フロンの行程管理票とは?廃棄時の書類・記入者・保存期間・30日/90日ルール

店舗やオフィスの退去、設備更新などで業務用エアコンや業務用冷蔵庫を廃棄するときは、フロンを回収するだけでなく、誰が誰に回収を依頼し、実際に回収されたことを確認したかを書類で管理する必要があります。

この一連の仕組みが、フロン排出抑制法の行程管理制度です。

実務では「行程管理票」という複写式の書類が広く使われていますが、1枚の法定書式が全国一律に決められているわけではありません。回収依頼書、委託確認書、引取証明書など、法律で必要とされる事項を記録・交付・保存するための書類をまとめたものと考えると分かりやすくなります。

この記事では、第一種特定製品を廃棄するときに、どの書類を誰が作成し、何年間保存するのかを実務の順番に整理します。

目次

フロンの行程管理票が必要になるのは「機器を廃棄するとき」

行程管理制度が関係するのは、フロン類を冷媒として使用する業務用の冷凍空調機器、いわゆる第一種特定製品を廃棄等するときです。

代表的な機器には、業務用エアコン、業務用冷蔵庫、冷凍庫、冷蔵冷凍ショーケースなどがあります。

業務用エアコン自体の撤去・廃棄手順は業務用エアコンの廃棄とフロン回収、冷蔵庫・冷凍庫については業務用冷蔵庫の廃棄とフロン回収で個別に整理しています。

このページでは、機器の種類ではなく廃棄時の書類管理に絞って説明します。

行程管理制度で登場する主な5種類の書類

廃棄を依頼する方法によって、必要な書類は変わります。

書類 主な場面 主な作成・交付者
回収依頼書 廃棄する側が充塡回収業者へ直接フロン回収を依頼する 廃棄等実施者
委託確認書 設備業者・解体業者などを経由して回収を委託する 廃棄等実施者
再委託承諾書 引渡受託者がさらに別の事業者へ再委託する 廃棄等実施者
引取証明書 フロンの回収が完了したことを確認する 第一種フロン類充塡回収業者
確認証明書 フロンが充塡されていないことが明らかな一定の場合 第一種フロン類充塡回収業者

ここで混同しやすいのが、回収依頼書と委託確認書です。

充塡回収業者へ直接頼むなら「回収依頼書」

機器の所有者など、第一種特定製品を廃棄する側が、都道府県登録を受けた第一種フロン類充塡回収業者へ直接フロン回収を依頼する場合は、回収依頼書を交付します。

たとえば、店舗側がフロン回収業者へ直接連絡し、業務用エアコンから冷媒を回収してもらうケースです。

回収依頼書は、実際にフロン類を引き渡す、つまり回収を行うまでに交付します。

廃棄する側は、交付した回収依頼書の写しを保存します。

解体業者や設備業者を経由するなら「委託確認書」

店舗閉店やオフィス退去では、所有者がフロン回収業者へ直接依頼せず、内装解体会社、設備会社、販売会社などへ撤去工事をまとめて依頼することがあります。

その事業者が第一種フロン類充塡回収業者ではなく、フロン類の引渡しを取り次ぐ場合は、廃棄する側から委託確認書を交付します。

委託確認書は、フロン回収の委託に係る契約を締結するまでに交付する必要があります。

つまり、「撤去業者に全部任せたので、フロン関係の書類は何も確認していない」という進め方は避ける必要があります。

回収依頼書と委託確認書の違い

回収依頼書 委託確認書
依頼先 第一種フロン類充塡回収業者へ直接 設備会社・解体会社等の取次者を経由
交付する人 廃棄等実施者 廃棄等実施者
目的 フロン回収を直接依頼したことを管理 フロン類の引渡しを委託したことを管理

