オフィス移転では、新オフィスへ引っ越したあとも旧オフィスの賃料が残り、新旧両方の家賃を支払う期間が発生することがあります。
これが一般に「二重家賃」「二重賃料」と呼ばれる状態です。
二重家賃を考えるときは、「新しいオフィスを契約するのが早すぎた」といった単純な問題だけで捉えない方がよいでしょう。
実際には、
- 旧オフィスの解約予告期間
- 旧オフィスの契約終了日
- 新オフィスの契約開始日・賃料発生日
- 新オフィスの内装・設備・IT工事
- 実際の引越し日
- 引越し後の旧オフィス原状回復
- 貸主検査・是正・明渡し
が重なって発生します。
二重家賃を無理にゼロにしようとして、新オフィスの準備不足や旧オフィスの明渡し遅延を起こしては意味がありません。
この記事では、どの日付を並べれば二重家賃を把握できるのか、重複期間と金額をどう計算するのか、どの部分なら調整できるのかを整理します。
オフィス移転の二重家賃とは?
二重家賃とは、旧オフィスの賃貸借契約が続いている間に、新オフィス側でも賃料が発生し、新旧両方の固定費を負担している状態です。
例えば、新オフィスの賃料が4月1日から発生し、旧オフィスの契約が6月30日まで残っていれば、4月から6月まで新旧オフィスの賃料が重なります。
ただし、実際の支払いを考える場合は家賃だけではなく、契約によって次の費用も確認します。
- 共益費・管理費
- 駐車場
- 倉庫等の付帯契約
- 電気・空調等の固定費
- 新オフィス側で賃料免除にならない費用
そのため、移転予算では「家賃が何か月重なるか」だけでなく、重複期間中に旧・新それぞれで何を支払うのかまで確認します。
なぜオフィス移転では二重家賃が発生するのか
旧オフィスに解約予告期間がある
事業用オフィスでは、解約したいと申し出たその日に契約が終わるとは限りません。
賃貸借契約で解約予告期間が定められている場合、契約上の期間を経過するまで賃料負担が続くことがあります。
「オフィスは必ず6か月前」と一律に決まっているわけではないため、まず現在の賃貸借契約書を確認します。
解約予告については、オフィスの解約予告は何か月前かで詳しく整理しています。
新オフィスは入居前から賃料が発生することがある
新オフィスでは、実際に社員が働き始める日と、賃料が発生する日が同じとは限りません。
賃貸借契約開始後に、
- レイアウト工事
- 内装工事
- B工事・設備工事
- 家具搬入
- LAN・電話・インターネット
- セキュリティ設定
などを行ってから業務を開始するケースがあります。
その場合、新オフィスの賃料を支払いながら、まだ旧オフィスで営業を続ける期間が発生します。
引越し後も旧オフィスの原状回復が残る
社員と荷物を新オフィスへ移せば、旧オフィスの契約がその日に終わるわけではありません。
通常は搬出後に、
- 残置物確認
- 原状回復工事
- 設備撤去
- 清掃
- 貸主・管理会社の完了確認
- 必要な是正工事
- 鍵・カード等の返却
を行います。
この期間も旧オフィスの契約期間内であれば、旧オフィス側の賃料が発生します。
原状回復費用や工程については、オフィスの原状回復費用も確認してください。
二重家賃を確認するときは5つの日付を並べる
二重家賃を把握するときは、最初に次の5つの日付を一枚に並べます。
- 旧オフィスの契約終了日
- 新オフィスの賃料発生日
- 新オフィスが実際に使用可能になる日
- 引越し日・新オフィス稼働日
- 旧オフィスの原状回復完了・明渡し予定日
さらに、現契約の解約通知期限も別に記録します。
例えば、
| 項目 | 日付 |
|---|---|
| 新オフィス賃料発生日 | 4月1日 |
| 新オフィス内装・IT完了 | 4月30日 |
| 引越し | 5月1日 |
| 旧オフィス原状回復 | 5月2日〜5月31日 |
| 旧オフィス契約終了 | 6月30日 |
なら、新オフィスの賃料が始まる4月1日から旧契約が終了する6月30日まで、契約上は新旧の賃料が重なります。
この状態を可視化すると、どこを交渉・短縮すれば負担を圧縮できるのか判断しやすくなります。
二重家賃の重複期間を計算する方法
基本的には、
新オフィスの賃料発生日から、旧オフィスの賃料負担が終わる日まで
が重複期間になります。
ただし、旧オフィスを早く明け渡したからといって、契約上の賃料負担まで自動的に早く終了するとは限りません。
反対に、契約終了日までに原状回復や明渡しを完了できなければ、追加負担が生じる可能性があります。
したがって、
- 物理的に退去する日
- 明渡しを完了する日
- 契約上の賃料負担終了日
を分けて管理します。
二重家賃の金額はどう計算する?
