店舗やオフィスの内装解体・原状回復では、管理会社や商業施設から「工事は閉店後」「搬出は夜間のみ」と指定されることがあります。
夜間工事は昼間より高くなることがありますが、その理由を単純に「夜だから人件費が25%上がる」と考えるのは正確ではありません。
実際の見積には、深夜時間帯の労務費だけでなく、短い作業可能時間、管理員・警備員、エレベーターや搬出口の使用時間、共用部養生、車両待機、騒音作業を別時間帯へ分ける手間などが影響します。
また、施設側から夜間施工を指定されていても、すべての解体作業を深夜に実施できるとは限りません。
夜間工事の見積は「夜間割増率」だけを見るのではなく、なぜ夜間に行う必要があり、どの作業を何時に実施するのかまで分解して確認することが重要です。
店舗・オフィスの解体が夜間になる主なケース
夜間工事になりやすいのは、工事現場そのものより、周囲の営業や建物管理への影響を避けなければならない物件です。
- 営業中の商業施設
- 駅ビル
- 百貨店
- ショッピングセンター
- 複数テナントが入るオフィスビル
- ホテル
- 医療施設
- 営業時間の長い飲食・小売施設
たとえば、昼間は来店客が共用通路を利用するため、廃材搬出だけ閉店後に指定されることがあります。
また、解体作業自体は昼間でも、エレベーターや搬入口の使用が夜間に限られるケースもあります。
したがって「夜間工事」という言葉だけでは、実際に何が夜間指定なのか分かりません。
夜間工事の費用は一律で何%高くなるとは言えない
夜間工事には全国共通の「昼間工事の○%増」という発注単価はありません。
見積へ影響する主な項目を分けると次のようになります。
| 費用要因 | 夜間に増えやすい理由 |
|---|---|
| 作業員の労務費 | 深夜労働・時間外労働等の勤務条件が関係する |
| 作業時間 | 1日に使える時間が短く、工期が延びる場合がある |
| 管理員・警備 | 通常営業時間外の施設対応が必要になる場合がある |
| エレベーター | 貨物用EVの使用時間が指定される場合がある |
| 養生 | 毎晩設置し、営業開始前に撤去・復旧する場合がある |
| 廃材搬出 | 搬出可能時間が短い、車両の待機が必要になる場合がある |
| 清掃 | 翌朝営業できる状態まで毎日清掃する場合がある |
| 工程分割 | 音の出る作業と静かな作業を別時間帯へ分ける場合がある |
同じ30坪の店舗でも、「20時から翌6時まで自由に作業できる現場」と、「23時から翌3時だけ搬出可能な現場」では生産性が大きく異なります。
22時〜5時の深夜労働には割増賃金がある
施工会社が労働者を22時から翌5時まで働かせる場合、深夜労働として通常の賃金に対する割増が必要になります。
ただし、ここで注意したいのは、労働者への割増賃金率と、発注者へ提示される工事価格の増加率は同じものではないことです。
見積価格には、労務費以外にも車両費、処分費、管理費、警備、養生、設備工事などが含まれます。
そのため「深夜割増が25%だから総工事費も25%高い」と判断することはできません。
時間外労働と深夜労働が重なる場合もある
施工会社の勤務体制によっては、深夜労働だけでなく時間外労働や休日労働と重なることがあります。
たとえば昼間から働いた作業員がそのまま夜間施工へ入るのか、夜勤専用の班を組むのかでも労務コストは変わります。
発注者が勤務管理の詳細まで判断する必要はありませんが、夜間工事費の中に「夜間作業費」「夜間割増」「夜勤人件費」などが計上されている場合は、何を指しているのか確認して構いません。
夜間工事で高くなりやすいのは「短い作業可能時間」
夜間工事では、単価よりも作業できる時間の短さがコストへ影響することがあります。
たとえば施設が22時閉店でも、すぐに解体作業を始められるとは限りません。
- 営業終了
- 来店客・従業員の退出
- 作業員入館
- 共用部養生
- 工具・台車搬入
- 作業開始
- 廃材搬出
- 清掃
- 養生撤去
- 管理会社確認
までを決められた時間内で行う必要があります。
「22時〜翌6時の8時間工事」と思っていても、実際の解体作業に使える時間が4〜5時間程度になることもあります。
1晩で終わらず施工日数が増えれば、現場管理や車両、人員の手配回数も増えます。
廃材搬出時間が限られると工事効率が落ちる
内装解体では、壊す作業だけでなく廃材を建物外へ運び出す工程が必要です。
ビルによっては、
- 貨物用エレベーターは23時以降のみ
- 搬入口への車両進入は指定時間のみ
- 一般テナントとEVを共用できない
- 廃材仮置きは禁止
- 毎日すべて搬出する必要がある
といった条件があります。
