店舗を閉店・移転するとき、「営業をやめる日」を決めるだけでは賃貸借契約は終了しません。
店舗を借りている場合は、賃貸借契約で定められた方法に従って貸主・管理会社へ解約を申し入れ、契約終了日までに原状回復などを終えて物件を明け渡す必要があります。
ここで特に注意したいのが「解約予告期間」です。
店舗・テナントでは3か月前、6か月前などの解約予告が定められている契約がありますが、すべての店舗で同じではありません。
契約によってはそれより長い期間が設定されていたり、そもそも契約期間途中の中途解約が制限されていたりする場合もあります。
閉店を検討し始めたら、営業終了日を決める前に賃貸借契約の解約条項を確認することが重要です。
この記事では、店舗の解約予告について、確認する契約条項、通知方法、予告期間中の賃料、原状回復・明渡しとの関係まで整理します。
店舗の解約予告とは
解約予告とは、店舗の賃貸借契約を終了したい借主が、貸主へ事前にその意思を通知することです。
例えば契約書に、
「賃借人が本契約を解約するときは、6か月前までに書面で通知する」
と定められている場合、契約で定められた期間を確保して解約通知を行います。
この場合、今日閉店を決めたからといって、明日から家賃が不要になるわけではありません。
原則として、契約が終了するまでは賃貸借関係が続きます。
店舗の解約予告は「必ず6か月前」ではない
店舗・オフィスなどの事業用賃貸では、3か月前や6か月前などの解約予告期間が設定されている契約が多く見られます。
しかし、全国一律に、
「店舗は必ず6か月前」
と決まっているわけではありません。
実際に何か月前までに通知する必要があるかは、まず自社の賃貸借契約を確認します。
店舗の解約時期だけを詳しく確認したい場合は、ART-283「テナントは何か月前に解約する?」で扱います。
最初に確認するのは賃貸借契約の5項目
閉店・移転を考え始めたら、契約書から次の項目を確認します。
- 契約期間
- 中途解約の可否
- 解約予告期間
- 解約通知の方法
- 即時解約・違約金・予告賃料の規定
1.契約期間を確認する
まず、現在の契約がいつからいつまでなのか確認します。
賃貸借契約には、
- 期間の定めがある契約
- 期間の定めがない契約
があります。
さらに建物賃貸借では、普通建物賃貸借と定期建物賃貸借があります。
どの契約になっているかで、期間途中の解約をどのように考えるかが変わります。
2.中途解約条項を確認する
期間の定めがある賃貸借契約では、契約期間中であっても借主から中途解約できる旨が契約書に定められていることがあります。
例えば、
「賃借人は6か月前までに書面で通知することにより、本契約を中途解約できる」
といった条項です。
このような条項があれば、その条件に従って途中解約を進めます。
中途解約条項が見当たらない場合
契約期間が定められているのに、中途解約できる旨の条項がない場合は注意が必要です。
期間の定めがある賃貸借では、中途解約権を留保していなければ、借主が契約期間中に一方的に解約できないのが原則です。
この場合、
- 契約満了まで継続する
- 貸主と合意解除を協議する
- 契約書に別の解約条件がないか確認する
といった対応を検討します。
契約途中の解約についてはART-285「テナントの中途解約」で詳しく扱います。
3.解約予告期間を確認する
中途解約が認められている契約では、何か月前までに通知する必要があるか確認します。
例えば、
- 3か月前
- 6か月前
- それより長い期間
などが契約で設定されている場合があります。
「他の店舗は3か月だった」
「一般的に6か月らしい」
という情報ではなく、自社の契約書を基準にします。
期間の定めがない賃貸借の場合
期間の定めがない建物賃貸借については、民法上、借主からの解約申入れから原則3か月を経過することで終了するというルールがあります。
ただし、実際の店舗契約では解約に関する特約が定められていることがあります。
そのため、期間の定めがないように見えても、契約書の解約条項を確認してください。
定期建物賃貸借の店舗は特に注意する
定期建物賃貸借は、契約で定められた期間が満了すると更新なく終了する契約です。
店舗でも利用されることがあります。
ここで注意したいのが、
「定期借家なら借主は1か月前に言えばいつでも途中解約できる」
という理解です。
法律上の1か月前申入れによる中途解約制度は、一定の居住用建物について、転勤・療養・親族の介護など一定の事情がある場合に認められる制度です。
通常の店舗専用契約へそのまま適用できる制度ではありません。
