店舗の閉店を決めたとき、「何ヶ月前から準備すれば間に合うのか」は、閉店日だけでは決まりません。
店舗物件には解約予告期間があり、居抜き・造作譲渡を検討するなら後継テナントを探す時間も必要です。さらに、設備・什器・在庫の整理、原状回復工事、貸主による完了確認、鍵の返却まで考える必要があります。
そのため、閉店準備は「一律に6ヶ月前から始めればよい」と考えるより、契約終了日・明渡し日から逆算し、自社で最も早く到来する期限から動き始める方が実務的です。
- 最終営業日
- 賃貸借契約の終了日
- 原状回復工事を完了させる期限
- 貸主へ物件を明け渡す日
これらは同じ日とは限りません。
店舗営業を終了した後も、設備搬出や原状回復工事のために物件を使用するケースがあります。反対に、契約終了日までに原状回復・完了確認まで終えなければならない契約もあります。
閉店から退去までに「何をするか」を一通り確認したい場合は、店舗閉店・退去でやることの手順・チェックリストを先に確認してください。
店舗閉店の準備は何ヶ月前から始める?
実務上の閉店スケジュールでは、6ヶ月程度前から準備を始める例が多く見られます。
ただし、6ヶ月前という数字そのものが全国共通の期限として決まっているわけではありません。
店舗ごとに、賃貸借契約の解約予告期間、定期借家かどうか、中途解約条項、居抜きの条件、原状回復工事の規模などが異なります。
たとえば、契約上6ヶ月前までに解約を通知する必要がある店舗であれば、閉店希望日の3ヶ月前に契約書を確認しても遅い可能性があります。
一方、解約条件や工事内容によっては、もっと短い期間で進められる店舗もあります。
したがって、閉店を具体的に検討し始めたら、その時点でまず契約書を確認し、そこから必要期間を逆算します。
閉店スケジュールは「閉店日」ではなく明渡し日から逆算する
スケジュールを作るときに基準にしたいのは、最終営業日だけではありません。
最終的に貸主へ物件を返す明渡し日から逆算します。
| 時期の目安 | 主に行うこと |
|---|---|
| 6ヶ月以上前〜 | 契約確認、閉店・退去日の整理、居抜き可能性、原状回復条件の把握 |
| 3〜6ヶ月前 | 解約予告、居抜き・造作譲渡、設備査定、原状回復の現地確認 |
| 1〜3ヶ月前 | 在庫・什器整理、各種契約、関係者への案内、工事見積・工程確定 |
| 2〜4週間前 | 最終営業準備、設備搬出、ライフライン停止日の調整、工事準備 |
| 閉店後〜明渡し | 残置物搬出、原状回復、清掃、完了確認、是正、鍵返却 |
| 明渡し後 | 保証金・敷金等の精算確認、残る手続き・書類整理 |
これは一般的な計画例です。
「6ヶ月前なら必ず間に合う」「3ヶ月前では必ず遅い」という意味ではありません。実際の日程は契約と物件条件から決めます。
6ヶ月以上前:契約と「閉店後の出口」を先に確認する
閉店を検討し始めた段階で、最初に確認したいのは賃貸借契約書です。
特に確認するのは、次の内容です。
- 解約予告期間
- 中途解約できる条件
- 違約金・予告不足時の費用
- 原状回復の範囲
- スケルトン返しの有無
- 居抜き・造作譲渡に関する条件
- 貸主指定業者・工事区分
この時点では、まだ内装を壊したり設備を捨てたりする必要はありません。
まず「原状回復して返すのか」「居抜き・造作譲渡の余地があるのか」「売却できる設備があるのか」を確認します。
閉店後の出口によって、その後のスケジュールが変わるからです。
解約通知を出す前に居抜き・造作譲渡の条件を確認する
店舗の内装や設備を後継テナントへ引き継げるのであれば、原状回復工事や設備処分を減らせる可能性があります。
ただし、居抜き・造作譲渡は借主だけで決められるものではありません。
貸主の承諾が必要か、後継テナントの審査が必要か、解約通知を提出した後でも募集できるかなど、物件ごとの条件を確認します。
また、解約予告は提出後に借主の都合だけで自由に撤回できるとは限りません。
そのため、閉店を決めたからといって、契約内容や居抜きの可能性を確認する前に機械的に解約通知を提出するのではなく、必要な順序を貸主・管理会社・仲介会社と確認してください。
居抜きと原状回復の比較は、居抜き退去と原状回復はどちらを選ぶかで整理しています。
3〜6ヶ月前:解約・居抜き・設備査定を並行して進める
契約条件と方針が整理できたら、具体的な退去準備へ進みます。
解約予告を行う
賃貸借契約で定められた方法・期限に従って解約を申し入れます。
「店舗なら必ず6ヶ月前」と決めつけず、実際の契約書を確認してください。
解約予告の具体的な確認方法は、店舗の解約予告で詳しく整理しています。
