店舗を閉店すると、什器、厨房用品、包装材、食材、書類、家具、家電、壊れた備品など、さまざまな物が一度に不要になります。
ただし、店舗から出た物を家庭の粗大ごみと同じ感覚でまとめて処分することはできません。
事業活動に伴って出る廃棄物は「事業系廃棄物」として扱われ、その中でも産業廃棄物と事業系一般廃棄物では、処理方法や依頼できる業者が異なります。
さらに、家庭用の冷蔵庫やエアコンなどのように、個別のリサイクル制度を確認する必要がある物もあります。
閉店時は、いきなりすべてを廃棄するのではなく、まず再利用・返却・買取できる物を分け、その後に残った「本当に廃棄する物」を適切な処理ルートへ振り分けることが重要です。
売却・返却・廃棄の仕分けから確認したい場合は、店舗の不用品処分を先に確認してください。
店舗閉店時のごみは家庭ごみとして出せないのが基本
店舗や事務所などの事業活動に伴って発生したごみは、一般家庭から出る家庭ごみとは区別されます。
店舗の規模が小さい、廃棄する量が少ない、個人事業主である、といった理由だけで家庭ごみになるわけではありません。
事業系廃棄物は、大きく次の2つに分かれます。
| 区分 | 基本的な考え方 | 処理時の主な確認先 |
|---|---|---|
| 産業廃棄物 | 事業活動に伴って発生した物のうち、法令で定められた種類 | 産業廃棄物処理業者・都道府県等の制度 |
| 事業系一般廃棄物 | 事業活動に伴う廃棄物のうち、産業廃棄物に該当しない物 | 店舗所在地の市区町村・一般廃棄物処理業者 |
したがって、「店舗から出たごみだから全部産業廃棄物」という考え方も正確ではありません。
品目だけでなく、どのような事業から発生したのかによって区分が変わる物もあります。
産業廃棄物と事業系一般廃棄物はどう分ける?
産業廃棄物には法令上定められた種類があります。
店舗閉店時に特に関係しやすいのは、次のような物です。
- 廃プラスチック類
- 金属くず
- ガラス・コンクリート・陶磁器くず
- 廃油
- ゴムくず
これらは幅広い事業活動から発生する物が産業廃棄物の対象になります。
一方で、紙くず、木くず、繊維くず、動植物性残さなどには、産業廃棄物となる業種が限定されているものがあります。
そのため、通常の小売店や飲食店などでは、同じ「紙」「木」「食品」のように見える物でも、事業系一般廃棄物として扱われる場合があります。
品名だけで判断せず、物の材質・発生した事業・店舗所在地の自治体ルールを合わせて確認してください。
店舗で出やすい廃棄物の考え方
閉店時に出やすい物を例に、区分を確認するときの考え方を整理します。
| 物の例 | 確認する区分・制度 | 注意点 |
|---|---|---|
| プラスチック製什器・アクリル板・包装材等 | 産業廃棄物の「廃プラスチック類」を確認 | 家庭ごみとしてまとめて出さない |
| 金属棚・金属部品・金属製備品 | 産業廃棄物の「金属くず」を確認 | 売却・再資源化できる物は廃棄前に分ける |
| ガラス・陶器・食器等 | 産業廃棄物の「ガラス・コンクリート・陶磁器くず」を確認 | 材質が混在する物は処理業者へ確認 |
| 使用済み油 | 「廃油」に該当するか確認 | 廃食油の再資源化ルートが使える場合もある |
| 書類・紙類・段ボール | 事業系一般廃棄物または資源回収等を確認 | 紙くずは発生業種によって扱いが変わる |
| 木製家具・木箱等 | 事業系一般廃棄物または産業廃棄物を確認 | 木くずは業種によって産廃区分が変わる |
| 飲食店の生ごみ・残飯 | 事業系一般廃棄物となるケースを確認 | 食品製造業等から出る動植物性残さとは区分が異なる場合がある |
この表はあくまで確認の入口です。
店舗によって扱う商品や設備が異なるため、大量処分を始める前に所在地の自治体または適切な処理業者へ確認します。
廃棄する前に「所有権」を確認する
閉店時に店内にある物が、すべて店舗運営者の所有物とは限りません。
特に次のような物は、廃棄前に契約を確認します。
- リース契約中の厨房機器
- レンタルしているPOSレジ・複合機
- 飲料メーカー等から貸与されている冷蔵庫・什器
- 貸主所有の空調・照明・設備
- 前テナントから引き継いだ設備
- 居抜きで次のテナントへ残す予定の物
他社や貸主の所有物を勝手に廃棄すると、廃棄物処理とは別の問題になります。
まず「移転先へ持っていく物」「返却する物」「売却する物」「残す物」「廃棄する物」に分けてください。
売るか処分するか迷っている物については、店舗の不用品は買取と処分どちらがよいかも参考にしてください。
店舗から出た廃棄物の処理責任は誰にある?
