オフィス移転を計画するとき、予算に入れ忘れやすいのが旧オフィスの原状回復費用です。
新しいオフィスの敷金、内装、家具、引越し費用は早い段階から見積もっていても、旧オフィスの原状回復費は退去直前まで具体的な金額が分からないことがあります。
そこで「原状回復は1坪いくらくらいか」と調べたくなりますが、オフィス原状回復は坪単価だけで予算を決めにくい工事です。
同じ50坪、100坪のオフィスでも、ビルのグレード、入居中に行った造作、空調・電気・防災設備の変更、指定業者の有無、夜間施工などによって総額が大きく変わります。
この記事では、オフィス原状回復費用の目安をどう考えればよいのか、何が金額を左右するのか、移転予算へどう組み込むのかを整理します。
すでに原状回復見積を受け取っている場合は、オフィス原状回復の見積はどこを見る?から確認してください。
オフィスの原状回復費用は坪単価だけでは決まらない
原状回復費用は、坪単価で紹介されることがよくあります。
予算を考える初期段階では便利ですが、坪単価だけで「このオフィスなら○万円」と確定することはできません。
公開されている相場情報を見ても、小規模オフィスでは数万円台/坪、大規模・ハイグレードビルでは10万円/坪を超える水準まで、かなり幅があります。
これは情報が間違っているというより、比較している物件・工事条件が違うためです。
例えば、同じ50坪でも次の2つでは工事量が全く異なります。
A社
オープンな執務室が中心で、入居時から大きな内装変更をしていない。
B社
会議室、役員室、受付、サーバールームを新設し、空調・照明・防災設備まで多数変更している。
面積は同じでも、B社の方が撤去・復旧するものが多くなります。
相場を見るなら「幅がある」ことを前提にする
オフィス原状回復について公開されている費用情報を見ると、小規模オフィスでは坪数万円程度から、大規模・ハイグレードビルでは10万円/坪を超える例まであります。
このため、初期予算では坪単価を一つに固定するより、
- 一般的な内装復旧だけで済むのか
- 造作撤去が多いのか
- 設備工事が多いのか
- 指定業者による工事が多いのか
を確認したうえで幅を持って考える方が現実的です。
特に、インターネットで見つけた最安値の坪単価をそのまま社内予算に使うのは避けた方がよいでしょう。
原状回復費用を左右する7つの要素
1.オフィスの広さ
当然ながら、面積が大きくなるほど工事量は増えやすくなります。
床、天井、壁など、面積に比例する工事があるためです。
ただし、面積が2倍になれば必ず費用も2倍になるわけではありません。
養生、現場管理、申請、搬出入など、面積へ単純比例しない費用もあります。
そのため、小規模オフィスでは固定的な費用の影響を受け、坪単価が必ずしも低くならない場合があります。
2.ビルのグレードと管理条件
大型・ハイグレードなオフィスビルでは、施工条件が厳しく設定されていることがあります。
例えば、
- 夜間・休日のみ施工可能
- 搬出入時間が限定される
- 貨物用エレベーターの予約が必要
- 共用部へ指定の養生が必要
- 工事申請や施工図提出が必要
- 設備停止の事前調整が必要
- ビル側の立会いが必要
といった条件です。
実際の解体や仕上げ工事だけでなく、このような施工条件へ対応する費用が加わるため、一般的な小規模ビルより高くなる場合があります。
3.入居中に行った造作の量
原状回復費用へ直接影響しやすいのが、入居後に追加した造作です。
例えば、
- 会議室
- 役員室
- 受付
- 造作収納
- ガラス間仕切り
- サーバールーム
- 防音室
などです。
これらを撤去し、床・壁・天井を復旧する必要があれば工事量が増えます。
特に、単純なパーティションだけではなく、天井まで完全に区切った部屋を多数作っているオフィスでは、設備復旧まで連動する場合があります。
4.空調・電気・防災設備の変更量
原状回復費用が大きくなりやすいのが設備工事です。
入居時の内装工事で、
- 空調吹出口
- 吸込口
- ダクト
- 照明器具
- 電源回路
- コンセント
- スプリンクラー
- 煙感知器
- セキュリティ設備
などを変更していれば、退去時に元の状態へ戻す工事が必要になる場合があります。
