オフィスを退去するときに発生する費用は、原状回復工事だけではありません。
解約予告期間が残っていれば、すでに社員が新オフィスへ移った後も旧オフィスの賃料が発生することがあります。
さらに、契約条件によっては中途解約に伴う違約金、オフィス家具やOA機器の撤去・処分、LAN・電話・セキュリティ設備の撤去、引越しなども必要です。
一方、退去時には敷金・保証金の返還もあります。
ただし、原状回復費や未払賃料、契約上の償却などが精算された後に返還される場合があり、「預けている敷金がそのまま全額戻る」とは限りません。
オフィス退去の予算は、原状回復費だけではなく、契約終了までに旧オフィス側で発生するすべての支出と精算を並べて考えることが重要です。
この記事では、旧オフィスを明け渡すまでに確認したい7つの費用と、予算を作る順番を整理します。
新オフィスの契約・内装まで含めた移転全体の費用については、オフィス移転費用はいくら?をご覧ください。
オフィス退去費用は7つに分けて考える
- 原状回復工事費
- 解約予告期間中の賃料・共益費
- 中途解約の違約金・解約金
- 引越し・搬出費
- IT・電話・セキュリティ設備の撤去費
- 不要什器・OA機器の買取・廃棄費
- 敷金・保証金の精算・償却
すべてのオフィスで7項目すべてが発生するわけではありません。
賃貸借契約、現在の内装・設備、移転内容によって変わります。
1.原状回復工事費
オフィス退去費用の中で大きくなりやすいのが原状回復工事です。
例えば、
- 間仕切り撤去
- 床仕上げの復旧
- クロス・塗装
- 天井復旧
- 照明復旧
- 電源・配線撤去
- 空調復旧
- サイン撤去
- クリーニング
などがあります。
「入居前と同じ見た目」に戻すだけとは限らない
事業用オフィスでは、賃貸借契約・原状回復特約・工事区分などによって借主の工事範囲が決まります。
そのため、まず確認するのは一般的な坪単価より、
- 賃貸借契約書
- 原状回復特約
- 工事区分表
- 貸主・管理会社の原状回復仕様
です。
原状回復費は坪単価だけで判断しない
原状回復工事は面積との関係が大きいため、坪単価で概算されることがあります。
しかし、同じ50坪でも、
- 一般的な中小ビル
- 大型・高グレードビル
- 指定業者施工
- 夜間工事
- 空調・防災工事が多い
- 複雑な間仕切りがある
といった条件によって金額は大きく変わります。
したがって、「50坪だから○万円」と固定的に考えず、実際の工事範囲と見積で確認します。
原状回復費については、オフィスの原状回復費用はいくら?で詳しく整理しています。
指定業者の有無を早めに確認する
オフィスビルでは、退去時の原状回復を貸主指定業者が行う契約があります。
指定業者制の場合、借主側で自由に施工会社を選べないことがあります。
そのため、
- 誰が見積を出すのか
- 他社施工が可能か
- どの範囲が指定工事か
- 見積はいつ出るか
を早めに確認します。
指定業者については、オフィス原状回復の指定業者とは?をご覧ください。
2.解約予告期間中の賃料・共益費
社員・荷物を新オフィスへ移した日と、旧オフィスの賃貸借契約が終了する日は同じとは限りません。
例えば、6か月前予告の契約で、解約通知が遅れれば、すでにオフィスを使っていなくても契約終了までの賃料・共益費等が残る場合があります。
「退去した日」と「契約終了日」を分ける
次の日付を別々に確認します。
- 社員が新オフィスへ移る日
- 旧オフィスで業務を終了する日
- 原状回復工事を始める日
- 明渡し日
- 賃貸借契約終了日
実際に人がいなくなっただけでは、契約が終了したとは限りません。
解約予告を遅らせると退去費が増える
例えば月額賃料・共益費等が150万円のオフィスで、解約通知が1か月遅れれば、それだけで150万円規模の追加負担になる可能性があります。
原状回復工事の数万円の値引きを検討する一方で、解約通知が遅れて大きな賃料が追加されては意味がありません。
解約時期については、オフィスの解約予告は何か月前?をご覧ください。
原状回復期間中の賃料も考える
旧オフィスから社員・家具を搬出した後に、原状回復工事を行う場合があります。
契約終了日まで借りている状態なら、原状回復工事中も賃料負担が残ることがあります。