事業活動に伴って生じた廃棄物については、事業者側に適正処理の責任があります。
「回収業者に渡したから、その後は関係ない」という考え方にはなりません。
特に産業廃棄物では、排出事業者として、適切な許可を持つ業者へ委託し、処理が適正に行われるよう確認することが重要です。
閉店後に会社や店舗がなくなる予定であっても、閉店作業中に発生した廃棄物を適正に処理する必要があります。
産業廃棄物を業者へ頼むときは許可範囲を見る
産業廃棄物処理業者であれば、どのような廃棄物でも処理できるわけではありません。
業者を確認するときは、「産業廃棄物の許可を持っている」という表示だけではなく、少なくとも次を確認します。
- 収集運搬を行える許可があるか
- 処分を行える許可があるか
- 今回廃棄する品目が許可範囲に含まれているか
- どの処理施設へ運ばれるか
- 収集運搬と処分を誰が担当するか
たとえば、金属くずを扱える許可があっても、今回処分する別の産業廃棄物まで自動的に取り扱えるとは限りません。
複数種類の廃棄物をまとめて依頼するときほど、処理ルートを確認することが重要です。
事業系一般廃棄物は店舗所在地の自治体ルールを確認する
事業系一般廃棄物の処理方法は、市区町村によって具体的な制度が異なります。
自治体によっては、一定条件の小規模事業者について自治体収集を利用できる制度が設けられていることもあります。
一方で、排出量や品目によって自治体収集を利用できず、一般廃棄物処理業者への委託が必要なケースもあります。
そのため、「別の市では事業ごみとして回収してもらえた」という経験だけで判断しないようにしてください。
閉店する店舗の所在地を基準に、次を確認します。
- 事業系一般廃棄物の出し方
- 自治体収集を利用できる条件
- 有料ごみ処理券等の制度
- 収集対象外の品目
- 一般廃棄物収集運搬業者への委託方法
- 資源物の回収方法
一般廃棄物と産業廃棄物を一社へまとめて頼める?
