店舗やオフィスの内装解体では、石膏ボード、床材、木材、金属、ガラス、配管、電線など多くの廃材が発生します。
これらの処理費は内装解体見積の中でも大きな項目になりやすく、「解体工事一式」「廃材処分一式」とまとめて記載されているケースもあります。
ただし、発注者側が確認すべきなのは処分費の金額だけではありません。
内装解体という建設工事によって発生する廃棄物では、原則として発注者から工事を直接請け負った元請業者が排出事業者となり、適正処理を管理します。
一方、解体工事が始まる前から店舗・オフィスに置かれていた家具、OA機器、厨房機器、商品、備品などは、すべてが自動的に「解体工事で出た廃材」になるわけではありません。
内装解体では、工事前から存在する残置物と、工事によって新たに発生する建設廃棄物を分けて考えることが重要です。
内装解体で出る廃棄物と残置物は同じではない
退去時には多くの物が同じ現場から搬出されるため、すべて「産廃」としてまとめて考えたくなります。
しかし、実務上は発生原因を分けた方が整理しやすくなります。
| 区分 | 例 | 主な整理 |
|---|---|---|
| 工事前からある物 | デスク、厨房機器、家具、商品、OA機器、備品 | 所有者側で売却・返却・廃棄方法を整理 |
| 内装解体で発生する物 | 壁材、床材、天井材、下地、造作、配管等 | 建設工事の元請が排出事業者として管理 |
| 個別制度が関係する物 | 石綿含有建材、フロン機器、PCB使用機器等 | 対象制度に沿った個別対応を確認 |
たとえば閉店した飲食店に業務用冷蔵庫が残っているからといって、その冷蔵庫が内装解体工事を始めた瞬間に「建設廃棄物」へ変わるわけではありません。
売却できる設備は先に買取査定し、リース品は返却し、不要品は適切な処理方法を決めたうえで解体現場から外します。
店舗の残置物については、店舗の残置物撤去、閉店準備中の仕分けについては店舗の不用品処分で分けて整理しています。
内装解体の産業廃棄物で確認する8項目
1.誰が元請業者になるのか確認する
内装解体で発生する建設廃棄物について、最初に確認したいのが「誰が元請か」です。
建設工事では、原則として発注者から工事を直接請け負った元請業者が廃棄物処理法上の排出事業者になります。
実際の解体作業を下請会社が行っていたとしても、それだけで下請会社が排出事業者になるわけではありません。
たとえば、
- 店舗側 → A社へ内装解体を発注
- A社 → B社へ解体作業を下請発注
という形なら、原則としてA社が元請・排出事業者です。
発注者側としては、見積依頼時に、
- 今回の元請会社はどこか
- 実際の解体作業を誰が行うか
- 廃棄物処理を誰が管理するか
- 収集運搬・処分をどの会社へ委託するか
を確認します。
2.解体前の残置物を先に整理する
内装解体工事へ入る前に、店内・オフィス内の物を整理します。
たとえば、
- デスク・チェア
- 店舗什器
- 厨房機器
- OA機器・PC
- 商品在庫
- リース・レンタル品
- 冷蔵冷凍設備
- 書類
などです。
これらを解体工事の廃材へ最初から混ぜず、
- 移転する
- 所有者へ返却する
- 買取・リユースする
- 適切な廃棄ルートへ出す
へ仕分けます。
売却可能な設備を先に解体・廃棄してしまえば、資産価値を失うことになります。
また、PC等ではデータ処理、業務用冷凍空調機器ではフロン対応など、通常の建設廃材とは別の確認が必要になることがあります。
3.解体廃材を種類ごとに分ける
内装解体で発生する物を「産業廃棄物一式」と考えるのではなく、種類ごとに把握します。
代表的なものには、
- 廃プラスチック類
- 金属くず
- ガラス・コンクリート・陶磁器くず
- 木くず
- 紙くず
- 繊維くず
- がれき類
などがあります。
実際にどの区分になるかは廃材の材質・性状によって確認します。
また、複数の廃棄物が混ざった建設混合廃棄物として排出するより、現場で分別できる物を分けた方が再資源化しやすくなる場合があります。
発注者側でも、見積に、
- どの種類の廃材が出る想定か
- 現場でどこまで分別するか
- 中間処理へどう持ち込むか
が含まれているか確認します。
4.収集運搬・処分を誰へ委託するか確認する
元請業者が産業廃棄物の処理を他社へ委託する場合、適切な許可を持つ収集運搬業者・処分業者へ委託する必要があります。
ここで注意したいのは、
「解体会社が産業廃棄物収集運搬業の許可を持っていなければ必ず違法」とは限らない
ことです。
建設工事の排出事業者である元請業者が自社の廃棄物を自ら運搬する場合と、他社から廃棄物の収集運搬を受託する場合では扱いが異なります。
発注者が確認すべきなのは許可証の有無を一つだけ見ることではなく、
- 元請は誰か
- 誰が運搬するか
- 誰が中間処理・最終処分するか
- 外部委託する会社の許可範囲
- 処理する廃棄物の種類が許可範囲に含まれるか
という処理全体の流れです。
内装解体業者の選定については、内装解体業者の選び方も参照してください。
5.委託契約とマニフェストの管理方法を確認する
