用が増えることがあります。

美容室・サロン

美容室では、シャンプー台や給湯設備、床下・壁内の給排水管などが費用へ影響します。

見た目の内装を撤去するだけではなく、増設した給排水をどこまで撤去・閉塞するのか確認が必要です。

個室型サロンでは間仕切り、電気設備、空調の変更が多いケースもあります。

飲食店

飲食店は、店舗原状回復の中でも工事項目が増えやすい業態です。

  • 厨房機器
  • ガス配管
  • 給排水管
  • 排気ダクト
  • フード
  • グリストラップ
  • 防水床
  • 厨房土間
  • 給湯設備
  • 看板

これらを単に撤去するだけでなく、建物側設備との接続部分をどの状態まで戻すかによって工事内容が変わります。

また、厨房機器の中には売却可能なものもあります。解体業者へ一括して廃棄を依頼する前に、買取できるものを分けておくと、廃棄費用と売却機会の両方を確認できます。

設備・什器を売却できる可能性がある場合は、設備・什器買取も先に確認してください。

商業施設・大型テナント

商業施設内では、借主が施工会社を自由に選べない工事区分や、施設指定の施工ルールが設定されていることがあります。

夜間作業、搬入出時間、警備員、館内養生、エレベーター使用、施設側の工事管理などが必要になると、一般的な路面店舗と同じ坪単価では比較できません。

店舗の原状回復見積で確認する8つの費用

1.内装・造作の解体撤去費

壁、間仕切り、カウンター、造作棚、天井、床などを解体する費用です。

「スケルトン工事一式」とまとめられている場合は、何をどこまで撤去する金額なのか確認します。

2.床・壁・天井の復旧費

撤去だけで終わらず、契約で定められた状態へ床、壁、天井を復旧する費用が発生する場合があります。

全面張り替えなのか、部分補修なのかも見積額へ影響します。

3.電気・照明・防災設備

増設した照明、コンセント、配線、分電盤、防災設備などを撤去・復旧する費用です。

建物共用設備と接続している部分は、借主側の施工会社だけでは対応できない場合があります。

4.空調・換気・排気設備

空調機、換気設備、厨房ダクト、排気ファンなどの撤去・復旧です。

特に飲食店ではダクトの経路が長く、屋上や外壁まで施工範囲が及ぶことがあります。

5.給排水・ガス設備

美容室や飲食店では、給排水とガスの復旧内容が費用を左右します。

設備を外せば終了ではなく、配管をどこまで撤去・閉塞するのか、建物側との境界を確認します。

6.看板・サインの撤去と復旧

袖看板、ファサードサイン、壁面看板、窓面シートなどが対象です。

看板を撤去した後のビス穴、外壁、電源などの復旧が別費用になっていないか確認します。

7.廃材・残置物の搬出と処分

解体材、店舗什器、家具、設備、残置物などの搬出・処理費です。

施工によって発生する建設廃棄物と、閉店時に残る商品・什器・設備は同じ扱いとは限りません。

まだ売却できる厨房機器や什器まで廃棄対象へ入れてしまわないよう、解体前に仕分けします。

閉店時の残置物全体については、撤去・廃棄も確認してください。

8.養生・搬出・夜間工事・現場管理費

共用廊下やエレベーターの養生、搬出作業、夜間工事、警備、現場管理などです。

商業施設や大型ビルでは、工事そのものより施工条件による費用が大きくなる場合があります。

スケルトン返しだから必ず高い、とは限らない

店舗の退去では「スケルトン返し」という言葉がよく使われます。

ただし、どの状態をスケルトンとするか、どこまで設備を撤去するかは物件によって違います。

入居時がスケルトンだったとしても、退去時に必要な工事範囲は契約書、特約、工事区分、貸主・管理会社の指示を確認します。

反対に、居抜きで入居した店舗でも「居抜きで借りたから、そのまま返せばよい」とは限りません。

店舗閉店時にどこまで戻すかについては、店舗閉店時の原状回復で詳しく整理しています。

原状回復工事を発注する前に居抜きの可能性を確認する

店舗では、原状回復工事を始める前に居抜きで次の借主へ引き継げる可能性を確認する価値があります。

居抜きが成立すれば、造作や設備の一部を残せる場合があり、撤去費用や廃棄費用を減らせる可能性があります。

ただし、借主だけの判断で「居抜きにするので原状回復しない」と決めることはできません。

貸主の承諾、次の借主、造作・設備の扱い、譲渡条件、契約上の返還条件などを整理する必要があります。

原状回復を始めてから設備を壊してしまうと、居抜きや造作譲渡の選択肢がなくなります。閉店を決めた段階で、居抜き・造作譲渡の可能性を確認しておく方が選択肢を残せます。

