店舗の保証金はいつ返還される?償却・原状回復と退去時の7つの確認

店舗やテナントを退去するとき、大きな金額になりやすいのが保証金の返還です。

入居時に賃料の数か月分からそれ以上の保証金を預けている店舗では、返還額によって閉店・移転後の資金繰りが大きく変わることがあります。

ただし、「保証金」と書かれているからといって、すべての店舗で同じ仕組みになっているわけではありません。

賃料などの債務を担保する目的で預けた保証金なら、民法上の敷金に当たる場合があります。

一方、店舗の事業用賃貸借では、

  • 退去時に一定額を償却する
  • 一定割合を返還しない
  • 契約終了後○か月で返還する
  • 一定期間に分けて返還する

など、契約固有の条件が設定されていることがあります。

店舗の保証金返還では、「保証金だから何円戻る」と考えるのではなく、保証金の中身を、返還対象・償却・未払債務・原状回復費などへ分けて確認することが重要です。

この記事では、店舗退去時の保証金について確認したい7項目と、返還額の計算、返ってこない場合の確認方法を整理します。

契約書上「敷金」となっている場合は、店舗の敷金はいつ返還される?もご覧ください。

目次

店舗の保証金とは?

店舗・テナントの賃貸借では、入居時に貸主へまとまった金額を「保証金」として預けることがあります。

その目的として多いのは、

  • 賃料
  • 共益費
  • 原状回復費
  • その他賃貸借契約から生じる債務

などを担保することです。

このような担保目的の金銭は、「保証金」という名称であっても民法上の敷金に当たることがあります。

保証金と敷金は名前だけでは区別できない

民法上の敷金は、「敷金」という名称が付いているかどうかではなく、何の目的で貸主へ交付した金銭なのかによって判断されます。

そのため、契約書に、

保証金 500万円

と書かれていても、その全額が賃料等の債務を担保するための預託金なら、敷金と同様の性質を持つ可能性があります。

保証金には別の性質が含まれることもある

一方、事業用物件の保証金には、契約によって、

  • 敷金的な担保金
  • 返還しない償却部分
  • 建設協力金的な金銭
  • その他の預託金

など、異なる性質が含まれる場合があります。

「保証金=敷金とまったく同じ」「保証金=敷金とは完全に別物」のどちらにも決めつけず、契約書の条項を確認します。

店舗保証金の返還で確認する7項目

  1. 保証金が何の目的で預けられているか
  2. いつ・どの方法で返還されるか
  3. 償却・不返還部分があるか
  4. 未払賃料・共益費等があるか
  5. 原状回復費を控除する契約か
  6. 最終精算明細が合っているか
  7. 返還されない・遅れている場合の理由

1.保証金が何の目的で預けられているか確認する

まず賃貸借契約書を確認します。

保証金条項には、例えば、

「本契約に基づき乙が負担する一切の債務を担保するため」

などと書かれていることがあります。

このような記載があれば、賃料等の債務を担保する敷金的な性質が強いと考えられます。

初期費用の明細も確認する

入居時に、

  • 保証金
  • 敷金
  • 礼金
  • 権利金
  • 建設協力金

などを複数支払っている場合があります。

それぞれについて、

  • 返還されるもの
  • 最初から返還しないもの
  • 一定条件で返還するもの

を分けます。

保証金預り証も確認する

契約書とは別に保証金預り証が発行されている場合があります。

自社の帳簿上の金額だけではなく、

  • 契約書
  • 保証金預り証
  • 振込記録

を照合して預託額を確定します。

2.保証金はいつ返還される?

