店舗を閉店するとき居抜き退去できる?メリット・流れ・7つの確認

店舗を閉店するとき、契約どおりに内装や設備をすべて撤去して原状回復する以外に、「居抜き」で次のテナントへ店舗を引き継ぐ方法があります。

居抜きが成立すれば、現在の借主は原状回復・内装解体・設備撤去の一部を行わずに退去できる可能性があります。

さらに、厨房設備、内装、店舗什器などに価値があれば、造作譲渡代金を受け取れる場合もあります。

一方、居抜きは「閉店するので設備をそのまま置いて出ていく」という仕組みではありません。

貸主が居抜きでの引渡しを認め、後継テナントが見つかり、その事業者について貸主側の審査・新しい賃貸借契約等が成立し、残す設備や造作の条件まで確定して初めて成立します。

店舗閉店で居抜きを狙うなら、「原状回復しなくて済む方法」と考えるのではなく、「原状回復になる可能性も残したまま、後継テナントへの承継を並行して進める退去方法」と考える方が安全です。

この記事では、店舗を閉店するときに居抜き退去を検討するメリット・リスクと、実際に進める7つの段階を整理します。

居抜きと通常の原状回復のどちらを選ぶべきか迷っている場合は、店舗閉店は居抜きと原状回復のどちらを選ぶ?もご覧ください。

目次

店舗閉店時の「居抜き退去」とは

居抜き退去とは、店舗内の内装・造作・設備・什器などの全部または一部を残し、次のテナントへ引き継いだ状態で現在の借主が退去する方法です。

例えば飲食店なら、

  • 厨房
  • カウンター
  • 客席
  • 照明
  • 空調
  • 厨房機器
  • 給排水設備

などを活用できる可能性があります。

美容室なら、

  • セット面
  • シャンプー台
  • 給排水設備
  • 照明
  • 受付カウンター

などを残して後継テナントへ引き継ぐケースがあります。

「造作譲渡」と「居抜き」は完全に同じではない

居抜きは店舗を設備・内装等が残った状態で引き継ぐ形を表します。

その中で、現在の借主が所有している、

  • 内装
  • 厨房機器
  • 家具
  • 什器
  • 設備

などを後継テナントへ有償または無償で譲る契約が造作譲渡です。

物件の賃貸借と、造作・設備の譲渡は別の契約関係になることがあります。

居抜きでも現在の賃貸借がそのまま次の人へ移るとは限らない

一般的な店舗の居抜きでは、現在の借主との賃貸借契約を終了し、貸主と後継テナントとの間で新しい賃貸借契約を締結する形があります。

一方、契約上のスキームによっては賃借権の譲渡・転貸など別の法律関係になる場合もあります。

そのため、

「買い手と話がまとまったので、店舗をそのまま渡します」

と借主同士だけで進めないようにします。

貸主・管理会社を最初から手続きに入れることが重要です。

店舗閉店で居抜きを使う主なメリット

1.原状回復・解体費を抑えられる可能性がある

通常退去なら撤去する内装・設備を後継テナントが引き継げれば、その部分について解体・撤去しなくて済む可能性があります。

特に、

  • 厨房設備が多い飲食店
  • 給排水設備が多い美容室
  • 特殊内装の店舗
  • 設備投資額の大きい店舗

では効果が大きくなる場合があります。

ただし、居抜き成立によってどの原状回復義務が免除・変更されるかは、貸主との合意内容を確認します。

2.造作譲渡代金を得られる場合がある

内装・設備に中古価値があれば、後継テナントから造作譲渡代金を受け取れる場合があります。

例えば、

  • 比較的新しい厨房
  • 業態転用しやすい内装
  • 状態のよい空調
  • 人気メーカーの厨房機器
  • 使いやすい店舗レイアウト

などです。

