オフィス移転の予算は、引越し業者の見積だけでは把握できません。
実際には、新オフィスの契約初期費用、内装・設備工事、B工事、家具・什器、電話・ネットワーク、引越し、旧オフィスの原状回復、不要品処分、二重賃料など、複数の費用が同時に発生します。
さらに、敷金・保証金のように最終的には返還される可能性があっても、移転時点では一時的に大きな現金が必要になる項目もあります。
そのため、オフィス移転では「最終的な費用総額」と「移転時に必要な現金」を分けて考えることが重要です。
この記事では、オフィス移転費用を8つの項目に分け、予算の組み方と見落としやすいコストを整理します。
オフィス移転費用は8つに分ける
| 費目 | 主な内容 |
|---|---|
| 1.新オフィス契約費 | 敷金・保証金、前賃料、仲介手数料等 |
| 2.内装・設備工事 | 内装、電気、空調、照明、会議室等 |
| 3.B工事・指定工事 | ビル指定業者による設備・防災・空調等 |
| 4.家具・什器・OA | デスク、チェア、収納、複合機等 |
| 5.IT・通信 | LAN、電話、インターネット、Wi-Fi等 |
| 6.引越し・搬出・廃棄 | 運搬、養生、不用品処分、機器移設等 |
| 7.旧オフィス退去 | 原状回復、撤去、清掃、退去関連費用 |
| 8.重複固定費・その他 | 二重賃料、各種届出、印刷物、予備費等 |
この8つを別々に見積もると、どこで予算が増えているのか把握しやすくなります。
1.新オフィスの契約初期費用
新しいオフィスを借りる際には、月額賃料以外にも契約時の支払いがあります。
主な項目は、
- 敷金・保証金
- 前賃料
- 共益費
- 仲介手数料
- 礼金等がある場合の支払い
- 保証会社等を利用する場合の費用
です。
特に事業用オフィスでは、敷金・保証金が大きくなることがあります。
ただし、敷金・保証金はすべてが最終費用になるわけではありません。契約条件により退去時に返還される部分があるため、「費用」と「資金拘束」を分けて管理します。
敷金・保証金は「費用」と「必要資金」を分ける
例えば、新オフィス契約時に1,000万円の保証金が必要でも、将来一定額が返還される契約なら、会計上・経済的な最終負担と移転時の現金支出は同じではありません。
一方で、旧オフィスの敷金が返還される前に新オフィスの敷金を支払うこともあります。
そのため、移転予算では、
- 最終的に返らない費用
- 返還可能性のある預託金
- 一時的に必要な資金
を分けます。
2.内装・設備工事費
新オフィスの内装・設備工事は、移転費用の中でも大きな割合を占めやすい項目です。
主な工事には、
- 間仕切り
- 床・壁・天井
- 照明
- 電気
- 空調
- 会議室
- 受付
- 防音
- サイン
- セキュリティ
などがあります。
同じ面積でも、内装グレードや会議室数、設備仕様、既存内装の再利用可否によって金額は大きく変わります。
坪単価だけで予算を固定するのではなく、必要な仕様を先に整理して見積もります。
3.B工事・指定工事
オフィスビルでは、空調・防災・電気などの一部工事について、貸主側が指定する業者で施工するB工事が設定されることがあります。
B工事はテナント側が費用を負担しても、施工会社を自由に選べない場合があります。
そのため、内装会社の見積だけを予算に入れていると、B工事費が後から追加されることがあります。
物件契約前後の段階で、
- A・B・C工事の区分
- 指定業者
- 見積取得時期
- 管理費・諸経費
- 工事申請
を確認します。
B工事についてはオフィスのB工事を確認してください。
4.家具・什器・OA機器
新オフィスでは、内装以外にも家具・什器・OA機器の費用がかかります。
例えば、
- デスク
- オフィスチェア
- 収納
- 会議テーブル
- 受付家具
- ロッカー
- モニター
- 複合機
