原状回復の追加費用はなぜ発生する?追加請求を防ぐ8つの確認

店舗・オフィスの原状回復では、最初に見積を承認していても、工事開始後に追加費用が発生することがあります。

例えば、床材を剥がしたところ下地が大きく傷んでいた、図面に載っていない配管が見つかった、貸主検査で追加の復旧を求められた、といったケースです。

一方で、当初見積に何が含まれ、何が含まれていないのかが曖昧なまま発注すると、工事終盤になって「追加工事一式」として大きな金額を提示されることもあります。

原状回復の追加費用は、発生したこと自体で妥当・不当を判断するのではなく、「なぜ追加になったか」「当初見積に含まれていなかったか」「追加作業前に金額を確認したか」で判断します。

この記事では、店舗・オフィスの原状回復で追加費用が発生する8つの原因と、追加請求を受けたとき・発注前に確認したいポイントを整理します。

原状回復見積全体の確認方法については、原状回復の見積書の見方をご覧ください。

目次

原状回復で追加費用が発生する8つの原因

  1. 当初見積で「別途」「見積外」だった工事
  2. 仕上げを撤去して初めて分かった下地・設備の問題
  3. 実際の施工数量が見積数量より増えた
  4. 残置物・撤去物が見積時より増えた
  5. 貸主・管理会社から追加の原状回復を求められた
  6. 借主側が工事内容・仕様を変更した
  7. 夜間工事・工程変更など施工条件が変わった
  8. 追加工事の承認方法が決まっていなかった

