店舗を閉店するときは、賃貸借契約を解約し、設備を撤去して物件を明け渡すだけではありません。
開業時や営業中に取得した許可・免許・登録、行政機関へ提出した届出についても、廃止・返納・取消申請などが必要になる場合があります。
ただし、すべての店舗に共通する「許認可一括廃止届」があるわけではありません。
閉店時は、開業時に取得・提出した許認可を一つずつ棚卸しし、それぞれの所管窓口で終了手続きを確認することが重要です。
店舗閉店では「開業時に何を取ったか」から確認する
閉店時に必要な許認可は、業種によって大きく異なります。
たとえば、飲食店と古物店、クリニック、バー、たばこ販売店では、関係する行政機関も手続きも異なります。
まず、開業時の書類ファイルや行政機関から交付された許可証を確認してください。
- 営業許可証
- 免許通知書
- 許可証
- 登録証
- 届出書の控え
- 行政機関からの通知書
- 更新通知
- 各種認定証
これらを集め、「どの役所・警察署・税務署等から受けたものか」を一覧にします。
税務署へ廃業届を出しても他の許認可は自動終了しない
個人事業の廃業届や法人の税務関係手続きを行っても、保健所・警察・消防・財務局等の許認可まで自動的に終了するとは限りません。
許認可はそれぞれ根拠法令と所管行政機関が異なります。
そのため、税務手続きとは別に確認します。
許可証を捨てるだけでは廃業手続きにならない
紙の許可証や免許証を処分しただけで、行政上の許可が終了するわけではありません。
制度によっては、
- 廃止届
- 返納理由書
- 許可証の返納
- 免許取消申請
- 登録廃止届
などが必要です。
閉店時に書類を一括廃棄する前に確認してください。
許認可によって「閉店前」と「閉店後」で手続き時期が違う
許認可の終了手続きは、すべて閉店後に行うわけではありません。
廃止する前に申請が必要な制度もあれば、廃止後○日以内、あるいは「遅滞なく」と定められている制度もあります。
そのため、閉店日が決まった時点で確認を始めます。
飲食店の営業許可・営業届出
飲食店営業など食品衛生法に基づく営業許可・届出をしている店舗では、閉店時に保健所等への廃業手続きがあります。
営業許可を受けている場合、自治体によっては営業許可書の提出・返納も必要です。
店舗移転や営業者変更では、単純な廃業とは手続きが異なる場合があります。
飲食店の保健所手続きについては飲食店を閉店したときの保健所への届出で詳しく整理しています。
消防関係は店舗ごとの届出内容を確認する
消防関係では、全国すべての店舗に共通した一つの「閉店届」があるわけではありません。
地域や店舗によって、
- 防火対象物使用休止・廃止
- 防火管理者の解任
- 少量危険物等の廃止
- 危険物施設の廃止
- 厨房・火気設備
などを確認する必要があります。
詳しくは店舗閉店時の消防署への届出を確認してください。
酒類販売業免許を持っている店舗
酒類を小売・卸売するための酒類販売業免許を取得している場合は、閉店時に免許の終了手続きを確認します。
酒類販売業を廃止する場合は、販売場の所在地を所轄する税務署へ免許取消申請を行います。
この手続きは「閉店してからいつか出せばよい」と考えない方がよく、廃止前に手続きを進める制度です。
飲食店で酒を出していることと酒類販売業免許は分けて確認する
「店でお酒を扱っている」というだけで、すべて同じ酒類販売業免許を持っているわけではありません。
店舗でどの免許・届出を実際に取得しているか、開業時の書類で確認してください。
物販、テイクアウト、酒類販売などを行っていた店舗では特に確認が必要です。
古物商許可を持っている店舗
中古品の買取・販売等で古物商許可を取得している事業者が古物営業を廃止する場合は、許可証の返納を確認します。
東京都では、返納事由が生じた日から10日以内に、主たる営業所等を管轄する警察署を経由して許可証を返納する手続きが案内されています。
必要書類には返納理由書と許可証などがあります。
店舗を一つ閉めるだけなのか古物営業全体をやめるのかを区別する
複数店舗を運営している会社が一店舗だけ閉める場合と、古物営業そのものを廃業する場合では手続きが同じとは限りません。
営業所の廃止・変更なのか、古物商許可自体の返納なのかを所轄警察署へ確認してください。
風俗営業の許可を受けている店舗
風俗営業や特定遊興飲食店営業の許可を受けている場合は、廃業時に許可証の返納手続きを確認します。
接待を伴う飲食店、遊技場、特定遊興飲食店など、どの区分の許可を受けているかによって確認する書類も変わります。
許可証は店舗の閉店書類と分けて保管し、所轄警察署へ確認します。
深夜における酒類提供飲食店営業
深夜に酒類を提供するバー・酒場等で、深夜における酒類提供飲食店営業の届出をしている場合は、営業廃止時の届出を確認します。
