オフィスの原状回復費用は、「坪単価×面積」だけでは決まりません。
同じ50坪でも、契約上の返還状態、ビルグレード、パーティションやOAフロアの量、空調・電気・防災設備、指定業者の有無、夜間工事、搬出条件などによって総額は大きく変わります。
2026年の公開情報でも、オフィス原状回復の坪単価目安は記事ごとに大きく異なり、全国共通の標準単価は確認できません。一般社団法人RCAA協会が公表する査定実績では、指定業者の初回見積中央値が100坪未満で約10.3万円/坪、100〜300坪で約11.0万円/坪、300坪超で約12.3万円/坪、査定後の合意額中央値はそれぞれ約5.8万円、7.0万円、7.1万円/坪とされています。
ただし、これは全国一律の市場相場ではなく、特定団体の取扱案件データです。自社の原状回復費用は、契約・工事範囲・見積内訳で判断する必要があります。
この記事では、相場を一つの数字に固定せず、オフィスの原状回復費用を左右する7つの要素と、予算・見積を見るときの考え方を整理します。
すでに施工会社から見積を受け取っている場合は、オフィス原状回復見積の確認項目を参照してください。
オフィス原状回復費の坪単価は「参考値」として使う
退去予算を作る段階では、坪単価を使うと大まかな金額を把握できます。
一方で、2026年の公開情報を比較しても、次のようにレンジにはかなり幅があります。
| 規模 | 指定業者の初回見積中央値 | 査定後の合意額中央値 |
|---|---|---|
| 100坪未満 | 約10.3万円/坪 | 約5.8万円/坪 |
| 100坪超〜300坪 | 約11.0万円/坪 | 約7.0万円/坪 |
| 300坪超 | 約12.3万円/坪 | 約7.1万円/坪 |
上表はRCAA協会の公表資料に掲載された査定実績の中央値です。資料ページは2026年6月更新ですが、表の出典注記は「2024年10月最新版」の査定データとなっています。同協会の取扱案件に基づくものであり、全国のオフィス原状回復費用の平均値ではありません。また、初回見積と合意額の差が、自社案件でも同じ割合で縮小することを意味しません。
一方、2026年に公開・更新された他の解説記事では、小規模オフィスを坪2〜5万円程度とする例、オフィス全体を坪2〜10万円程度とする例などもあり、前提条件によって提示値が大きく異なります。
坪単価は、予算の初期仮説として使うのが適しています。
見積を受け取った後は、原状回復の総合ガイドも参照しながら、坪単価だけでなく工事項目・数量・仕様・単価・諸経費を分けて確認してください。
原状回復費用を左右する7つの要素
オフィス原状回復の金額差は、主に次の7つから生まれます。
- 契約上の原状回復範囲
- オフィスの面積
- ビルグレード・設備仕様
- 造作・パーティション・OAフロア等の量
- 空調・電気・防災等の設備工事
- 指定業者・B工事等の工事区分
- 夜間・休日・搬出・工期等の施工条件
1.契約上の原状回復範囲
費用を計算する前に、まず「どこまで戻す契約なのか」を確認します。
例えば、
- 間仕切りをすべて撤去する
- カーペットを全面張り替える
- 壁面を全面塗装する
- 照明を基準階仕様へ戻す
- OAフロア・配線を撤去する
- 空調・防災設備を復旧する
など、契約・特約によって範囲が変わります。
工事範囲が違えば、同じ面積でも費用は比較できません。
原状回復義務・範囲そのものは、原状回復の総合ガイドと自社の賃貸借契約書・原状回復仕様書を照合して確認してください。
2.オフィスの面積
面積が増えると、床・壁・天井・養生・搬出・廃棄などの数量も増えるため、総額は大きくなりやすくなります。