ただし、取得時に高額だった設備が、そのまま高値で売れるとは限りません。

次の借主にとって利用価値があるかで判断されます。

3.廃棄物を減らせる可能性がある

後継テナントが設備・内装を使えば、本来廃棄するはずだった物をそのまま利用できます。

撤去費・運搬費・処理費の削減につながる場合があります。

4.営業終了近くまで設備を使える場合がある

通常の原状回復では、契約終了日の前に店舗を閉め、什器搬出・解体工事のための期間を確保する必要があります。

居抜きなら解体工事を減らせるため、条件によっては営業期間を長く確保しやすくなります。

ただし、最終営業日と物件引渡日を同日にできるとは限りません。

居抜きにはデメリット・リスクもある

貸主が認めない場合がある

現在の賃貸借契約がスケルトン返し・原状回復を条件としている場合でも、貸主との協議により居抜きが認められるケースはあります。

一方、建物管理・将来募集・設備責任などの理由から、居抜きを認めない貸主もいます。

そのため、買い手探しより先に貸主側の意向を確認します。

後継テナントが見つからない場合がある

居抜きは、引き継ぎたい事業者がいて初めて成立します。

立地、賃料、業態制限、造作価格などの条件によっては、希望する期間内に後継テナントが見つからないことがあります。

候補が見つかっても貸主審査に通るとは限らない

現在の借主が後継候補を見つけても、貸主がその事業者と新しい契約を結ぶとは限りません。

後継候補には、

  • 業態
  • 法人・個人の信用状況
  • 事業計画
  • 保証条件
  • 保証会社審査

などが求められることがあります。

閉店情報が知られる可能性がある

居抜き募集では物件情報を外部へ出すため、店舗の閉店予定を、

  • 従業員
  • 取引先
  • 顧客
  • 競合店

などに知られる可能性があります。

まだ閉店情報を公開したくない段階では、非公開募集・限定紹介に対応するサービスを検討します。

設備トラブルが取引問題になる場合がある

後継テナントへ引き継ぐ設備について、

  • 故障
  • 不具合
  • 修理歴
  • 年式
  • リース品

などを整理しておかないと、引渡し後のトラブルにつながる可能性があります。

店舗閉店から居抜き退去までの7段階

  1. 契約書と解約予告を確認する
  2. 貸主・管理会社へ居抜きを相談する
  3. 残す造作・設備と所有権を整理する
  4. 査定・後継テナント募集を開始する
  5. 候補者と条件調整し、貸主審査を進める
  6. 造作譲渡・新賃貸借等を確定する
  7. 引渡しと退去を完了する

1.契約書と解約予告を確認する

居抜きを検討したら、最初に現在の賃貸借契約を確認します。

特に見るのは、

  • 解約予告期間
  • 原状回復条項
  • スケルトン返しの有無
  • 造作・設備の扱い
  • 貸主指定業者
  • 転貸・賃借権譲渡に関する条項
  • 残置物に関する条項

です。

解約通知を出すタイミングも重要

解約通知を提出すると契約終了日が確定します。

その後は、契約終了までに、

  • 居抜きを成立させる

または、

  • 契約どおり原状回復して退去する

必要があります。

居抜きを優先したい場合は、解約通知の提出前から貸主へ相談できるか確認します。

2.貸主・管理会社へ居抜きを相談する

契約上は原状回復が必要でも、居抜き承継を貸主が認める場合があります。

確認するのは、

  • 居抜き募集をしてよいか
  • 後継テナントの業態制限
  • 残せる設備・内装
  • 撤去が必要な設備
  • 造作譲渡の条件
  • 募集情報の公開範囲

