オフィスや店舗のB工事見積を受け取り、「高いので他社からも見積を取りたい」と考えることがあります。
しかし、B工事では通常の内装工事と同じように相見積もりを取れない場合があります。
B工事は一般に、工事費をテナントが負担する一方で、施工会社は貸主・ビル側が指定する工事だからです。
そのため、別会社から安い見積を取れたとしても、その会社へそのままB工事を発注できるとは限りません。
ただし、だからといって指定業者から提示された金額を比較せず、そのまま承認する必要があるわけでもありません。
B工事では「発注先を選ぶための相見積もり」と「価格・数量・仕様が妥当か確認するための参考見積」を分けて考えることが重要です。
この記事では、指定業者制のB工事でも価格を比較する6つの方法と、相見積もり・参考見積を交渉に使うときの注意点を整理します。
B工事の基本的な仕組みについては、B工事ガイドをご覧ください。
B工事は通常の意味では相見積もりできないことがある
通常の内装工事なら、同じ工事内容を複数の施工会社へ渡し、見積を比較して発注先を決められます。
一方、B工事では、
- 空調
- 防災
- 電気幹線
- 給排水
- ビル共用設備につながる工事
などを、貸主や管理会社が指定した施工会社しか行えない場合があります。
この場合、他社から同等工事の見積を取得できても、発注先そのものを変更できないことがあります。
まず確認するのは「本当に指定業者しか施工できないか」
B工事という名称が付いているだけで、すべての作業について絶対に業者変更できないとは限りません。
物件ごとに、
- 賃貸借契約書
- 工事区分表
- 内装工事規則
- 貸主・管理会社の指示
を確認します。
B工事は法律で全国一律に範囲が決まっているわけではない
A工事・B工事・C工事という呼び方は実務上広く使われていますが、どこまでをB工事にするかは建物によって異なります。
例えば同じ空調工事でも、
- 本体設備との接続部分だけB工事
- 専有部内の枝配管までB工事
- 一部はC工事としてテナント側業者が施工可能
など、物件ごとに区分が変わる場合があります。
指定業者の変更可否そのものについては、B工事の指定業者は変更できる?をご覧ください。
B工事で価格を比較する6つの方法
- 同じ仕様で他社の参考見積を取る
- 第三者に見積査定を依頼する
- 数量・単価を個別に比較する
- B工事からC工事へ移せる範囲を確認する
- 仕様変更・VE案を比較する
- 比較結果をもとに指定業者へ再見積を依頼する
1.同じ仕様で他社の参考見積を取る
指定業者を変更できない場合でも、同等の工事内容について別の施工会社から参考見積を取る方法があります。
この場合の目的は、他社へ発注することではありません。
指定業者の見積が、市場で同じ仕様を施工した場合と比べてどの程度違うのかを確認することです。
同じ条件で見積を依頼する
比較する場合は、できるだけ、
- 同じ図面
- 同じ工事範囲
- 同じ設備仕様
- 同じ数量
- 同じ工期
- 同じ夜間・休日条件
を渡します。
条件が違えば、価格差が「会社の価格差」なのか「工事内容の違い」なのか分からなくなります。
参考見積で確認するのは総額だけではない
例えば、
指定業者 800万円
参考業者 500万円
だったとしても、即座に、
「指定業者は300万円高い」
とは判断できません。
指定業者側に、
- ビル指定の夜間工事
- 特殊な養生
- 管理会社との調整
- 防災設備連動試験
- 竣工図・申請対応
などが入っている可能性があります。
まず工事項目を揃えます。
2.第三者に見積査定を依頼する
他社見積を自社で比較するのが難しい場合は、B工事の見積査定を専門家へ依頼する方法があります。
査定では、
- 賃貸借契約
- 工事区分表
- レイアウト図
- 設備図
- 指定業者見積
などを確認し、工事範囲・数量・単価などを精査します。
相見積もりと査定は目的が違う
相見積もりは、他社の施工価格と比較する方法です。
第三者査定は、現在の見積そのものについて、
- 数量が適切か
- 不要な工事が入っていないか
- 工事区分が妥当か
- 単価に説明可能性があるか
を確認する方法です。
第三者査定については、B工事の見積査定とは?で詳しく整理しています。
3.数量・単価を個別に比較する
参考見積を取る場合、総額よりも各項目を比較すると差が見つけやすくなります。
例えば、
- スプリンクラー移設 ○箇所
- 感知器移設 ○箇所
- 空調ダクト ○m
- 電源増設 ○回路
