オフィス移転では、新しい物件を探すことに意識が向きやすい一方、旧オフィスの「解約予告」が移転コストとスケジュールを大きく左右します。
賃貸オフィスでは、解約希望日の6か月前までに通知する契約が多く見られます。
ただし、すべてのオフィスについて法律で6か月前と決められているわけではありません。
3か月前など別の期間が定められていることもあれば、定期建物賃貸借で契約期間途中の解約が制限されていることもあります。
さらにオフィス移転では、旧オフィスを出るだけではありません。
- 新オフィスの契約
- 新オフィスの内装工事
- 通信・ネットワーク工事
- 引越し
- 旧オフィスの原状回復
- 貸主検査
- 鍵の返却・明渡し
を並行して進める必要があります。
オフィスの解約予告は、単に「何か月前か」を確認するだけではなく、新旧オフィスを切り替える移転工程の起点として考えることが重要です。
この記事では、オフィス移転時の解約予告について、契約書の確認から二重賃料、原状回復、明渡しまで順番に整理します。
オフィス退去・移転全体については、オフィス退去・移転ガイドをご覧ください。
オフィスの解約予告とは
解約予告とは、現在借りているオフィスの賃貸借契約を終了したいことを、貸主・管理会社へ事前に通知することです。
例えば契約書に、
「賃借人は6か月前までに書面により解約を申し入れることができる」
と定められている場合、契約終了希望日から逆算して通知します。
4月30日で契約を終了したいのであれば、単純に考えれば前年10月末ごろが一つの期限になります。
ただし、契約によって、
- 通知日を基準とする
- 月末解約のみ認める
- 日割りを認めない
- 所定の解約通知書が必要
など条件が異なるため、実際の日付は契約書と管理会社へ確認します。
オフィスは6か月前予告が多いが、一律ではない
賃貸オフィスでは6か月前予告の契約を多く見かけます。
しかし、
「オフィスだから法律上必ず6か月前」
ではありません。
実際の解約予告期間は、
- 契約期間
- 普通建物賃貸借か定期建物賃貸借か
- 中途解約条項
- 解約予告特約
などによって変わります。
最初に賃貸借契約書の6項目を確認する
移転を検討し始めたら、新オフィス探しと並行して現在の賃貸借契約書を確認します。
最低限確認したいのは次の6項目です。
- 契約期間
- 普通借家・定期借家の別
- 中途解約できるか
- 解約予告期間
- 解約通知の方法
- 違約金・即時解約条項
1.契約期間を確認する
まず現在のオフィス契約がいつまで続くのか確認します。
例えば、
2025年4月1日〜2028年3月31日
という3年間の契約であれば、現在は契約期間中です。
契約期間途中で移転したい場合は、次に中途解約条項を確認します。
2.普通借家か定期借家か確認する
オフィス賃貸では、普通建物賃貸借と定期建物賃貸借の両方があります。
定期建物賃貸借は、契約期間満了によって更新なく終了する契約です。
そのため、定期借家契約の途中で移転する場合は、契約書に借主からの中途解約条項があるかが特に重要になります。
「定期借家なら1か月前に解約できる」と考えない
法律には一定の定期建物賃貸借について、借主から1か月前の申入れで中途解約できる制度があります。
しかし、これは床面積200㎡未満の居住用建物について、転勤・療養・親族の介護など一定の事情がある場合の制度です。
通常のオフィス専用契約へそのまま適用することはできません。
事務所の定期借家契約は、契約書の中途解約条件を確認します。
3.中途解約条項を確認する
期間の定めがある契約でも、契約書に中途解約できる旨が定められていることがあります。
例えば、
「賃借人は6か月前までに書面で通知することにより契約期間中でも解約できる」
という条項です。
この場合、その条件に従って移転スケジュールを組みます。
中途解約条項がない場合
期間の定めがある契約で、中途解約できる旨が定められていない場合は注意が必要です。
借主が希望するだけで、当然に契約途中で終了できるとは限りません。
この場合は、
- 契約満了まで継続する
- 貸主との合意解除を検討する
- 契約書に別の解約条件がないか確認する
などを検討します。
中途解約そのものについてはART-285「テナントの中途解約」で詳しく扱います。
4.解約予告期間を確認する
オフィス移転では、「6か月前」がよく使われますが、契約書に書かれた期間を確認します。
例えば、
- 3か月前
- 4か月前
- 6か月前
- それ以上
の契約も考えられます。
「今のビルも前のビルと同じ6か月だろう」と判断せず、契約ごとに確認します。
期間の定めがない建物賃貸借は別のルールがある
期間の定めがない建物賃貸借については、民法上、解約申入れから3か月を経過することで終了するという規定があります。
ただし、実際のオフィス契約では期間を定め、中途解約について個別の条項を置いていることが多いため、まず現在の契約内容を確認します。