依頼先が登録充塡回収業者なのか、それとも回収を取り次ぐ事業者なのかで判断します。

さらに別業者へ回す場合は再委託承諾が必要

フロン類の引渡しを依頼された事業者が、自社では充塡回収業者へ渡さず、さらに別の事業者へ委託する場合があります。

このような再委託では、廃棄等実施者による承諾が必要です。

廃棄する側は、再委託を認めるのであれば再委託承諾書を交付し、その写しを保存します。

退去工事で元請、設備会社、冷媒回収会社など複数の会社が関与する場合は、実際に誰が「引渡受託者」で、最終的にどの登録充塡回収業者が回収するのかを見積・発注時に確認しておくと書類の流れを把握しやすくなります。

回収が終わったら「引取証明書」を受け取る

第一種フロン類充塡回収業者がフロン類を回収すると、廃棄等実施者には引取証明書が交付または送付されます。

引取証明書には、回収した機器、回収を行った事業者、回収したフロン類の種類・量、回収終了日などが記載されます。

廃棄する側にとっては、「回収を頼んだ」という回収依頼書や委託確認書だけでなく、実際に回収が完了したことを確認する書類が引取証明書です。

撤去業者へ工事を一括発注している場合でも、最終的に引取証明書が自社へ戻っているか確認してください。

行程管理に関する書類は原則3年間保存する

第一種特定製品の廃棄時に交付・受領する主要な行程管理書類には、3年間の保存義務があります。

書類 廃棄する側での主な保存
回収依頼書 交付した書類の写しを3年間保存
委託確認書 交付した書類の写しを3年間保存
再委託承諾書 交付した書類の写しを3年間保存
引取証明書 交付・送付を受けた書類を3年間保存
確認証明書 交付を受けた書類を3年間保存

退去案件では工事完了後に担当者や管理会社が変わることもあるため、工事会社だけに書類を持たせず、自社側でも法定保存書類を整理しておく方が安全です。

「30日」と「90日」は引取証明書が戻るまでの確認期限

行程管理制度で特に注意したいのが、30日・90日のルールです。

回収依頼書または委託確認書を交付してから、原則として30日以内に引取証明書が廃棄等実施者へ届かなかった場合などは、都道府県知事への報告が必要になります。

建物の解体工事に伴って委託確認書を交付した場合は、この期間が90日になります。

したがって、工事会社へ書類を渡した時点で手続完了と考えるのではなく、引取証明書が期限内に戻ったかまで管理する必要があります。

引取証明書が届いたら内容も確認する

期限内に届いていても、必要事項が記載されていない、内容に不自然な点がある、虚偽の記載があると考えられる場合なども、単に保管して終わりとは限りません。

回収した機器、台数、充塡回収業者、登録番号、回収量など、依頼した内容と整合しているか確認します。

「フロンがゼロだった」と「確認証明書」は同じではない

ここは実務上、特に誤解しやすい部分です。

古いエアコンや冷蔵設備で「もうガスが抜けていると思う」という場合でも、廃棄する側が自己判断して確認証明書を使うことはできません。

通常の回収を依頼して、結果的にゼロだった場合

通常どおり回収依頼書または委託確認書を交付して充塡回収業者が回収作業を行い、その結果フロン類が回収されなかった場合は、回収量をゼロとした引取証明書を交付するのが基本です。

確認証明書を使うのは例外的なケース

確認証明書は、そもそもフロン類が充塡されていないことが明らかな機器について、登録充塡回収業者が所定の方法で確認した場合に使います。

たとえば、整備時にすでにフロンを回収し、その後再充塡せずに保管していた機器などが該当する場合があります。

「故障しているから空だろう」「長年使っていないから残っていないだろう」という推測だけで確認証明書に切り替えるものではありません。

JRECOのA票・C票・E票・F票は何を意味する?