産業廃棄物を外部の処理業者へ委託する場合、排出事業者は処理業者との委託契約とマニフェストによって適正処理を管理します。
処理を委託する場合は原則として、
- 収集運搬について収集運搬業者と契約する
- 処分について処分業者と契約する
- 産業廃棄物を引き渡す際にマニフェストで管理する
- 運搬・処分・最終処分が完了したことを確認する
という流れになります。
収集運搬と処分の両方について適切な許可を持つ同一事業者へ委託する場合には、一つの契約書で対応できる場合があります。
マニフェストには紙と電子があります。
建設廃棄物については原則元請業者が排出事業者なので、店舗・オフィスの借主が自らマニフェストを発行するという理解ではありません。
発注者側では、施工会社へ、
- 廃棄物処理をどう管理するか
- 処理先をどこまで把握できるか
- 工事完了後に処理完了を確認できる資料があるか
を確認するとよいでしょう。
6.「廃材処分一式」の中身を見積で確認する
内装解体の見積では、廃棄物関係の費用が、
「廃材処分費 一式」
と記載されていることがあります。
一式表記そのものが問題というわけではありませんが、比較するときは何が含まれるか確認します。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 廃材量 | 立米・重量等の想定数量 |
| 分別 | 現場分別・積替え等 |
| 搬出 | 人員、階段、EV、搬出距離 |
| 車両 | 車両台数・種類 |
| 収集運搬 | 処理施設までの運搬 |
| 中間処理 | 選別・破砕等 |
| 最終処分 | 再資源化できない物等 |
| 特殊廃棄物 | 石綿等が別途か |
処理費は廃材の量だけではなく、分別状態、材質、搬出条件、運搬距離、処理先等でも変わります。
そのため、単純に「廃材処分費が一番安い会社」を選ぶのではなく、工事範囲と処理条件をそろえて比較します。
見積全体については、内装解体の見積内訳を参照してください。
7.石綿など通常廃材と別管理する物を確認する
内装解体では、石綿含有建材が関係する場合があります。
解体・改修工事では、工事前に対象部分の材料について石綿含有の有無を事前調査します。
石綿を含む建材が確認された場合は、通常の解体廃材と同じ感覚で混ぜて処理するのではなく、建材の区分に応じた飛散防止・収集運搬・処分が必要になります。
したがって、解体見積では、
- 石綿事前調査費
- 必要な分析費
- 石綿含有時の撤去費
- 梱包・運搬・処分費
がどう扱われるか確認します。
詳しくは、内装解体・原状回復のアスベスト事前調査を確認してください。
また、工事前から存在する古い電気機器や冷凍空調機器などについて、PCBやフロン等の個別制度が関係する場合は、内装解体廃材へそのまま混ぜず、所有者・機器区分を確認して先に処理方法を決めます。
8.建設リサイクル法の対象工事か確認する
内装解体では、建設リサイクル法について「80㎡以上ならすべて届出が必要」と説明されることがあります。
しかし、対象基準は工事の種類によって異なります。
建築物そのものの解体工事では床面積80㎡以上が一つの基準ですが、建築物の修繕・模様替等には別の請負金額基準があります。
そのため、テナントの内装だけを撤去する工事について、
「内装解体だから80㎡以上なら必ず同じ扱い」
と判断しない方がよいでしょう。
今回の工事が、
- 建築物の解体に該当するのか
- 修繕・模様替等に該当するのか
- 対象となる規模・請負金額か
- 特定建設資材を使用しているか
などを施工会社・行政窓口へ確認します。
対象工事の場合は、分別解体、再資源化、発注者による届出等の対応が必要になります。
発注者は廃棄物処理を全部「元請任せ」にしてよい?
建設廃棄物の排出事業者が原則元請であることと、発注者側が何も確認しなくてよいことは別です。
発注前には、
- 廃材処理費が見積に含まれているか
- 極端に低い処理費になっていないか
- 処理会社・処理ルートを説明できるか
- 元請・下請の責任関係が明確か
- 石綿等の特殊廃棄物を別管理できるか
- 完了後の処理確認方法があるか
を確認します。
処理費を無理に削れば、その分がどこかで吸収されるとは限りません。
適正な処理に必要な費用まで削るのではなく、不要な工事や処分物量を減らすことから検討します。
廃材処分費を減らすなら、解体後ではなく解体前に減らす
内装解体の廃棄物処理費を抑えたい場合、処分単価だけを値切るより、解体する量を減らせないか確認する方法があります。
たとえば、
- 貸主が残置を認める設備を壊さない
- 買取できる設備を先に売却する
- 居抜きで引き継げる内装を残す
- リース品を返却する
- 工事前の残置物を適切に仕分ける
- 原状回復範囲を貸主と確定する
といった方法です。
本来撤去不要だった造作まで壊せば、解体作業費だけでなく廃材量・搬出量・処理費も増えます。
必要な原状回復範囲を先に確定することが、廃棄物処理費の見直しにもつながります。
「産廃処理まで自社対応」の会社なら必ず安い?
