店舗やオフィスを契約期間の途中で退去したいとき、「何か月前に言えばよいか」より先に確認することがあります。
それは、そもそも契約途中で借主から中途解約できる契約になっているかです。
期間の定めがある賃貸借では、契約期間満了まで契約を続けるのが原則です。民法618条も、期間の定めがある場合に期間内の解約権を留保しているときに、期間の定めのない賃貸借の解約ルールを準用する構造になっています。
そのため、事業用テナントでは、賃貸借契約書の「中途解約」「解約予告」「期間内解約」「違約金」などの条項を確認することが重要です。
中途解約条項があれば、3か月・6か月等の予告期間や、予告期間相当額を支払う即時解約条項が定められていることがあります。
条項がない場合でも、貸主が同意すれば合意解約できる可能性はあります。ただし、借主だけの判断で一方的に契約を終了できるとは限りません。
この記事では、店舗・オフィスなどの事業用テナントを契約途中で退去するとき、解約通知を出す前に確認したい7項目を整理します。
「何か月前に通知するか」だけを確認したい場合は、先にテナント解約は何か月前かを確認してください。
テナントは契約途中でも中途解約できる?
契約内容によります。
| 契約状態 | 借主側からの中途解約 |
|---|---|
| 期間の定めがある+中途解約条項あり | 条項の条件に従って解約できる可能性がある |
| 期間の定めがある+中途解約条項なし | 借主だけの一方的な中途解約は原則できない |
| 期間の定めがない | 民法617条による解約申入れが問題になる |
| 定期建物賃貸借 | 事業用では契約上の中途解約条項を確認。居住用の法定例外を一般化しない |
事業用建物賃貸借では、借主側からの中途解約を認める特約を置き、3〜6か月前などの予告期間を定める契約がよく見られます。
一方で、長期契約や特殊な物件では、中途解約を制限したり、残存期間・一定期間の賃料相当額を違約金として定めたりする契約もあります。
したがって、「テナントだから途中解約できる」とも、「契約期間中は絶対に解約できない」とも一律には言えません。
中途解約と「解除」は同じではない
実務では言葉が混同されることがありますが、借主都合で契約期間途中に終了させる「中途解約」と、債務不履行などを理由に契約関係を終了させる「解除」は分けて考えます。
例えば、
- 閉店するため契約途中で退去したい
- オフィス移転のため契約満了前に出たい
- 拠点縮小のため使用を終了したい
といったケースでは、通常は契約上の中途解約条項を確認します。
一方、賃料不払い、重大な契約違反、使用不能など別の法的問題がある場合は、単純な借主都合の中途解約とは別の検討が必要です。
退去前に確認する7項目
1.契約期間の定めがあるか
最初に、現在の賃貸借契約に期間が定められているか確認します。
契約書で、
- 契約開始日
- 契約終了日
- 更新条項
- 自動更新の有無
- 法定更新後の扱い
を確認してください。
期間の定めがある契約では、期間満了まで契約を継続するのが原則です。
民法618条は、期間を定めた賃貸借でも、当事者が期間内に解約する権利を留保しているときに民法617条を準用するとしています。
つまり、契約期間途中の解約では「解約権を留保しているか」が重要です。
2.中途解約条項・解約権留保があるか
契約書の中に、例えば次のような条項がないか確認します。
「賃借人は、6か月前までに賃貸人へ書面で予告することにより、本契約を中途解約できる」
このような条項が、いわゆる中途解約条項・期間内解約条項です。
確認するのは、
- 借主側に中途解約権があるか
- 貸主・借主双方なのか
- 予告期間
- 通知方法
- 即時解約の条件
- 違約金・予告期間相当額
です。
中途解約条項がある場合でも、条項の一部分だけを見ず、関連する「違約金」「保証金」「原状回復」「明渡し」条項まで確認してください。
3.解約予告期間と即時解約条項を確認する
中途解約条項には、3か月前、6か月前などの予告期間が定められていることがあります。
また、
「6か月分の賃料相当額を支払うことで即時解約できる」
といった条項が置かれることもあります。
この場合、
- 実際に6か月待って退去する
- 早く明け渡し、予告期間相当額を支払う
という選択肢が契約上用意されている可能性があります。
ただし、予告期間相当額を払えば必ず好きな日に終了できるとは限りません。条項の文言・通知方法・賃料等の範囲を確認してください。
解約予告期間自体はテナント解約は何か月前かで詳しく整理しています。
4.違約金・残存期間の賃料負担を確認する
事業用賃貸借では、中途解約時に、
- 数か月分の賃料相当額
- 予告期間不足分
- 短期解約違約金