居抜き・造作譲渡を進める
貸主から居抜き募集の承諾を得られる場合は、後継テナント探しを進めます。
ただし、明渡し期限の直前まで無期限に募集を続けるのは危険です。
後継テナントが決まらなかった場合に原状回復へ切り替えられるよう、居抜き募集を終了する社内期限も設定します。
設備・什器の査定を始める
厨房機器、冷蔵庫、ショーケース、業務用エアコン、家具・什器などは、状態によって売却できる可能性があります。
原状回復業者へ一括撤去を依頼した後では売却できないため、査定は工事より先に行います。
店舗設備の整理は、店舗設備・什器の買取も確認してください。
原状回復の見積は閉店後ではなく事前に取る
「営業を終えてから店内を空にし、その後で原状回復業者を探せばよい」と考えると、明渡しまでの時間が不足することがあります。
営業中でも現地調査できる範囲で、返還条件を確認し、原状回復の概算や工程を把握しておく方が安全です。
特に、次のような店舗は時間に余裕を持って確認します。
- 厨房・給排水・排気ダクトが多い飲食店
- 特殊な設備を持つクリニックや美容室
- 大型什器・機械設備が多い店舗
- スケルトン返しが必要な店舗
- 貸主指定業者がある物件
- 夜間・休日しか工事できない商業施設
店舗原状回復の範囲は、店舗閉店時の原状回復で確認できます。
1〜3ヶ月前:在庫・契約・手続き・工事工程を具体化する
閉店日が近づいてきたら、事業運営側の整理と退去工事を同時に進めます。
在庫の減らし方を決める
閉店直前まで通常量を仕入れると、大量の在庫が残る可能性があります。
仕入れ量を調整し、返品可能品、他店舗へ移動するもの、売り切るもの、廃棄が必要なものを整理します。
従業員・取引先・顧客への対応を準備する
従業員を雇用している店舗では、雇用契約や配置転換、退職等に関する手続きがあります。
仕入先、決済サービス、予約サービス、警備、清掃、通信、保険など、店舗に紐づく契約も一覧化します。
必要な対応時期は契約・制度ごとに異なるため、閉店直前にまとめて確認するのではなく早めに洗い出します。
行政上の廃止・変更手続きを確認する
飲食店、美容室、クリニックなど、許可・届出が関係する業種では、閉店に伴う廃止届等が必要になる場合があります。
届出期限や提出先は業種・自治体によって異なるため、自店を管轄する行政機関へ確認します。
店舗閉店時の許認可については、店舗閉店時の許認可・届出へ分岐してください。
2〜4週間前:最終営業と退去工事がぶつからないよう調整する
閉店直前は、営業側と工事側の予定が重なりやすい時期です。
什器や厨房機器をいつ搬出するか、看板をいつ撤去するか、原状回復工事をいつ始めるかを具体的な日付へ落とし込みます。
この時期までに、次の内容を確定しておきます。
- 最終営業日
- 什器・設備の搬出日
- 買取業者の引取日
- 原状回復工事の着工日
- 貸主・管理会社の完了確認日
- 鍵の返却日
閉店日だけ決め、退去工程を後から考えると、工事日数を確保できない可能性があります。
電気・水道・ガスは閉店日に全部止めない
ライフラインの停止日も、最終営業日だけを基準に決めない方が安全です。
閉店後に照明を使って設備搬出や原状回復工事を行う、清掃で水を使う、設備撤去前にガス会社の作業が必要になる、といったケースがあります。
そのため、各施工会社と必要日を確認してから停止日を設定します。
特に電気・水道は、完了確認まで必要になる場合があります。
具体的な考え方は、店舗閉店時の電気・ガス・水道はいつ止めるかで確認してください。
閉店当日で「退去完了」になるとは限らない
最終営業日を迎えても、店舗の賃貸借・退去実務が終了するとは限りません。
営業終了後に行う作業として、
- 残存在庫・備品の搬出
- 買取対象設備の引取
- 残置物撤去
- 内装解体・原状回復
- 清掃
- 貸主・管理会社の完了確認
- 指摘事項の是正
- 鍵・カード等の返却
などがあります。
したがって、社内スケジュールでは「閉店日」と「退去完了日」を別の日付として管理すると整理しやすくなります。
閉店後〜明渡し:原状回復・完了確認・鍵返却まで終える
営業を終了したら、残っている設備・什器を搬出し、契約上必要な原状回復を進めます。
工事終了後は、貸主・管理会社の確認を受けます。
施工会社が「工事終了」と判断した日が、そのまま明渡し完了日になるとは限りません。
完了確認で補修や追加対応を求められる可能性があるため、明渡し直前に工事を終える工程は避け、できる限り是正期間を確保します。
原状回復の期限については、店舗・オフィスの原状回復はいつまでかも確認してください。
閉店まで3ヶ月を切っている場合はどうする?