そのため、
引越し → 原状回復 → 貸主検査 → 是正 → 明渡し
までを契約終了日から逆算します。
3.中途解約の違約金・解約金
契約期間途中で退去する場合、契約内容によっては違約金・解約金等が発生することがあります。
例えば、
- 一定期間内に解約した場合の違約金
- フリーレントを利用した場合の返還条項
- 契約期間途中の解約金
- 通常の予告期間を待たず即時解約する場合の賃料相当額
などです。
すべてのオフィスで違約金が発生するわけではない
違約金の有無・金額は契約によります。
「オフィスを途中解約すると必ず賃料6か月分」といった一律のルールではありません。
賃貸借契約の、
- 契約期間
- 中途解約条項
- 解約予告
- 違約金
- フリーレント特約
を確認します。
予告賃料と違約金を混同しない
例えば、
「6か月前までに通知する」
という解約予告期間と、
「契約開始から2年以内の解約では賃料○か月分を支払う」
という違約金は別の条項です。
契約によっては両方が関係する場合があります。
退去予算を作るときは、それぞれ確認します。
4.引越し・搬出費
旧オフィスから物を出すための費用も退去側で必要になります。
例えば、
- デスク・チェア搬出
- キャビネット搬出
- PC・モニター運搬
- 複合機移設
- 書類・備品運搬
- 梱包
などです。
人数より「物量」と搬出条件を見る
引越し費は1人あたりの概算で予算を作る方法もあります。
ただし、実際の金額は、
- 家具量
- 書類量
- 大型機器
- 移転距離
- 階数
- エレベーター
- 夜間・休日作業
によって変わります。
最終的には現地調査・物量確認を行って見積を取ります。
引越しと原状回復の日程をつなげる
旧オフィスを空にしなければ原状回復できない部分があります。
引越しが遅れると原状回復開始も遅れ、契約終了日に間に合わなくなる可能性があります。
そのため、引越し会社と原状回復会社を別々に考えず、全体工程で調整します。
5.IT・電話・セキュリティ設備の撤去費
オフィス退去では、机や家具だけでなく、入居中に設置した設備を撤去する場合があります。
例えば、
- LAN配線
- 電話配線
- Wi-Fiアクセスポイント
- サーバーラック
- 防犯カメラ
- 入退室管理
- 通信機器
などです。
「移設」と「撤去・復旧」を分ける
例えばサーバーを新オフィスへ移す費用と、旧オフィスのラック・配線を撤去して天井・床を復旧する費用は別です。
IT会社の移設見積だけを取っても、旧オフィス側の撤去が含まれていない場合があります。
契約終了前に回線の解約・移転手続きを確認する
通信契約には、
- 移転工事
- 解約
- 機器返却
- 撤去工事
などが関係します。
契約によって撤去費・解約費等が発生する場合があるため、早めに確認します。
6.不要什器・OA機器の買取・廃棄費
新オフィスへ持っていかない家具・設備があれば、旧オフィスから撤去する必要があります。
例えば、
- デスク
- チェア
- ロッカー
- キャビネット
- 会議テーブル
- 複合機
- モニター
- PC
などです。
全部を「廃棄」として発注する前に買取査定する
中古需要があるオフィス家具・OA機器は、買取できる場合があります。
売却できれば、
- 処分費を減らす
- 買取代金を得る
という2つの効果が期待できます。
設備・什器の買取については、設備・什器買取ガイドをご覧ください。
「買取額」ではなく最終支払額を見る
例えば、
A社:買取30万円・搬出費20万円
B社:買取20万円・搬出費込み
なら、表示されている買取額だけでA社が有利とは限りません。
さらに、売れない家具の処分費も合わせて比較します。
事業系の不要品は適切な処理方法を確認する
オフィスから出る不要品は、家庭の粗大ごみと同じ方法で処理できるとは限りません。
材質や自治体、処理内容に応じて適切な方法で処理します。
原状回復工事に伴って発生する建設廃棄物については、元請工事会社側の処理範囲・責任も確認します。
撤去・廃棄全体については、撤去・廃棄ガイドをご覧ください。
7.敷金・保証金の精算・償却
旧オフィスへ預けている敷金・保証金は、退去時の重要な精算項目です。
ただし、