- 配線 ○m
などです。
まず数量差を見る
例えば、指定業者ではスプリンクラー10箇所、参考見積では6箇所になっている場合、単価以前に数量が違います。
確認するのは、
- なぜ10箇所必要なのか
- 図面上の必要数はいくつか
- 他社が見落としていないか
です。
数量が同じなら単価差を見る
数量を揃えた後に、
- 材料単価
- 施工単価
- 管理費
- 諸経費
などを比較します。
見積内訳の読み方については、B工事の見積内訳の見方をご覧ください。
4.B工事からC工事へ移せる範囲を確認する
B工事見積を減らす方法として重要なのが、工事区分そのものの見直しです。
例えば、当初B工事とされている項目の一部について、貸主・管理会社の承認を得て、テナント側が選んだC工事業者で施工できる場合があります。
勝手にC工事へ変更しない
B工事からC工事への変更は、テナント側だけで決めるものではありません。
ビル設備・防災・安全管理に関係するため、貸主・管理会社の承認が必要です。
まず、
- なぜB工事指定なのか
- 施工管理だけ指定業者で、実施工をC工事化できないか
- 専有部内の一部だけC工事へ移せないか
を確認します。
B工事とC工事の分け方はART-138で詳しく扱います。
5.仕様変更・VE案を比較する
指定業者を変更できなくても、仕様を変更することでB工事額を減らせる場合があります。
いわゆるVE(Value Engineering)の考え方です。
例えば、
- 会議室配置を変えて空調移設を減らす
- 間仕切り位置を調整してスプリンクラー移設数を減らす
- 既存設備を活用する
- 電源口数を見直す
- 設備仕様を必要十分な内容へ変更する
などです。
「同じ仕様の値下げ」と「仕様変更による減額」を分ける
例えば100万円下がったとしても、
- 単価だけが下がった
- 工事数量が減った
- 設備仕様を下げた
では意味が違います。
再見積では、何を変更した結果いくら下がったのかを確認します。
6.比較結果をもとに指定業者へ再見積を依頼する
他社参考見積や査定結果が揃ったら、指定業者へ再見積を依頼します。
このとき、単純に、
「他社は500万円なので500万円にしてください」
と伝えるより、差のある項目を具体的に確認します。
確認例
- 空調ダクト数量が参考見積より多い理由を教えてください
- 感知器移設数を再確認してください
- この工事をC工事へ変更できるか管理会社へ確認してください
- 夜間施工が必要な工程だけ分けて再積算してください
- 同等性能を保ったVE案を提示してください
といった形です。
価格交渉の具体的な進め方については、指定業者と値下げ交渉するには?をご覧ください。
B工事の相見積もりで確認する8項目
- 工事範囲が同じか
- 図面・仕様が同じか
- 数量が同じか
- 材料・機器仕様が同じか
- 夜間・休日施工条件が同じか
- 管理・申請・試験費を含むか
- 諸経費・管理費を含むか
- 見積外項目が同じか
他社見積をそのまま指定業者へ渡すべき?
必ずしも見積書そのものを渡す必要はありません。
例えば、
「同じ仕様で他社では空調工事が○万円程度だった」
「数量に○箇所の差がある」
という比較結果だけを示し、指定業者へ根拠を確認する方法があります。
一方、貸主・管理会社との協議で正式な比較資料として提示する必要がある場合は、参考見積の利用条件も確認します。
参考見積はB工事特有の条件を反映できないことがある
一般の内装会社へ参考見積を依頼しても、その会社が対象ビルの、
- 工事規則
- 施工可能時間
- 申請手続
- 指定材料
- 防災試験
まで把握していない場合があります。
そのため、一般業者の参考見積が安いという理由だけで、指定業者の差額すべてを過大請求と判断しません。
発注できない見積でも意味はある
「他社へ発注できないなら見積を取っても意味がない」と考える必要はありません。
参考見積から、
- 数量差
- 単価差
- 不要な工事項目
- 仕様差
- 管理費の違い
を発見できれば、再見積を求める材料になります。
相見積もりを取る前に指定業者変更可否を確認する
案件によっては、貸主の承認を得ることで施工会社を変更できる場合もあります。
逆に、契約上明確に指定されており、ビル基幹設備へ関係するため変更が認められない場合もあります。
最初に、
- 賃貸借契約書
- 工事区分表
- 建物工事規則
- 貸主・管理会社への確認
を行います。
変更できるかどうかについては、B工事の指定業者は変更できる?をご覧ください。