- 残存契約期間の全部または一部
を支払う特約が置かれていることがあります。
不動産流通推進センターでも、事業用建物賃貸借では3〜6か月前予告の中途解約特約が一般的に見られ、残存期間の賃料相当額を違約金とする条項が問題になるケースを紹介しています。
ただし、長期間の残存賃料をすべて違約金として請求する条項については、裁判で一部が公序良俗に反して無効と判断された事例もあります。
そのため、契約書に高額な違約金条項があるからといって、ここで一律に「必ず全額有効」「必ず減額できる」と判断することはできません。
特に、
- 残存期間が長い
- 違約金が賃料1年以上など高額
- 新テナント入居との二重負担が問題になる
- 契約条項の意味について貸主と見解が違う
場合は、弁護士等への個別確認を検討します。
違約金に特化した内容はテナント退去の違約金で整理しています。
5.中途解約条項がない場合は合意解約を検討する
期間の定めがある契約に中途解約条項がない場合、借主から一方的に期間途中で終了させるのは難しくなります。
ただし、貸主と借主が合意すれば、契約を途中で終了させる「合意解約」は可能です。
例えば、
- 一定額の解約金を支払う
- 後継テナントを紹介する
- 原状回復条件を調整する
- 明渡し日を貸主都合に合わせる
- 残存期間の一部を負担する
といった条件を話し合う場合があります。
重要なのは、貸主が同意していない段階で「○月○日に解約します」と一方的に確定したものとして事業計画を進めないことです。
合意できた場合は、
- 契約終了日
- 最終賃料負担日
- 解約金
- 原状回復範囲
- 保証金・敷金精算
- 明渡し日
をできるだけ書面で確定します。
6.普通借家・定期借家を確認する
定期建物賃貸借は、契約更新がなく期間満了で終了する契約ですが、それだけで自由に中途解約できるわけではありません。
借地借家法38条には、一定の定期建物賃貸借で借主に法定の中途解約権を認める規定があります。
ただし対象は、床面積200㎡未満の居住用建物で、転勤・療養・親族の介護その他のやむを得ない事情により生活の本拠として使用することが困難になった場合です。
通常の店舗・事務所など、事業用テナントにこの1か月中途解約ルールをそのまま適用することはできません。
事業用の定期建物賃貸借では、中途解約条項があるか、条項がない場合に貸主と合意できるかを確認します。
7.契約終了日と明渡し・原状回復を分けて考える
中途解約の通知日や契約終了日だけ決めても、退去は完了しません。
店舗・オフィスでは、契約終了までに、
- 営業終了・移転
- 在庫・家具・什器の搬出
- リース品返却
- 居抜き・買取の判断
- 原状回復工事
- 貸主・管理会社の完了検査
- 是正工事
- 鍵返却・明渡し
が必要になります。
「6か月前予告だから6か月後まで営業できる」とは限りません。
原状回復に1か月必要なら、その分を前倒しして営業終了・移転日を設定します。
店舗は店舗閉店から退去までの流れ、オフィスはオフィス退去チェックリストを確認してください。
中途解約条項がない場合、勝手に退去すれば契約は終わる?
物理的に鍵を返し、店舗・オフィスを使わなくなったからといって、当然に賃貸借契約が終了するとは限りません。
期間の定めがある契約で中途解約権が留保されていない場合、一方的な解約申入れは原則として契約終了の効果を生じません。
そのため、使用をやめる前に、貸主との合意や契約上の終了条件を確認してください。
後継テナントが決まれば中途解約しやすくなる?
後継テナントを確保できれば、貸主との交渉材料になる場合があります。
ただし、後継テナント候補を見つけただけで、現在の賃貸借契約が自動的に終了するわけではありません。
貸主による審査、新賃貸借契約、造作譲渡、原状回復免除・引継ぎなどを別々に確認する必要があります。
また、後継テナントが入った場合でも、現在の契約に定められた予告期間相当額の支払義務が自動的になくなるとは限りません。
不動産流通推進センターの2025年の相談事例でも、6か月前予告・即時解約条項のある事業用契約について、予告期間中に新賃借人が決まった場合でも予告期間相当分の負担が問題となっています。
後継テナントを探す場合は、居抜きで後継テナントを探す方法も確認してください。
解約通知を出した後にやっぱり残ることはできる?
中途解約通知を出した後に、閉店・移転計画が変わることがあります。
しかし、有効な解約予告を一度出した後は、借主だけの意思で当然に撤回できるとは限りません。
貸主が次のテナント募集を開始している場合もあります。
契約継続を希望する場合は、すぐに貸主・管理会社へ相談し、解約予告を撤回することについて合意できるか確認してください。
「解約予告期間相当額」と「違約金」は同じ?
