テナント退去の違約金はいくら?店舗・オフィスの中途解約で確認する7項目

店舗やオフィスを契約期間の途中で退去するとき、「違約金はいくらかかるのか」は大きな判断材料になります。

ただし、事業用テナントの退去費用では、すべてを「違約金」とひとまとめにしない方が分かりやすくなります。

契約書には、

  • 解約予告期間が足りない場合の賃料相当額
  • 短期解約違約金
  • 残存契約期間の賃料相当額
  • 定期建物賃貸借の中途解約違約金
  • フリーレント相当額の返還
  • 保証金・敷金からの控除
  • 原状回復費

など、性質の異なる負担が並んでいることがあります。

そのため、「違約金は賃料3か月分が相場」「6か月分を払えば必ず解約できる」と一律に考えるのは危険です。

この記事では、店舗・オフィス等の事業用テナントを中途解約するとき、どの金額を確認すべきかを7項目に分けて整理します。

そもそも契約途中で解約できるか分からない場合は、先にテナントの中途解約を確認してください。

目次

テナント退去の違約金はいくら?

全国一律の「○か月分」という上限・相場はありません。

国税庁も、建物賃貸借契約を期間終了前に中途解約する際、貸主が借主から数か月分の家賃相当額を違約金として受け取る場合があることを前提に税務上の取扱いを示しています。

一方、不動産流通推進センターでは、事業用建物賃貸借で3〜6か月前予告の特約が一般的に見られるとする一方、残存期間すべての賃料相当額を違約金とする条項について、全額の請求が認められなかった裁判例も紹介しています。

つまり、確認するべきなのは「相場何か月」ではなく、

どの条項に基づき、何の負担として、いくら請求される契約なのか

です。

違約金として確認する7項目

1.解約予告期間が足りない場合の負担

事業用テナントでは、契約書に「6か月前までに書面で通知」などの解約予告期間が定められていることがあります。

そのうえで、

「予告期間を満たさずに解約する場合は、不足する期間の賃料等相当額を支払う」

といった即時解約条項が置かれる場合があります。

例えば、6か月前予告の契約で、通知から2か月後に契約を終了したい場合、残り4か月相当額が問題になるという形です。

  • 共益費・管理費を含むか
  • 消費税等をどう扱うか
  • 契約終了日はいつになるか
  • 実際の明渡し日はいつか
  • 即時解約金を払えば自由に解約日を選べる条項か

まで確認します。

何か月前に通知する契約かはテナント解約は何か月前かで整理しています。

2.短期解約違約金

契約開始から短期間で退去した場合にだけ発生する違約金です。

  • 契約開始から1年以内の解約
  • 契約開始から2年以内の解約
  • フリーレント期間終了直後までの解約

などを条件として、一定額の支払いを定める場合があります。

「6か月前予告を守ったから違約金はない」とは限りません。

解約予告条項とは別に、短期解約違約金の条項が存在する可能性があるためです。

  • 何年・何か月以内が対象か
  • 賃料何か月分か
  • 共益費等も基礎額に含むか
  • 解約予告金と重複するか

を確認します。

3.残存契約期間の賃料相当額

長期の事業用契約では、契約満了前に退去した場合、残存期間の賃料相当額の全部または一部を違約金とする特約が置かれることがあります。

例えば、5年契約を2年で終了する場合、残り3年分について条項が問題になります。

民法420条では、当事者が債務不履行について損害賠償額を予定することができ、違約金は賠償額の予定と推定するとされています。

ただし、事業用契約だから残存期間分の請求が常に全額認められる、という意味ではありません。

不動産流通推進センターが紹介する裁判例では、約3年2か月分の賃料・共益費相当額を請求できる条項について、賃借人に著しく不利で解約の自由を極端に制約するとして、1年分を超える部分を公序良俗に反して無効とした例があります。

一方、事業用の定期建物賃貸借では、残存期間相当額の違約金を認めた裁判例も紹介されています。

  • 普通借家か定期借家か
  • 契約期間の長さ
  • 残存期間
  • 違約金の金額
  • 貸主に実際に生じる損失
  • 後継テナントの入居状況
  • 契約交渉経緯

などによって評価が変わり得ます。

残存期間が長く請求額が大きい場合は、契約書だけで自己判断せず、弁護士等への確認を検討してください。

4.定期建物賃貸借の中途解約違約金

定期建物賃貸借は、契約で定めた期間満了で終了することを前提とする契約です。

事業用の定期借家では、契約途中の中途解約を制限し、残存期間の賃料相当額等を違約金として定めるケースがあります。

不動産流通推進センターが紹介する事業用定期借家の裁判例では、残存期間の賃料相当額を違約金とする合意について、その契約内容・事情のもとで公序良俗に反しないとされた例があります。