B工事相見積もりの進め方
- 指定業者見積を受け取る
- 契約・工事区分表を確認する
- 指定業者を変更できるか確認する
- 見積内訳・数量を整理する
- 同条件で参考見積または第三者査定を取る
- 差額が大きい項目を特定する
- B工事からC工事へ移せる部分を確認する
- VE・仕様変更を検討する
- 指定業者へ再見積を依頼する
相見積もりを取る時期は発注前
B工事を正式発注した後では、施工会社側でも、
- 職人手配
- 材料発注
- 工程確保
などが進みます。
そのため、比較・査定・仕様変更はできるだけ発注前に行います。
特に移転日・開店日が決まっている案件では、比較に時間を使いすぎて着工が遅れると、別のコストが増える可能性があります。
「一番安い参考見積」を基準にしない
参考見積を複数取った場合も、最安価格だけを基準にしません。
見るべきなのは、
- 必要工事を漏れなく含むか
- 同じ機器仕様か
- 同じ施工時間か
- 安全・管理条件を反映しているか
です。
B工事で相見積もりが取りにくい理由
B工事は、建物の安全・共用設備との接続・将来の維持管理に関係するため、貸主側が施工会社を指定することがあります。
そのため、価格競争だけを目的に自由に施工会社を入れ替えられない構造があります。
一方で、そのことと、見積内容を確認できないことは別です。
施工会社を変更できなくても、工事範囲・数量・単価・仕様の根拠を確認し、合理的な再見積を依頼する余地はあります。
B工事相見積もりについてよくある質問
B工事は相見積もりできますか?
貸主指定業者しか施工できない契約では、複数業者から見積を取って発注先を自由に選ぶ通常の相見積もりは難しい場合があります。ただし、価格比較用の参考見積を取得することは可能です。
他社見積を取っても指定業者へ発注しなければならないですか?
契約・工事区分・貸主条件によります。指定業者施工が必須なら、他社見積は価格・数量・仕様を比較する資料として使います。
参考見積が安ければ、その金額まで下げてもらえますか?
必ず同額まで下がるとは限りません。対象ビル特有の夜間工事、管理、申請、安全対策などが指定業者見積に含まれている可能性があるため、差額の理由を確認します。
第三者査定と相見積もりはどちらがよいですか?
一般的な市場価格との比較なら参考見積、現在のB工事見積の工事区分・数量・単価を詳細に確認したい場合は第三者査定が向いています。案件規模によって両方を使う方法もあります。
B工事の一部だけ他社へ発注できますか?
貸主・管理会社がC工事への変更を認めれば可能な場合があります。テナント側の判断だけでB工事を別会社へ発注することは避け、工事区分を確認してください。
指定業者へ他社見積を見せてもよいですか?
比較材料として使うことはできますが、必ずしも見積書全文を渡す必要はありません。数量・単価・工事項目など、差額の根拠を整理して確認する方法があります。
B工事相見積もりは何社取ればよいですか?
社数より、同じ条件・同じ仕様で比較できることが重要です。条件の違う見積を何社集めても、価格差の理由を判断しにくくなります。
指定業者が変更できないなら相見積もりは無意味ですか?
無意味ではありません。参考見積によって、数量・単価・仕様・工事範囲の違いを発見し、再見積やVE、工事区分見直しの材料にできます。
B工事の相見積もりは「発注先選び」より「価格の物差し」として使う
B工事で相見積もりを考えるときは、最初に、
他社へ実際に発注できる案件なのか
を確認します。
指定業者しか施工できないのであれば、相見積もりの目的を変えます。
使い方は、
- 他社の参考価格を確認する
- 第三者査定で現在の見積を精査する
- 数量・単価を比較する
- B工事とC工事の区分を見直す
- VE・仕様変更を検討する
- 根拠を示して再見積を依頼する
という流れです。
B工事では「他社の方が安いから業者を変える」という一般的な競争見積が使えないことがあります。
だからこそ、見積内訳、数量、工事区分、仕様を細かく比較することが重要です。
見積が高いと感じている場合は、B工事の見積が高いと感じたら?をご覧ください。
減額全体の進め方は、B工事を減額する方法で整理しています。
第三者査定については、B工事の見積査定とは?をご覧ください。
すでに指定業者見積を受け取っており、他社参考見積を取る意味があるか、どこを比較すればよいか整理できない場合は、お問い合わせから現在のB工事見積・工事区分・移転予定をご連絡ください。