- シュレッダー
- その他の備品
です。
すべて新品にすると予算が大きくなるため、旧オフィスから移設する物、新規購入する物、売却・廃棄する物を分けます。
不要家具の売却についてはオフィス家具の買取を確認してください。
5.IT・電話・ネットワーク費
電話・インターネット・LAN・Wi-Fiなども、移転時にまとまった費用が発生する項目です。
- 回線工事
- LAN配線
- Wi-Fi機器
- 電話設備
- サーバー・ネットワーク移設
- セキュリティ
- 機器設定
などを確認します。
IT費用は工事費だけではなく、新旧オフィスの回線を一定期間重複させる場合の月額費用もあります。
電話・ネットワーク移転はオフィスの電話・インターネット移転を参照してください。
6.引越し・搬出・廃棄費
一般的に「オフィス移転費用」と聞いて最初に想像されやすいのが引越し費用です。
ただし、移転総額では引越し費だけでなく、前後の工事・契約費が大きくなることがあります。
引越し関連では、
- 什器・段ボール等の運搬
- PC・OA機器搬送
- 養生
- 搬出入作業
- 大型什器の解体・再組立
- 不要品処分
- 産業廃棄物処理
などを見積もります。
旧オフィスで不要になる家具・OA機器は、廃棄前に買取可能性も確認します。
7.旧オフィスの原状回復・退去費用
移転予算で見落とされやすいのが、旧オフィス側の退去費用です。
新オフィスの構築費だけで予算を組むと、退去時に原状回復費が追加されます。
主な項目は、
- 原状回復工事
- 間仕切り・造作撤去
- 床・壁・天井の復旧
- 電気・空調等の復旧
- 不要家具・OA機器処分
- 清掃
- 貸主確認後の是正
などです。
旧オフィス側だけの費用はオフィス退去費用、原状回復費の詳細はオフィス原状回復費用を確認してください。
8.二重賃料・各種手続き・予備費
新旧オフィスの契約期間が重なると、二重賃料が発生します。
また、移転に伴って、
- 住所変更登記等
- 各種届出
- 名刺・封筒等の印刷物
- Webサイト更新
- サイン変更
- 郵便・配送関連
- 想定外の追加工事
などの費用も発生します。
予算をぴったり使い切る設計にすると、追加工事が出たときに稟議をやり直すことになります。
一定の予備費も別枠で持っておくと管理しやすくなります。
二重家賃は移転費用と別に管理する
二重家賃は、内装工事や引越しのような「一度だけの費用」と性質が異なります。
新オフィスの賃料発生日から旧オフィスの契約終了日まで、新旧双方の賃料・共益費等が発生します。
そのため、
移転初期費用と重複期間中の固定費
を分けて予算化します。
具体的な重複期間・金額の計算はオフィス移転の二重家賃を確認してください。
オフィス移転費用は「旧・新・移転・重複」の4分類で整理する
| 分類 | 主な費用 |
|---|---|
| 新オフィス | 契約初期費用、内装、B工事、家具、IT |
| 移転作業 | 引越し、運搬、搬入、機器移設 |
| 旧オフィス | 原状回復、撤去、処分、清掃 |
| 重複・その他 | 二重賃料、各種届出、印刷物、予備費 |
この分類にすると、複数の業者から見積を取った場合でも重複や抜けを確認しやすくなります。
「1人あたり」「坪あたり」は初期仮説として使う
オフィス移転費用では、1人あたり・坪あたりの目安が使われることがあります。
これらは予算の初期仮説を作るには便利ですが、最終予算を決めるには不十分です。
例えば、同じ100坪でも、
- 既存内装を活用する
- スケルトンから作る
- 会議室を多く設ける
- 高グレード家具を導入する
- B工事が多い
- サーバールームがある
などで総額は大きく変わります。
目安は初期予算に使い、物件とレイアウトが決まった段階で項目別見積へ置き換えます。
移転総額だけでなく必要資金のピークを見る
オフィス移転では、最終費用が同じでもキャッシュフローが違います。