1.当初見積で「別途」「見積外」だった工事

最も分かりやすい追加費用の原因は、当初見積に含まれていなかった工事です。

見積書の備考欄などに、

  • 石綿除去費は別途
  • 追加残置物は別途
  • 貸主追加指示は別途
  • 床下補修は別途
  • 夜間作業費は別途

と書かれている場合があります。

この場合、「見積総額」に入っていない以上、その条件が実際に発生すれば追加見積になる可能性があります。

「別途」を金額ゼロと考えない

例えば、

石綿除去費 別途

という記載は、石綿除去が無料という意味ではありません。

必要になった場合に、現在の見積とは別に金額を算定するという意味です。

発注前に、見積書内の、

  • 別途
  • 含まず
  • 実費
  • 現場確認後
  • 必要時別途見積

という表記を拾っておきます。

一式表記・備考欄については、原状回復の見積で「一式」と書かれていたら?も参考にしてください。

2.仕上げを撤去して初めて分かる下地・設備の問題

現地調査をしても、工事前には確認できない部分があります。

例えば、

  • クロスの裏側
  • 床材の下
  • 天井内部
  • 壁内部
  • 造作物の裏
  • 床下配管

などです。

仕上げ材を撤去した後に、

  • 下地の腐食
  • 大きな穴・破損
  • 水漏れ跡
  • カビ
  • 図面にない配線・配管
  • 二重になった壁・床

が見つかる場合があります。

見えなかったものまで最初から完全に積算できるとは限らない

このような追加工事は、必ずしも施工会社の見積漏れとは限りません。

通常の現地調査では確認できなかった部分であれば、解体後に追加見積となることがあります。

ただし、追加工事を行う前に、

  • 発見箇所の写真
  • なぜ補修が必要なのか
  • 追加する工事内容
  • 追加金額

を確認します。

3.実際の施工数量が見積数量より増えた

原状回復の見積では、

  • 壁面積
  • 床面積
  • 天井面積
  • 設備台数
  • 廃材量

などを数量として積算します。

工事開始後に実測した結果、当初想定より数量が増えると、費用も増える場合があります。

概算数量か確定数量かを確認する

例えば、

床撤去 概算200㎡

となっている場合、実際の施工面積が230㎡なら30㎡分が追加になる可能性があります。

発注前に、

  • 数量は実測済みか
  • 概算か
  • 数量が変わった場合の単価

を確認しておくと、後から判断しやすくなります。

見積内訳の確認方法については、原状回復見積の内訳はどこを見る?をご覧ください。

4.残置物・撤去物が見積時より増えた

店舗・オフィス退去では、見積時と工事開始時で現場状態が変わることがあります。

例えば見積時に、

「什器・家具は借主がすべて搬出する」

という条件だったのに、工事開始時にも、

  • 椅子
  • 在庫
  • 厨房機器
  • 段ボール

などが残っていれば、撤去・搬出・処分費が追加になる可能性があります。

発注条件を現場担当者にも共有する

本社担当者は「全部撤去済み」と考えていても、店舗側では一部を残していることがあります。

原状回復着工前に、工事会社と現場を再確認すると安全です。

売れる設備まで追加処分にしない

残った厨房機器・什器の中には買取可能な物がある場合があります。

工事開始後に「残置物として全部処分」すると、売却価値を失う可能性があります。

売却できる設備は、解体・原状回復工事前に分けておきます。

5.貸主・管理会社から追加の原状回復を求められた

工事開始後や中間確認、完了検査で、貸主・管理会社から追加工事を求められる場合があります。

例えば、

  • 撤去範囲が不足している
  • 貸主設備まで変更されていた
  • 配線撤去が不足している
  • 補修状態が返還条件を満たしていない

と判断されるケースです。

施工会社の追加請求を見る前に「誰の指示か」を確認する

追加工事と言われた場合は、

  • 貸主の追加指示なのか
  • 当初契約に含まれていたのか
  • 施工会社が自主的に必要と判断したのか

を分けます。

特に貸主追加指示であれば、その指示内容をメール・書面等で残してもらうと確認しやすくなります。

当初から必要だった工事なら「追加」でよいか確認する

例えば契約書・原状回復仕様書に明確に、

「借主設置の間仕切りはすべて撤去」

と書かれており、その間仕切り撤去が当初見積から漏れていた場合、単純に借主負担の追加工事と整理してよいかは別途確認が必要です。

当初の見積範囲と契約内容を照合します。

6.借主側が工事内容・仕様を変更した

発注後に借主側から変更を依頼すれば、追加費用が発生することがあります。

例えば、

  • 残す予定だった設備も撤去する
  • 処分予定だった什器を別店舗へ移す
  • 工事仕様を変更する
  • 追加清掃を依頼する
  • 工期を短縮する

といった変更です。

この場合は、施工会社側の一方的な追加請求というより、発注内容が変わったことによる契約変更です。

変更依頼は口頭だけにしない

現場で担当者が、

「ここもついでに撤去してください」

と依頼した結果、後で数十万円の追加費用になる可能性もあります。

現場担当者が追加工事を発注できるのか、社内の承認ルールを決めておきます。

7.夜間工事・工程変更など施工条件が変わった

同じ工事内容でも、施工条件が変わると金額が変わることがあります。

例えば、

  • 日中工事から夜間工事へ変更
  • 通常工程を短縮
  • 休日施工を追加
  • 搬出可能時間が限定された
  • 警備員・立会員が追加された

場合です。

管理会社の工事規則を見積前に確認する

ビルの施工条件が後から判明すると、見積条件そのものが変わります。

発注前に、

  • 工事可能時間
  • 搬出可能時間
  • 養生方法
  • エレベーター利用条件
  • 工事申請

などを施工会社へ共有します。

8.追加工事の承認方法を決めていなかった

追加費用トラブルで特に避けたいのが、

「工事が終わってから、追加工事代として100万円請求された」

という状態です。

追加工事の必要性が分かった時点で、原則として工事前に内容と金額を確認します。

追加工事前に確認したい6項目

  1. 追加が必要になった理由
  2. 追加する工事内容
  3. 施工箇所
  4. 数量・単価
  5. 追加金額
  6. 工期への影響

可能であれば、現場写真も確認します。

追加変更は記録が残る方法で承認する

建設工事では、追加・変更工事によって工事内容や請負代金が変わる場合、変更内容を明確にした契約手続を行うことが重要です。

原状回復工事でも、少なくとも、

  • 追加見積書
  • 注文書
  • 変更契約書
  • 承認メール

など、後から内容を確認できる形を残します。

直接施工会社との契約ではなく、貸主・管理会社・指定業者を介する案件でも、誰が追加工事を承認したかを明確にしておくことが重要です。

追加費用が発生したらすぐ確認する順番

施工会社から追加費用の連絡を受けたら、次の順番で確認します。

  1. 追加工事を行う前か確認する
  2. 追加理由を確認する
  3. 現場写真・状況を確認する
  4. 当初契約・見積を確認する
  5. 見積外・別途条件を確認する
  6. 追加数量・単価を確認する
  7. 誰の負担になる工事か確認する
  8. 追加見積を承認してから施工する