「敷金500万円を預けているから、退去時に500万円戻る」
とは限りません。
契約上の控除項目を確認する
契約によっては、
- 未払賃料
- 原状回復費
- その他借主負担金
- 償却
などを精算した後に残額が返還されます。
具体的な精算方法は契約を確認します。
「償却」と「原状回復費」を分けて確認する
保証金の一定額・一定割合を契約終了時に返還しない旨の償却特約がある場合があります。
この償却と、実際に行う原状回復工事費がどのような関係になっているか確認します。
契約によっては別々に扱われます。
敷金は退去費用の支払いタイミングにも影響する
原状回復会社への支払い時期と、敷金返還時期が同じとは限りません。
例えば、
- 原状回復会社へ工事費を支払う
- オフィスを明け渡す
- 貸主側で精算する
- 一定期間後に敷金が返還される
という流れになる場合があります。
つまり、最終的に敷金が戻るとしても、一時的には原状回復費を別途用意する必要がある可能性があります。
オフィス退去費用は「支出」と「返還」を分ける
退去予算では、次の2列を作ると整理しやすくなります。
退去時の支出
- 原状回復
- 残存賃料
- 違約金
- 引越し
- IT撤去
- 什器処分
退去後に戻る可能性がある金額
- 敷金
- 保証金
- 什器・OA機器の売却代金
これにより、
退去のために一時的にいくら必要か
と
最終的に会社からいくら出ていくか
を分けて把握できます。
オフィス退去費用の計算例
以下は相場を示すものではなく、予算の整理方法を説明するための仮の例です。
例えば、あるオフィスで、
- 原状回復:500万円
- 解約予告期間中の残存賃料:300万円
- 違約金:0円
- 引越し・搬出:100万円
- IT撤去:50万円
- 什器処分:80万円
なら、退去時の支出は1,030万円です。
一方、
- 什器売却:30万円
- 敷金返還見込:400万円
なら、最終的な実質負担は別の数字になります。
ただし、敷金返還時期は支出より後になる場合があります。
そのため、1,030万円を用意せず「400万円返るから630万円あればよい」と単純に考えると、支払時点で資金が不足する可能性があります。
退去費用を抑えるなら金額の大きい項目から見る
数千円・数万円の手続費を削るより、次のような大きい費用から確認します。
1.解約予告を遅らせない
1か月の賃料が高いオフィスでは、通知が1か月遅れるだけで大きな費用になります。
2.原状回復範囲を契約と照合する
本当に必要な工事なのか確認します。
3.指定業者見積を発注前に確認する
数量・単価・工事範囲・諸経費を確認します。
4.什器を廃棄前に売却する
処分量を減らします。
5.引越しと原状回復の工程を詰める
必要以上に旧オフィスを長く借り続けないようにします。
原状回復費だけ削っても退去総額は下がらないことがある
例えば、原状回復費を30万円下げるために査定・交渉へ時間をかけ、その結果契約終了が1か月遅れ、賃料100万円が追加で発生するなら、退去全体では不利です。
反対に、着工前に見積を確認する時間を十分に確保できれば、退去日を動かさず工事範囲を精査できます。
退去費用は一つの工事項目ではなく、契約終了までの総額で判断します。
退去準備は契約終了日から逆算する
例えば、
- 解約予告
- 原状回復条件確認
- 原状回復見積
- 什器・OA機器売却
- 引越し
- IT撤去
- 原状回復工事
- 貸主検査
- 是正工事
- 明渡し
という工程になります。
契約終了日ぎりぎりから動くと、相見積もり・売却査定・見積精査の時間がなくなります。
オフィス退去費用のチェックリスト
- 賃貸借契約の終了条件を確認した
- 解約予告期間を確認した
- 契約終了日を確定した
- 中途解約違約金を確認した
- フリーレント等の違約条件を確認した
- 原状回復範囲を確認した
- 指定業者の有無を確認した
- 原状回復見積を取得した
- 引越し費を確認した
- IT設備の移設・撤去費を確認した
- 不要什器を査定した
- 廃棄費を確認した
- 敷金・保証金の償却条件を確認した
- 敷金返還時期を確認した
- 貸主検査・是正期間を確保した
オフィス退去費用についてよくある質問
オフィス退去にはどんな費用がかかりますか?