ただし、費用が面積に完全比例するわけではありません。
小規模オフィスでも、設備工事・夜間作業・最低施工費など固定的な費用があると坪単価が高く見えることがあります。
反対に、大規模オフィスでは数量が増える一方、工事内容が比較的単純なら単価が一定範囲に収まることもあります。
3.ビルグレードと設備仕様
ハイグレードビル・大型ビルでは、原状回復費が高くなることがあります。
主な理由は、
- 基準階仕様の要求水準が高い
- 空調・電気・防災設備が複雑
- 指定材料・指定工法がある
- 工事申請・施工管理が厳格
- 共用部養生・搬出ルールが細かい
などです。
「高層ビルだから坪○万円」と決めるのではなく、そのビルの原状回復仕様書・工事区分表を確認します。
4.パーティション・OAフロア・造作の量
オフィス内に追加した造作が多いほど、撤去・補修費も増えます。
例えば、
- 会議室の間仕切り
- ガラスパーティション
- 受付造作
- 造作家具
- OAフロア
- 床アンカー
- サイン
- 防音設備
などです。
解体費だけでなく、撤去後の床・壁・天井の補修まで見積に入っているか確認します。
間仕切りは、撤去そのものだけでなく、撤去後の床・壁・天井・防災設備等の復旧まで見積範囲に入っているか確認してください。
5.空調・電気・防災設備
原状回復費が大きくなりやすいのが、設備工事です。
内装解体だけでなく、
- 照明・電源
- 分電盤
- LAN・電話配線
- 空調
- スプリンクラー
- 感知器
- 非常照明
- セキュリティ
などの復旧が必要になることがあります。
特に間仕切り変更に伴って空調・防災設備を移設しているオフィスでは、退去時にも復旧工事が発生しやすくなります。
6.指定業者・B工事などの工事区分
オフィスビルでは、原状回復工事の全部または一部について、貸主・ビル側の指定業者で施工する契約になっていることがあります。
また、空調・電気・防災などがB工事として扱われる場合もあります。
指定業者案件では、借主が自由に相見積もりを取れないこともありますが、だからといって見積内訳を確認できないわけではありません。
少なくとも、
- 契約上、本当に指定施工が必要な範囲
- A・B・C工事の区分
- 数量
- 単価
- 管理費・諸経費
- 施工範囲の重複
を確認します。
B工事や指定業者制度の基本は、B工事の総合ガイドで確認してください。
7.夜間・休日・搬出・工期などの施工条件
同じ工事内容でも施工条件によって費用は変わります。
例えば、
- 夜間工事のみ
- 土日・祝日施工
- 搬出用エレベーターの使用時間制限
- 共用部の厳格な養生
- 都心部での車両制限
- 短工期
- 複数業者間の工程調整
などです。
退去期限直前に発注すると、通常工期で施工できず、夜間・休日・増員対応などで費用が上がる可能性があります。
原状回復費の見積は何に分かれている?
一般的な見積では、次のような項目が並びます。
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 仮設・養生 | 共用部、床、EV等の保護 |
| 解体・撤去 | 間仕切り、造作、家具、配線等 |
| 内装復旧 | 床、壁、天井、塗装等 |
| 設備復旧 | 電気、空調、防災、通信等 |
| 廃棄・搬出 | 解体材、残置物等 |
| 清掃 | 最終クリーニング |
| 管理・諸経費 | 現場管理、調整、申請等 |
見積総額だけを見ると、どこが高いのか分かりません。
「一式」項目が多い場合は、数量や対象範囲を確認します。
50坪・100坪の予算はどう考える?
