オフィス移転で必要な住所変更届は?法務局・税務署・年金・労働保険を整理

オフィスを移転すると、引越しや原状回復だけでなく、会社住所に関するさまざまな変更手続きが発生します。

ただし、「オフィスを移したら法務局・税務署・年金事務所などへ同じ住所変更届を出せばよい」という仕組みではありません。

登記上の本店、税務上の納税地、健康保険・厚生年金の適用事業所、労働保険・雇用保険の事業所など、それぞれ別の制度で住所が登録されています。

しかも提出期限も、2週間以内、5日以内、10日以内、速やかに、など制度によって異なります。

オフィス移転が決まったら、最初に「登記上の本店も移すのか」を確定し、その後に税務・社会保険・労働保険等の住所変更を一つの工程表で管理します。

目次

オフィス移転と本店移転は同じとは限らない

住所変更手続きを考えるとき、最初に確認したいのが「今回の移転で登記上の本店所在地も変更するのか」です。

会社によっては、実際に社員が勤務するオフィスと、登記上の本店所在地が同じです。

一方で、営業拠点や事務所だけを移転し、登記上の本店は変更しないケースもあります。

この二つでは必要な手続きが異なります。

登記上の本店を移すなら本店移転登記を確認する

株式会社が登記上の本店所在地を変更する場合は、法務局で本店移転登記を行います。

本店移転登記には期限があり、原則として本店を移転した日から2週間以内です。

オフィスの賃貸借契約を締結した日ではなく、会社として定めた本店移転日を基準に手続きを管理します。

同じ法務局管轄内か、管轄外への移転かを確認する

本店移転では、新旧所在地を管轄する登記所が同じかどうかで申請内容が変わります。

特に別の登記所の管轄区域へ本店を移す場合は、旧本店所在地を管轄する登記所を経由して手続きを行います。

移転先住所が決まった段階で、新旧所在地の管轄法務局を確認しておくと手続きを組みやすくなります。

2025年以降は管轄外移転時の印鑑届書の扱いが変わっている

以前の本店移転手続きを経験した会社では、管轄外へ本店を移す際に新しい登記所へ印鑑届書を提出した記憶があるかもしれません。

2025年4月21日以降は制度が変わり、管轄外への本店移転時には印鑑記録が新所在地の登記所へ移送される仕組みとなったため、新所在地管轄登記所への印鑑届書は原則として不要となっています。