5.解約通知の方法を確認する
解約日を決めたら、契約で指定された方法に従って正式に通知します。
例えば、
- 貸主指定の解約通知書
- 管理会社指定フォーム
- 書面郵送
- Webシステム
などです。
担当者へ電話やメールで、
「移転予定です」
と相談しただけでは正式な解約予告として扱われない場合があります。
正式な受付日を確認する
解約予告期間は、通知をいつ出したかだけでなく、正式にいつ受理されたかが問題になる場合があります。
提出後は、
- 受付完了メール
- 受領書
- 管理会社からの返信
- 解約日確認書
などを残します。
6.違約金・即時解約条項を確認する
オフィスによっては、通常の解約予告期間を待たずに契約を終了するための条項があります。
例えば、
「6か月分の賃料等相当額を支払うことにより即時解約できる」
という内容です。
また、
- 契約開始から一定期間以内の解約
- フリーレント期間中・終了直後の解約
- 定期借家の期間途中解約
などで別の違約金が定められている場合もあります。
新オフィスの条件だけでなく、旧オフィスを終了するための費用も移転予算へ入れます。
オフィス移転では「解約予告」と「新オフィス契約」をセットで考える
店舗閉店と違い、オフィス移転では事業を継続したまま新しい拠点へ移る必要があります。
そのため、旧オフィスの解約を早く出しすぎても、遅く出しすぎても問題になります。
早く出しすぎるリスク
まだ新オフィスが確定していない段階で旧オフィスの解約予告を出すと、
- 希望物件の契約が成立しない
- 新オフィスの内装工事が間に合わない
- 通信回線開通が遅れる
などにより、旧オフィスの退去期限だけが先に来る可能性があります。
遅く出しすぎるリスク
逆に新オフィス契約後も解約通知を遅らせると、旧オフィスの契約終了が後ろへ延びます。
結果として、新旧両方の賃料を支払う期間が長くなります。
「新オフィスが決まった」の基準を社内で決める
移転計画では、どの段階で旧オフィスの解約予告を出すか決めておきます。
例えば、
- 候補物件を決定
- 申込み
- 貸主審査
- 契約条件確定
- 賃貸借契約締結
という段階があります。
申込み段階では契約が成立しない可能性があります。
一方、すべてを待ちすぎれば二重賃料が長くなる可能性があります。
そのため、契約締結見込み、新オフィスの入居可能日、現在の解約予告期限を見ながら判断します。
オフィス移転で二重賃料が発生する理由
オフィス移転では、一定期間、新旧両方のオフィス賃料が発生することがあります。
例えば、
旧オフィス契約終了:9月30日
新オフィス契約開始:7月1日
なら、7月〜9月は契約が重複します。
一見すると無駄に見えますが、この期間に、
- 新オフィス内装工事
- 什器搬入
- ネットワーク工事
- 電話・サーバー移設
- 引越し
- 旧オフィス原状回復
を進めます。
二重賃料をゼロにすることを最優先にしない
旧オフィスの契約終了日と新オフィスの契約開始日を完全に一致させれば、二重賃料だけを見ると効率的です。
しかし、オフィス移転では、同じ日に、
- 新オフィス内装完成
- 通信開通
- 全社員の引越し
- 旧オフィスの原状回復
- 貸主検査
まで完了するのは現実的でない場合があります。
二重賃料はできるだけ短くしつつ、業務停止や退去遅延を起こさないために必要な重複期間を確保するという考え方が重要です。
二重賃料を減らす方法
重複期間を短縮する方法には、例えば次があります。
- 旧オフィスの解約予告期限を早期に把握する
- 新オフィスの契約開始日を調整する
- フリーレント条件を確認する
- 新オフィス内装工事を早期に確定する
- 通信・ネットワーク工事を早めに手配する
- 引越し後すぐ旧オフィス原状回復へ入る
ただし、貸主・物件によって交渉可能な内容は異なります。
解約予告を出したら旧オフィスの原状回復条件を確認する
解約予告後は、旧オフィスの原状回復を具体化します。
オフィスでは、
- パーティション
- 会議室
- 床
- 壁
- 天井
- 照明
- 電源
- LAN
- 空調
- サイン
などについて、契約上どこまで戻す必要があるか確認します。
原状回復見積については、オフィス原状回復の見積はどこを見る?で詳しく整理しています。
指定業者かどうかも早めに確認する
オフィスでは、原状回復工事を貸主指定業者が行う契約があります。
その場合、移転担当者が自由に施工会社を選べないことがあります。
解約予告後すぐに、
- 原状回復業者は指定か
- 工事区分はどうなっているか
- 見積はいつ出るか
- 着工までどのくらい必要か
を確認します。
指定業者については、オフィス原状回復の指定業者とは?をご覧ください。
原状回復は契約終了日までに終える前提で確認する
事業用オフィスでは、原状回復を契約期間内に完了し、明渡しまで済ませる契約が多くあります。