これは飲食店営業許可とは別の制度です。
保健所への廃業手続きだけで終わらせず、警察関係の届出も確認してください。
風俗営業と深夜酒類提供飲食店営業は同じ制度ではない
閉店時に「警察へ届出していた」という記憶だけでは、どの手続きが必要か判断できません。
許可証や開業時の届出控えを確認し、
- 風俗営業
- 特定遊興飲食店営業
- 深夜における酒類提供飲食店営業
- その他の届出営業
のどれに該当するか確認します。
たばこを販売している店舗
製造たばこの小売販売業の許可を受けている店舗では、営業所での営業を廃止した場合に廃止届を確認します。
提出先は営業所所在地を管轄する財務局・財務事務所等です。
たばこの小売販売業では、廃止後「遅滞なく」の届出が案内されています。
コンビニ・酒販店などは複数の許認可が重なることがある
一つの店舗で、
- 食品営業
- 酒類販売
- たばこ販売
- 古物営業
など複数の許認可を持っていることがあります。
「店舗を閉める」という事実は一つでも、行政手続きはそれぞれ別です。
屋外広告物・看板の届出も確認する
店舗の看板や屋外広告物について、自治体の許可を受けている場合があります。
閉店に伴って広告物を撤去した場合、自治体によっては除却届等の提出が必要です。
特に大型看板、袖看板、屋上広告物等を設置している場合は、開業時の屋外広告物許可書を確認します。
看板を外す工事と行政上の届出は別
看板業者に撤去を依頼して工事が完了しても、行政上の手続きまで自動的に完了するとは限りません。
広告物の許可を受けている場合は、
- 除却届
- 廃止届
- 許可証等の扱い
を所在地の自治体へ確認してください。
クリニック・医療系店舗は別途確認項目が多い
クリニックや診療所では、一般店舗の許認可に加えて医療法・健康保険・薬事・放射線・麻薬等の制度が関係します。
診療所の廃止届だけでなく、保険医療機関、X線装置、麻薬関係、各種指定などを別々に確認する必要があります。
詳しくはクリニック閉院時に必要な届出を確認してください。
移転なら「廃業・返納」と同じとは限らない
店舗を完全に閉めるのではなく別の場所へ移転する場合は注意が必要です。
制度によって、
- 旧店舗を廃止して新店舗で新規許可
- 所在地変更
- 変更届
- 移転申請
など扱いが異なります。
移転なのに許可証を先に返納すると、再取得が必要になる場合もあります。
事業譲渡なら許認可の承継を先に確認する
店舗を別の事業者へ譲渡する場合も、単純な閉店とは異なります。
許認可によっては、
- 承継制度がある
- 新しい営業者による新規申請が必要
- 旧営業者による廃止手続きが必要
など取扱いが異なります。
居抜きで設備をそのまま譲渡しても、行政上の許可まで自動的に譲渡できるとは限りません。
法人名や営業者だけ変わる場合も廃業とは限らない
法人の組織変更、合併、分割、事業譲渡などの場合は、制度によって変更・承継の仕組みが用意されている場合があります。
営業停止前に所管窓口へ確認してください。
許認可の棚卸し表を作る
閉店時は、許認可ごとに次の項目を一覧化すると整理しやすくなります。
| 確認項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 許認可名 | 飲食店営業、古物商など |
| 所管 | 保健所、警察署、税務署等 |
| 許可番号 | 許可証・免許通知書から確認 |
| 終了手続き | 廃止・返納・取消申請等 |
| 期限 | 閉店前、10日以内、遅滞なく等 |
| 原本 | 許可証返納の有無 |
| 担当者 | 社内責任者 |
| 完了日 | 受付済みの日付 |
開業時の支払先・行政機関から逆引きする
許認可一覧が残っていない場合は、過去の資料から逆引きできます。
確認するのは、
- 開業時の行政書士・専門家ファイル
- 保健所・警察署・消防署への届出控え
- 税務署からの酒類免許関係書類
- 財務局関係書類
- 自治体からの屋外広告物許可書
- 許可更新時の通知
などです。
店舗内に掲示している許可証も確認する
営業中に店内へ掲示している許可証・標識・登録票があれば、それも許認可を見つける手掛かりになります。
撤去時に処分せず、終了手続きが確認できるまで保管してください。
閉店手続きを「行政」「契約」「物件」に分ける
閉店時に混乱しやすいのは、すべてを「廃業手続き」と一括りにすることです。
実務では、
- 行政上の許認可
- 民間企業との契約
- 賃貸物件の退去
- 税務・社会保険
を分けて管理します。
たとえば警備会社との契約解除は行政許可の返納ではありませんし、テナント契約の解約通知だけで飲食店営業許可が終了するわけでもありません。
税務・社会保険・法人解散は別の手続きとして管理する
