オフィス移転では、机や書類を新しい場所へ運べても、電話とインターネットが使えなければ通常業務を開始できません。
固定電話、代表番号、ビジネスフォン、インターネット回線、LAN、Wi-Fi、VPN、複合機などは相互に関係しているため、それぞれを別々に手配するより、「移転初日に何が使えれば業務を開始できるか」から逆算して一つのIT・通信移転として管理することが重要です。
特に注意したいのが、電話番号の継続可否とインターネット回線の開通時期です。
同じ市区町村への移転でも電話番号を継続できない場合があります。また、移転先の建物に光回線設備があるように見えても、自社が希望するサービスをそのまま利用できるとは限りません。
オフィス移転全体の作業を先に整理したい場合は、オフィス・事務所移転のチェックリストもあわせて確認してください。
オフィス移転の電話・インターネットは5つに分けて確認する
| 確認項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 電話番号 | 現在の代表番号を移転先でも利用できるか |
| 電話システム | 固定電話、ビジネスフォン、PBX、クラウドPBXの移設・変更 |
| インターネット回線 | 光回線等の提供可否、開通工事、プロバイダー |
| 社内ネットワーク | LAN、Wi-Fi、ルーター、スイッチ、VPN等 |
| 切替・廃止 | 新オフィスの動作確認と旧オフィス回線の停止 |
「電話会社へ移転を連絡すれば全部終わる」と考えず、自社で利用している通信環境を棚卸ししてから手配します。
最初に現在の電話・ネットワーク契約を棚卸しする
移転手続きに入る前に、現在利用しているサービスを一覧にします。
少なくとも次の項目を確認しておくと、通信会社や工事会社との打ち合わせが進めやすくなります。
- 代表電話番号
- 部署別・FAX等の電話番号
- 固定電話・ひかり電話・IP電話などの種類
- ビジネスフォンの主装置・PBX
- インターネット回線
- プロバイダー
- 固定IPアドレスの利用有無
- VPN・拠点間ネットワーク
- ルーター・スイッチ
- 有線LAN
- Wi-Fiアクセスポイント
- 複合機・プリンター
- 防犯カメラ・入退室管理などネットワーク接続機器
請求書や契約書だけでなく、実際のネットワーク構成も確認してください。
担当者が把握していない古い回線、FAX専用番号、予備回線、保守契約などが残っていることもあります。
オフィス移転で電話番号は変わる?
現在使用している電話番号を新オフィスでも利用できるかは、移転先の住所、現在の番号、利用している電話サービスなどによって変わります。
「同じ市区町村だから大丈夫」「03から03への移転だから同じ番号を使える」と自己判断しないことが重要です。
同じ市区町村内でも通信事業者側の設備・収容条件などによって、現在の番号をそのまま利用できない場合があります。
物件が決まったら住所を伝えて確認する
電話番号を維持したい場合は、新オフィスの正確な住所が決まった段階で、現在利用している通信事業者へ確認します。
確認する内容は次のとおりです。
- 現在の電話番号を移転先で継続できるか
- 継続できない番号があるか
- 電話サービス自体を変更する必要があるか
- 工事が必要か
- 新番号になる場合、いつ確定するか
電話番号が変更になる場合は、Webサイト、名刺、会社案内、取引先情報、各種サービスの登録先などにも影響するため、早い段階で確定させる方が対応しやすくなります。
番号ポータビリティがあっても必ず同じ番号になるわけではない
固定電話では番号ポータビリティの対象が拡大していますが、「番号ポータビリティがあるから、どこへ移転しても現在の番号をそのまま利用できる」と考えるのは適切ではありません。
番号ポータビリティは通信事業者を変更する際の番号継続に関係する制度ですが、移転先住所や番号の種類、利用サービスなどによる条件は別に確認する必要があります。
現在の番号を維持することを移転条件の一つにしている場合は、物件契約前または契約後の早い段階で通信事業者へ確認します。
電話番号が変わる場合に準備すること
番号変更が必要になった場合は、電話工事だけでなく周知作業も移転工程へ入れます。
対象になりやすいのは次のようなものです。