ただし、印鑑カードはそのまま引き継がれる仕組みではないため、移転後に印鑑証明書を取得する場合は必要な手続きを確認します。

実際のオフィスだけ移して本店登記を変えない場合

営業拠点や事業所だけを移し、登記上の本店住所は変更しない場合、通常は「本店移転登記」の問題ではありません。

ただし、健康保険・厚生年金、労働保険、雇用保険、地方税などでそのオフィスが事業所として登録されている場合は、所在地変更の手続きが必要になる可能性があります。

「法務局の登記を変えないから住所変更手続きは何もない」とは考えないようにします。

税務署には法人の異動届出書を確認する

法人の納税地や本店・主たる事務所所在地等が変わった場合は、国税についても異動手続きを確認します。

法人の異動届出書は、たとえば次のような異動に使用されます。

  • 納税地の異動
  • 本店・主たる事務所所在地の変更
  • 商号・名称変更
  • 代表者変更
  • 事業目的変更
  • 支店・工場等の異動

国税庁では、異動後速やかに提出する手続きとして案内しています。

納税地が変わる場合は旧所在地側の税務署を確認する

法人の納税地が異動する場合は、どちらの税務署へ提出するかも確認します。

制度上、異動前の納税地を所轄する税務署長へ提出する扱いとなるものがあります。

移転によって所轄税務署そのものが変わる場合は、移転前・移転後のどちらへ提出するのかを最新様式で確認してから手続きします。

消費税・インボイス関係を二重提出しないよう最新様式を確認する

法人の異動届出書では、消費税に関する変更についても同じ届出書で処理できる場合があります。

国税庁の現行案内では、異動届出書の「消費税」欄を利用して対象となる変更事項を届け出た場合、法人の消費税異動届出書等を重ねて提出する必要がないケースがあります。

インボイス登録をしている法人も、旧様式や古い解説記事をそのまま使わず、提出時点の国税庁様式を確認してください。

都道府県・市区町村の法人地方税も確認する

法人には、法人税などの国税だけでなく、法人事業税・法人住民税などの地方税もあります。

本店や事業所を移転した場合は、都道府県・市区町村への異動届が必要になることがあります。

国税の異動届を出しただけで、すべての地方自治体の登録住所が自動的に変更されるとは限りません。

地方税の期限は自治体ごとに確認する

地方税関係の届出期限や提出方法は自治体によって異なります。

たとえば東京都では、本店所在地や事務所等の所在地など届出済み事項に変更が生じた場合、異動届出書を変更の日から10日以内に提出する扱いとなっています。

一方、全国の記事として「地方税はすべて10日以内」とは考えず、移転前後の自治体の案内を確認してください。

都道府県をまたぐ移転では新旧両方の自治体を確認する

たとえば東京都から神奈川県へ本店を移す場合、旧所在地側で事業所を廃止し、新所在地側で新たに法人の事業所が設置される形になる場合があります。

新旧自治体それぞれで、

  • 異動届
  • 法人設立・設置届
  • 支店・事業所廃止届

などのどの手続きが必要になるか確認します。

健康保険・厚生年金は年金事務所への所在地変更を確認する

健康保険・厚生年金の適用事業所になっている法人では、事業所所在地が変わった場合、日本年金機構への変更届が必要です。

提出するのは「健康保険・厚生年金保険 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」です。

提出期限は、事実発生から5日以内です。

本店移転登記の2週間より短いため、登記が終わってからすべての行政手続きを考え始めると遅くなる可能性があります。

年金事務所の管轄内移転と管轄外移転で手続きが分かれる

日本年金機構では、同じ年金事務所の管轄内で所在地を変更する場合と、管轄外へ移る場合で届書の扱いを分けています。

管轄外へ移転する場合は、変更前所在地を管轄する年金事務所へ提出する仕組みです。

他県への移転では健康保険料率が変わる場合もあるため、給与計算担当者にも早めに共有してください。

年金事務所への届出には登記事項証明書等を確認する

法人事業所では、所在地変更の確認資料として法人の登記事項証明書の写し等が必要になる場合があります。

本店移転登記が関係する会社では、

  1. 本店移転登記
  2. 必要な登記事項証明書等の取得
  3. 社会保険関係の所在地変更

という流れも想定して準備します。

従業員を雇用しているなら労働保険の所在地変更も確認する

労災保険・雇用保険が適用される事業所を移転した場合、労働保険についても所在地変更手続きがあります。

主な書類は「労働保険名称、所在地等変更届」です。

提出期限は、変更があった日の翌日から起算して10日以内です。

労働保険の提出先は事業形態によって異なる

一元適用事業と二元適用事業では、提出先の扱いが異なります。

一般的なオフィス事業では一元適用事業となるケースが多いものの、自社の労働保険関係成立状況を確認して提出先を判断してください。

所在地変更では、移転後の所在地を管轄する労働基準監督署等への提出となるケースがあります。

雇用保険はハローワークへの変更届もある

雇用保険の適用事業所について所在地等が変わった場合は、「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出します。

提出期限は、名称・所在地等の変更があった日の翌日から10日以内です。

法人の場合、登記事項証明書等の変更事実を確認できる資料を求められる場合があります。

労基署だけに出して終わりとは限らない

労働保険の所在地変更と雇用保険の事業所変更は関連しますが、手続きは分けて確認します。

一元適用事業では、まず移転後所在地を管轄する労働基準監督署で労働保険の所在地変更を行い、その後ハローワークで雇用保険関係の変更を進める案内がされています。

本店移転・税務・社会保険は期限が全部違う

主な手続き 目安となる期限
本店移転登記 移転から2週間以内
国税の異動届 異動後速やかに
健康保険・厚生年金 事実発生から5日以内
労働保険所在地変更 変更日の翌日から10日以内
雇用保険事業所変更 変更日の翌日から10日以内
地方税 自治体ごとに確認