保証金のうち敷金としての性質を持つ部分については、一般原則として、賃貸借が終了し、物件を貸主へ返還した後に、借主の債務を差し引いた残額が返還されます。

ただし、店舗契約では返還時期・返還方法が契約書で具体的に定められている場合があります。

契約書の返還条項を見る

例えば、

  • 明渡し後30日以内
  • 契約終了後3か月以内
  • 原状回復費の確定後
  • 一定の据置期間後
  • 複数回に分けて返還

などです。

店舗保証金には高額なものがあるため、契約によっては通常の敷金より複雑な返還条件が設定されていることがあります。

「退去したらすぐ返る」と資金計画しない

例えば、

  • 9月30日:旧店舗明渡し
  • 10月1日:新店舗開業

という計画でも、旧店舗の保証金返還が12月なら、新店舗開業時には保証金が戻っていません。

新店舗の、

  • 敷金・保証金
  • 内装工事
  • 設備購入

の資金として旧店舗の保証金を使う予定なら、返還日を確認して資金計画を組みます。

分割返還の契約もある

事業用物件では、契約によって保証金を一括ではなく、一定期間をかけて返還する取り決めもあります。

その場合、退去時に返還額が確定しても、全額が一度に振り込まれるとは限りません。

契約書で、

  • 返還開始時期
  • 返還回数
  • 各回の返還額
  • 利息の有無

を確認します。

3.保証金の償却を確認する

店舗契約で特に確認したいのが「保証金償却」です。

例えば、

保証金500万円

解約時20%償却

という契約なら、100万円が契約上返還対象から外れる条件になっている可能性があります。

償却の設定方法はさまざま

契約によって、

  • 保証金の○%
  • 賃料○か月分
  • 定額○万円
  • 契約年数によって変動
  • 中途解約時のみ増額

などの形があります。

契約満了と中途解約で条件が違う場合もある

例えば、契約期間満了なら保証金の10%償却、中途解約なら20%償却という条項が設定されている場合があります。

閉店時には、単に「償却20%」という数字だけではなく、

  • 今回の解約理由
  • 契約期間
  • 解約日
  • 更新履歴

まで確認します。

保証金償却と原状回復費は同じもの?