- 自社Webサイト
- Google等の事業者情報
- 名刺
- 会社案内
- 請求書・見積書・契約書のひな型
- 取引先の登録情報
- 各種オンラインサービスの会社情報
- 広告・看板
- 社内連絡先一覧
旧番号へ着信した顧客・取引先への案内方法についても、利用している通信サービスでどのような対応が可能か確認します。
新番号の周知を移転後に始めるのではなく、新番号が確定した段階で更新対象を一覧化しておくと漏れを減らせます。
ビジネスフォン・PBXは移設するか見直すか
オフィス移転では、現在使用しているビジネスフォンやPBXをそのまま移設する方法だけでなく、移転を機に構成を変更する方法もあります。
| 方法 | 確認したい点 |
|---|---|
| 既存PBX・主装置を移設 | 機器の対応年数、移設工事、配線、電話台数 |
| 新しいビジネスフォンへ変更 | 必要台数、同時通話数、主装置、初期費用 |
| クラウドPBX等へ変更 | 既存番号の扱い、回線品質、スマートフォン利用、月額費用 |
現在の機器を再利用できるからといって、必ず移設が最も安いとは限りません。
撤去・再設置・設定変更に費用がかかる場合や、機器の更新時期が近い場合は、移転と同時に電話環境を変更した方が管理しやすいケースもあります。
一方で、移転を機にシステムを変更すると設定・テスト項目が増えるため、価格だけでなく移転日までの工程も比較します。
インターネット回線は物件決定後に早めに確認する
新オフィスの住所が決まったら、希望するインターネットサービスが利用できるかを確認します。
ビルに光回線が引き込まれていても、自社区画までの配線や希望サービスの提供条件によって工事内容が変わる可能性があります。
同じ通信会社を使う場合でも工事が必要なことがある
現在と同じ回線事業者やプロバイダーを利用する場合でも、移転先で開通工事や設定変更が必要になる場合があります。
「契約を移すだけだから工事は不要」と決めず、移転先住所を伝えて次の内容を確認してください。
- 希望サービスの提供エリアか
- 建物への回線引込状況
- 自社区画までの配線状況
- 現地調査が必要か
- 開通工事が必要か
- 立会いが必要か
- 利用開始可能日
申込から開通までの期間は固定ではない
法人向け光回線では、申込から開通まで一定の期間が必要になります。
ただし、必要期間はサービス、建物設備、配線ルート、工事内容、時期などによって変わるため、「1か月前なら必ず間に合う」とは考えない方がよいでしょう。
移転スケジュールでは、インターネットの開通予定日を引越し日と同列の重要日程として管理します。
移転全体を何か月前から始めるかについては、オフィス移転のスケジュールで確認できます。
固定IP・VPNを利用している会社は別途確認する
固定IPアドレスを利用している場合は、オフィス移転でIPアドレスが変わるかを確認します。
固定IPは、単に社員がインターネットを見るためだけではなく、次のような用途に利用されていることがあります。
- VPN接続
- クラウドサービスのIP制限
- 取引先システムのアクセス制限
- 社内サーバーへの接続
- 防犯カメラ等への外部接続
- 拠点間ネットワーク
IPアドレスが変わる場合、回線が開通していても特定システムだけ利用できないことがあります。
情報システム担当者や外部のIT管理会社へ、移転に伴うIP変更の影響を事前に確認します。
LAN・Wi-Fiは内装と同時に設計する
インターネット回線が開通しても、オフィス内のLANやWi-Fiが整備されていなければ社員は利用できません。
LAN・Wi-Fiは家具配置や会議室、複合機、電話機などと関係するため、レイアウト確定後に考えるのではなく、内装設計と並行して確認します。
有線LANで確認すること
- 必要なLANポート数
- デスク・島ごとの配線
- 会議室
- 複合機・プリンター
- サーバー・NAS
- 電話機
- 防犯・入退室設備
- 床下・天井内の配線ルート
Wi-Fiで確認すること
- 利用人数
- オフィス面積
- 会議室や個室の位置
- 壁・建具による電波への影響
- アクセスポイントの設置位置
- 社員用と来客用ネットワークの分離
単にWi-Fiルーターを一台置くだけで十分かどうかは、オフィスの広さや構造、利用端末数によって変わります。
