店舗やオフィスを退去するとき、「解約は何か月前に言えばよいのか」で迷うことがあります。
事業用テナントでは「6か月前」と案内されることが多い一方、法律で借主の解約予告がすべて6か月と決まっているわけではありません。
実際の予告期間は、契約期間の定めがあるか、契約途中の解約権があるか、契約書に何か月前と書かれているかで変わります。
期間の定めがない建物賃貸借では、民法617条により、借主側からの解約申入れは原則として3か月後に契約終了となります。
一方、期間の定めがある事業用賃貸借では、契約期間中に自由に解約できるとは限りません。契約書の中途解約条項に「6か月前までに書面で通知する」などと定められている場合は、その条項を確認して退去日を組みます。
この記事では、店舗・オフィス等のテナントを借主側から解約するとき、3か月と6か月の違い、解約予告期間の調べ方、通知日・賃料・原状回復まで確認したい7項目を整理します。
テナントの解約は何か月前?
「テナントは必ず6か月前」「必ず3か月前」という一律ルールではありません。
| 契約の状態 | 借主側の解約で確認すること |
|---|---|
| 期間の定めがない建物賃貸借 | 民法617条では解約申入れから3か月で終了するのが原則 |
| 期間の定めがある契約+中途解約条項あり | 契約書の予告期間・通知方法を確認 |
| 期間の定めがある契約+中途解約条項なし | 契約期間中の一方的な解約ができない可能性がある |
| 定期建物賃貸借 | 期間満了と中途解約を分けて確認。店舗・事務所では契約条項が特に重要 |
事業用賃貸借の実務では、3か月前、6か月前、場合によってはそれ以上の予告期間を定める契約があります。
最初に見るべきなのはインターネット上の一般的な期間ではなく、現在締結している賃貸借契約書です。
「6か月前」は法律で一律に決まっているわけではない
事業用テナントで6か月前予告が多いため、「法律上6か月前」と思われやすいのですが、借主側の中途解約について一律6か月とする規定ではありません。
期間の定めがない建物賃貸借について、民法617条は建物の賃貸借が解約申入れから3か月で終了すると定めています。
一方、期間の定めがある賃貸借では、民法618条が、契約期間内に解約する権利を留保している場合に民法617条を準用するとしています。
事業用テナントの多くは契約期間を定めているため、実際には契約書にある中途解約条項・解約予告条項を読むことが重要になります。
貸主側の「6か月」と借主側の解約を混同しない
借地借家法には、貸主側から期間の定めがない建物賃貸借を解約する場合の6か月というルールがあります。
また、普通建物賃貸借の更新拒絶や定期建物賃貸借の期間満了通知にも、それぞれ別の通知期間があります。
これらは、借主が「店舗を閉めるので契約途中で退去したい」と申し入れる場合の解約予告期間とは別制度です。
「借地借家法に6か月と書いてあるから、借主も必ず6か月」と判断しないようにしてください。
契約書で確認する7項目
1.普通借家か定期借家か
契約書の表題や条項から、普通建物賃貸借か定期建物賃貸借かを確認します。
定期建物賃貸借は、原則として契約期間満了で終了し、普通借家のような更新を前提としません。
ただし、「期間満了で終了すること」と「契約途中で解約できること」は別の問題です。
定期借家でも、期間途中で退去したい場合は、中途解約条項があるか確認します。
2.契約期間がいつまでか
- 契約開始日
- 契約終了日
- 更新日
- 法定更新・合意更新の有無
を確認してください。
契約期間満了による退去なのか、契約期間途中の退去なのかで扱いが変わります。
3.中途解約条項があるか
期間の定めがある賃貸借では、契約期間途中で借主が解約できる条項があるかが重要です。
例えば、契約書に、
「賃借人は6か月前までに書面で予告することにより、本契約を中途解約できる」
といった条項があれば、その内容に沿って解約日を検討します。
中途解約条項が見当たらない場合は、「何か月前に通知するか」の前に、そもそも期間途中で一方的に解約できる契約なのかを確認する必要があります。
詳しくはテナントの中途解約で整理しています。
4.解約予告期間は何か月か
- 3か月前
- 6か月前
- ○日前
- ○か月前の月末まで
などの記載がないか確認します。
事業用賃貸では3〜6か月前通知とする契約が見られますが、これは実務上の傾向であり、すべての契約に共通する期間ではありません。
契約書に6か月とあれば、民法の「3か月」という数字だけを見て3か月前通知で足りると自己判断しないようにします。
5.いつ通知したことになるか・通知方法は何か
解約予告期間を数えるときは、「いつ通知したことになるか」が重要です。
