店舗を居抜きで譲渡するとき、店内にある厨房機器やPOSレジ、空調などをすべて「造作一式」として次のテナントへ渡せるとは限りません。
その中にリース品が含まれている場合、現在のテナントがその設備を所有していないことがあります。
リース品は、造作譲渡の話を進める前に契約を切り分ける必要があります。
確認するのは、単に「あといくら残っているか」だけではありません。
- 誰が設備を所有しているのか
- 契約期間があとどのくらい残っているか
- 途中で契約を終了できるのか
- 終了時に設備を返却するのか
- 現在が再リース期間なのか
- 後継テナントへ契約を承継できるのか
- 設備を店舗から取り外す必要があるのか
などを確認します。
この記事では、居抜き退去・店舗閉店時にリース品が残っている場合の処理を、造作譲渡との関係も含めて整理します。
居抜き店舗にあるリース品は勝手に造作譲渡しない
まず押さえておきたいのは、現在使用している設備と、自社が所有している設備は同じではないということです。
例えば、店舗には次のようなリース品があることがあります。
- 業務用冷蔵庫・冷凍庫
- 製氷機
- 食器洗浄機
- 厨房機器
- 業務用エアコン
- POSレジ
- 券売機
- 複合機
- 通信機器
- 防犯カメラ
毎日自社で使用し、毎月料金を払っていたとしても、自社所有とは限りません。
そのため、造作譲渡の設備一覧へ入れる前に、契約書や請求書を確認します。
設備全般の所有関係については、居抜き設備の所有権は誰?貸主・前テナント・リース品の見分け方で詳しく整理しています。
最初に「リース」「レンタル」「割賦・分割購入」を分ける
店舗では、月払いの設備をすべて「リース」と呼んでいることがあります。
しかし、契約の種類によって閉店時の処理は異なります。
| 契約の例 | 閉店時に確認すること |
|---|---|
| ファイナンス・リース | 契約期間、途中終了条件、返却、再リース、承継可否 |
| レンタル | 解約予告、返却方法、撤去・回収条件 |
| 割賦・分割購入 | 残代金、所有権移転条件、完済前の譲渡制限 |
| 無償貸与 | 貸与元、返却条件、契約終了時期 |
「月々支払っている設備だから」という理由だけで処理方法を決めず、契約書の名称と内容を確認します。
ファイナンス・リースは期間中の自由な中途解約を前提としない
一般的なファイナンス・リースは、レンタルのように「不要になったので翌月から解約する」という使い方を前提としていません。
店舗を閉店することになっても、物件の賃貸借契約を終了しただけでリース契約まで自動終了するわけではありません。
途中で終了する場合にどのような精算が必要になるかは、リース契約を確認します。
例えば契約によっては、残りのリース料を基礎とした解約金・損害金等を支払い、設備を返還する手続きになることがあります。
「閉店したのでリース料の支払いも終了する」と考えず、店舗退去とは別契約として処理することが必要です。
「残債を払えば設備が自分のものになる」とは限らない
閉店時のリースについて検索すると、「残債を一括で払って設備を買い取ればよい」という説明を見かけることがあります。
しかし、すべてのリース契約をこの形で説明することはできません。
一般的なファイナンス・リースでは、契約期間中の利用者と設備所有者が異なる場合があります。
途中終了時に残リース料相当額や解約金等を支払ったとしても、その支払いだけで当然に設備所有権を取得するとは限りません。
契約終了後に、
- リース会社へ返却する
- 別途再リースする
- 契約上定められた別の処理を行う
など、契約によって扱いが変わります。
「残額を払えば造作譲渡できる」と判断する前に、リース会社へ所有権と終了後の設備処理を確認します。
リース品がある場合の主な処理は4パターン
居抜き退去時には、概ね次の選択肢を検討します。
1.契約を終了し、リース会社へ設備を返却する
店舗を閉店し、その設備を今後使用しない場合の基本的な選択肢です。
契約途中なら、まず途中終了が可能か、どのような精算が必要かを確認します。
そのうえで、設備の返還場所、取り外し、搬出、運送などを確認します。
特に業務用エアコンや大型厨房機器のように建物へ接続されているものは、単純に運送会社へ渡せるとは限りません。
取り外し方法や工事区分について、リース会社だけでなく貸主・管理会社とも調整が必要になる場合があります。
2.契約満了まで使用し、その後返却する
退去日より前に契約満了を迎える場合などは、満了まで使用して返却する選択肢があります。
ただし、店舗の賃貸借終了日よりリース満了日の方が後なら、店舗を退去したあと同じ場所に置き続けることは通常できません。
設備を別の事業所へ移設できるか、設置場所変更に手続きが必要かも確認します。
3.再リースする
リース期間がすでに満了し、現在は再リースで設備を使っているケースもあります。
