造作譲渡のトラブル7例|設備・所有権・代金・契約不適合の対処法

店舗を居抜きで引き継ぐ造作譲渡では、契約後や引渡し後に「話が違う」とトラブルになることがあります。

よくあるのは、譲渡すると思っていた設備が対象に入っていない、設備がリース品だった、引渡し直後に厨房機器が故障した、造作代金が支払われない、といったケースです。

さらに、造作譲渡契約そのものには合意していても、後継テナントが貸主の審査を通らず、店舗を借りられないこともあります。

造作譲渡のトラブルでは、設備だけを見るのではなく、「誰と誰の、どの契約で、何を約束していたのか」を確認することが出発点です。

この記事では、造作譲渡で起こりやすい7つのトラブルと、すでに問題が起きている場合に確認したい契約・証拠・期限を整理します。

目次

造作譲渡トラブルが起きたら最初に確認する5項目

設備が壊れた、代金が払われない、譲渡対象が違うといった問題が起きた場合、最初から「どちらが悪いか」を決めるのではなく、事実関係を整理します。

1.造作譲渡契約書

まず確認するのは、現在の造作譲渡契約書です。

特に確認したいのは、次の項目です。

  • 譲渡対象
  • 譲渡価格
  • 支払時期
  • 引渡日
  • 設備状態
  • 現状有姿等の特約
  • 契約不適合に関する取り決め
  • 解除条件
  • 新しい賃貸借契約との関係

契約書を作成していない場合でも、メール、チャット、見積書、設備一覧、募集資料などから、双方が何を合意していたかを整理します。

2.設備・造作の一覧

「店舗内一式」という表現だけでは、何を譲渡したのか分からなくなることがあります。

設備名、メーカー、型番、数量、状態、所有者などを確認します。

3.引渡し前後の写真・動画

設備故障や物品の不足でもめている場合は、現状を記録します。

  • 設備全体
  • 銘板・型番
  • 電源を入れた状態
  • エラー表示
  • 水漏れ等の不具合
  • 引渡し前の店舗写真

などを残します。

4.貸主との合意

造作譲渡契約は、貸主との店舗賃貸借契約とは別です。

現在の借主と後継者が造作の譲渡に合意しても、貸主が居抜き状態での返還や後継者との新しい賃貸借契約を認めるとは限りません。

貸主がどの状態で現在の借主の退去を認めているかを確認します。

5.退去・支払・引渡しの期限

造作トラブルを解決している間にも、現在の店舗の解約日は近づきます。

現在の賃貸借終了日、造作代金の支払日、造作の引渡日、原状回復へ切り替える最終日を確認します。

トラブル1.譲渡するもの・持ち出すものの認識が違う

造作譲渡で起こりやすいのが、譲渡対象の食い違いです。

例えば、

  • 冷蔵庫も譲渡対象だと思っていた
  • POSレジは売主が持ち出す予定だった
  • 看板も含まれると思っていた
  • 食器・調理器具まで「一式」に含まれると思っていた
  • エアコンは貸主設備なのに造作に含めていた

といったケースです。

「造作一式」「店内一式」だけではなく、設備目録を作り、対象品と対象外品を具体的に分けます。

確認項目
品名 業務用冷蔵庫
メーカー・型式 メーカー名・型番
数量 1台
所有者 譲渡人
状態 稼働中/不具合あり等
扱い 譲渡/持出し/対象外

造作譲渡契約書の作り方は造作譲渡契約書の記載事項で詳しく整理しています。

トラブル2.売った設備が自分の所有物ではなかった

店内にある設備を現在のテナントがすべて所有しているとは限りません。

居抜き店舗では、

  • 自社購入品
  • 前テナントから譲り受けた設備
  • 貸主所有設備
  • リース品
  • レンタル・貸与品
  • 所有経緯が分からない設備

が混在することがあります。

自社が所有していないものを造作譲渡の対象に入れると、引渡し直前に対象から外す必要が生じたり、所有者との問題になったりします。

特にリース品は、現在の借主が長年使用していても、自社所有とは限りません。

所有関係については居抜き設備の所有権の確認方法、リース設備については居抜き退去時のリース品の処理を確認してください。

トラブル3.引渡し後に設備の故障・不具合が見つかった

冷蔵庫が冷えない、製氷機が動かない、エアコンから水漏れするなど、引渡し後の設備不具合は造作譲渡で問題になりやすい部分です。

ただし、設備が故障したという事実だけで、誰が費用を負担するかが自動的に決まるわけではありません。

確認するのは、

  • その設備が譲渡対象だったか
  • どのような性能・状態で引き渡す合意だったか
  • 引渡し前に動作確認をしたか
  • 売主が不具合を把握していたか
  • 把握していた不具合を買主へ伝えていたか
  • 免責・保証期間等の特約があるか
  • いつ、どのような原因で故障したか