例えば、
- 新オフィスの敷金を先に支払う
- 内装工事の着手金を支払う
- 家具を先に購入する
- 旧オフィスの原状回復費を支払う
- 旧敷金の返還は退去後になる
という順番になることがあります。
この場合、最終損益よりも途中の資金需要が大きくなります。
予算表には、
- 費用項目
- 見積額
- 支払予定月
- 返還・回収見込額
- 入金予定月
を入れ、月ごとの必要資金を確認します。
予算表は「確定・見積・未確認」に分ける
| 状態 | 例 |
|---|---|
| 確定 | 契約済み賃料、仲介手数料、発注済み家具等 |
| 見積 | 内装、B工事、引越し、原状回復等 |
| 未確認 | 追加B工事、通信工事、不要品処分、是正等 |
未確認項目を0円にすると、予算漏れが見えなくなります。
「金額未定」として残し、確認期限と担当者を設定します。
オフィス移転費用を抑えるときの順番
既存家具・OA機器を再利用する
移設費と新規購入費を比較します。
不要家具・OA機器は処分前に査定する
買取可能なら処分費と購入費の両方を圧縮できることがあります。
内装仕様を優先順位で分ける
必要な機能と意匠を分け、予算に応じて仕様を調整します。
B工事・原状回復の内訳を確認する
指定業者だから確認不要というわけではありません。工事項目・数量・管理費等の内訳を確認します。
二重賃料期間を必要以上に長くしない
新旧工程を同じタイムラインで管理し、不要な空白期間を減らします。
小規模オフィスと大規模オフィスで費用構造はどう変わる?
小規模オフィスでは、引越し・家具・ITなど一人あたり費用の比率が高く見えることがあります。
大規模オフィスでは、内装、B工事、設備、原状回復、プロジェクト管理などの金額が大きくなりやすくなります。
小規模移転は小規模オフィス移転、大規模移転は大規模オフィス移転を確認してください。
オフィス移転費用FAQ
オフィス移転はいくらかかりますか?
面積・人数だけでなく、物件条件、内装、B工事、家具、IT、旧オフィス原状回復、二重賃料などで大きく変わります。全国一律の総額ではなく項目別に見積もってください。
坪単価で計算できますか?
初期予算の目安には使えますが、最終予算は項目別見積に置き換える必要があります。
引越し費用だけ見ればよいですか?
いいえ。新オフィス契約・内装・B工事・家具・IT、旧オフィス原状回復などの方が大きくなるケースがあります。
敷金は移転費用に含めますか?
資金計画には含めます。ただし将来返還される可能性があるため、最終費用と資金拘束は分けて管理します。
原状回復費はいつ確認しますか?
新オフィス選定と並行して早めに見積もります。引越し後に初めて確認すると予算・工期が不足する可能性があります。
二重家賃は予算に入れますか?
新旧契約期間が重なる場合は入れます。賃料だけでなく共益費等も確認してください。
セットアップオフィスなら安くなりますか?
初期内装・家具費を抑えられる可能性がありますが、月額賃料や利用期間を含む総コストで比較する必要があります。
オフィス移転費用は「総額」より「内訳と支払時期」を見る
オフィス移転の予算を正確にするには、単一の坪単価や1人あたり金額だけでは足りません。
新オフィス契約 → 内装/B工事 → 家具/IT → 引越し → 旧オフィス退去 → 二重賃料・その他
へ分解し、それぞれの金額と支払時期を確認します。
さらに、敷金・保証金のような一時的な資金拘束と、最終的に返らない費用を分けると、稟議と資金繰りの両方を管理しやすくなります。
旧オフィス側だけの費用はオフィス退去費用、二重賃料はオフィス移転の二重家賃、原状回復はオフィス原状回復費用もあわせて確認してください。
移転総予算を、新オフィス・旧オフィス・工事・IT・引越し・二重賃料までまとめて整理したい場合は、お問い合わせから相談できます。