その場合は、新規契約時と同じ残期間問題ではなく、現在の再リース契約の終了時期や解約手続きを確認します。
「最初のリース期間が終わっているから自社所有になった」とは決めつけず、契約状態を確認してください。
4.後継テナントへ契約を承継できるか確認する
居抜きでは、次のテナントも同じ厨房機器や設備を使いたいことがあります。
その場合、リース会社が認めれば、契約上の地位や債務を後継者へ承継する手続きが可能なケースがあります。
ただし、新旧テナント同士で「リースもそのまま引き継ぎます」と合意するだけでは足りません。
リース会社側で、
- 承継を認める契約か
- 新しい利用者の審査
- 必要書類
- 保証人や保証条件
- 承継日
- 支払口座
- 設備設置場所
などを確認することがあります。
承継できることを前提として造作譲渡契約を進めず、先にリース会社へ確認します。
造作譲渡契約とリース契約の承継は別
居抜きでは複数の契約が同時に動きます。
| 契約・手続き | 主な当事者 |
|---|---|
| 現在の賃貸借契約終了 | 現在の借主 × 貸主 |
| 造作譲渡 | 現在の借主 × 後継テナント |
| 新しい賃貸借契約 | 後継テナント × 貸主 |
| リース契約の承継 | 現在の利用者・後継者・リース会社等 |
造作譲渡契約書に「厨房設備一式を譲渡する」と記載しても、その中に他社所有のリース品を当然に含められるわけではありません。
造作譲渡契約を作る前にリース品を設備一覧から切り分けます。
造作譲渡契約書の記載事項でも、譲渡対象の特定は重要な確認事項です。
後継テナントがリース品を使いたい場合の進め方
後継テナントから「その冷蔵庫も使いたい」「POSもそのまま残してほしい」と言われた場合は、次の順番で進めると整理しやすくなります。
- 対象設備が本当にリース品か確認する
- 契約番号・リース会社・契約期間を確認する
- 現在の残期間と契約状態を確認する
- リース会社へ第三者承継の可否を確認する
- 必要であれば後継者側の審査を進める
- 承継不可の場合の返却・撤去方法を確認する
- 造作譲渡対象一覧を確定する
- 新しい賃貸借契約と設備引渡日を調整する
リース承継が成立しない場合に備え、「その設備がなくても後継者が入居するのか」も早めに確認しておくと、居抜き全体が止まりにくくなります。
リース会社にはいつ連絡する?
退去直前ではなく、居抜きでの後継者募集を始める前後の段階で契約を整理しておく方が安全です。
特に、造作譲渡価格を提示する前に確認します。
リース品を自社所有設備として造作価格へ含めた後で対象外と判明すると、買い手との価格交渉をやり直すことになるからです。
契約書が見つからない場合でも、銀行口座・クレジット明細・会計データ・設備の管理ラベルなどから契約会社を確認できることがあります。
リース会社へ確認したい項目
連絡するときは、次の事項をまとめて確認します。
| 確認事項 | 確認する内容 |
|---|---|
| 契約番号 | どの設備の契約か |
| 設備名 | メーカー・型番・製造番号等 |
| 契約期間 | 開始日・満了日 |
| 現在の契約状態 | 当初リース期間中か再リース中か |
| 途中終了 | 可能か、必要な精算・手続きは何か |
| 返却 | 返却場所、取り外し・搬出方法 |
| 承継 | 後継者への権利義務承継が可能か |
| 審査 | 承継先に審査・保証等が必要か |
| 設置場所 | 移設する場合の変更手続き |
| 所有権 | 契約終了時の設備の扱い |
厨房機器のリースが残っていても居抜き退去自体を諦める必要はない
リース品があることと、店舗を居抜きで退去できるかどうかは別の問題です。
例えば、厨房内に10台の設備があり、そのうち2台だけがリース品なら、残りの自社所有設備や内装を造作譲渡の対象として整理できる可能性があります。
リース品については、
- 返却する
- 後継者へ承継できるか確認する
- 契約に従って別の場所へ移す
など別処理を行います。
「リース品が1台あるから居抜き売却できない」と考えるのではなく、設備ごとに所有関係と契約を分けます。
リース品を返却すると造作価格が変わることがある
後継テナントが利用価値を感じていた設備がリース品で、居抜き引渡し前に撤去することになれば、造作全体の評価が変わることがあります。
例えば、飲食店で主要な冷蔵庫・製氷機・食洗機がすべてリース品だった場合、設備が揃った状態を前提とした譲渡価格とは条件が変わります。
そのため、査定や募集時には、
- 譲渡できる自社所有設備
- 貸主設備
- リース品
- レンタル・貸与品
- 撤去予定品
を分けて表示する方が、後の価格変更を防ぎやすくなります。
閉店日とリース返却日は別々に管理する
閉店では複数の期限が同時に進みます。
- 最終営業日
- 賃貸借契約終了日
- 原状回復工事期間
- 造作譲渡日
- 後継テナントの入居日