です。

「瑕疵担保責任」ではなく契約不適合責任を確認する

古い記事や契約書では「瑕疵担保責任」という言葉が使われることがあります。

現在の民法では、売買した目的物が種類・品質・数量について契約の内容に適合しているかを基準とする「契約不適合責任」として整理されています。

例えば、「正常に稼働する製氷機」として譲渡する合意だったのに、引渡し時点ですでに使用できない状態だった場合は、契約内容に適合していたかが問題になります。

一方で、「故障あり・動作未確認」と明示した中古設備を、その状態を了承したうえで譲渡した場合は事情が異なります。

つまり、中古設備だから責任がないのでも、故障すれば必ず売主責任なのでもなく、何を契約内容としたかが重要です。

契約不適合の場合に考えられる対応

契約内容に適合しない目的物が引き渡された場合、民法上は状況に応じて、

  • 修補等の履行の追完
  • 代金減額
  • 損害賠償
  • 契約解除

が問題になることがあります。

ただし、実際にどの対応が可能かは、不適合の程度、契約内容、特約、原因、当事者の責任などによって変わります。

設備1台が故障したから造作譲渡契約全体を当然に解除できる、というものではありません。

「現状有姿」と書けば売主は何でも免責される?

造作譲渡契約では「現状有姿」「現況有姿」といった表現が使われることがあります。

これは中古設備を現在の状態で引き渡すことを明確にするうえでは意味があります。

しかし、「現状有姿」と一言書けば、売主が把握している重大な不具合まで説明しなくてよい、と考えるのは避けた方が安全です。

免責特約を設ける場合も、

  • どの設備を対象にするか
  • どこまで動作を確認したか
  • 判明している故障・不具合
  • 保証しない事項
  • 引渡し後の責任期間

などを具体化した方が認識違いを減らせます。

買主側は「受け取ってから後で確認」ではなく、引渡し時に検品する

造作譲渡は事業者同士で行われることが多いため、買主側も引渡し時の確認を後回しにしないことが重要です。

当事者双方が商人となる売買に該当する場合には、商法上、目的物を受領した後の検査・通知について民法とは別の規定が問題になる場合があります。

そのため、引渡し時には、

  • 設備の有無
  • 数量
  • 型番
  • 外観
  • 電源
  • 冷却・加熱
  • 給排水
  • 異音・異臭
  • エラー表示

など、確認できるものはその場で確認します。

不具合が見つかった場合は、写真・動画を残し、相手へ早めに書面で通知します。

トラブル4.造作譲渡代金が支払われない

造作譲渡契約は締結したものの、支払期日になっても代金が入らないことがあります。

まず確認するのは、

  • 契約成立日
  • 支払期限
  • 支払方法
  • 前払い・手付等の有無
  • 引渡しと支払いの順番
  • 新しい賃貸借契約成立を条件としているか
  • 解除条件

です。

新しい賃貸借契約が成立したら支払う条件なのか、造作譲渡契約締結時点で支払義務が生じる契約なのかによって整理は変わります。

「居抜きの話だから」と口頭で支払時期を曖昧にせず、契約書で期日と条件を定めます。

トラブル5.後継テナントの賃貸借契約が成立しなかった

造作譲渡で特に注意したいのが、譲渡人と譲受人の話はまとまったのに、後継テナントが物件を借りられなかったケースです。

例えば、

  • 貸主審査に通らなかった
  • 保証会社の審査に通らなかった
  • 賃料・保証金等の条件が合わなかった
  • 希望業種を貸主が認めなかった

場合があります。

造作譲渡契約と店舗賃貸借契約は別契約です。

そのため、契約時には「後継者と貸主との新しい賃貸借契約が成立しなかった場合に、造作譲渡契約をどうするか」を明確にしておく必要があります。

トラブル6.貸主が造作を残すことを認めなかった

造作譲渡は新旧テナント間の取引ですが、その設備を物件内へ残した状態で現在の借主が退去できるかは貸主との関係があります。

現在の賃貸借契約でスケルトン返しが定められている場合、後継者との造作譲渡契約だけでは現在の借主の返還条件が自動的に変わるわけではありません。

そのため、

  • 居抜き募集を認めるか
  • どの設備を残してよいか
  • 後継者の業種を認めるか
  • 現在の借主の原状回復をどこまで免除・変更するか

を貸主・管理会社と確認します。

居抜き退去で貸主の承諾を得る際の確認事項も参照してください。

トラブル7.引渡し後に「撤去してほしい」と言われた

造作を引き渡した後で、後継者から「この設備は使わないので撤去してほしい」と言われるケースもあります。

この場合も、契約上どの状態で引き渡すことになっていたかを確認します。

例えば、造作一覧に含まれ、現状のまま譲り受ける契約だった設備について、買主が後から使用しないことを理由に売主の撤去義務が当然に発生するとは限りません。

反対に、売主が引渡し前に撤去すると合意していた設備が残っているのであれば、約束した内容に沿った対応が必要になることがあります。

設備ごとに「譲渡」「売主持出し」「撤去」「貸主設備」を区分しておくと、このトラブルを防ぎやすくなります。

トラブル発生時に確認する資料

資料 確認する内容
造作譲渡契約書 対象、代金、引渡し、責任、解除条件
設備目録 品目、型番、数量、状態
写真・動画 引渡し前後の状態、故障状況
メール・チャット 契約前の説明、既知不具合、条件変更
購入資料 所有関係の確認
リース契約 第三者所有・返却・承継条件
賃貸借契約 原状回復、貸主承諾、返還条件
修理・点検記録 故障原因、発生時期、設備状態