閉店までの期間が短くても、すべてのケースで間に合わないとは限りません。
ただし、通常スケジュールよりも優先順位を明確にします。
- 賃貸借契約書を確認する
- 貸主・管理会社へ退去希望日を伝える
- 居抜き・原状回復のどちらで進めるか期限を決める
- 設備・什器の売却可否を早急に査定する
- 原状回復の現地調査と見積を並行して行う
- 明渡しに必要な工事とその他の作業を分ける
- 行政・労務・契約手続きを同時進行する
解約予告期間が不足している場合、閉店後も契約上の賃料等が残ることがあります。
そのため「早く工事を終わらせれば家賃もすぐ止まる」とは限りません。
契約終了と物理的な店舗退去を分けて確認してください。
すでに退去期限が迫っている場合は、店舗の退去期限に間に合わないときの緊急対応へ進んでください。
閉店準備でやってはいけない順番
設備を全部捨ててから居抜きを検討する
設備・内装を撤去した後では、居抜き・造作譲渡や設備買取の選択肢を失います。
契約を確認せず解体業者へ依頼する
不要な範囲まで撤去したり、貸主設備を誤って壊したりする原因になります。
原状回復見積を閉店後まで取らない
明渡し期限までの工期を確保できない可能性があります。
閉店日にライフラインをすべて停止する
搬出・工事・清掃・完了確認に必要な電気や水が使えなくなることがあります。
居抜きの結果が出るまで原状回復の準備をまったくしない
居抜きが成立しなかった場合に、明渡し期限までの工事時間が不足する可能性があります。
居抜き募集と並行して、原状回復へ切り替えた場合の見積・工期も確認しておく方が安全です。
よくある質問
店舗閉店の準備は6ヶ月前から始めるべきですか?
6ヶ月前は実務上よく使われる計画例ですが、すべての店舗に共通する固定期限ではありません。まず賃貸借契約の解約予告期間、原状回復条件、明渡し日を確認し、自店に必要な期間を逆算してください。
解約予告が6ヶ月前なら、6ヶ月前まで何もしなくても大丈夫ですか?
おすすめできません。6ヶ月前が解約通知の期限なら、その前に契約内容、居抜き・造作譲渡の可否、社内の閉店意思決定などを終えておく必要があります。実際の準備開始はさらに前になる可能性があります。
閉店日と契約終了日は同じにする必要がありますか?
必ずしも同じではありません。営業終了後に設備搬出・原状回復を行う期間を確保するため、最終営業日より後を契約終了・明渡し日とするケースがあります。実際の日程は契約条件と工期から決めます。
居抜き募集はいつから始めればよいですか?
貸主の承諾条件と解約予告の扱いを確認できた段階で、できるだけ早く検討する方が選択肢を確保しやすくなります。同時に、成立しなかった場合に原状回復へ切り替える期限も決めてください。
原状回復の見積はいつ取ればよいですか?
閉店後まで待つ必要はありません。契約上の返還条件が分かった段階で現地調査を依頼し、工事範囲・概算費用・必要工期を把握しておくとスケジュールを組みやすくなります。
電気・水道は最終営業日に解約してよいですか?
工事・搬出・清掃・完了確認で使用する場合があるため、施工会社や管理会社へ確認してから停止日を決めます。最終営業日とライフライン停止日が同じとは限りません。
閉店まで1〜2ヶ月しかありません。もう遅いですか?
物件条件によります。まず契約終了日・解約予告・明渡し条件を確認し、貸主連絡、原状回復見積、設備整理などを同時に進めます。期限が厳しい場合は通常の閉店スケジュールではなく緊急対応へ切り替えます。
店舗閉店は「6ヶ月前」ではなく、自店で最も早い期限から始める
店舗閉店の準備時期を決めるとき、6ヶ月前・3ヶ月前といった数字だけを基準にすると、契約上の期限を見落とす可能性があります。
最初に賃貸借契約書を確認し、解約予告、居抜き・造作譲渡、設備売却、原状回復、行政・事業手続き、明渡しの期限を一つの予定表へ並べます。
そのうえで、最も早く対応しなければならない項目から準備を開始します。
特に重要なのは、すぐに設備を処分・解体するのではなく、契約確認→居抜き・造作譲渡→設備買取→原状回復範囲確定→必要な撤去・処分の順で判断することです。
閉店日・契約終了日・明渡し日が決まっているものの、原状回復や設備整理をどの順番で進めればよいか整理できない場合は、早い段階で退去実務をまとめて確認すると、期限直前の追加費用や選択肢の消失を防ぎやすくなります。