移転予算上の概算では、旧オフィス側の残存固定費を追加負担として管理すると分かりやすくなります。
例えば、旧オフィスの月額が、
- 賃料:120万円
- 共益費:20万円
で、2か月重なるとします。
旧オフィス側に残る追加固定費は、単純化すると、
(120万円+20万円)×2か月=280万円
です。
一方、新旧双方で実際に支払う固定費総額を確認したい場合は、新オフィス側の賃料・共益費も加えます。
新オフィスが、
- 賃料:150万円
- 共益費:30万円
なら、2か月の重複期間中に新旧両拠点へ支払う固定費は、
(140万円+180万円)×2か月=640万円
となります。
この2つは意味が違います。
| 計算 | 意味 |
|---|---|
| 旧オフィス月額 × 重複月数 | 移転後も残る旧拠点側の追加負担を把握 |
| 旧+新オフィス月額 × 重複月数 | 重複期間中の実際の固定費支出総額を把握 |
社内稟議では、どちらの数字を「二重家賃」と呼んでいるのかを揃えておくと、予算の認識違いを防げます。
日割りになるか月額満額になるかは契約を確認する
新旧オフィスの賃料を日単位で単純計算できるとは限りません。
月途中の解約や契約開始について、
- 日割り
- 半月単位
- 月額満額
など、契約上の計算方法が定められている場合があります。
二重家賃を精算するときは、募集条件だけでなく最終的な賃貸借契約書で確認します。
二重家賃を減らす方法1|現オフィスの解約予告期間を早く確認する
最も基本になるのは、移転先を決める前に現在の契約を確認することです。
確認するのは、
- 解約予告期間
- 中途解約の可否
- 契約終了日の決め方
- 月途中解約の計算方法
- 原状回復完了期限
- 明渡し条件
です。
移転先を契約したあとに「旧オフィスはまだ数か月解約できない」と分かると、調整余地が小さくなります。
ただし、新オフィスが確定していない段階で旧オフィスの解約通知を出すと、移転先が決まらないリスクもあります。
二重家賃を減らすことだけを目的に、先に解約通知を出すのは危険です。
二重家賃を減らす方法2|新オフィスの賃料発生日を確認・交渉する
新オフィスの候補を比較するときは、月額賃料だけでなく、いつから賃料が発生するかを確認します。
例えば、同じ月額賃料の物件でも、
- 契約締結と同時に賃料開始
- 引渡し後に賃料開始
- 一定期間のフリーレントあり
では、移転初期のキャッシュアウトが変わります。
物件比較では月額賃料×契約期間だけではなく、移転直後の新旧固定費の重なりも含めて確認します。
二重家賃を減らす方法3|フリーレントを実質負担で見る
新オフィスにフリーレントが設定されていると、新旧オフィスが重なる期間の賃料負担を抑えられることがあります。
ただし「フリーレント3か月=3か月完全無料」とは限りません。
契約によっては、
- 賃料だけ免除
- 共益費・管理費は支払い
- 駐車場等は別契約
- 短期解約時にフリーレント相当額の返還条件がある
などの場合があります。
比較するときは、
フリーレント期間中に実際に支払う金額
を確認します。
二重家賃を減らす方法4|新オフィスの準備期間を短くする
新オフィスの賃料発生から実際の稼働開始までの期間が長ければ、その分だけ旧オフィスとの重複期間が長くなる可能性があります。
そのため、
- 内装工事
- 家具・什器
- 電話・インターネット
- セキュリティ
- 入館設定
- 引越し
を早い段階から並行して準備します。
物件によっては、内装・家具があらかじめ整ったセットアップオフィスや、既存内装を利用する形態を選ぶことで準備期間を短くできる場合もあります。
ただし、賃料水準や契約条件、長期利用時の総コストが変わるため、「初期費用が安い」という理由だけでは判断しません。
二重家賃を減らす方法5|引越し後すぐ旧オフィスの原状回復へ移る
旧オフィスの原状回復は、引越し後でなければ本格的に施工できない部分があります。
そのため、
引越し完了 → 原状回復着工
の間に無駄な空白期間を作らないことが重要です。
引越しが終わってから初めて原状回復業者へ見積依頼すると、工事開始までさらに時間がかかります。
移転前から、
- 契約上の原状回復範囲
- 貸主指定業者の有無
- 見積
- 工事期間
- 貸主検査日
を確認し、引越し後すぐ着工できる工程を作ります。
オフィス原状回復の見積については、オフィスの原状回復見積も確認してください。
二重家賃を減らす方法6|段階移転が本当に必要か確認する
大規模なオフィス移転では、部署ごとに複数回に分けて移転することがあります。
段階移転は業務停止を避ける方法として有効ですが、その分、新旧両オフィスを利用する期間が長くなる場合があります。
逆に一斉移転は重複期間を短くしやすい一方、移転当日の負荷や事業継続リスクが高くなることがあります。
二重家賃だけで方式を決めず、
- 従業員数
- 業務停止できる時間
- IT・サーバー移行
- 顧客対応
- 移転業者の対応能力
を含めて判断します。