内装解体だけを想定していると、この設備復旧費を見落としやすくなります。
5.B工事・指定業者の範囲
オフィスビルでは、設備工事などを建物側が指定する施工会社で行う場合があります。
いわゆるB工事として、費用は借主側が負担しながら、施工会社はビル側指定という形になることがあります。
この場合、自社が一般の内装会社を複数比較して施工会社を選ぶ場合とは費用構造が異なります。
特に、
- 空調
- 電気
- 防災
- セキュリティ
などの指定工事が多いオフィスでは、B工事費を別枠で予算化しておいた方がよいでしょう。
すでに高額なB工事見積を受け取っている場合は、オフィス移転のB工事が高いときは?をご覧ください。
6.原状回復契約・特約の内容
オフィスの原状回復費を考えるうえで、工事単価以上に重要なのが契約内容です。
事業用オフィスでは、退去時の復旧について特約が設けられていることがあります。
例えば、
- 床を全面張り替える
- 壁・天井を指定仕様へ復旧する
- 借主施工の造作をすべて撤去する
- 指定施工会社を利用する
といった内容です。
同じ物件状態でも、どの状態まで戻す契約なのかによって工事範囲が変わります。
そのため、原状回復予算を作る前に賃貸借契約書と原状回復特約を確認します。
7.工期と施工時期
工事に使える時間も費用へ影響します。
例えば、解約日まで時間がなく、通常なら3週間かける工事を短期間で終わらせる必要があれば、
- 作業員を増やす
- 夜間・休日にも施工する
- 複数工種を並行して進める
必要が出る場合があります。
また、貸主検査で是正工事が必要になる可能性も考えなければなりません。
退去期限ぎりぎりに着工するほど、工程上の余裕は小さくなります。
オフィス原状回復費用の主な内訳
実際の見積では、例えば次のような費用があります。
- 間仕切り・造作撤去
- 床復旧
- 壁・天井復旧
- 電気・照明復旧
- 空調・換気工事
- 消防・防災設備工事
- セキュリティ設備復旧
- 廃棄物搬出・処分
- 養生・仮設
- クリーニング
- 現場管理費
- 諸経費
オフィスによっては、これとは別にビル指定業者からB工事見積が提出されることもあります。
そのため、内装会社から届いた見積だけを原状回復総額だと思わないようにします。
「30坪なら○万円」と単純計算しにくい理由
例えば30坪のオフィスを考えてみます。
ほとんど造作がなく、床・壁・クリーニング程度の復旧で済むオフィスと、会議室や設備変更が多数あるオフィスでは総額が変わります。
100坪の場合も同じです。
面積は大きくてもオープンなレイアウトで設備変更が少ないオフィスと、個室が多数あるオフィスでは工事内容が異なります。
したがって、
面積 × インターネットで見つけた坪単価
だけで社内予算を確定するのではなく、造作・設備・指定工事を加味します。
退去予算は「原状回復工事」だけで組まない
移転プロジェクトでは、原状回復工事費と退去全体の費用を分けて考えると管理しやすくなります。
例えば旧オフィス側では、
- 原状回復工事
- B工事・指定工事
- 家具・什器撤去
- 廃棄物処分
- 移転作業
- 二重賃料
- 解約条件に伴う費用
などが発生する可能性があります。
原状回復費が300万円だから、旧オフィスの退去費も300万円というわけではありません。
移転予算では、旧オフィスから完全に退出するまでに必要な支出をまとめて確認します。
原状回復予算を作るときの進め方
契約書を確認する
原状回復条件、指定施工会社、返還状態を確認します。
現在のオフィスを入居時と比較する
追加した間仕切り・設備・配線などを一覧にします。
工事区分表を確認する
借主側で施工会社を選べる工事と、B工事・指定工事を分けます。
概算見積を早めに取る
正式な退去直前まで待たず、移転計画段階で概算を確認します。
未確定費用を別枠で管理する
B工事、設備復旧、貸主検査後の是正など、まだ金額が確定していない項目をゼロとして扱わないようにします。
敷金・保証金があるから原状回復費を予算化しなくてよいわけではない
原状回復費用が敷金・保証金から差し引かれる契約もあります。
この場合、会社から新たに振り込む金額が少なく見えることがあります。
しかし、本来返還されるはずだった敷金等が減るため、経済的な負担がなくなるわけではありません。