店舗原状回復の見積を受け取ったら確認する順番

  1. 賃貸借契約書と特約を確認する
  2. 退去時に求められる返還状態を確認する
  3. スケルトン・居抜き・造作残置の可否を確認する
  4. 貸主指定業者や工事区分を確認する
  5. 工事項目と数量を確認する
  6. 設備ごとの撤去・復旧範囲を確認する
  7. 見積外・別途工事と追加条件を確認する
  8. 工期と貸主検査・是正期間を確認する

見積金額が高いと感じても、いきなり単価だけを値切るより、まず「不要な工事が入っていないか」「数量と仕様が合っているか」を確認する方が整理しやすくなります。

店舗・オフィス共通の削減方法については、原状回復費用を抑える方法も参照してください。

原状回復費用を安くするために削ってはいけない項目もある

見積を見直す場合でも、必要な安全対策や法令対応まで削減対象にするべきではありません。

たとえば、建築物の解体・改修工事では、工事対象となる部分について石綿含有の有無を事前に調査する必要があります。小規模工事だから一律に調査不要という扱いにはなりません。

行政への調査結果報告には別途規模等の基準がありますが、「事前調査が必要か」と「行政への報告が必要か」は分けて考える必要があります。

また、工事によって発生する建設廃棄物についても、適正な処理が必要です。処分費が安いという理由だけで処理方法を決めるのではなく、処理ルートまで確認します。

住宅向け原状回復ガイドラインを店舗へそのまま当てはめない

民法621条では、通常の使用による損耗や経年変化を除いた原状回復義務について規定されています。

一方、店舗などの事業用賃貸借では、具体的な返還状態を賃貸借契約や特約で定めているケースがあります。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、民間賃貸住宅を想定した資料です。

そのため、「住宅では通常損耗が貸主負担だから店舗でも同じ」「事業用だから必ず全額借主負担」と、どちらかに一律化するのではなく、店舗では契約書、特約、入居時状態、工事区分、貸主側の返還仕様を確認する必要があります。

店舗の原状回復費用についてよくある質問

店舗30坪の原状回復費用はいくらですか?

公開されている坪単価を単純計算すると、坪3万円なら90万円、坪10万円なら300万円、坪15万円なら450万円です。

ただし、店舗では業態、設備、スケルトン返し、指定工事、夜間作業などで金額差が大きいため、30坪という面積だけから適正額を判断することはできません。

原状回復費用は借主がすべて払うのですか?

一律には決まりません。民法上の一般原則だけでなく、賃貸借契約、特約、返還条件を確認する必要があります。

「事業用店舗だから必ず全額借主負担」と決めつけず、契約上どの工事を負担することになっているのか確認してください。

居抜きなら原状回復費用はかかりませんか?

居抜きが成立したから必ず原状回復費用がゼロになるわけではありません。

貸主が残置を認める範囲、次の借主へ譲渡する設備、撤去する設備、看板や外部設備、契約上の返還条件などによって残る工事があります。

指定業者の見積が高い場合は別業者へ変更できますか?

契約や物件の工事ルールによります。指定業者だから絶対に変更できないとも、自由に別業者へ変更できるとも一律には言えません。

施工会社を変更できない場合でも、工事範囲、数量、仕様、見積内訳、参考見積などを確認できる場合があります。

小さな店舗でも石綿の事前調査は必要ですか?

建築物の解体・改修工事では、規模の大小にかかわらず、工事対象部分の材料について石綿含有の有無を事前調査する必要があります。

一方、行政への調査結果報告には規模等の基準があるため、調査義務と報告義務は区別します。

店舗原状回復は「坪単価」より先に返還条件を確認する

店舗の原状回復費用を把握するとき、坪単価は初期予算の参考にはなります。

ただし、実際の金額を決めるのは、店舗の広さだけではありません。

  • 契約上どこまで戻すのか
  • どれだけ設備・造作があるのか
  • 誰が施工するのか
  • どの時間・経路で工事するのか
  • 廃棄する前に売却・居抜きできるものがないか

この順番で確認すると、原状回復費用と、それ以外の閉店・退去費用を分けて考えやすくなります。

店舗閉店全体で必要になる費用については、店舗の閉店費用店舗の退去費用もあわせて確認してください。

契約上の工事範囲や原状回復見積の妥当性を確認したい場合は、契約書・原状回復条件・見積書をそろえて確認すると判断しやすくなります。

店舗原状回復の見積・工事範囲について相談する

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