主に原状回復、解約予告期間中の賃料・共益費、中途解約時の違約金、引越し・搬出、IT設備撤去、不要什器の処分などがあります。敷金・保証金の精算も合わせて確認します。
オフィス退去費用の相場はいくらですか?
オフィス面積だけでは決まりません。原状回復範囲、賃料、解約予告期間、指定業者、什器量、IT設備などで大きく変わるため、退去費総額を坪単価だけで計算するのは難しくなります。
原状回復費はどのくらいかかりますか?
物件規模・グレード・工事範囲・指定業者の有無などによって大きく変わります。坪単価は初期概算には使えますが、実際の見積内容を確認してください。
オフィスを使っていなくても家賃は必要ですか?
賃貸借契約が終了していなければ、通常は契約に基づく賃料等の負担を考える必要があります。実際の退去日ではなく契約終了日を確認してください。
中途解約すると必ず違約金がかかりますか?
一律ではありません。契約期間、中途解約条項、解約予告、フリーレント特約などによって異なります。
敷金から原状回復費を差し引いてもらえますか?
精算方法は契約によります。原状回復会社への支払いと敷金返還が別のタイミングになる場合もあるため、支払方法・返還時期を確認してください。
オフィス家具は全部捨てる必要がありますか?
中古需要がある家具・OA機器は買取できる場合があります。処分費を支払う前に査定する方法があります。
原状回復会社と引越し会社は同じ会社に頼むべきですか?
一括管理には工程調整をしやすいメリットがありますが、必須ではありません。別会社へ発注する場合は、引越し完了日と原状回復着工日を明確に接続してください。
オフィス退去費用は「明渡しまでの総額」で考える
オフィス退去で確認するのは、原状回復費だけではありません。
退去までには、
- 原状回復
- 解約予告期間の賃料
- 違約金
- 引越し
- IT撤去
- 什器・OA機器の撤去・処分
- 敷金・保証金の精算
が関係します。
そして、これらは別々に動くのではなく、契約終了日へ向かって同時進行します。
原状回復を安くすることも重要ですが、解約予告が遅れて賃料が余計に発生したり、什器を売却せず廃棄したりすれば、退去総額は増えます。
旧オフィスについて発生するすべての支出・返還・売却収入を一つの退去予算にまとめることが、余計な支出を防ぐポイントです。
オフィス退去・移転全体については、オフィス退去・移転ガイドをご覧ください。
移転先側の費用まで含む総予算については、オフィス移転費用はいくら?で整理しています。
原状回復費については、オフィスの原状回復費用はいくら?をご覧ください。
現在のオフィスについて、原状回復・残存賃料・什器撤去・敷金精算まで含めると退去総額がいくらになるか整理できない場合は、お問い合わせから現在の面積・契約終了予定・見積状況をご連絡ください。