原状回復費と敷金・保証金の返還見込みは別々に把握しておく方が、移転全体のキャッシュフローを確認しやすくなります。
坪単価相場は「異常値を見つける入口」として使う
坪単価情報が役に立たないわけではありません。
例えば、社内で初期予算を作るときや、提示された見積が想定から大きく離れていないかを見るときには参考になります。
ただし、相場と違った場合に、すぐ「高すぎる」「不当だ」と判断するのではなく、
- 工事範囲
- 造作量
- 設備復旧
- 指定業者
- 施工条件
の違いを確認します。
相場は最終判断ではなく、詳しく確認する必要がある案件を見つけるための入口として使います。
見積を受け取ったら相場記事から卒業する
実際の見積が届いた後は、一般的な坪単価より、自社の見積書そのものを確認する方が重要です。
見る順番は、
- 契約上必要な工事か
- 工事項目は何か
- 数量は正しいか
- 仕様は何か
- 単価には何が含まれるか
- B工事・指定工事は別途か
- 追加費用はないか
です。
詳しくはオフィス原状回復の見積はどこを見る?で解説しています。
原状回復費用が高いと感じたら何をするか
見積が予算を大きく超えている場合は、単純な値下げ交渉だけでなく、
- 原状回復範囲
- 数量
- 仕様
- 工事区分
- 相見積もり
- 第三者確認
を検討します。
原状回復費を抑える具体的な方法については、原状回復費用を抑える方法をご覧ください。
指定業者から高額な見積が届いている場合は、原状回復の指定業者が高いときは?で確認方法を整理しています。
オフィス原状回復費用についてよくある質問
オフィスの原状回復費用は坪いくらですか?
公開されている相場情報にはかなり幅があります。オフィス規模、ビルグレード、造作量、設備工事、指定業者、施工条件によって変わるため、一つの坪単価だけで確定することはできません。
30坪・50坪・100坪ならいくらかかりますか?
面積だけでは判断できません。同じ面積でも、会議室や設備変更の有無によって工事量が大きく変わります。初期予算には坪単価を参考にしつつ、造作・設備・B工事を別途確認してください。
ハイグレードビルは原状回復費も高くなりますか?
高くなる場合があります。指定業者、夜間施工、搬出入制限、指定材料、管理業務など、ビル独自の施工条件が多いことが理由の一つです。
指定業者だと原状回復費は必ず高くなりますか?
必ずとは言えません。指定業者には建物設備を熟知しているなどの理由がある場合もあります。ただし自由な価格競争が働きにくいケースはあるため、見積内容を確認することが重要です。
B工事は原状回復費に含まれますか?
物件や見積方法によります。原状回復見積に含まれる場合と、ビル指定業者から別途請求される場合があります。予算時には必ず確認してください。
原状回復費用を安くすることはできますか?
案件によります。工事範囲、数量、仕様、工事区分を確認することで見直せる場合があります。一律に何%下げられるというものではありません。
見積はいつ頃取ればよいですか?
退去期限ぎりぎりではなく、移転・退去の方針が具体化した段階から概算を確認した方が、相見積もりや工事内容の見直しに使える時間を確保できます。
オフィス原状回復費は「坪単価」より費用が増える理由を把握する
オフィスの原状回復費用を考えるとき、坪単価は初期予算の参考になります。
ただし、実際の金額を左右するのは、
- オフィスの広さ
- ビルのグレード・施工条件
- 造作量
- 空調・電気・防災設備の変更
- B工事・指定業者
- 賃貸借契約・原状回復特約
- 工期
です。
特に移転計画の初期段階では、安い坪単価だけを前提に旧オフィスの退去予算を作らないことが重要です。
契約書、工事区分表、現在のオフィスの造作・設備を確認し、できるだけ早い段階で概算見積を取ります。
すでに正式な見積が届いている場合は、相場を探し続けるより、オフィス原状回復の見積はどこを見る?で実際の見積内容を確認してください。
オフィス退去・移転全体については、オフィス退去・移転ガイドで整理しています。
まだ見積前で、旧オフィスの原状回復・B工事・設備撤去を含めてどの程度の費用を想定すればよいか整理できていない場合は、お問い合わせから現在の状況をご連絡ください。