などです。

貸主承諾については、居抜き退去で貸主の承諾を得るには?をご覧ください。

3.残す造作・設備と所有権を整理する

店舗内にある物すべてを現在の借主が自由に譲渡できるとは限りません。

例えば、

  • 自社購入設備
  • 貸主所有設備
  • リース機器
  • レンタル機器
  • メーカー貸与品

が混在している場合があります。

譲渡対象リストを作る

少なくとも、

  • 品名
  • メーカー
  • 型番
  • 数量
  • 年式
  • 状態
  • 所有者

を分かる範囲でまとめます。

自社所有でない物を造作譲渡対象へ含めないようにします。

使わない設備は別途買取できる場合もある

後継テナントがすべての厨房機器・什器を必要とするとは限りません。

不要となる設備に中古価値があれば、専門買取会社へ売却する方法があります。

設備売却については、設備・什器買取ガイドをご覧ください。

4.査定・後継テナント募集を開始する

貸主側の条件を確認したら、居抜き募集を開始します。

募集経路には、

  • 居抜き専門会社
  • 店舗専門不動産会社
  • 管理会社
  • 業界ネットワーク

などがあります。

造作譲渡価格だけを高くしすぎない

現在の借主は、設備投資に大きなお金を使っているほど高く売りたいと考えます。

しかし後継テナント側から見ると、

  • 造作譲渡代金
  • 保証金
  • 仲介費用
  • 追加改装費
  • 開業運転資金

を合わせて初期投資を判断します。

造作価格が高すぎれば、居抜きそのものの魅力が失われる場合があります。

募集では「売却額」と「退去費削減」を両方見る

例えば、造作を100万円で売却できる案件と、無償譲渡しかできない案件があるとします。

無償でも、本来300万円必要だった原状回復・撤去を回避できるなら、退去全体では大きなメリットになる可能性があります。

造作譲渡額だけでなく、回避できる退去費用を含めて居抜きの価値を判断します。

5.候補者と条件調整し、貸主審査を進める

後継候補が見つかったら、

  • 造作譲渡額
  • 譲渡設備
  • 引渡し日
  • 修理・不具合の扱い
  • 撤去対象

などを調整します。

同時に、貸主側で後継テナントについての審査を進めます。

「買いたい」と言われただけでは成立ではない

候補者から造作を買いたいと言われても、

  • 貸主審査
  • 保証会社審査
  • 賃貸条件
  • 契約書

がまとまらなければ入居できません。

この段階で原状回復会社を完全にキャンセルしてしまうと、不成立時に工期が不足する可能性があります。

6.造作譲渡・新賃貸借等を確定する

後継テナントの入居条件がまとまったら、必要な契約を確定します。

案件によって、

  • 現在の借主の賃貸借終了
  • 後継テナントの新しい賃貸借契約
  • 造作譲渡契約
  • 貸主との原状回復・残置に関する合意

などが関係します。

「後継テナントへ売ったから原状回復義務も消えた」と考えない

現在の借主と後継テナントの間で造作譲渡契約を結んだだけでは、現在の借主と貸主との原状回復関係が自動的に変更されるとは限りません。

貸主がどの状態での明渡しを認めるのか、書面等で確認します。

7.引渡しと退去を完了する

契約関係が整ったら、引渡し準備を行います。

例えば、

  • 譲渡品の最終確認
  • 私物・在庫の搬出
  • 不要品撤去
  • リース品の返却
  • 設備動作確認
  • 鍵の返却・引渡し

などです。

居抜きでも全部置いて出られるわけではない

後継テナントが不要とした物や、貸主が残置を認めなかった物は撤去する必要があります。

例えば、

  • 古い冷蔵庫
  • 壊れた什器
  • 個人的な備品
  • 期限切れ在庫

などです。

最後まで残す物・撤去する物を明確にします。

居抜きと原状回復は並行して準備する

閉店時に居抜きを狙う場合でも、原状回復について、

  • 必要工事範囲
  • 見積
  • 工期
  • 最終発注期限

は確認しておきます。

後継テナントが見つからなかった場合に、契約終了日までに通常退去へ切り替えられるようにするためです。

居抜きを諦める「切替期限」を先に決める

例えば契約終了日まであと2か月しかなく、原状回復工事に3週間、貸主検査・是正に1週間必要なら、退去期限の直前まで買い手を探し続けることはできません。

施工会社の手配期間も含めて、

「この日までに後継テナントとの契約成立見込みが立たなければ、通常の原状回復へ切り替える」

という期限を設定します。

後継テナント探しの期間については、居抜きの後継テナント探しは何ヶ月必要?をご覧ください。

居抜きが向いている店舗

  • 設備・内装に再利用価値がある
  • 同業態の出店需要がある
  • 賃料・立地条件が市場に合っている
  • 退去まである程度時間がある
  • 貸主が居抜きに前向き
  • 原状回復費が大きい

居抜きが難しくなりやすい店舗

  • 貸主が居抜きを認めない
  • 非常に特殊な内装・設備
  • 設備の老朽化が激しい
  • 賃料が市場より高い
  • 後継業態が厳しく制限されている
  • 退去期限までほとんど時間がない