二重家賃をゼロにすることを目標にしない
二重家賃は支出なので、短くできるなら短くした方がよいのは当然です。
しかし、移転では一定の重複期間が安全余裕になることもあります。
例えば、
- 新オフィスのIT開通遅れ
- 内装工事の遅延
- 家具搬入の遅れ
- 旧オフィスの原状回復追加工事
- 貸主検査での是正
が発生した場合、新旧契約をぎりぎりにつないでいると業務や明渡しへ影響します。
したがって、二重家賃ゼロではなく、
必要なバッファを確保したうえで、不要な重複期間だけを削る
という考え方が現実的です。
オフィス移転予算では二重家賃を独立項目にする
二重家賃を「その他費用」に入れると、移転予算が分かりにくくなります。
例えば予算表を、
- 新オフィス契約費
- 内装・B工事
- 家具・什器
- IT・通信
- 引越し
- 旧オフィス原状回復
- 二重家賃・二重固定費
- 予備費
のように分けます。
オフィス移転全体の費用については、オフィス移転費用で確認できます。
稟議では「何か月分」だけでなく日付を見せる
社内稟議で「二重家賃3か月」とだけ記載すると、なぜ3か月必要なのか判断しにくくなります。
次のように日付を並べると説明しやすくなります。
| 日付 | イベント |
|---|---|
| 4月1日 | 新オフィス賃料開始 |
| 4月1日〜30日 | 内装・IT・家具準備 |
| 5月1日 | 新オフィス稼働 |
| 5月2日〜31日 | 旧オフィス原状回復 |
| 6月上旬 | 貸主検査・是正 |
| 6月30日 | 旧オフィス契約終了 |
この形なら、
- 契約上避けられない期間
- 工事上必要な期間
- 交渉できる可能性がある期間
- 工程短縮できる可能性がある期間
を分けて検討できます。
二重家賃を確認するチェックリスト
- 現オフィスの解約予告期間を確認したか
- 旧オフィスの契約終了日を確認したか
- 月途中の賃料精算方法を確認したか
- 新オフィスの賃料発生日を確認したか
- 入居可能日と賃料発生日を分けて確認したか
- フリーレント対象が賃料だけか確認したか
- 新オフィス内装・IT工事の完了日を確認したか
- 引越し日を決めたか
- 旧オフィス原状回復の工期を確認したか
- 貸主検査・是正期間を確保したか
- 新旧共益費等も予算へ入れたか
- 必要以上に長い重複期間がないか確認したか
オフィス移転の二重家賃FAQ
オフィス移転では二重家賃は必ず発生しますか?
必ず発生するとは限りません。
ただし、旧オフィスの解約予告、新オフィスの準備期間、引越し後の原状回復を考えると、一定期間重なるケースがあります。
二重家賃は何か月くらい見ておけばよいですか?
全国一律の月数はありません。
旧契約の解約予告期間、新オフィスの賃料発生日、内装・IT工事、引越し、原状回復の工程から個別に計算します。
引越したら旧オフィスの家賃は止まりますか?
物理的に退去しただけで賃貸借契約上の賃料負担が終了するとは限りません。
契約上の解約日・明渡し条件を確認してください。
旧オフィスの原状回復中も家賃はかかりますか?
原状回復工事期間が賃貸借契約期間内であれば、一般に契約上の賃料負担が続きます。
具体的な終了時点は契約書と貸主・管理会社へ確認します。
フリーレントがあれば二重家賃はなくなりますか?
賃料負担を軽減できる場合がありますが、契約によって共益費等は発生することがあります。
「無料期間」ではなく、その期間の実際の支払額を確認してください。
解約通知を先に出せば二重家賃をゼロにできますか?
重複期間を短くできる可能性はありますが、移転先が決まらないまま旧オフィスの退去期限が来るリスクがあります。
事業継続性を含めて判断します。
セットアップオフィスなら二重家賃を減らせますか?
新オフィスの内装・家具準備期間を短縮できれば、重複期間を短くできる可能性があります。
ただし月額賃料や契約条件、長期総コストも含めて比較してください。
二重家賃はオフィス移転費用に含めますか?
移転時の資金計画では独立した費目として計上しておくと管理しやすくなります。
原状回復費や引越し費とは分けて見積もると、重複期間を短縮した場合の効果も把握できます。
二重家賃は「契約」と「工程」を同じ表で管理する
オフィス移転の二重家賃は、月額賃料だけを比較していても減らせません。
旧オフィスの解約予告・契約終了日、新オフィスの賃料発生日・入居可能日、内装・IT工事、引越し、旧オフィス原状回復・明渡しを同じタイムラインに並べる必要があります。
そのうえで、
- 契約上動かせない日
- 貸主と交渉できる可能性がある日
- 工事・引越し工程で短縮できる日
を分けます。
オフィス移転全体をいつから始めるかはオフィス移転スケジュール、旧オフィスの解約条件はオフィスの解約予告、移転全体の予算はオフィス移転費用もあわせて確認してください。
新旧契約・内装工事・引越し・原状回復を並べ、二重家賃を含めた移転工程と予算を整理したい場合は、お問い合わせから相談できます。