1.当初見積に入っていないか確認する

追加と言われた項目が、すでに当初見積に含まれていないか確認します。

例えば、当初見積に、

「床補修 一式」

があるのに、再度「床補修追加」と請求されている場合は、

  • 最初の一式はどこまで含むのか
  • 今回増えた範囲はどこか

を確認します。

2.施工会社側のやり直しではないか確認する

施工会社自身の施工ミスによるやり直しと、発注者側の追加変更は別です。

例えば、施工ミスで壁を傷つけ、その補修を追加費用として請求しているのであれば、その負担関係は確認する必要があります。

「工事が増えた」という事実だけで、自動的に借主負担になるわけではありません。

3.貸主負担・借主負担の前提も確認する

追加で見つかった不具合が、借主工事によって生じたものなのか、もともとの建物側設備なのかによっても考え方が変わります。

施工会社だけで決めず、必要に応じて貸主・管理会社と負担区分を確認します。

追加費用を防ぐため発注前に確認すること

見積対象範囲

何を施工し、何を施工しないのか確認します。

見積外項目

「別途」「除外」「実費」とされている項目を一覧化します。

数量の扱い

実測数量か概算数量か確認します。

追加工事の単価

数量増の場合、当初単価を使うのか、改めて見積するのか確認します。

追加工事の承認者

誰が追加工事を発注できるのか決めます。

追加費用の連絡方法

「○万円以上の追加は必ず本社担当者の承認を得る」など、社内ルールを施工会社へ伝える方法もあります。

「追加費用なし」という見積でも条件を確認する

施工会社が追加費用なしを掲げている場合でも、どんな条件でも絶対に増額しないという意味とは限りません。

例えば、

  • 発注後に借主が工事を追加した
  • 現地調査時には確認できない構造が見つかった
  • 貸主から新たな工事指示が出た

場合まで同額なのか確認します。

見積総額が安いほど安心とは限らない

初期見積を安く見せ、

  • 廃材処分
  • 養生
  • 補修
  • 夜間費

などを別途にすれば、契約時の総額は低く見えます。

そのため、相見積もりでは初期総額だけでなく、見積外項目も比較します。

相見積もりについては、原状回復の相見積もりはどう取る?をご覧ください。

追加請求が出たときに確認したいチェックリスト

  • 当初見積を確認した
  • 契約書・仕様書を確認した
  • 見積外・別途項目を確認した
  • 追加理由を確認した
  • 現場写真を確認した
  • 追加する工事範囲を確認した
  • 数量を確認した
  • 単価を確認した
  • 工期への影響を確認した
  • 貸主追加指示か確認した
  • 借主側の変更依頼か確認した
  • 施工会社のやり直しでないか確認した
  • 追加作業前に金額を承認した
  • 承認記録を残した

原状回復の追加費用についてよくある質問

原状回復で見積後に追加料金が発生することはありますか?

あります。見積時に確認できなかった下地損傷、数量増、追加残置物、貸主からの追加指示、借主側の仕様変更などが原因になります。

追加費用を請求されたら必ず払う必要がありますか?

追加費用が発生した理由、当初契約の範囲、追加工事を誰が依頼・承認したかなどを確認する必要があります。請求されたという事実だけで妥当性を判断しないでください。

追加工事を勝手に施工された場合はどうしますか?

まず、追加工事が必要となった理由、契約上の根拠、誰が指示・承認したかを確認します。金額が大きい場合や当事者間で見解が分かれる場合は、契約書類を整理したうえで専門家への相談も検討します。

追加見積は工事後でもよいですか?

追加工事の内容と金額は、可能な限り着工前に確認する方がトラブルを防ぎやすくなります。工事状況上、数量が事前確定できない場合でも、対象作業・単価・変更対象になることなどを先に確認しておく方法があります。

原状回復の「別途」とは何ですか?

現在の見積金額に含まれていない項目です。その工事が必要になった場合は、別途費用が発生する可能性があります。

貸主から追加工事を指示されたら借主負担ですか?

必ずしも指示されたものすべてが自動的に借主負担になるとは限りません。賃貸借契約、原状回復特約、工事区分、追加指示の内容を確認してください。

指定業者から追加請求された場合も確認できますか?

指定業者であっても、追加理由・工事内容・数量・単価などを確認することはできます。施工会社を変更できるかどうかとは別の問題です。

追加費用を完全になくすことはできますか?

工事前には確認できない下地・設備などがあるため、完全になくせるとは限りません。ただし、見積外条件、追加承認ルール、数量・単価を事前に明確にすることで、想定外の追加請求は減らしやすくなります。

追加費用は「発生した理由」と「承認した内容」を確認する

原状回復で追加請求を受けたときは、金額だけを見て判断しません。

確認するのは、

  1. 当初見積に含まれていたか
  2. 工事前に確認できた内容か
  3. 誰が追加を求めたか
  4. 追加範囲・数量は何か
  5. 単価はいくらか
  6. 工期にどう影響するか
  7. 誰が負担する工事なのか
  8. 施工前に承認したか

です。

原状回復工事では、実際に解体・撤去して初めて分かることがあるため、追加費用が発生すること自体は珍しくありません。

一方、当初から見積できた工事を後から追加扱いにしたり、金額確認なしに追加工事を進めたりすれば、発注者側は妥当性を判断できません。

追加費用をゼロにすることより、「どの条件なら追加になり、追加時に誰が何を確認して承認するか」を発注前に決めておくことが重要です。

原状回復見積全体については、原状回復の見積書の見方をご覧ください。

見積内訳については、原状回復見積の内訳はどこを見る?で整理しています。

諸経費の確認については、原状回復の諸経費が高い?をご覧ください。

原状回復全体については、原状回復ガイドで整理しています。

すでに追加請求を受けており、当初見積に含まれていた工事なのか、追加工事として合理的なのか整理できない場合は、お問い合わせから見積・追加内容・退去条件をご連絡ください。

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