電話・LAN工事とB工事の関係を確認する
賃貸オフィスでは、通信工事をすべてテナント側が自由に施工できるとは限りません。
ビル共用部から専有部までの回線引込、配管、電源、天井内工事などについて、ビル指定業者や工事区分が設定されている場合があります。
確認したいのは次の点です。
- MDF・IDF等から専有部までの配線ルート
- 共用部での工事可否
- 管理会社への工事申請
- 作業可能時間
- 指定業者の有無
- B工事・C工事の区分
B工事については、オフィスのB工事で工事区分・費用負担・指定業者の確認方法を整理しています。
オフィス移転の通信環境はこの順番で進める
1.現在の契約・機器を一覧化する
電話番号、回線、PBX、プロバイダー、LAN、Wi-Fi、VPN、固定IPなどを棚卸しします。
2.移転後に必要な通信環境を決める
現在と同じ構成を維持するのか、移転を機に電話台数やネットワーク構成を変更するのか決めます。
3.電話番号の継続可否を確認する
代表番号など現在の番号を維持できるか通信事業者へ確認します。
4.新オフィスの回線提供可否を確認する
希望するインターネットサービスが利用できるか、現地工事が必要かを確認します。
5.ビル管理会社と工事条件を確認する
回線引込、配線ルート、作業時間、工事申請、指定業者などを確認します。
6.LAN・Wi-Fi・電話配置を設計する
オフィスレイアウトと通信設備を同時に設計します。
7.回線・電話・配線工事を実施する
新オフィス側の通信環境を構築します。
8.移転前に動作確認する
可能なものは引越し前に接続・通話・ネットワークを確認します。
9.本番切替を行う
社員が移転するタイミングに合わせて電話・ネットワークを切り替えます。
10.旧オフィスの回線を停止する
新オフィス側の稼働を確認してから、不要になった旧回線・サービスを整理します。
移転日に電話・ネットが止まらないための確認項目
通信環境は「工事が完了した」という報告だけで判断せず、実際の業務を想定して確認します。
移転前または移転直後に確認したい項目は次のとおりです。
- 代表番号へ外部から着信できる
- 外線発信できる
- 内線が使える
- FAX等を利用する場合は送受信できる
- PCからインターネットへ接続できる
- 有線LANが使える
- Wi-Fiが必要エリアで利用できる
- VPNへ接続できる
- 固定IPを利用するシステムへ接続できる
- 複合機から印刷・スキャンできる
- Web会議設備が使える
- 防犯・入退室設備がネットワークへ接続できる
特に大規模オフィスでは、電話・ネットワークの切替を移転当日に一度だけ確認するのではなく、事前テストと本番後確認を分けて計画します。
複数部署・拠点を含む案件については、大型オフィス移転の進め方も確認してください。
旧オフィスの回線を先に解約しない
新オフィスの通信環境が確実に使える前に旧回線を停止すると、工事遅延や設定トラブルが発生した際に代替手段がなくなる可能性があります。
旧オフィスをいつまで利用できるか、通信契約の解約日をどう設定するかは、新オフィスの開通予定日と合わせて考えます。
新旧オフィスを一定期間並行利用する場合は、回線費用も一時的に重複する可能性があります。
ただし、重複期間を長く取れば必ず安全というわけでもありません。契約条件と開通スケジュールを確認して決めます。
現在のサービスを移転するか、移転を機に変更するか
| 選択肢 | 向いているケース | 確認点 |
|---|---|---|
| 現在のサービスを移転 | 現状に大きな問題がなく、構成変更を少なくしたい | 番号継続、移転工事、設備対応 |
| 通信会社・サービスを変更 | 速度・費用・保守等を見直したい | 番号、工期、違約金、設定変更 |
| PBX等をクラウド化 | スマートフォン内線等を取り入れたい | 番号、通話品質、月額費用、運用 |
移転は通信環境を見直す機会ではありますが、すべてのシステムを同時に変更すると、切替時の確認項目も増えます。
現在の課題、移転期限、社内IT体制を踏まえて、移設と刷新のどちらが適切か判断します。
小規模オフィスでも電話・ネットだけは早めに確認する
少人数のオフィスでは、「パソコンとWi-Fiルーターを持っていけば移転できる」と考えやすいですが、光回線の開通工事や電話番号の移転は荷物の量とは関係ありません。