解体作業が速くても搬出が追いつかなければ、作業員が待つ時間や車両待機が発生し、工事効率が下がります。
毎日の養生と復旧が必要な施設もある
商業施設などでは、翌朝には通常営業へ戻るため、工事期間中も毎晩共用部を営業可能な状態へ戻すよう求められることがあります。
その場合、
- 床養生
- 壁・EV養生
- 防塵対策
- 資材の撤去
- 共用部清掃
- 仮囲いの処理
を繰り返します。
数日間養生を設置したままにできる現場より、設置・撤去を毎日繰り返す現場の方が手間は増えます。
管理員・警備員・施設立会いの費用を確認する
通常営業時間外に工事を行う場合、建物によっては管理員、警備員、設備担当者などの立会いが必要になります。
また、エレベーター操作やセキュリティ解除などを施設側担当者が行うケースもあります。
この費用が、
- 施工会社の見積に含まれる
- 管理会社から借主へ別請求される
- B工事側の見積に含まれる
など、物件によって異なるため、総額で確認します。
夜間指定でも大きな音を出せるとは限らない
「営業時間外なら何をしてもよい」という意味ではありません。
解体では、コンクリートの斫り、切断、破砕など大きな音・振動を伴う工程があります。
作業内容や使用機械、所在地によっては、騒音・振動に関する法令や自治体条例の時間制限を確認する必要があります。
また、法律上可能な作業でも、建物の管理規約で禁止されている場合があります。
反対に、パネルや家具の取り外し、梱包、搬出など、比較的静かに行える工程を夜間へ回せる場合があります。
昼間と夜間に作業を分けた方が安くなる場合がある
すべての工事を夜間へまとめる必要がなければ、作業内容を分ける方法があります。
| 昼間へ回しやすい可能性がある作業 | 夜間指定になりやすい作業 |
|---|---|
| 現地調査・採寸 | 共用部を使用する大量搬出 |
| 書類・図面確認 | 営業時間中に通路を塞ぐ作業 |
| 施設が許可した静音作業 | 営業区画へ影響する工事 |
| 廃材の分別・積込準備 | 指定EV・搬入口を使用する搬出 |
実際にどの作業を昼間へ移せるかは施設ルールによります。
見積時には「全工程夜間」という前提だけでなく、夜間必須作業と昼間可能作業を分けられないか確認するとよいでしょう。
B工事や指定業者工事では夜間費用の構造が変わることがある
ビルによっては、空調、防災、電気、共用部、天井設備などがB工事や指定業者工事になります。
その場合、借主が依頼した解体業者の夜間費用だけではなく、指定業者側の夜間作業費や立会い費等が発生する場合があります。
たとえば、解体はC工事でも、
- 火災報知器の移設・復旧
- スプリンクラー
- 空調設備
- 共用電源
- ビル設備との接続解除
が指定工事となることがあります。
どの工事がB工事になるかは全国共通ではなく、物件ごとの工事区分表を確認します。
詳しくはB工事の基本を確認してください。
夜間解体の見積で確認したい項目
夜間工事の見積を受け取ったら、総額だけでなく次の内訳を確認します。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 夜間作業費 | 何時から何時までを対象としているか |
| 作業人工 | 人数と日数 |
| 施工日数 | 昼間施工と比べて日数が増えていないか |
| 養生 | 設置・撤去を毎日行うか |
| 管理員・警備 | 見積内か施設から別請求か |
| EV・搬入口 | 利用時間・専有時間・申請費等 |
| 車両 | 待機時間や駐車条件 |
| 廃材搬出 | 毎日搬出か、仮置き可能か |
| 清掃 | 翌朝営業のための毎日清掃を含むか |
| B工事 | 指定業者側の夜間費用が別途あるか |
見積全体の読み方は内装解体見積の内訳も参考になります。
「夜間一式」とだけ書かれている場合は内訳を確認する
夜間費用が「夜間割増一式」とだけ書かれている場合、その金額自体が直ちに不適切という意味ではありません。
ただし、
- 人件費だけなのか
- 管理費も含むのか
- 警備・立会いを含むのか
- 養生や清掃の追加作業を含むのか
- 何日分なのか
が分からなければ、他社の見積とも比較できません。
可能であれば「夜間だから高い」という説明ではなく、夜間条件によって増える作業と数量を確認します。
夜間工事費を抑える7つの確認
1.本当に全工程が夜間指定か確認する
施設によっては「工事は夜間」ではなく、「騒音作業は指定時間」「搬出だけ夜間」など細かいルールになっている場合があります。
管理会社から工事可能時間を具体的に確認します。
2.夜間必須作業と昼間可能作業を分ける
夜間でなければできない工程だけを夜間へ集められれば、夜間人工を減らせる可能性があります。