内装解体会社の中には、産業廃棄物収集運搬・中間処理等の許可や施設を持ち、解体から処理まで一貫対応する会社があります。
工程管理や中間手配が簡素化できることはありますが、それだけで必ず最安になるとは限りません。
一方、内装解体会社が外部の許可業者と連携して適正に処理する形でも問題ありません。
比較すべきなのは、
- 工事総額
- 廃材処理の内訳
- 処理ルート
- 責任主体
- 許可・委託関係
- 追加費用条件
です。
追加費用が出やすい廃棄物関連の項目
内装解体の廃材処理では、当初見積と実際の条件が違うと追加費用が発生する場合があります。
たとえば、
- 床材が想定より多層だった
- 天井裏の設備・下地が多かった
- 見積後に残置物が追加された
- 混合廃棄物が想定より増えた
- 石綿含有建材が確認され施工方法が変わった
- 搬出可能時間が短くなった
- 貸主から追加撤去を求められた
などです。
追加費用を提示された場合は、「廃材が増えました」という説明だけでなく、当初数量、実際の数量、廃棄物種類、単価、処理方法を確認します。
詳しくは、内装解体の追加費用も参照してください。
内装解体の産業廃棄物についてよくある質問
内装解体で出た廃棄物の排出事業者は店舗の借主ですか?
建設工事そのものから発生する建設廃棄物については、原則として発注者から工事を直接請け負った元請業者が排出事業者です。
一方、工事前から店舗内にある不用品・残置物は別に整理します。
実際に解体する下請会社が排出事業者ですか?
下請会社が実際に解体作業を行うという理由だけで、原則的な排出事業者が下請へ移るわけではありません。
誰が発注者から直接工事を請け負っている元請かを確認します。
発注者が処分業者へ直接依頼した方が安くできますか?
建設工事によって発生した廃棄物の処理責任は原則元請にあります。
処分だけを発注者側で別の会社へ直接切り離す前に、元請の排出事業者責任・委託関係が崩れないか確認してください。
一方、工事前からある自社所有の残置物を自社側で先に処分することとは区別します。
解体業者に産廃収集運搬許可がなければ違法ですか?
それだけでは判断できません。
元請である排出事業者が自ら自社の廃棄物を運搬する場合と、他人の廃棄物の収集運搬を業として受託する場合では扱いが異なります。
外部へ委託する場合は、実際に収集運搬・処分を行う会社の許可範囲と委託関係を確認します。
マニフェストは店舗側が発行しますか?
内装解体工事による建設廃棄物では、原則排出事業者となる元請業者がマニフェストを管理します。
店舗・オフィスの発注者自身が必ず発行者になるわけではありません。
マニフェストは何のためにありますか?
産業廃棄物について、排出から収集運搬、中間処理、最終処分までの処理状況を排出事業者が確認するための制度です。
家具やOA機器も建設廃棄物として一緒に処分できますか?
工事前から存在する家具・OA機器等を、最初から解体工事で発生した建設廃棄物として扱わないようにします。
所有権、買取、リース返却、データ処理、廃棄物区分等を先に確認してください。
建設リサイクル法は80㎡以上の内装解体なら必ず対象ですか?
内装解体という名称だけで一律に判断できません。
建築物そのものの解体、修繕・模様替、設備工事など工事の種類によって対象基準が異なります。
具体的な工事内容と規模を施工会社・行政窓口へ確認してください。
石綿を含む廃材も通常の産廃と同じですか?
同じ扱いにはしません。
石綿の種類・建材区分に応じて、飛散防止、分別、梱包、収集運搬、処分など適切な方法が必要になります。
内装解体では「誰が捨てるか」まで見積に含めて確認する
店舗・オフィスの内装解体を発注するとき、工事範囲と金額だけを確認して終わりにしない方がよいでしょう。
廃棄物については、
- 工事前の残置物と建設廃棄物を分ける
- 元請業者を確認する
- 発生する廃材の種類を確認する
- 分別・収集運搬・処分の流れを確認する
- 委託契約・マニフェストの管理方法を確認する
- 廃材処分費の見積内訳を確認する
- 石綿等の特殊廃棄物を別管理する
- 建設リサイクル法等の対象工事か確認する
という流れで整理すると、責任関係が分かりやすくなります。
発注者自身が建設廃棄物の排出事業者になるという前提ではありませんが、処理費を支払う立場として、元請がどのような処理体制を組んでいるか確認することはできます。
価格だけでなく、工事範囲、廃材量、処理ルート、責任主体、追加費用条件までそろえたうえで施工会社を比較してください。