民法97条では、意思表示は通知が相手方に到達した時から効力を生じるとされています。
さらに契約書で、
- 書面による通知
- 所定の解約通知書を使用
- 貸主宛て
- 管理会社宛て
- 郵送・持参等の指定
がある場合は、その方法に従います。
電話で担当者へ伝えた、担当者へメールを送ったというだけでは、契約上の解約通知として十分か分からない場合があります。
通知先、方法、受領日が確認できる状態にしてください。
通知方法はテナント解約通知の出し方で詳しく整理しています。
6.予告期間を短縮する場合の賃料・違約金
契約書によっては、6か月前予告を待たずに退去したい場合、残りの予告期間に相当する賃料等を支払うことで早期解約できる条項があります。
例えば、6か月前予告の契約で通知から2か月後に解約したい場合、残り4か月相当額の支払いについて条項が定められていることがあります。
ただし、すべての契約で同じ処理ができるわけではありません。
- 賃料だけか
- 共益費・管理費も含むか
- 消費税の扱い
- 別途違約金があるか
- 支払えば即時解約できる条項か
を確認します。
違約金についてはテナント退去の違約金を確認してください。
7.賃料終了日・原状回復・明渡しの日程
解約通知を出しただけで退去手続きが終わるわけではありません。
- 解約通知の到達日
- 営業終了日・移転日
- 什器・設備搬出日
- 原状回復着工日
- 貸主検査日
- 是正工事日
- 鍵返却・明渡し日
- 契約終了日・賃料負担終了日
を一つのスケジュールへ入れます。
契約終了日までに原状回復を完了して明け渡す必要がある契約なら、解約予告期間の最終日まで営業できるわけではありません。
店舗閉店の退去全体は店舗閉店から退去までの流れ、オフィスはオフィス退去チェックリストを確認してください。
3か月前になるケース
代表的なのは、期間の定めがない建物賃貸借です。
民法617条では、期間の定めがない建物賃貸借について、解約申入れから3か月で終了するとされています。
当初は期間の定めがあった契約でも、更新後の契約状態によっては期間の定めがない状態になっている場合があります。
ただし、自社契約がこれに該当するかは、契約書・更新契約・更新経緯まで確認してください。
6か月前になるケース
店舗・オフィス等の期間の定めがある事業用賃貸借では、中途解約条項に「6か月前までに書面で予告」と定める契約が見られます。
この場合は、契約条項を前提に、通知の到達日から退去可能日を確認します。
重要なのは、「6か月が法律だから」ではなく、「契約に6か月の中途解約予告が定められているか」です。
「6か月前」の数え方は月末とは限らない
例えば、契約書に単に「6か月前までに解約予告」と書かれているケースと、「解約希望月の6か月前の末日まで」と書かれているケースでは計算方法が異なります。
民法では、月による期間は暦に従って計算するルールがあります。
しかし実際の賃貸借契約では、
- 解約日は月末に限る
- 予告は月末締め
- 日割りをしない
- 通知月を算入する・しない
など独自の契約条件が定められていることがあります。
「4月に通知したから9月末で終わるだろう」と自己計算せず、契約条項に基づく契約終了日を貸主・管理会社と書面で確認する方が安全です。
通知した日ではなく「届いた日」が問題になる
解約通知を郵送した場合、発送日と貸主・管理会社へ届いた日は同じではありません。
民法97条は、意思表示について原則として相手方へ到達した時に効力が生じるとしています。
そのため、期限ぎりぎりに普通郵便で送ると、到達が翌月になり、希望する退去日がずれる可能性があります。
契約書に指定方法がある場合はそれに従い、余裕を持って通知してください。
定期借家なら1か月前で解約できる?
この点は特に誤解しやすいところです。
借地借家法38条には、一定の定期建物賃貸借で借主が1か月後に解約できる規定があります。
ただし対象は、床面積200㎡未満の居住用建物で、転勤・療養・親族の介護その他のやむを得ない事情によって生活の本拠として使用することが困難になった場合です。
通常の店舗・事務所など事業用テナントに「定期借家なら法律上1か月前で解約できる」と一般化することはできません。
契約満了の通知と中途解約予告は別
定期建物賃貸借では、契約期間が1年以上の場合、貸主側に期間満了を知らせるための通知制度があります。
また、普通建物賃貸借にも更新・更新拒絶に関する通知の制度があります。
これらを見て「契約満了の6か月前に借主から解約通知が必要」と混同しないようにしてください。
期間満了で終えるのか、契約途中で中途解約するのかを分けて契約書を確認します。
解約予告を出した後に撤回できる?