店舗の定期建物賃貸借では、中途解約に関する契約条項を確認します。
4.解約通知の方法を確認する
解約する意思が固まったら、契約書で通知方法を確認します。
例えば、
- 書面
- 貸主指定の解約通知書
- 管理会社所定のフォーム
- 郵送
- Webフォーム
などが指定されている場合があります。
電話だけで済ませない
管理会社へ電話して、
「3月末で退去します」
と伝えただけでは、正式な解約通知として扱われない可能性があります。
契約書で書面提出が必要なら、指定された手続きを行います。
通知先も確認する
解約通知をどこへ提出するかも重要です。
例えば、
- 貸主
- 管理会社
- プロパティマネジメント会社
- 契約書に指定された窓口
などです。
店舗を日常的に管理している担当者へ連絡しただけでは、契約上の正式な通知先へ届いていない可能性もあります。
「送った日」ではなく到達日にも注意する
解約予告期間を計算するときは、通知を発送した日だけでなく、貸主側へいつ到達したかにも注意します。
例えば、6か月前予告の契約で月末ぎりぎりに郵送し、翌月に到着した場合、想定していた契約終了日とずれる可能性があります。
余裕を持って提出し、
- 受領メール
- 受付完了通知
- 配達記録
- 管理会社からの確認書
など、到達日を確認できる記録を残します。
5.即時解約・予告期間相当額の条項を確認する
事業用賃貸では、契約上の予告期間を待たずに退去したい場合について、別の定めがあることがあります。
例えば、
「6か月前に解約予告を行う。ただし、6か月分の賃料等相当額を支払うことにより即時解約できる」
といった条項です。
この場合、店舗から実際に退去する日は早められても、予告期間相当の金銭負担が残ることがあります。
「早く出れば家賃を払わなくてよい」とは限らない
例えば6か月前予告の契約で、解約通知から2か月後に原状回復を終えて店舗を空にしたとしても、残り4か月分の負担が自動的になくなるとは限りません。
契約書で、
- 解約予告期間
- 即時解約予告金
- 賃料等相当額
- 違約金
がどのように規定されているか確認します。
次のテナントが決まったら予告賃料は不要になる?
これも契約次第です。
現借主が解約通知を出したあと、貸主が早期に次のテナントを見つける場合があります。
しかし、新しい借主が見つかったからといって、現在の借主が負担する予告期間相当額が当然に消えるとは限りません。
事業用賃貸借では、契約上定めた解約予告期間相当分を現在の借主が負担する扱いが問題になることがあります。
早期終了について別途合意するのであれば、その内容を貸主と確認します。
契約終了日・営業終了日・明渡日は分けて考える
店舗閉店では、次の3つの日付が同じとは限りません。
- 営業を終了する日
- 店舗を明け渡す日
- 賃貸借契約が終了する日
例えば、
営業終了:9月30日
原状回復工事:10月1日〜20日
貸主検査・明渡し:10月25日
契約終了:10月31日
という工程も考えられます。
営業終了日に賃料が止まるとは限りません。
店舗返還までにかかる費用全体については、店舗の閉店・退去費用は何にかかる?をご覧ください。
解約予告を出す前に原状回復期間を逆算する
解約通知を出したら、契約終了日までに店舗を返せるよう工程を作ります。
確認するのは、
- 最終営業日
- 在庫・什器搬出
- 厨房機器等の売却
- 居抜き募集を行う場合の期限
- 原状回復工事
- 貸主・管理会社検査
- 是正工事
- 鍵の返却・明渡し
です。
原状回復を契約終了日当日に終わらせない
貸主・管理会社による検査で、
- 撤去漏れ
- 補修不足
- 看板撤去不足
- 設備処理不足
などを指摘される可能性があります。
契約終了日の当日に工事を終える工程では、是正する時間がありません。
数日から一定期間の余裕を確保して工程を作ります。
原状回復範囲については、店舗閉店の原状回復はどこまで必要?で整理しています。
居抜きを検討する場合も解約予告は先に確認する
後継テナントへ内装・設備を引き継げれば、原状回復費を減らせる可能性があります。
ただし、居抜き相手を探している間にも解約予告期間は進みます。
閉店が決まっているのに、
「居抜き相手が決まってから解約通知しよう」
と待っていると、契約終了が後ろへずれ、その分賃料負担が増える可能性があります。
一方、先に解約予告を出せば、居抜き相手を探せる期限も決まります。
契約終了日から原状回復に必要な期間を差し引き、居抜き募集の終了日を決めます。
居抜き・造作譲渡については、居抜き・造作譲渡ガイドをご覧ください。
解約通知を出した後に撤回できる?