契約書では、似た金銭負担が別の名称で定められていることがあります。
例えば、
- 解約予告期間中の賃料
- 即時解約予告金
- 中途解約違約金
- 短期解約違約金
- 残存期間賃料相当額
です。
名称だけで判断せず、
- 何を原因として支払うのか
- いつまでの賃料負担なのか
- 契約終了日はいつなのか
- 共益費等も含むのか
- 保証金から控除されるのか
を条項ごとに確認します。
国税庁も、建物賃貸借契約を期間終了前に中途解約するとき、数か月分の家賃相当額を違約金として受け取るケースがあることを前提に税務上の取扱いを示しています。
中途解約で原状回復義務はなくなる?
中途解約したからといって、原状回復義務が自動的になくなるわけではありません。
契約終了時には、賃貸借契約・特約に基づいて原状回復・明渡しを行う必要があります。
居抜きで後継テナントへ引き継ぐ場合も、貸主が原状回復を免除・変更することに同意しているか確認します。
店舗の原状回復は店舗閉店時の原状回復、オフィスの費用はオフィス原状回復費用を確認してください。
テナント中途解約の確認チェックリスト
| 確認項目 | 確認 |
|---|---|
| 契約期間・更新状態を確認した | □ |
| 中途解約条項・解約権留保を確認した | □ |
| 解約予告期間を確認した | □ |
| 即時解約・予告期間相当額の条項を確認した | □ |
| 違約金・残存期間賃料の条項を確認した | □ |
| 普通借家・定期借家を確認した | □ |
| 条項がない場合は貸主との合意条件を確認した | □ |
| 通知先・通知方法を確認した | □ |
| 契約終了日と賃料負担終了日を確認した | □ |
| 原状回復・貸主検査・明渡し日を逆算した | □ |
テナント中途解約FAQ
テナントは契約期間の途中でも解約できますか?
契約内容によります。期間の定めがある契約では、中途解約条項・解約権留保があるか確認します。条項がない場合は、借主だけの一方的な中途解約ができないのが原則です。
中途解約条項がなければ絶対に退去できませんか?
貸主と借主が合意すれば、期間途中でも合意解約することは可能です。契約終了日、解約金、原状回復、保証金精算などを合意して書面化します。
6か月前に通知すれば必ず中途解約できますか?
6か月という数字だけでは判断できません。契約に借主側の中途解約権があり、その条件として6か月前予告が定められているか確認してください。
6か月分を払えばすぐ解約できますか?
即時解約予告金の条項があれば可能な場合がありますが、すべての契約に共通する仕組みではありません。条項の対象金額、契約終了日、通知方法を確認してください。
定期借家でも中途解約できますか?
事業用定期借家では契約上の中途解約条項を確認します。借地借家法上の1か月中途解約制度は、200㎡未満の居住用建物で一定のやむを得ない事情がある場合の制度で、通常の店舗・事務所には一般化できません。
後継テナントが決まれば違約金は不要ですか?
自動的に不要になるとは限りません。現在の中途解約条項、貸主との合意、後継テナントとの新契約開始日などを確認してください。
契約期間の残り全部の家賃を払う必要がありますか?
中途解約条項がない場合や、残存期間賃料相当額を違約金とする特約がある場合に問題になります。ただし、高額な違約金条項の有効性は個別事情・裁判例によって判断が分かれるため、金額が大きい場合は専門家へ確認してください。
中途解約しても原状回復は必要ですか?
原則として、契約終了時の原状回復・明渡し義務は別に確認します。中途解約したことだけで原状回復義務がなくなるわけではありません。
解約通知を出した後に撤回できますか?
借主だけの判断で当然に撤回できるとは限りません。契約継続を希望する場合は、貸主・管理会社と撤回または再契約について合意できるか確認してください。
テナントの中途解約は「何か月前か」の前に解約権を確認する
契約途中で店舗・オフィスを退去するときは、解約予告期間だけを先に見るのではなく、
契約期間 → 中途解約権 → 予告期間 → 即時解約条件 → 違約金 → 合意解約 → 原状回復・明渡し
の順で確認します。
期間の定めがある契約では、中途解約条項があるかどうかが出発点です。
条項があればその条件に従い、条項がなければ貸主との合意解約を検討します。
予告期間はテナント解約は何か月前か、違約金はテナント退去の違約金、通知方法はテナントの解約通知へ進んでください。
店舗閉店・オフィス移転で契約満了を待てず、中途解約条件と原状回復・明渡しまでの費用・日程を整理したい場合は、お問い合わせから相談できます。