この記事では店舗営業に関係する許可・免許・届出を中心に扱っています。
実際の閉店・廃業ではこのほか、
- 税務署への届出
- 都道府県・市区町村への税務手続き
- 社会保険
- 雇用保険
- 労働保険
- 法人解散・清算
などが必要になる場合があります。
店舗の許認可を返納しただけで法人全体の廃業が完了するわけではありません。
原状回復前に許可・届出対象設備を確認する
許認可によっては、設備自体が届出内容と関係しています。
たとえば、
- 厨房設備
- 防火設備
- 危険物設備
- 医療機器
- 看板
などです。
行政上の手続きを確認する前に設備をすべて撤去すると、型式・設置状況・許可番号等を確認しにくくなる場合があります。
行政手続きの棚卸しを先に行い、その後に撤去工事を進める方が安全です。
許認可と店舗明け渡しを同じ工程表で管理する
行政手続きと物件退去を別々に管理すると、許可証を返す前に書類を処分したり、設備撤去後に届出漏れへ気付いたりする可能性があります。
閉店工程には、
- 許認可の棚卸し
- 所管行政機関への確認
- 閉店前に必要な申請
- 最終営業
- 閉店後の廃止・返納手続き
- 設備撤去
- 原状回復
- 明け渡し
を組み込みます。
店舗全体の退去については店舗の明け渡し手順も確認してください。
店舗閉店時の許認可チェックリスト
- 開業時の許可証・免許証を集めた
- 届出書の控えを確認した
- 食品営業許可・届出を確認した
- 消防関係を確認した
- 酒類販売業免許を確認した
- 古物商許可を確認した
- 風俗営業等の許可を確認した
- 深夜酒類提供飲食店営業の届出を確認した
- たばこ小売販売業を確認した
- 屋外広告物許可を確認した
- 業種固有の許認可を確認した
- 閉店か移転かを確定した
- 事業譲渡・承継予定を確認した
- 手続期限を確認した
- 許可証原本の返納有無を確認した
- 行政手続き完了の控えを保管した
店舗閉店時の許認可でよくある質問
税務署へ廃業届を出せば店舗の許認可も全部終了しますか?
通常は別手続きです。保健所、警察、消防、税務署の酒類担当、財務局、自治体など、許認可ごとの所管へ確認してください。
閉店したら許可証を全部返しますか?
制度によります。返納が必要なもの、廃止届だけのもの、取消申請が必要なものなどがあります。
許可証を紛失している場合はどうしますか?
所管行政機関へ紛失したことを伝えて手続きを確認してください。許可証がないことを理由に廃止手続きを放置しないようにします。
酒類販売業免許は閉店後に申請しますか?
国税庁は酒類販売業を廃止する場合、廃止前に免許取消申請を行う手続きを案内しています。閉店日が決まった段階で所轄税務署へ確認してください。
古物商許可は閉店したら返しますか?
古物営業そのものを廃止する場合は許可証返納が必要です。一店舗だけ閉鎖して他店で営業を続ける場合は取扱いが異なる可能性があるため警察署へ確認してください。
深夜営業のバーを閉める場合は保健所だけでよいですか?
飲食店営業に加えて、深夜における酒類提供飲食店営業の届出をしている場合は、警察への廃止手続きも確認してください。
たばこ販売をやめる場合は何か届出が必要ですか?
製造たばこ小売販売業を廃止した場合は、管轄財務局等への廃止届を確認します。
看板を撤去したら行政手続きも必要ですか?
屋外広告物の許可を受けている看板では、自治体によって除却届等が必要になる場合があります。所在地の自治体へ確認してください。
店舗を別の場所へ移す場合も許可を返納しますか?
制度によって異なります。旧店舗の廃止と新店舗での新規申請になるもの、変更手続きが可能なものなどがあります。返納前に所管窓口へ確認してください。
事業を次の会社へ譲るなら許可証もそのまま渡せますか?
原則として自己判断で許可証を譲渡しないでください。制度によって承継手続きや新規許可が必要です。
閉店前に許認可を棚卸しすれば、退去後の手続き漏れを減らせる
店舗閉店時の許認可で重要なのは、「どの役所に廃業届を出せばよいか」だけではありません。
開業時に取得したものを逆算して、
- 許認可・届出を一覧化する
- 閉店・移転・譲渡のどれかを確定する
- 所管行政機関を確認する
- 期限と必要書類を確認する
- 閉店前に必要な申請を行う
- 閉店後の廃止・返納を行う
- 受付控えを保存する
- その後に設備撤去・明け渡しを完了する
という流れで整理します。
閉店全体の流れは店舗閉店の進め方、飲食店の保健所手続きは飲食店閉店時の保健所届出、消防関係は店舗閉店時の消防届出をあわせて確認してください。
複数の許認可があり、どの順番で閉店・設備撤去・原状回復・明け渡しを進めるべきか整理したい場合は、お問い合わせから店舗業種、閉店予定日、取得している主な許認可をお知らせください。