必ずしも同じではありません。

契約書で、

  • 保証金から○%を償却する
  • 借主は別途原状回復義務を負う

と定められていれば、保証金償却に加えて原状回復費が必要になる場合があります。

一方、償却部分がどの費用を含むものとして設定されているかは契約によって異なります。

「償却を払うから原状回復費は不要」「原状回復費を払うから償却は不要」と一律に考えないようにします。

保証金償却そのものについてはART-302で詳しく整理します。

4.未払賃料・共益費などを確認する

保証金が賃料等の債務を担保するものなら、未払いがある場合は返還時に精算されることがあります。

例えば、

  • 未払賃料
  • 共益費
  • 水道光熱費
  • 契約上の違約金
  • 明渡し遅延による債務
  • その他契約上の支払義務

などです。

最終月の賃料を保証金から勝手に相殺しない

「保証金を500万円預けているから、最後の家賃は払わなくてもよい」と借主側だけで判断しないようにします。

契約期間中は通常どおり賃料を支払い、保証金との精算は契約書・貸主との取り決めに従います。

解約違約金にも注意する

契約期間の途中で閉店する場合は、保証金償却とは別に、

  • 中途解約違約金
  • 解約予告不足分

などが発生する契約があります。

これらが保証金から控除されるのか、別途支払うのかも確認します。

5.原状回復費と保証金返還の関係を確認する

店舗保証金の返還額へ大きく影響するのが原状回復です。

例えば保証金500万円を預けていて、

  • 償却50万円
  • 未払債務20万円
  • 借主負担の原状回復費150万円

を保証金から精算するなら、返還額は大きく減ります。

原状回復費を保証金から差し引く場合は内訳を確認する

確認するのは、

  • どの工事か
  • 数量
  • 単価
  • 借主負担の契約根拠
  • 既払い工事との重複

です。

原状回復については、店舗閉店の原状回復はどこまで必要?をご覧ください。

自社で原状回復費を払っている場合

例えば借主が指定業者へ300万円を直接支払い、契約どおり原状回復工事を完了したとします。

その後、保証金精算でも同一の原状回復工事300万円が差し引かれているなら、内容を確認します。

ただし、

  • 貸主検査後の追加是正
  • 未施工部分
  • 追加撤去

など別の費用である可能性もあります。

工事項目単位で照合します。

原状回復費が保証金を上回ることもある

保証金が400万円でも、

  • 償却50万円
  • 原状回復費400万円
  • 未払債務20万円

なら、保証金が返らないだけでなく追加支払いが必要になる可能性があります。

保証金は借主負担額の上限ではありません。

6.保証金の最終精算明細を確認する

退去後は、振込額だけではなく精算明細を確認します。

少なくとも、

  • 預託保証金
  • 償却額
  • 未払賃料
  • 共益費
  • 原状回復費
  • 違約金等
  • その他控除
  • 最終返還額

を一覧にします。

返還見込額の考え方

概算では、

保証金返還見込額 = 預託保証金 − 契約上の償却・不返還額 − 未払債務 − 借主負担として確定した原状回復費等

と整理できます。

実際の控除項目は契約によって異なります。

返還計算例

例えば、

  • 保証金:600万円
  • 保証金償却:120万円
  • 未払賃料等:30万円
  • 原状回復精算:150万円

なら、単純計算では、

600万円 − 120万円 − 30万円 − 150万円 = 300万円

が返還見込額です。

ただし実際には契約条項、税務上の処理、その他債務などが関係することがあるため、最終精算書を確認します。

償却額に消費税が関係する場合

保証金そのものの預託と、返還されない償却部分では、税務上の扱いが同じとは限りません。

契約書・請求書上の金額と、実際の精算額に差がある場合は、消費税の扱いを含め貸主・管理会社・税理士等へ確認します。

7.保証金が返ってこない・返還が遅い場合

まず、契約上の返還期日を確認します。

そのうえで、

  1. 明渡しが完了しているか
  2. 契約上の返還期限を過ぎているか
  3. 保証金の償却額が確定しているか
  4. 未払債務が残っていないか
  5. 原状回復精算が終わっているか
  6. 返還が分割条件になっていないか
  7. 貸主から精算明細が提示されているか

を確認します。

「返還まで○か月」が全国共通ルールではない

店舗保証金の返還時期は契約によって差があります。

契約終了後すぐ一括返還する契約もあれば、一定期間を置いて返還する契約、分割返還する契約もあります。

他店舗の事例ではなく、自社の賃貸借契約書を確認してください。

精算明細が出てこない場合

返還額について、

「保証金からいろいろ引いて○万円です」

とだけ説明されても、自社では妥当性を確認できません。

可能な限り、

  • 償却
  • 原状回復費
  • 未払債務
  • その他控除

について内訳を確認します。

返還額に争いがある場合

例えば、

  • 契約書にない償却が行われている
  • 原状回復費が契約範囲を超えている
  • 既払い費用が重複控除されている
  • 保証金の性質そのものについて認識が違う
  • 返還期限を大幅に過ぎている

などの場合は、貸主・管理会社へ根拠を確認します。

高額な保証金について契約解釈・返還請求そのものが争いになっている場合は、弁護士等の専門家への相談を検討します。

保証金と敷金はどう使い分ければいい?

実務では店舗物件によって「敷金」「保証金」の名称が使い分けられていますが、名称だけで法律上の性質は決まりません。

敷金的な保証金

賃料等の債務を担保する目的で預け、退去後に債務を控除して残額を返還するものです。

償却付き保証金

保証金のうち、契約で定めた一定額・一定割合を返還しないものです。

他の性質を含む保証金

店舗開発等では、保証金という名称でも、契約内容によって敷金とは異なる性質の金銭が含まれるケースがあります。

保証金の名称ではなく、契約条文に何と書かれているかを確認します。

保証金の返還条件は更新契約でも確認する

長期間営業した店舗では、最初の契約書だけではなく更新契約書・変更合意書も確認してください。

更新時に、

  • 保証金額
  • 償却率
  • 返還時期
  • 解約条件

などが変更されている可能性があります。

居抜き退去の場合の保証金

居抜きで後継テナントが決まっても、現在の借主の保証金が自動的に後継テナントへ移るとは限りません。

典型的には、

  • 現在の借主との賃貸借を終了
  • 現在の借主の保証金を精算
  • 後継テナントが貸主と新規契約
  • 後継テナントが新たな保証金を預託

という形があります。

ただし契約・取引スキームによって異なるため、貸主・管理会社へ確認します。

店舗保証金の返還前に準備する資料

  • 当初の賃貸借契約書
  • 更新契約書
  • 変更合意書
  • 保証金預り証
  • 保証金振込記録
  • 解約通知書
  • 原状回復見積書
  • 原状回復工事の支払記録
  • 貸主検査記録
  • 最終賃料等の支払記録
  • 保証金精算書