3.搬出枠・EVを連続して確保する
解体工事をしても廃材を搬出できなければ工程が止まります。
貨物EVや搬入口を細切れではなく連続して予約できないか確認します。
4.残置物を解体着工前に減らす
家具、什器、在庫、厨房機器などを夜間解体の作業員が一緒に処理すると、夜間の作業時間を消費します。
再利用、返却、買取、事前処分を先に進めておく方法があります。
5.同じ夜間条件で相見積もりを取る
A社は23〜5時、B社は20〜6時という前提なら、見積金額をそのまま比較できません。
工事可能時間、搬出時間、管理費、警備、養生、廃材処分の条件をそろえます。
内装解体の相見積もりも確認してください。
6.工事範囲を着工前に確定する
夜間工事中に「ここも撤去」「この設備は残す」と変更すると、限られた作業時間を失います。
貸主・管理会社との原状回復範囲を先に確定してください。
7.夜間施工に慣れた業者か確認する
商業施設やオフィスビルでは、工事申請、入退館、養生、搬出、警備、清掃など独自のルールがあります。
単に解体技術だけでなく、施設内夜間施工の工程管理経験も確認対象になります。
夜間工事が後から追加された場合は追加費用の根拠を確認する
当初は昼間施工の見積だったものが、管理会社の指示で夜間施工へ変更されることがあります。
その場合、追加費用が発生すること自体はあり得ます。
確認するのは、
- いつ夜間指定が判明したか
- 当初見積の施工時間は何時だったか
- 人員・日数がどう変わるか
- 警備・管理・養生等で何が追加されるか
- 既に契約した範囲と何が違うか
です。
追加請求の確認方法については内装解体の追加費用で整理しています。
夜間工事の見積が高いときは「夜間だから」で終わらせない
夜間施工が必要な物件では、昼間より高くなること自体は不自然ではありません。
しかし、確認すべきなのは「夜だから高い」という説明ではなく、
- 夜間でなければできない作業は何か
- 実際に作業できる時間は何時間か
- 何日施工するのか
- 警備・管理員・EV・養生など何が増えるのか
- 昼間へ移せる作業はないか
です。
一般的な高額見積への対処は内装解体の見積が高いときの確認項目も参考になります。
夜間解体工事でよくある質問
夜間工事は昼間より何%高くなりますか?
一律の割合では決まりません。深夜人件費だけでなく、施工時間、日数、警備、管理員、EV、養生、搬出条件などで変わります。
22時以降なら工事費は必ず25%増ですか?
いいえ。22時〜5時の25%以上という数字は労働者への深夜割増賃金に関するものです。工事見積全体へ同じ割合をそのまま掛けるルールではありません。
夜間なら大きな音を出す解体もできますか?
必ずではありません。使用する機械や作業内容、地域によって騒音・振動規制の対象となる場合があり、建物独自の規則もあります。施工会社・管理会社・必要に応じ自治体へ確認します。
商業施設では必ず夜間工事ですか?
施設ごとに異なります。閉店後のみ施工可能な施設もあれば、静かな作業は昼間可能、搬出だけ夜間指定といった施設もあります。
夜間工事を昼間へ変更すれば安くなりますか?
施設ルール上可能で、作業効率が改善するなら費用が下がる可能性はあります。ただし営業や他テナントへの影響、騒音規制等を無視して変更することはできません。
警備員や管理員の費用は解体業者の見積に入っていますか?
物件によります。施工会社の見積へ含まれる場合と、管理会社や施設から別途請求される場合があります。総額を確認してください。
夜間作業費が「一式」でも問題ありませんか?
一式表記自体だけで問題とは言えませんが、何日分で、労務・管理・警備・養生など何が含まれるかを確認すると比較しやすくなります。
B工事の夜間費用も別にかかりますか?
指定業者が夜間に設備工事を行う場合などは、B工事側にも夜間施工に伴う費用が生じる場合があります。工事区分と見積を分けて確認します。
夜間工事では「単価」より時間の使い方を確認する
夜間の内装解体・原状回復は、昼間より費用が高くなることがあります。
ただし、その差は単純な深夜割増だけではありません。
短い施工時間、搬出制限、管理員・警備、養生、毎日の清掃、設備工事との調整などが重なることで総額が変わります。
見積を確認するときは、
- 夜間指定の対象作業
- 実際の作業可能時間
- 搬出可能時間
- 施工日数
- 管理・警備・養生
- 昼間へ分離できる工程
- B工事・指定業者側の費用
まで確認してください。
夜間指定の解体・原状回復見積が高い、施設ルールを踏まえてどこまで夜間施工が必要か整理したい場合は、お問い合わせから物件種別、工事可能時間、退去期限、見積内容などをお知らせください。