閉店では複数種類の廃棄物が同時に出るため、一社へまとめて依頼したくなることがあります。
実際に一つの窓口で手配できる会社もありますが、重要なのは「一社で回収に来るか」ではなく、それぞれの廃棄物について適法な処理ルートが確保されているかです。
産業廃棄物と事業系一般廃棄物では必要となる許可や処理制度が異なるため、見積時には次を確認します。
- どの品目を産業廃棄物として扱うか
- どの品目を事業系一般廃棄物として扱うか
- 一般廃棄物は誰が収集運搬するか
- 産業廃棄物は誰が収集運搬・処分するか
- 委託先の許可範囲
- マニフェストの運用方法
「全部まとめて処分できます」という説明だけで決めず、処理区分と委託先まで確認してください。
産業廃棄物では委託契約とマニフェストを確認する
店舗から出る産業廃棄物を処理業者へ委託する場合、処理業者の許可だけでなく、委託手続きも重要です。
処理委託契約
産業廃棄物の収集運搬や処分を委託する場合は、法令に定められた事項を含む契約を確認します。
実際に廃棄物を持っていく会社と、最終的に処理を行う会社が同じとは限りません。
見積書だけで処理を任せるのではなく、誰に何を委託する契約なのかを整理します。
マニフェスト
産業廃棄物を処理業者へ引き渡す場合には、産業廃棄物管理票、いわゆるマニフェストによって処理の流れを管理します。
紙マニフェストと電子マニフェストがあり、排出した産業廃棄物が適切に収集運搬・処分されたことを確認するために利用されます。
「回収業者が全部やってくれるから自社は何も確認しなくてよい」とせず、排出事業者側でも処理内容を把握してください。
家電4品目は店舗で使っていても個別制度を確認する
エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機には家電リサイクル法があります。
ここで重要なのは、店舗や事業所で使用していたかではなく、家庭用機器に該当するかという点です。
家庭用として設計された対象機器であれば、店舗で使用されていた物でも家電リサイクル法の対象になります。
反対に、業務用機器は同法の対象外です。
例えば店舗で使用していた冷蔵庫についても、家庭用冷蔵庫なのか業務用冷蔵設備なのかによって確認する制度が異なります。
外見だけで分からない場合は、型番・メーカー・製品仕様を確認してから処分方法を決めます。
閉店前からある廃棄物と内装解体の廃材は分けて考える
店舗退去では、什器や備品を片付けたあとに内装解体や原状回復工事を行うケースがあります。
このとき、次の2つを同じものとして扱わないことが重要です。
- 閉店前から店舗内に存在していた家具・備品・在庫・ごみ等
- 内装解体工事によって新たに発生した壁材・床材・天井材等の建設廃棄物
建設工事で発生する廃棄物は、排出事業者や委託契約、マニフェストの責任関係が一般の残置物とは異なる場合があります。
内装解体に伴う産業廃棄物については、内装解体の産業廃棄物と元請責任で詳しく整理しています。
原状回復工事の前に不要品を整理する
閉店時の廃棄物処理は、原状回復工事と別々に考えるのではなく、工程をつなげておく方が進めやすくなります。
基本的には次の順番で整理します。
- 賃貸借契約と返還条件を確認する
- 居抜き・後継テナントへ残す物を決める
- リース・貸与品を返却する
- 移転・再利用する物を分ける
- 買取可能な設備・什器を査定する
- 廃棄確定物を区分する
- 適切な処理業者へ委託する
- 店内を撤去対象に合わせた状態にする
- 原状回復・内装解体工事へ進む
処分できる物を先に全部捨ててしまうと、居抜きで残せた設備や売却できた什器まで失う可能性があります。
店舗の原状回復範囲については、店舗閉店時の原状回復も確認してください。
閉店時に廃棄物処理で起こりやすい5つの失敗
1.家庭ごみとして出してしまう
店舗から出たごみは、少量だからといって自動的に家庭ごみになるわけではありません。
まず事業系廃棄物として所在地のルールを確認します。
2.「店舗のごみは全部産廃」と考える
事業系一般廃棄物に分類される物もあります。
産業廃棄物かどうかは、物の種類だけでなく発生した業種も関係することがあります。
3.産廃許可があれば何でも頼めると思う
産業廃棄物処理業者の許可には、扱える廃棄物の種類や業務範囲があります。
今回依頼する廃棄物が許可範囲内かを確認します。
4.貸与品・リース品まで処分する
処理区分以前に所有権の問題があります。
店舗閉店時は、処分対象リストと返却対象リストを分けてください。
5.退去直前まで廃棄物を残す
分別、業者手配、搬出、産廃処理、一般廃棄物処理を一日で終えられるとは限りません。
大量の残置物がある場合は、原状回復着工や明渡し日に影響します。
店内を明渡し可能な状態まで空にする実務については、店舗の残置物撤去も参考にしてください。
廃棄物処理業者へ見積を依頼するときに伝えること
見積を依頼するときは「店舗のごみを全部処分したい」だけでなく、品目と条件をできるだけ整理して伝えます。
- 店舗所在地
- 店舗の業種
- 閉店日・退去期限
- 廃棄予定の品目
- おおよその数量
- 大型・重量物の有無
- 階数・エレベーター
- 車両を停められる場所
- 商業施設等の搬出時間制限
- 家庭用家電4品目の有無
- 一般廃棄物と産業廃棄物の両方があるか
- 内装解体工事も予定しているか
写真だけでは材質や所有関係を判断できない物もあるため、型番や契約書を確認できる状態にしておくと進めやすくなります。
店舗閉店時の廃棄物FAQ
少量なら店舗のごみを家庭ごみとして出してもよいですか?