閉店・移転計画が変わり、「一度出した解約予告を取り消したい」となることがあります。
しかし、一度有効な解約予告を出した後は、借主側だけの判断で当然に撤回できるとは考えない方が安全です。
貸主が既に次のテナント募集を始めている可能性もあります。
継続利用を希望する場合は、早めに貸主・管理会社へ相談し、撤回または再契約について合意できるか確認してください。
次のテナントが決まれば予告期間の賃料は不要?
これも契約・個別事情によります。
「後継テナントが決まったから、残りの解約予告期間の賃料は自動的になくなる」とは限りません。
中途解約条項や即時解約予告金の定め、実際の契約終了日、新しい賃貸借の開始日等によって扱いが変わります。
後継テナントが決まった場合は、賃料負担終了日を貸主と書面で確認してください。
解約予告を出す前のチェックリスト
| 確認項目 | 確認 |
|---|---|
| 普通借家・定期借家を確認した | □ |
| 現在の契約期間・更新状態を確認した | □ |
| 中途解約条項を確認した | □ |
| 解約予告期間を確認した | □ |
| 通知先・通知方法・到達日を確認した | □ |
| 予告不足時の賃料・違約金を確認した | □ |
| 契約終了日と明渡し日を確認した | □ |
| 原状回復工期を逆算した | □ |
| 保証金・敷金返還条件を確認した | □ |
テナント解約予告FAQ
店舗の解約は何か月前に連絡すればよいですか?
契約書を確認してください。期間の定めがない建物賃貸借では民法上3か月が原則ですが、期間の定めがある事業用契約では3か月・6か月等の中途解約条項が定められていることがあります。
テナントは法律で6か月前通知と決まっていますか?
借主側の解約予告が一律6か月と決まっているわけではありません。契約期間・中途解約条項・契約書の予告期間を確認してください。
契約書に6か月前と書いてあれば3か月前ではだめですか?
契約書に中途解約の予告期間として6か月と定められている場合は、その条項を前提に確認する必要があります。民法617条の3か月だけを見て自己判断しないようにしてください。
6か月待たずに退去できますか?
物理的に退去することと、賃貸借契約・賃料負担が終了することは別です。予告期間相当額を支払う即時解約条項がある場合もありますが、契約内容を確認してください。
解約通知は電話やメールでもよいですか?
契約書で書面や所定様式、通知先が指定されている場合はその方法に従います。民法上も意思表示は原則として相手方への到達時に効力を生じるため、受領日を確認できる方法が安全です。
解約日は月末でなければいけませんか?
契約内容によります。月末解約、日割りなし、月末締め等の条項がある場合はそれに従います。単に「6か月前」という条項と「6か月前の月末まで」という条項は同じではありません。
定期借家なら1か月で解約できますか?
通常の店舗・事務所には一般化できません。借地借家法38条の法定1か月解約は、一定の200㎡未満の居住用建物とやむを得ない事情を対象とする制度です。事業用定期借家では中途解約条項を確認してください。
解約予告を出した後に撤回できますか?
借主側だけの判断で当然に撤回できるとは考えない方が安全です。継続したい場合は貸主の合意が得られるか早めに確認してください。
後継テナントが決まれば残りの家賃は払わなくてよいですか?
自動的にそうなるとは限りません。契約条項、解約日、後継テナントの契約開始日、貸主との合意内容を確認してください。
テナント解約は「3か月か6か月か」より先に契約状態を確認する
テナントを解約するときは、数字だけを先に決めないことが重要です。
契約種類 → 契約期間 → 中途解約権 → 予告期間 → 通知方法・到達 → 賃料・違約金 → 明渡し・原状回復
の順で確認してください。
期間の定めがない建物賃貸借なら民法上3か月が基本ですが、期間の定めがある事業用契約では、中途解約条項に定めた3か月・6か月等の期間が実務上重要になります。
契約途中で解約できるか分からない場合はテナントの中途解約、違約金・予告期間相当額はテナント解約の違約金、通知書の出し方はテナントの解約通知方法へ進んでください。
店舗・オフィスの解約日から原状回復・明渡しまでの工程を整理したい場合は、お問い合わせから相談できます。