店舗保証金返還のチェックリスト

  • 保証金の預託額を確認した
  • 保証金の契約上の性質を確認した
  • 敷金的な担保金か確認した
  • 償却条項を確認した
  • 償却額・率を確認した
  • 契約満了・中途解約で条件が違わないか確認した
  • 返還時期を確認した
  • 一括・分割返還を確認した
  • 未払賃料を確認した
  • 共益費等を確認した
  • 違約金を確認した
  • 原状回復費を確認した
  • 既払い工事との重複を確認した
  • 精算明細を確認した
  • 返還予定額を計算した
  • 返還予定日を確認した

店舗保証金の返還についてよくある質問

店舗の保証金は退去すれば返ってきますか?

返還対象の保証金であれば、契約上の償却、未払債務、借主負担の原状回復費等を精算した残額が返還されるのが一般的です。ただし保証金の性質・契約条件によって異なります。

保証金と敷金は違いますか?

名称だけでは判断できません。保証金という名称でも賃料等の債務を担保する目的なら民法上の敷金に当たる場合があります。一方、保証金に別の性質が含まれる契約もあります。

保証金はいつ返ってきますか?

敷金的な部分については賃貸借終了・明渡し後の精算が基本ですが、実際の支払日は契約で明渡し後○日、○か月、分割返還などと定められている場合があります。

保証金償却とは何ですか?

契約終了時などに、預けた保証金の一定額・一定割合を借主へ返還しない取り決めです。割合・計算方法・発生条件は契約ごとに確認してください。

保証金を償却するなら原状回復費は払わなくてよいですか?

一律には言えません。保証金償却と原状回復義務が別に定められている契約もあります。契約書で両者の関係を確認してください。

原状回復費は保証金から引かれますか?

借主負担として確定した原状回復費を保証金から精算する契約があります。既に借主側で工事費を支払っている場合は重複していないか確認します。

中途解約すると保証金が多く償却されますか?

契約によります。契約期間満了と中途解約で償却率・違約金が異なる契約もあるため、解約条項と保証金条項をあわせて確認します。

保証金から最後の家賃を差し引いてもらえますか?

借主が一方的に保証金を賃料へ充当できるとは限りません。通常どおり支払い、保証金精算は契約・貸主との合意に従ってください。

保証金が返ってこない場合はどうすればよいですか?

まず明渡し完了日、契約上の返還期日、償却、未払債務、原状回復精算、分割返還条件を確認します。そのうえで貸主・管理会社へ精算明細と返還予定日の説明を求めます。

店舗保証金は「保証金」という名前だけで返還額を判断しない

店舗の保証金返還では、

  1. 保証金の性質
  2. 返還時期・方法
  3. 償却
  4. 未払債務
  5. 原状回復費
  6. 精算明細
  7. 返還予定日

を確認します。

保証金は敷金とまったく別の制度とは限らず、賃料等の債務を担保する部分については敷金としての性質を持つ場合があります。

一方、店舗契約では償却、分割返還、中途解約条件などが設定され、単純な敷金より精算が複雑になることがあります。

最終的にいくら、いつ戻るのかを確認するには、「保証金○万円」という金額だけではなく、契約書の保証金条項・解約条項・原状回復条項をまとめて読むことが重要です。

契約・退去手続き全体については、契約・退去手続きガイドをご覧ください。

敷金として契約している場合は、店舗の敷金はいつ返還される?で整理しています。

店舗閉店時の原状回復については、店舗閉店の原状回復はどこまで必要?をご覧ください。

契約書と保証金精算書を見ても、償却・原状回復・未払債務のどこまでが控除対象なのか整理できない場合は、お問い合わせから保証金額・契約条件・退去予定・現在の精算状況をご連絡ください。

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