事業活動から出たごみは事業系廃棄物として扱うのが基本です。
自治体によっては一定条件の小規模事業者向け収集制度がありますが、これは家庭ごみと同じ扱いになるという意味ではありません。店舗所在地の自治体ルールを確認してください。
店舗から出るごみは全部産業廃棄物ですか?
全部ではありません。
事業活動から出る廃棄物は、産業廃棄物と事業系一般廃棄物に分かれます。紙くずや木くずなど、一部は発生業種によって区分が変わるため、品目だけで判断しないことが重要です。
飲食店の生ごみは産業廃棄物ですか?
飲食店から通常発生する残飯や調理くずなどは、事業系一般廃棄物として扱われるケースがあります。
一方、特定の製造業等から発生する動植物性残さは産業廃棄物となるため、業種と発生工程を確認してください。
産業廃棄物の許可業者なら一般廃棄物も回収できますか?
産業廃棄物と一般廃棄物では許可制度が異なります。
産業廃棄物の許可があることだけを理由に、事業系一般廃棄物まで収集できるとは限りません。
産業廃棄物を頼む場合はマニフェストが必要ですか?
産業廃棄物を処理業者へ委託して引き渡す場合は、マニフェストによって処理状況を管理する制度があります。
業者任せにせず、排出事業者として運用方法を確認してください。
店舗で使っていた冷蔵庫は産業廃棄物として捨てればよいですか?
機器の種類を確認する必要があります。
家庭用として設計された冷蔵庫・冷凍庫などの家電4品目は、事業所で使用していた場合でも家電リサイクル法の対象です。
業務用機器の場合は同法の対象外なので、型番・仕様を確認して適切な処理方法を選びます。
原状回復業者に店内のごみも全部任せてよいですか?
業者が対応できる範囲と許可・委託関係によります。
原状回復工事を行えることと、すべての一般廃棄物・産業廃棄物を適法に収集・処理できることは同じではありません。
誰がどの廃棄物を処理するのかを見積・契約時に確認してください。
閉店後に不要品を店内へ残して明け渡してもよいですか?
賃貸借契約や貸主との合意によります。
自己判断で残置すると、撤去費用や明渡し条件の問題になる可能性があります。居抜き等で残す設備と、撤去すべき残置物を事前に貸主・管理会社と確認します。
店舗閉店時は「捨てる物を決めた後」の区分が重要
閉店時の片付けでは、まず再利用、返却、買取、居抜きで残す物を分けます。
そのうえで廃棄が確定した物について、事業系一般廃棄物、産業廃棄物、家電リサイクル等の個別制度へ振り分けることが重要です。
特に産業廃棄物は、処理業者へ渡せば事業者の責任が終わるわけではありません。
委託する品目を扱える許可があるか、適切な契約をしているか、マニフェスト等で処理を確認できるかまで確認してください。
また、内装解体によって新たに発生する廃材は、閉店前から店舗内にある不用品・残置物とは分けて考えます。
店舗閉店時の廃棄物、残置物撤去、原状回復までまとめて整理したい場合は、お問い合わせから相談できます。