例えば、契約終了日が9月30日なら、9月30日に引越しをして、その後10月から原状回復できるとは限りません。
契約によっては、9月30日までに原状回復と貸主確認まで完了させる必要があります。
そのため、実際の社員・什器の引越し日は、契約終了日より前に設定することがあります。
原状回復期間から引越し日を逆算する
例えば、
契約終了日:9月30日
原状回復工事:3週間
貸主検査・是正:1週間
と想定するなら、旧オフィスからの実質的な引越しを8月末ごろまでに終える必要が出る可能性があります。
つまり、
「9月末まで借りているから9月末まで普通に仕事できる」
とは限りません。
貸主検査・是正期間も確保する
原状回復工事が終わった後、貸主・管理会社が確認を行うことがあります。
そこで、
- 撤去漏れ
- 仕上げ不足
- 設備処理不足
- 清掃不足
などを指摘されれば是正工事が必要です。
契約終了日に工事を完了する工程では、修正する時間がありません。
貸主検査まで含めてスケジュールを組みます。
オフィス移転の逆算例
例えば、旧オフィス契約終了を9月30日とする場合、次のような工程を検討します。
6か月前前後
- 旧オフィス契約確認
- 解約予告
- 原状回復条件確認
- 新オフィス候補選定
5〜4か月前
- 新オフィス決定
- 賃貸条件確定
- レイアウト設計
- 内装工事見積
- 旧オフィス原状回復見積
3〜2か月前
- 新オフィス内装工事
- 什器・OA機器発注
- 通信回線・ネットワーク手配
- 引越し業者手配
1か月前前後
- 新オフィスへ引越し
- 旧オフィス原状回復開始
- 不要什器・OA機器搬出
契約終了前
- 原状回復完了
- 貸主検査
- 是正工事
- 鍵返却
- 明渡し完了
実際の期間は、オフィス規模・工事内容・契約条件によって異なります。
解約予告後に移転が中止になったらどうする?
新オフィス契約が破談になった、移転計画が延期になったなどの事情で、旧オフィスの解約を取り消したくなる場合があります。
しかし、一度正式に行った解約通知を、借主の都合だけで当然に撤回できるとは考えない方が安全です。
貸主側はすでに次のテナント募集を開始している可能性があります。
継続利用したい場合は、すぐに貸主・管理会社へ相談し、解約撤回または再契約が可能か確認します。
解約通知を出す前に社内決裁を終える
オフィス移転は店舗閉店以上に社内関係者が多くなります。
解約通知前に、少なくとも、
- 経営層の移転承認
- 移転予算
- 候補エリア
- 必要面積
- 移転予定時期
- 新オフィス契約の見通し
- 原状回復費
を整理します。
担当者レベルの検討段階で正式な解約通知を出さないようにします。
オフィス解約時に確認する費用
旧オフィスの費用は、賃料だけではありません。
例えば、
- 解約予告期間中の賃料・共益費
- 原状回復費
- B工事・指定業者工事
- 引越し費
- 不要什器処分
- OA機器撤去
- 違約金
などがあります。
新オフィス側では、
- 保証金・敷金
- 前家賃
- 仲介手数料
- 内装工事
- 什器
- ネットワーク
- 移転作業
などが発生します。
旧オフィス原状回復費については、オフィスの原状回復費用はいくら?をご覧ください。
解約予告期間中も通常は賃料負担を考える
解約予告を出したからといって、翌月から賃料がなくなるわけではありません。
契約終了日まで賃貸借契約が続くのであれば、その期間の賃料等を予算化します。
また、旧オフィスを使わなくなったとしても、契約が終了していなければ負担が残る場合があります。
新テナントが決まっても旧契約が自動的に終了するとは限らない
貸主が次の入居者を早く見つける場合もあります。
しかし、それによって現在の借主の解約予告期間が当然に短縮されるとは限りません。
契約終了日を変更する場合は、貸主との合意内容を確認します。
敷金・保証金の返還時期も確認する
オフィス移転では、旧オフィスへ預けている敷金・保証金を新オフィスの初期費用に使いたいと考えることがあります。
しかし、返還時期は明渡しと同時とは限りません。
原状回復費、未払賃料、その他精算を行った後、契約で定められた期間を経て返還される場合があります。
そのため、新オフィス契約時の資金として旧オフィスの保証金返還を即時に当て込まない方が安全です。
オフィスの解約予告前チェックリスト
- 現在の契約期間を確認した
- 普通借家・定期借家を確認した
- 中途解約条項を確認した
- 解約予告期間を確認した
- 解約通知方法を確認した
- 通知先を確認した
- 違約金・即時解約条項を確認した
- 新オフィスの契約時期を確認した
- 新オフィスの内装期間を確認した
- 通信回線の工期を確認した
- 引越し日を確認した
- 旧オフィスの原状回復期間を確認した
- 貸主検査・是正期間を確認した
- 二重賃料期間を予算化した
- 敷金・保証金の返還時期を確認した
オフィスの解約予告についてよくある質問
オフィスは何か月前に解約予告するのが一般的ですか?