一方、借地借家法38条の「1か月で中途解約できる」法定制度は、200㎡未満の居住用建物で一定のやむを得ない事情がある場合の制度です。

通常の店舗・オフィスにそのまま適用できるルールではありません。

  • 中途解約条項の有無
  • 違約金条項
  • 残存期間
  • 再契約・合意解約の条件

を確認します。

5.フリーレント・工事協力金等の返還条項

入居時にフリーレントを受けている場合、短期解約時にフリーレント相当額を返還する特約が置かれることがあります。

不動産流通推進センターが紹介する事業用契約の裁判例では、3か月のフリーレントがあり、契約開始後1年以内に解約した場合に3か月分の賃料相当額を違約金として敷金から控除する条項について、有効とされた例があります。

  • フリーレント
  • 賃料免除
  • 工事協力金
  • 入居キャンペーン
  • 貸主負担工事
  • 短期解約時返還

などの条項も確認してください。

ただし、どの返還条項も必ず有効という意味ではなく、個別の契約内容・金額・条件によって判断されます。

6.保証金・敷金から何が差し引かれるか

違約金を現金で別途支払うのではなく、保証金・敷金から控除する契約もあります。

  • 違約金
  • 未払賃料
  • 原状回復費
  • 償却・敷引き
  • その他契約上の控除項目

が同じ精算書に並ぶことがあります。

しかし、それぞれ根拠となる条項は別です。

保証金1000万円から300万円差し引かれている場合でも、「違約金300万円」なのか、「違約金100万円+原状回復150万円+未払賃料50万円」なのかで確認方法は変わります。

控除項目ごとに、契約条項・算定根拠・請求書等を確認します。

7.原状回復費・撤去費とは別に計算する

中途解約違約金を支払っても、原状回復義務が自動的になくなるわけではありません。

国税庁も、中途解約の違約金と、保証金等から差し引く原状回復工事費を別のものとして税務上整理しています。

退去時の総負担は、例えば、

退去総額 = 解約関連の違約金・予告金 + 原状回復費 + 残置物・撤去費 + 未払賃料等 − 返還される保証金・敷金

という形で考えます。

店舗の閉店費用は店舗閉店にかかる費用、オフィスの退去費用はオフィス退去費用も確認してください。

解約予告不足分と違約金は同じ?

名称例 主な意味
解約予告期間中の賃料 予告後も契約が継続している期間の賃料
即時解約予告金 予告期間を待たず終了するために支払う賃料相当額等
短期解約違約金 一定期間以内の早期退去に対する特約上の違約金
残存期間賃料相当額 契約満了までの残存期間を基準とする違約金
フリーレント返還 短期解約時に免除済み賃料相当額等を返還する特約

契約によっては複数が同時に問題になるため、「○か月分」という数字だけでなく、それぞれの根拠条項を確認します。

後継テナントが決まれば違約金はなくなる?

自動的にはなくなりません。

貸主に空室期間が生じない場合、「損害がないのだから予告期間相当額は不要ではないか」と考えることがあります。

しかし、不動産流通推進センターが2025年に紹介した事例では、6か月前予告・即時解約予告金の条項について、予告期間中に新賃借人が決まった場合でも、契約条項に基づく支払い義務を否定しなかった裁判例が紹介されています。

一方、高額な残存期間賃料違約金では、新しい賃借人を早期に確保した場合の実質的な二重取りに近い結果も考慮して、一部無効とした裁判例があります。

  • どの種類の違約金か
  • 契約条項の文言
  • 契約終了日
  • 新テナントの契約開始日
  • 貸主との合意

によって扱いが変わります。

違約金を減らせる可能性があるのはどんな場合?

契約で定めた違約金を、借主が一方的に「高いから払わない」と決めることはできません。

ただし、次のような場合は、契約条項の解釈確認や貸主との交渉、専門家確認を検討する余地があります。

  • 請求額と契約書の計算が一致しない
  • 共益費等まで含める根拠が不明
  • 予告金と短期違約金が重複している
  • 残存期間全額など非常に高額
  • 後継テナントがすぐ入居する
  • 保証金から複数費目が控除され、内訳が不明
  • 貸主と合意解約の余地がある

ただし、契約ごとに条件は異なるため、値下げできることを前提にはしないでください。

違約金の計算例

以下は契約条項を理解するための単純な例で、実際の契約条件を示すものではありません。

例1:6か月前予告で2か月後に終了したい

月額賃料50万円、6か月前予告、即時解約時は不足期間相当額を支払う契約で、通知から2か月後に終了する場合:

不足4か月 × 50万円 = 200万円

ただし、実契約では共益費等を含むかを確認します。

例2:1年以内の短期解約で賃料2か月分

月額賃料50万円で、契約開始1年以内の退去は賃料2か月分の短期解約違約金という条項なら:

50万円 × 2か月 = 100万円

これとは別に、解約予告期間中の賃料・原状回復費が発生する契約もあります。

例3:フリーレント3か月分を返還

月額賃料50万円、入居時フリーレント3か月、一定期間内の解約時に免除分を返還する条項なら:

50万円 × 3か月 = 150万円

実際には契約条項・課税関係・共益費等の扱いを確認します。

請求書を受け取ったときの確認順

  1. 賃貸借契約書の該当条項を特定する
  2. 契約期間・解約通知日・契約終了日を確認する
  3. 基礎となる賃料・共益費等を確認する
  4. 何か月分・何日分か計算する
  5. 予告金・短期違約金・残存賃料を分ける
  6. 保証金・敷金からの控除項目を分ける
  7. 原状回復費・未払賃料等を別計算する

計算が合わない場合は、貸主・管理会社に算定根拠を書面で確認します。

テナント解約違約金のチェックリスト

確認項目 確認
契約上、中途解約できるか確認した□
解約予告期間を確認した□
予告不足時の支払条項を確認した□
短期解約違約金を確認した□
残存期間賃料の条項を確認した□
普通借家・定期借家を確認した□
フリーレント等の返還条項を確認した□
保証金・敷金からの控除を確認した□
原状回復費と違約金を分けた□
高額・解釈争いがあれば専門家確認を検討した□

テナント退去の違約金FAQ

テナントの解約違約金は何か月分ですか?

全国一律の月数はありません。数か月分の賃料相当額を定める契約はありますが、解約予告、短期解約、残存期間、定期借家、フリーレント等によって算定方法が異なります。契約書を確認してください。

6か月前予告なら違約金は6か月分ですか?

必ずしもそうではありません。6か月前予告は通知期限の定めであり、実際に6か月間契約を続ければ通常の賃料として支払う場合もあります。早期終了する場合に不足期間相当額を支払う即時解約条項があるか確認してください。

解約予告を守れば短期解約違約金はかかりませんか?

別条項になっている場合があります。6か月前予告を守っても、契約開始1年以内等の条件に該当すれば短期解約違約金が発生する契約があります。

残りの契約期間すべての家賃を払う必要がありますか?

残存期間賃料相当額を違約金とする特約がある場合に問題になります。ただし、事業用でも全額が常に有効とは限らず、契約類型・金額・残存期間等によって裁判例の判断が分かれています。高額な場合は専門家へ確認してください。

定期借家の違約金は高くなりますか?

定期借家は一定期間の契約継続を前提とするため、残存期間賃料等の違約金条項が置かれることがあります。ただし実際の負担は契約内容によります。

フリーレント分を返す必要がありますか?

短期解約時にフリーレント相当額を違約金として返還する特約があれば問題になります。事業用契約でそのような条項を有効とした裁判例もあります。自社契約の条件を確認してください。

後継テナントがすぐ入れば違約金はなくなりますか?

自動的にはなくなりません。予告期間相当額の支払いを認めた裁判例がある一方、高額な残存期間賃料違約金では新テナント入居等を考慮した裁判例もあります。契約条項と貸主との合意を確認してください。

違約金は保証金から引かれますか?

契約によります。保証金・敷金から控除する条項がある場合があります。違約金、原状回復費、未払賃料、償却等の内訳を分けて確認してください。

違約金を払えば原状回復しなくてよいですか?

通常は別問題です。中途解約違約金を支払っても、契約終了時の原状回復・明渡し義務は別に確認します。

高額な違約金を請求されたらどうすればよいですか?

契約条項、算定方法、残存期間、後継テナントの有無等を確認します。高額で契約解釈や有効性に争いがある場合は、弁護士等の専門家へ個別に確認してください。

違約金は「何か月分か」ではなく根拠条項ごとに分ける

事業用テナントの退去で重要なのは、「違約金の相場は何か月分か」を探すことではありません。

解約予告不足 → 短期解約 → 残存期間 → 定期借家 → フリーレント等返還 → 保証金控除 → 原状回復

を別々に確認することです。

同じ賃料3か月分でも、予告期間相当額なのか、短期解約違約金なのか、フリーレント返還なのかで契約上の意味が異なります。

まず契約書と精算書を照合し、算定根拠を確認してください。

契約途中で解約できるかはテナントの中途解約、解約予告期間はテナント解約は何か月前か、通知方法はテナントの解約通知へ進んでください。

店舗閉店・オフィス移転で、中途解約に伴う違約金、原状回復、保証金精算まで含めた退去総額を整理したい場合は、お問い合わせから相談できます。

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