実務では、一般財団法人日本冷媒・環境保全機構(JRECO)の行程管理票が広く利用されています。

JRECOの推奨版では、複数の法定書類をA票・C票・E票・F票としてまとめています。

主な役割 主な記入者
A票 回収依頼書・委託確認書に関する所有者側の記録 廃棄する機器の所有者等
C票 取次者が充塡回収業者へ引渡しを依頼する際の記録 取次者
E票 回収後の引取証明書 第一種フロン類充塡回収業者
F票 充塡回収業者側で保存する引取証明書の写し等 第一種フロン類充塡回収業者

ただし、A票・C票・E票・F票という名称自体が法律上必須の書類名というわけではありません。

法律が求めている記載事項や交付・保存の要件を、JRECOの様式で実務的に管理しているものです。

推奨版・汎用版・補足用は取次者の数で使い分ける

JRECOでは、行程管理票として推奨版、汎用版、補足用などを用意しています。

現在の案内では、直接充塡回収業者へ引き渡す場合、または取次者が1社程度の一般的なケースでは推奨版を利用できます。

取次者が2社以上になる場合は汎用版、さらに取次者が多い場合は補足用を組み合わせる形になります。

店舗・オフィスの退去工事で、元請会社、設備会社、下請会社など複数社が間に入る場合は、誰がどの立場になるかを先に整理した方が書類を選びやすくなります。

行程管理票は紙でなく電子でも管理できる

回収依頼書、委託確認書、引取証明書などは、一定の要件を満たせば電子媒体を用いて交付・保存することも可能です。

そのため、必ず複写式の紙伝票を購入しなければ法令違反になるということではありません。

JRECOでは、冷媒管理に関する書面を電子的に授受・保存できる仕組みも提供しています。

複数拠点を持つ会社や、閉店案件を継続的に管理する会社では、紙の伝票を現場ごとに保管するより電子管理の方が確認しやすい場合があります。

ただし、自社で電子様式を用意する場合でも、法令上必要な記載事項、交付、回付、保存が満たされるようにする必要があります。

フロン行程管理票と産業廃棄物マニフェストは別の書類

行程管理票を「エアコンや冷蔵庫を捨てるためのマニフェスト」と理解すると混乱しやすくなります。

フロンの行程管理制度と、廃棄物処理法上の産業廃棄物管理票、いわゆるマニフェストは目的が異なります。

フロンの行程管理 産業廃棄物マニフェスト
主な目的 フロン回収の依頼・引渡し・回収完了を管理 産業廃棄物の収集運搬・処分の流れを管理
主な対象 第一種特定製品から回収するフロン類 産業廃棄物
制度 フロン排出抑制法 廃棄物処理法

業務用エアコン等の撤去案件では、フロン回収の行程管理と、本体や解体材の廃棄物処理の両方が関係する場合があります。

片方の書類があるから、もう片方が不要になるわけではありません。

機器本体を廃棄物・リサイクル業者へ渡す際にも証明書を確認する

フロン類を使用する第一種特定製品は、冷媒の処理状況が不明なまま廃棄物・リサイクル業者へ渡すものではありません。

フロンの回収が完了した機器を引き渡す場合は、引取証明書の写しなど、フロン類が適正に回収されたことを確認できる書類を機器の引取り側へ渡す必要があります。

フロン類が充塡されていないことを適切に確認した機器であれば、確認証明書の写しが関係します。

フロン回収と本体の撤去・廃棄を別会社へ発注するときは、「誰が証明書の写しを廃棄物業者へ渡すのか」まで確認しておくと、工事当日の手戻りを防ぎやすくなります。

建物解体では「第一種特定製品の事前確認」も別に必要

建物等を解体する工事では、行程管理票だけを用意すればよいわけではありません。

解体工事の元請業者は、建物内に第一種特定製品が設置されていないことが明らかな場合を除き、その有無を事前に確認し、結果を書面で発注者へ説明する仕組みがあります。

発注者と元請業者は、その書面をそれぞれ保存します。

建物解体では、石綿の事前調査など他の法令対応も並行する場合があるため、設備撤去だけを先行させず、解体・原状回復全体の工程の中で確認します。

行程管理票を記入するときに先に集めておきたい情報

業者へ依頼する前に、次の情報を整理しておくと書類作成が進みやすくなります。

  • 廃棄する会社・所有者の名称と住所
  • 機器が設置されている場所
  • 機器の種類
  • 台数
  • メーカー・型式
  • 冷媒の種類
  • フロン回収を直接依頼するか、設備会社等を経由するか
  • 取次者の会社名・所在地・担当者
  • 第一種フロン類充塡回収業者の名称・登録番号