6か月前予告の契約が多く見られますが、一律ではありません。3か月など別の期間もあるため、現在の賃貸借契約書を確認してください。
法律でオフィスは6か月前と決まっていますか?
借主からのオフィス解約について、一律に6か月前と定めたルールではありません。契約期間、中途解約条項、解約予告特約によって結論が変わります。
新しいオフィスが決まる前に解約予告を出してもよいですか?
可能な契約もありますが、新オフィスが決まらなかった場合に旧オフィスの退去期限だけが到来するリスクがあります。一方、通知を遅らせるほど二重賃料が長くなるため、新オフィスの契約見通しと解約予告期限を見ながら判断します。
二重賃料は必ず発生しますか?
契約日程によります。新オフィスの契約開始日、フリーレント、旧オフィスの契約終了日を調整することで短縮できる場合があります。ただし、業務継続や原状回復のため一定の重複期間が必要になることもあります。
旧オフィスは契約終了日まで使えますか?
契約上使用できても、原状回復を契約終了日までに完了する必要がある場合は、実際の引越しをそれより前に行う必要があります。契約と工事条件を確認してください。
原状回復期間中も賃料はかかりますか?
契約が継続している期間に原状回復を行う場合は、その期間も通常は賃料負担を考える必要があります。個別契約を確認してください。
定期借家のオフィスは途中で解約できますか?
契約上の中途解約条項を確認します。居住用の一定の定期建物賃貸借に認められている法定の1か月中途解約制度を、通常の事務所へそのまま適用することはできません。
解約通知を出した後に取り消せますか?
借主だけの判断で当然に撤回できるとは限りません。継続利用したい場合は、貸主・管理会社へ早急に相談してください。
オフィス解約予告は「何か月前か」だけで決めない
オフィス移転では、解約予告期間だけを確認しても十分ではありません。
進める順番は、
- 現在の契約類型を確認する
- 中途解約条項を確認する
- 解約予告期間を確認する
- 新オフィス契約の見通しを確認する
- 正式な解約通知を提出する
- 新オフィス内装・通信工事を進める
- 引越しを行う
- 旧オフィス原状回復を行う
- 貸主検査・是正を行う
- 契約終了日までに明渡す
と整理すると分かりやすくなります。
そして、新旧オフィスの契約が一定期間重なること自体を失敗と考える必要はありません。
二重賃料を短くすることは重要ですが、無理に重複期間をゼロへ近づけた結果、内装工事や通信開通が間に合わず業務を止めたり、旧オフィスの原状回復が期限に間に合わなかったりすれば、損失はさらに大きくなります。
解約予告期間、新オフィス準備期間、引越し、旧オフィス原状回復期間を一つの工程として設計することが、オフィス移転のコストとリスクを抑えるポイントです。
オフィス退去・移転全体については、オフィス退去・移転ガイドをご覧ください。
契約・退去手続き全体については、契約・退去手続きガイドで整理しています。
旧オフィスの原状回復見積については、オフィス原状回復の見積はどこを見る?をご覧ください。
現在の契約書を見ても、いつ解約通知を出せばよいのか、新オフィス契約・引越し・原状回復の日程をどう重ねればよいか整理できない場合は、お問い合わせから現在の契約条件・移転予定時期をご連絡ください。