小規模案件でも、物件が決まった時点で回線提供可否と電話番号を確認します。
一方、社内サーバーや複雑なPBXがなく、クラウドサービス中心で運用している企業では、大規模オフィスより構成を簡素化できる場合があります。
小規模案件の全体的な進め方については、小規模オフィスの移転を確認してください。
オフィス移転でよくある通信トラブル
電話番号が変わることを直前まで把握していなかった
名刺やWebサイト、取引先への連絡を急いで変更することになります。
新住所が決まったら早めに番号継続可否を確認します。
回線申込が遅れて移転日に開通しない
回線工事には日程調整や建物側の確認が必要になる場合があります。
引越し日ではなく、新オフィスで業務を開始する日から逆算します。
光回線は開通したがLANが使えない
回線工事とオフィス内LAN工事は別工程になることがあります。
回線終端装置から各席・会議室までのネットワーク構成も確認します。
固定IP変更で一部システムへ接続できない
VPNやアクセス制限、クラウドサービス等で固定IPを利用している場合は、移転前に影響範囲を確認します。
旧オフィスの通信契約が残り続ける
移転が終わったあとも不要な回線・電話・オプション契約が残る場合があります。
新オフィス稼働後に、旧契約の終了状況まで確認して通信移転を完了させます。
オフィス移転の電話・インターネットFAQ
オフィス移転では何日前に電話・インターネットを申し込めばよいですか?
一律には決められません。通信事業者、回線種類、建物設備、工事内容、時期などによって必要期間が変わります。
法人向け光回線で1か月程度が一つの目安として案内されるサービスもありますが、工事可能日が希望日に合うとは限らないため、新住所が確定したら早めに確認してください。
同じ市内への移転なら電話番号は変わりませんか?
必ず維持できるとは限りません。同じ市区町村内でも通信設備や利用サービス等によって番号が変わる場合があります。
移転先の正確な住所を通信事業者へ伝えて確認してください。
番号ポータビリティなら移転先でも必ず同じ番号を使えますか?
必ずではありません。番号ポータビリティによって事業者を変更しても番号を維持できる範囲は広がっていますが、住所・番号・サービス等による条件があります。
現在と同じインターネット会社なら工事不要ですか?
工事が不要とは限りません。移転先の建物・区画の設備状況によって、開通工事や配線工事が必要になる場合があります。
固定IPが変わると何が起こりますか?
VPN、クラウドサービスのIP制限、取引先システム、拠点間接続などに影響する可能性があります。
固定IPを使用している場合は、情報システム担当者や管理会社へ事前に確認してください。
電話やインターネットの切替を週末にできますか?
サービスや工事会社、ビル側の作業可能時間によって異なります。
週末に引越しする場合でも、回線工事や現地調査、配線工事を別日に行うことがあります。
新旧オフィスの回線を一時的に両方契約した方がよいですか?
業務継続上必要になる場合はありますが、必ず重複させる必要があるわけではありません。
新オフィスの開通日、旧オフィスの利用終了日、業務停止可能時間、費用を比較して判断します。
電話・インターネットの移転は「業務開始日」から逆算する
オフィス移転では、引越し日そのものより、新しいオフィスで通常業務を開始する日に電話・インターネットが使えることが重要です。
まず現在の電話番号、回線、PBX、固定IP、LAN・Wi-Fiなどを棚卸しし、新住所が決まったら番号継続可否と回線提供状況を確認します。
そのうえで、ビル工事条件、LAN配線、電話設備、ネットワーク設定を同じ工程で管理し、移転前または移転直後に実際の通話・接続を確認してください。
新オフィス側の通信環境が正常に稼働していることを確認してから、旧オフィスの不要な回線・電話サービスを整理することで、通信停止による業務影響を抑えやすくなります。
電話・ネットワークを含め、オフィス移転全体をどの業者へ依頼するか検討している場合は、オフィス移転業者の比較・選び方も参考にしてください。
電話、光回線、LAN、PBX、移転工事を含めた工程をまとめて整理したい場合は、お問い合わせから相談できます。