閉店予定が変わり、解約通知を取り消したい場合もあります。
しかし、一度有効に行った解約の意思表示を、借主側の都合だけで当然に撤回できるとは考えない方が安全です。
貸主側では、解約通知を受けて次テナント募集を開始している場合があります。
継続して借りたい場合は、早急に貸主・管理会社へ相談し、撤回を認めてもらえるか確認します。
解約予告は社内決定が固まってから提出する
店舗責任者レベルでは閉店するつもりでも、会社として最終決裁が終わっていない場合があります。
解約通知は、
- 閉店・移転の社内決裁
- 資金計画
- 移転先
- 従業員対応
- 原状回復工程
などを確認し、正式な意思決定として提出します。
解約予告後にやるべきこと
通知を出して終わりではありません。
解約日が確定したら、退去までの各工程を並行して進めます。
- 貸主から解約受付を確認する
- 契約終了日を確定する
- 原状回復範囲を確認する
- 居抜き可否を確認する
- 設備・什器を売却する
- 原状回復見積を取る
- 工事日程を決める
- 貸主検査日を決める
- 是正工事を行う
- 鍵を返却し明渡しを完了する
店舗の解約予告前チェックリスト
- 契約期間を確認した
- 普通借家・定期借家を確認した
- 中途解約条項を確認した
- 解約予告期間を確認した
- 通知方法を確認した
- 正式な通知先を確認した
- 即時解約条項を確認した
- 予告期間相当額・違約金を確認した
- 契約終了日を計算した
- 原状回復工期を確認した
- 居抜き検討期限を確認した
- 社内決裁を終えた
店舗の解約予告についてよくある質問
店舗は何か月前までに解約通知が必要ですか?
契約によります。事業用では3か月前や6か月前などの予告期間が設定されている例がありますが、一律ではありません。まず賃貸借契約の解約条項を確認してください。
店舗は法律で6か月前に解約すると決まっていますか?
借主側の店舗解約について、一律に「6か月前」とするルールではありません。契約期間、中途解約条項、解約予告特約などによって結論が変わります。
電話で管理会社へ伝えれば解約できますか?
契約で書面や指定フォームによる通知が求められている場合は、その方法に従います。電話連絡だけで正式な解約予告として扱われるとは限りません。
解約通知を郵送した日から予告期間が始まりますか?
通知の効力は相手方への到達が基準になるため、貸主・管理会社が受領した日を確認できるようにしておく方が安全です。契約書の具体的な定めも確認してください。
6か月前予告ですが、2か月後に退去したいです。できますか?
契約に予告期間相当の賃料等を支払って即時解約できる条項があるか確認します。条項がなければ、貸主との合意が必要になることがあります。
次のテナントがすぐ決まれば残りの家賃は払わなくてよいですか?
自動的に不要になるとは限りません。契約上の解約予告期間・即時解約条項と、貸主との合意内容を確認してください。
定期借家の店舗でも1か月前に通知すれば解約できますか?
通常の店舗専用契約について、そのように一般化することはできません。法律上の1か月中途解約制度は一定の居住用建物についての制度です。店舗では契約上の中途解約条項を確認します。
解約予告を出した後に取り消せますか?
借主側だけで当然に撤回できるとは考えない方が安全です。貸主が次の募集を開始している可能性もあるため、継続したい場合は貸主の同意を得られるか早急に確認します。
店舗閉店では「解約予告日」から退去工程が始まる
店舗閉店で最初に確認したいのは、解体業者でも買取業者でもなく、賃貸借契約です。
確認する順番は、
- 契約期間を確認する
- 中途解約できるか確認する
- 解約予告期間を確認する
- 通知方法と提出先を確認する
- 即時解約・違約金等を確認する
- 契約終了日を算出する
- 原状回復・貸主検査から逆算する
- 居抜き・設備売却などを進める
- 契約終了日までに明渡しを完了する
です。
営業終了日だけ決め、解約予告を後回しにすると、店舗を使っていない期間にも賃料が発生する可能性があります。
反対に、退去工程を確認せず早く解約日を決めると、原状回復が間に合わない可能性があります。
解約予告期間・原状回復期間・居抜き検討期間を一つのスケジュールとして管理することが、閉店時の余計な支出を減らすポイントです。
契約・退去手続き全体については、契約・退去手続きガイドをご覧ください。
店舗閉店の全体工程については、店舗閉店ガイドで整理しています。
契約書を読んでも、中途解約できるのか、何月を契約終了日に設定できるのか、原状回復をいつ始めるべきか整理できない場合は、お問い合わせから現在の契約条件と退去予定をご連絡ください。