- リース設備の返却日
これらが同じ日になるとは限りません。
大型厨房機器を返却する場合、設備搬出後に床や壁の補修が必要になることもあります。
逆に後継テナントへ契約承継するのであれば、新旧テナントの引渡日とリース契約の承継日を合わせる必要が出ることがあります。
原状回復については居抜き店舗の原状回復義務もあわせて確認してください。
貸主・管理会社にも確認が必要になる設備がある
リース会社との契約だけ確認すれば十分とは限りません。
設備が建物へ固定されている場合や、共用設備・建物設備と接続されている場合は、貸主・管理会社側の工事条件も確認します。
例えば、
- 業務用エアコン
- 厨房排気設備
- 大型給湯設備
- 固定された厨房設備
- 電源工事を伴う設備
などです。
リース会社が返却を求めたとしても、建物からどのように取り外すかは別の問題です。
居抜き退去で貸主へ確認する事項と並行して進めます。
閉店時のリース品確認を後回しにしない
リース品を後回しにすると、次のような問題が起こりやすくなります。
- 譲渡対象だと思っていた設備を引渡し直前に撤去する
- 造作譲渡価格を変更する
- 後継テナントの開業準備に影響する
- リース設備搬出後に追加の原状回復工事が必要になる
- 退去後も契約処理が残る
閉店が決まった段階で、賃貸借契約と同時にリース契約も一覧化しておくと進めやすくなります。
居抜き・閉店時のリース品確認手順
- 店舗内の設備を一覧化する
厨房、空調、POS、通信、什器などを現物で確認します。 - 自社所有・貸主所有・リース等に分類する
不明な設備を自社所有扱いにしません。 - リース契約書を集める
契約番号、リース会社、期間、対象設備を整理します。 - 現在の契約状態を確認する
当初契約中か、満了済み・再リース中かを確認します。 - リース会社へ閉店予定を伝えて選択肢を確認する
中途終了、返却、承継、移設等を確認します。 - 後継者が必要とする設備を確認する
承継を希望する設備だけリース会社へ手続きを相談します。 - 造作譲渡対象を確定する
自社が譲渡できる設備とリース品を分けます。 - 返却・承継日を退去日と調整する
設備搬出と原状回復工事の日程も確認します。
よくある質問
居抜き店舗のリース品は造作譲渡できますか?
現在のテナントが所有していないリース品を、自社所有設備と同じように勝手に譲渡することは避けます。後継者へ引き継ぎたい場合は、リース契約上の承継が可能かリース会社へ確認します。
店舗を閉店したらリース契約も自動的に終了しますか?
通常、店舗の賃貸借契約と設備のリース契約は別契約です。閉店・退去しただけで自動終了すると考えず、リース会社へ終了手続きを確認してください。
リースの残額を全部払えば設備を売却できますか?
一律には言えません。残リース料相当額や解約金等を支払うことと、設備所有権を取得することは別です。契約終了後に返却する契約もあるため、所有権がどうなるかをリース会社へ確認します。
リース契約を次のテナントへ名義変更できますか?
契約によっては権利義務承継の手続きが可能なケースがあります。ただし、リース会社の承諾や後継者の審査、書面手続きなどが必要になることがあります。新旧テナントだけで変更できるとは考えない方が安全です。
後継者がリース契約を引き継げなかった場合は?
現在の契約者側で契約終了・返却等の手続きが必要になる可能性があります。造作譲渡契約を締結する前に、承継不可の場合の設備扱いも決めておきます。
再リース中の設備も返却が必要ですか?
再リース契約の内容によります。契約を終了する場合の返却時期や手続きを確認します。再リース中だから自動的に自社所有になっているとは判断しません。
リースとレンタルは同じですか?
同じものとして処理しない方が安全です。契約期間、中途解約、設備選定、返却条件などが異なることがあります。契約書の内容を確認してください。
リース品を造作一覧へ載せてもよいですか?
一覧自体へ記載する場合は、「リース品」「譲渡対象外」「承継可否確認中」など、自社所有設備と区別できる形にします。造作価格へ含める前に契約処理を確定します。
リース品は「売れるか」ではなく「契約をどう処理するか」から考える
居抜き店舗にリース品がある場合、設備そのものの中古価値より先に契約を確認します。
現在の契約者、設備所有者、残期間、途中終了条件、返却方法、再リース状況、後継者への承継可否を整理し、その結果に合わせて造作譲渡対象を決めるという順番です。
特に、「残額を払えば自分のものになる」「後継者が使うと言っているのでそのまま渡せる」といった前提で進めないことが大切です。
リース会社との契約処理と、貸主との居抜き退去、後継者との造作譲渡を別々に確認しながら日程を合わせます。
居抜き退去にあたり、自社所有設備・貸主設備・リース品が混在していて造作譲渡範囲を整理しにくい場合は、店舗・オフィスの退去について相談するから相談できます。