「まず登記を終えて、その後ゆっくり他をやる」という進め方では、5日以内の届出などに間に合わない可能性があります。

移転前から届出書を準備する

住所変更届の多くは、実際の移転日・異動日を基準に期限が動きます。

そのため、移転後にゼロから調べ始めるのではなく、移転前に、

  • 提出先
  • 様式
  • 必要な添付書類
  • 電子申請可否
  • 社内担当者

を確認しておきます。

「移転日」を部署ごとに違う意味で使わない

オフィス移転では、

  • 新オフィスの賃貸借開始日
  • 社員の引越し日
  • 旧オフィスの最終出勤日
  • 本店移転日
  • 新オフィスでの事業開始日
  • 旧オフィスの明け渡し日

が異なることがあります。

行政手続きではどの日を「異動日」「事実発生日」とするのかが重要です。

社内工程表にそれぞれの日付を明記してください。

オフィスの住所表記を最初に統一する

ビル名や階数まで含め、会社が今後使用する住所表記を統一します。

部署ごとに、

「○丁目○番○号」「○-○-○」「○○ビル5F」「○○ビル5階」

など表記がばらばらになると、銀行、契約書、Webサイト、請求書、名刺などの更新管理が難しくなります。

登記上の所在地と、郵便物・Webサイトなどで使用する表示住所を分ける場合も、社内ルールを決めます。

行政手続き後は銀行・カード・保険なども更新する

公的機関への届出が終わっても、会社の住所変更はまだ続きます。

民間契約では、たとえば次の更新があります。

  • 銀行口座
  • 法人クレジットカード
  • 損害保険・生命保険
  • リース契約
  • 通信契約
  • 電気等の契約
  • 取引先登録
  • 仕入先登録
  • 決済代行サービス

法人確認書類として新しい登記事項証明書を求められることもあります。

請求書・契約書・Webサイトも新住所へ更新する

会社が外部へ表示している住所も確認します。

代表的なのは、

  • 自社Webサイト
  • 会社概要
  • プライバシーポリシー
  • 利用規約
  • 請求書
  • 見積書
  • 契約書ひな形
  • 名刺
  • 会社案内
  • 封筒
  • Googleビジネスプロフィール等

です。

行政上の住所変更と対外表示の変更を同じチェックリストで管理すると漏れを減らせます。

取引先には移転前に新住所と切替日を知らせる

取引先への案内では、新住所だけでなく、

  • 移転日
  • 新住所
  • 電話番号の変更有無
  • 郵送物の切替日
  • 請求書送付先の変更

を明示します。

請求書や契約書が旧住所へ送られ続けないよう、経理担当の連絡先も案内しておくと実務上スムーズです。

インターネット・電話の移転も住所変更手続きと並行する

行政届出とは別に、オフィスの通信環境も早めの準備が必要です。

新住所で光回線が利用できるか、固定電話番号を維持できるかなどは、住所が決まった段階で確認します。

通信関係についてはオフィスのインターネット解約・移転もあわせて確認してください。

旧オフィスの電気は住所変更より後まで残ることがある

社員が新オフィスへ移った後も、旧オフィスでは原状回復工事や設備確認が続くことがあります。

そのため、会社住所を新住所へ切り替えた日と、旧オフィスの電気契約を終了する日は同じとは限りません。

オフィスの電気解約は原状回復工程から停止日を決めます。

旧オフィスをすぐ明け渡す必要はない

新オフィスで業務を開始しても、旧オフィスでは原状回復・完了確認・明け渡しが残っていることがあります。

行政上の本店・事業所住所と、不動産契約上の旧オフィス明け渡し日は別の日付として管理します。

退去全体についてはオフィス移転・退去の進め方も確認してください。

オフィス移転時の住所変更はこの順番で整理する

  1. 新オフィス所在地を確定する
  2. 登記上の本店も移転するか決める
  3. 本店移転日・事業所移転日を確定する
  4. 法務局の本店移転登記を準備する
  5. 国税・地方税の異動手続きを準備する
  6. 健康保険・厚生年金の所在地変更を準備する
  7. 労働保険・雇用保険の変更を準備する
  8. 銀行・保険・リース等を更新する
  9. 取引先へ新住所を案内する
  10. Webサイト・請求書等を更新する
  11. 旧オフィスの原状回復・明け渡しを完了する