居抜きと原状回復のどちらが得かは案件ごとに違う

居抜きには、

  • 原状回復費の圧縮
  • 造作譲渡収入
  • 廃棄費削減

というメリットがあります。

一方、後継テナントを待つことで、

  • 賃料
  • 募集期間
  • 仲介・造作譲渡手数料

が発生する場合があります。

そのため、

居抜きで得られる金額+回避できる原状回復費 − 居抜き成立までに増える賃料・手数料等

で退去全体を見る必要があります。

詳しい比較は、店舗閉店は居抜きと原状回復のどちらを選ぶ?をご覧ください。

店舗閉店で居抜きを進めるチェックリスト

  • 賃貸借契約書を確認した
  • 解約予告期間を確認した
  • 原状回復条件を確認した
  • 貸主へ居抜き相談をした
  • 募集可能な業態を確認した
  • 残せる設備を確認した
  • 造作・設備の所有者を確認した
  • 譲渡対象一覧を作った
  • 造作査定を行った
  • 募集方法を決めた
  • 後継候補の進捗を確認している
  • 貸主審査を確認した
  • 造作譲渡条件を確認した
  • 新しい賃貸借の成立条件を確認した
  • 原状回復見積も並行して取得した
  • 原状回復工期を確認した
  • 居抜きから原状回復へ切り替える期限を決めた

店舗閉店時の居抜きについてよくある質問

店舗を閉店するとき居抜きで退去できますか?

貸主が居抜きでの引渡しを認め、後継テナントとの契約・造作譲渡等の条件が整えば可能な場合があります。現在の賃貸借契約だけで判断せず、貸主へ相談してください。

居抜きなら原状回復は不要ですか?

自動的に不要になるわけではありません。貸主が残す内装・設備と明渡し状態を認め、現在の原状回復義務についてどこまで変更・免除するか合意する必要があります。

貸主の許可なしで後継テナントを探してもよいですか?

無断で進めるのは避けた方が安全です。業態制限、募集方法、残置可能設備など貸主側の条件を確認してから募集します。

閉店を決める前から居抜き相談できますか?

サービスによっては非公開・匿名段階から相談できる場合があります。閉店情報の漏えいを避けたい場合は、募集情報の公開方法を確認してください。

後継テナントが見つかれば必ず居抜きになりますか?

いいえ。貸主審査や賃貸条件がまとまらなければ、その候補は入居できません。造作譲渡条件だけでなく、新しい賃貸借が成立するか確認します。

居抜きで売れなかったらどうなりますか?

契約上の原状回復義務に従い、通常の原状回復・撤去を行う必要が生じる可能性があります。そのため原状回復見積と工期を並行して確認してください。

厨房機器だけ別に売れますか?

後継テナントが不要とする機器でも、自社所有で中古価値があれば厨房機器買取会社へ売却できる場合があります。

居抜き仲介には手数料がかかりますか?

サービスによって異なります。成功報酬、固定額、造作譲渡額に対する定率、売主無料など複数の料金体系があります。詳しくは居抜きの仲介手数料はいくら?をご覧ください。

店舗閉店の居抜きは「売れるか」だけでなく退去全体で考える

店舗閉店で居抜きを進める場合は、

  1. 契約・解約予告を確認する
  2. 貸主へ相談する
  3. 造作・設備を整理する
  4. 後継テナントを募集する
  5. 貸主審査・条件調整を進める
  6. 必要な契約を成立させる
  7. 引渡し・退去を完了する

という流れになります。

居抜きが成立すれば原状回復・設備撤去の負担を減らし、造作譲渡代金を得られる可能性があります。

一方で、貸主が認めない、後継テナントが決まらない、審査が通らないという可能性も残ります。

居抜きだけに賭けるのではなく、通常退去の原状回復費・工期も把握し、いつまで居抜きを続けるかを決めたうえで進めることが重要です。

店舗閉店全体の進め方については、店舗閉店ガイドをご覧ください。

居抜きと原状回復の比較については、店舗閉店は居抜きと原状回復のどちらを選ぶ?で整理しています。

居抜きの後継テナント探しについては、居抜きで後継テナントを探す方法をご覧ください。

現在の契約終了日、原状回復条件、店舗設備、閉店予定を見ても居抜きを狙うべきか判断できない場合は、お問い合わせから現在の状況をご連絡ください。

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