すでに設備トラブルが起きている場合の進め方

  1. 安全を確保する
    漏電、ガス漏れ、漏水など危険がある場合は使用を停止し、専門業者へ確認します。
  2. 故障状態を保存する
    写真・動画・エラー表示・型番を記録します。
  3. 勝手に廃棄しない
    責任関係を確認する前に処分すると、後から状態確認ができなくなることがあります。
  4. 契約書と設備一覧を照合する
    その設備についてどのような状態を合意したか確認します。
  5. 相手方へ早めに通知する
    発生日、症状、確認結果等を書面で共有します。
  6. 専門業者に原因を確認する
    必要に応じ修理会社・メーカー等の点検結果を取得します。
  7. 修理・交換・減額等を協議する
    契約内容と原因を踏まえて対応を決めます。

造作譲渡トラブルを防ぐ契約前チェック

  • 譲渡対象を設備一覧にしたか
  • 譲渡対象外も明確にしたか
  • 所有者を確認したか
  • リース・レンタル品を分けたか
  • 貸主設備を造作へ含めていないか
  • 設備の動作確認をしたか
  • 既知の不具合を記載したか
  • 現状有姿・契約不適合責任の扱いを確認したか
  • 代金・支払日を明記したか
  • 引渡日を明記したか
  • 新しい賃貸借が成立しなかった場合を定めたか
  • 貸主の居抜き承諾を確認したか
  • 居抜き不成立時の原状回復期限を確認したか

よくある質問

造作譲渡で設備がすぐ壊れたら売主負担ですか?

一律には決まりません。その設備についてどの状態で引き渡す契約だったか、既知の不具合、動作確認、免責等の特約、故障原因・時期などを確認します。

「現状有姿」と書いてあれば売主は一切責任を負いませんか?

一言であらゆる責任がなくなると考えるのは避けた方が安全です。特に売主が把握していた不具合を説明していない場合などは、免責特約だけでは処理できない可能性があります。

「瑕疵担保責任」と「契約不適合責任」は違いますか?

現在の民法では、売買目的物が契約の内容に適合しているかを基準とする契約不適合責任として整理されています。古い契約書や記事に「瑕疵担保責任」という表現が残っている場合があります。

買主は不具合を見つけたらいつまでに伝えればよいですか?

民法上の通知期間だけでなく、商人間売買に該当する場合の商法上の検査・通知ルールや、契約書の特約も確認する必要があります。不具合を確認した場合は放置せず、証拠を残したうえで早期に相手方へ通知する方が安全です。

リース設備が造作に含まれていたらどうなりますか?

まず設備所有者とリース契約を確認します。現在の借主が所有していない設備を、新旧テナントだけの合意で自由に譲渡できるとは限りません。

造作譲渡契約を結んだ後に貸主審査が通らなかった場合は?

後継テナントの新しい賃貸借契約と造作譲渡契約をどのように連動させていたか確認します。不成立時の解除条件や代金の扱いが明確でない場合、個別の契約解釈が必要になることがあります。

造作代金を支払ってもらえない場合は?

支払期限、支払条件、引渡し状況、新しい賃貸借契約の成立条件などを確認します。請求・解除・損害賠償等の法的な主張が対立する段階では、契約資料をまとめて弁護士等への相談も検討します。

造作譲渡トラブルで弁護士へ相談する目安は?

契約解除、代金返還、損害賠償、修理費用、所有権などについて双方の主張が対立し、話し合いだけで解決できない場合は検討します。契約書、設備表、写真、メール、時系列を整理しておくと相談しやすくなります。

造作譲渡では「何を渡すか」と「どの状態で渡すか」を書面で揃える

造作譲渡のトラブルは、設備が中古だから起きるだけではありません。

譲渡対象、所有者、設備状態、代金、新しい賃貸借との関係が曖昧なまま進めることで問題が大きくなります。

対象物を特定する → 所有権を確認する → 設備状態を記録する → 不具合を開示する → 支払・引渡し・解除条件を定める → 貸主・新賃貸借との関係を確認するという順番で整理します。

すでにトラブルが起きている場合は、設備を急いで処分したり条件を変更したりする前に、契約・設備状態・期限を確認し、証拠を残します。

造作譲渡で設備、所有権、代金、契約条件のどこを整理すればよいか分からない場合は、店舗・オフィスの退去について相談するから相談できます。

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