オフィス移転の住所変更チェックリスト

  • 登記上の本店を変更するか確認した
  • 本店移転日を確定した
  • 新旧法務局の管轄を確認した
  • 本店移転登記を準備した
  • 税務署の異動届を確認した
  • 消費税・インボイス関係の重複届出を確認した
  • 都道府県税の異動届を確認した
  • 市区町村への法人住民税関係を確認した
  • 年金事務所の所在地変更を確認した
  • 年金事務所管轄内・管轄外を確認した
  • 労働保険名称・所在地等変更届を確認した
  • 雇用保険事業主事業所各種変更届を確認した
  • 銀行・カード会社を確認した
  • 保険会社を確認した
  • 取引先へ移転案内を行った
  • 契約書・請求書等の住所を更新した
  • Webサイトの会社概要を変更した
  • 通信・電気等の移転を確認した
  • 旧オフィスの明け渡し日を別途管理した

オフィス移転の住所変更届でよくある質問

オフィスを移転したら必ず本店移転登記が必要ですか?

実際のオフィスを移しても、登記上の本店所在地を変更しないケースがあります。本店登記を変更する場合に本店移転登記を確認します。一方、事業所所在地として社会保険・労働保険等へ登録している住所が変わる場合は、それぞれの制度上の変更手続きが必要になる可能性があります。

本店移転登記はいつまでですか?

株式会社の本店移転登記は、原則として本店移転日から2週間以内です。

管轄外へ移転すると印鑑届書も必要ですか?

2025年4月21日以降、管轄外本店移転時には印鑑記録が移送される制度となり、新所在地管轄登記所への印鑑届書は原則不要です。ただし印鑑カードの扱いは別なので確認してください。

税務署への異動届は何日以内ですか?

法人の異動届出書について国税庁は「異動等後速やかに」と案内しています。本店移転後に長期間放置せず手続きしてください。

都道府県や市区町村にも住所変更を出しますか?

法人地方税の登録があるため、本店・事業所移転について異動届等が必要になる場合があります。期限・提出方法は自治体ごとに確認してください。

年金事務所への住所変更はいつまでですか?

健康保険・厚生年金の適用事業所所在地変更は、事実発生から5日以内です。

年金事務所の管轄が変わる場合は新しい年金事務所へ出しますか?

日本年金機構では、管轄外へ所在地変更する場合は変更前の所在地を管轄する年金事務所へ提出する手続きが案内されています。

労基署への住所変更は何日以内ですか?

労働保険の名称・所在地等変更届は、変更日の翌日から起算して10日以内です。

ハローワークにも別に出しますか?

雇用保険適用事業所では、雇用保険事業主事業所各種変更届を確認します。所在地変更の場合は変更日の翌日から10日以内です。

インボイス登録住所は別に変更届が必要ですか?

法人の異動届出書の記載方法によって、関連する消費税・インボイス関係の変更届を重ねて提出しなくてよい場合があります。提出時点の国税庁の最新様式・記載要領を確認してください。

銀行や取引先の住所変更は行政手続きの後でよいですか?

新しい登記事項証明書を求める金融機関もあるため、登記完了後に行うものがあります。一方、取引先への移転案内などは移転前から進められます。必要書類ごとに前後を分けて工程化すると効率的です。

住所変更手続きは「引越し後の事務作業」ではなく移転工程に組み込む

オフィス移転で住所変更が遅れる原因は、物理的な引越しを優先し、行政手続きを移転後にまとめて始めてしまうことです。

実際には、年金事務所への5日以内の届出など、短い期限の手続きがあります。

そのため、移転前に、

  1. 本店を動かすか
  2. どの行政機関へ登録しているか
  3. 提出期限はいつか
  4. 登記完了後でないと用意できない書類は何か
  5. 電子申請できるか

を確認しておきます。

オフィス移転・退去全体についてはオフィス移転・退去の進め方、旧オフィスの明け渡しについてはオフィスの明け渡し手順もあわせて確認してください。

移転日、行政手続き、通信切替、原状回復、旧オフィス明け渡しまでを一つのスケジュールに整理したい場合は、お問い合わせから現在地、新オフィス所在地、移転予定日、明け渡し日などをお知らせください。

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