型式や冷媒が分からない場合は、本体の銘板を撮影して業者へ送ると確認しやすくなります。

閉店・退去案件では工事発注時に書類の担当者を決める

行程管理制度でトラブルになりやすいのは、法律の存在を知らないことだけではありません。

実際には、複数業者が関わり「誰かがやっていると思っていた」という状態が問題になります。

フロン類を使用する機器がある場合は、見積・発注段階で次の点を確認します。

  • 対象となる第一種特定製品はどの機器か
  • 充塡回収業者の登録を誰が確認するか
  • 回収依頼書か委託確認書か
  • 再委託が発生するか
  • 引取証明書を誰が自社へ戻すか
  • 機器本体を誰が撤去・運搬・処分するか
  • 証明書の写しを誰が処分業者へ渡すか
  • 自社側で誰が3年間保存するか

設備処分全体の費用や発注範囲については店舗設備の処分費用と見積の確認方法もあわせて確認できます。

フロン行程管理票に関するよくある質問

行程管理票には決まった法定様式がありますか?

回収依頼書、委託確認書、引取証明書などについて、全国共通の1種類の固定様式が指定されているわけではありません。

必要な記載事項を満たしていれば独自様式を使うことも可能です。実務ではJRECOなどが提供する行程管理票が広く利用されています。

行程管理票は誰が用意するのですか?

廃棄等実施者には必要な書類を交付・保存する義務があります。実際の伝票自体は設備会社やフロン回収会社が準備していることもありますが、書類を用意した業者へ全責任が移るわけではありません。

発注者側でも、どの書類を誰が交付するのかを確認してください。

紙の行程管理票を買わないといけませんか?

必ず紙の複写式伝票を購入しなければならないわけではありません。必要な要件を満たせば電子的な交付・保存も可能です。

回収してフロンがゼロだった場合は確認証明書ですか?

通常の回収依頼として作業し、結果としてフロンが回収されなかった場合は、回収量ゼロと記載した引取証明書を交付するのが基本です。

確認証明書は、フロンが充塡されていないことがあらかじめ明らかな一定の場合に使用する別の仕組みです。

行程管理票があれば産廃マニフェストは不要ですか?

別制度です。行程管理票はフロン回収の流れを管理する書類であり、産業廃棄物の処理を委託する際に必要となるマニフェストの代わりにはなりません。

引取証明書は何年間保存しますか?

廃棄等実施者が受領した引取証明書は3年間保存します。回収依頼書や委託確認書の写し、再委託承諾書の写しなども原則3年間保存します。

引取証明書が届かない場合はどうしますか?

回収依頼書または委託確認書を交付してから原則30日以内、建物解体工事に伴う一定の場合は90日以内に引取証明書が届かない場合などは、都道府県知事への報告が必要になります。

廃棄完了まで書類の流れを追うことが重要

フロンの行程管理では、「業者に回収を頼んだ」という事実だけでは手続は完了しません。

  1. 第一種特定製品か確認する
  2. 直接依頼か取次者経由かを決める
  3. 回収依頼書または委託確認書を交付する
  4. 必要なら再委託を承諾する
  5. 充塡回収業者がフロン類を回収する
  6. 引取証明書を受領する
  7. 期限と記載内容を確認する
  8. 機器本体を適切な処理先へ引き渡す
  9. 必要な書類を3年間保存する

店舗・オフィス退去では、空調や冷蔵設備の撤去と原状回復、廃棄物処理が同時進行することが多いため、フロン回収だけを独立して考えるより、撤去工事全体の担当範囲と書類管理を最初に整理した方が進めやすくなります。

業務用エアコン・冷凍冷蔵設備のフロン回収から撤去・廃棄まで一括して相談したい場合は、お問い合わせから機器の種類、台数、所在地、撤去期限などをお知らせください。

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