坪単価を使った簡易計算は、次のように考えます。
原状回復の初期予算 = 賃貸面積 × 参考坪単価
ただし、この計算だけで発注予算を決めないでください。
例えば50坪でも、坪5万円なら250万円、坪10万円なら500万円です。100坪なら同じ単価差でも500万円と1,000万円になります。
坪単価が数万円違うだけで総額差は大きくなるため、面積が大きいほど単価ではなく工事範囲と内訳確認が重要になります。
原状回復費が高いと感じたら最初に確認すること
見積が予算より高かった場合、すぐに「値下げできますか」と交渉する前に、次の順番で確認します。
- 契約上必要な工事か
- 原状回復範囲が貸主と合意できているか
- 数量が現況と合っているか
- 仕様が基準階仕様と合っているか
- B工事・指定工事との重複がないか
- 単価・管理費・諸経費の構成
- 退去期限までの工期
見積が高いと感じた場合も、総額だけで値下げ交渉へ進まず、原状回復の総合ガイドを起点に契約範囲・数量・仕様・工事区分を先に確認してください。
「相見積もりできない=比較できない」ではない
指定業者施工の契約では、他社へそのまま発注できない場合があります。
その場合でも、
- 参考見積を取る
- 数量を検算する
- 単価水準を確認する
- 不要・重複工事がないか確認する
- 貸主へ仕様・範囲を確認する
ことで、見積の妥当性を検討できます。
ただし、第三者見積との差額があるだけで、指定業者見積が直ちに不当とはいえません。工事条件・管理体制・保証範囲が違う場合があるため、同じ条件で比較します。
費用を抑えるなら「工事範囲確定」が先
原状回復費を抑えたい場合、最初に行うのは値下げ交渉ではありません。
まず、契約上必要な工事と不要な工事を切り分けます。
そのうえで、
- 数量・仕様の確認
- 再利用・残置できる設備の確認
- 不要什器の買取
- 工程整理
- 見積内訳精査
を順に確認します。
原状回復予算には是正工事の余白も入れる
原状回復工事が終わった後、貸主・管理会社の検査で追加の是正を求められることがあります。
契約終了日ぎりぎりに工事を終えると、追加対応が夜間・休日工事になったり、明渡しが遅れたりするリスクがあります。
予算だけでなく、工程にも予備日を持たせてください。
敷金・保証金の精算と、原状回復費の支払時期は分けて考える
原状回復費が敷金・保証金から控除される契約でも、工事費の負担がなくなるわけではありません。返還される金額が少なくなるためです。
一方、施工業者への支払いが先で、保証金の返還が退去後になる場合もあります。工事代金の支払予定日、保証金の返還予定日、控除される費目を別々に確認してください。
旧オフィス側の賃料・違約金・搬出・処分費まで含めた資金計画は、オフィス退去費用の総額で整理しています。
オフィス原状回復費用FAQ
オフィスの原状回復費用は坪いくらですか?
2026年の公開情報では、小規模オフィスを坪2〜5万円程度とする例や、オフィス全体を坪2〜10万円程度とする例などがあり、提示レンジは大きく分かれています。全国一律の相場ではないため、契約・工事範囲・設備・施工条件と実際の見積で判断してください。
坪10万円なら高いですか?
坪単価だけでは判断できません。RCAA協会が公表する査定実績では、指定業者の初回見積中央値は規模別に約10.3万〜12.3万円/坪ですが、これは同協会の取扱案件データです。自社案件では、契約上の工事範囲と見積内訳を確認してください。
指定業者だと高くなりますか?
指定業者案件では競争見積が難しく、ビル側管理費や指定仕様等が加わる場合があります。ただし、指定業者だから必ず不当に高いとは限りません。契約・工事区分・見積内訳を確認します。
B工事も原状回復費に含まれますか?
物件によります。空調・電気・防災などの復旧がB工事として別建てになる場合があります。工事区分表を確認してください。
見積が高ければ別業者へ変更できますか?
契約上、指定業者施工が義務付けられている範囲では自由に変更できない場合があります。契約と指定範囲を確認したうえで対応します。
原状回復費は敷金から払えますか?
精算方法は契約によります。敷金・保証金から原状回復費等が控除される場合もありますが、工事代金の支払時期と返還時期がずれることがあります。資金繰りでは別に管理してください。
いつ見積を取ればよいですか?
移転・退去が決まった段階で早めに現地調査と見積を行います。明渡し直前では、工事範囲の確認や見積精査、工程調整の時間が足りなくなる可能性があります。
原状回復費は「坪単価」より7つの条件で見る
オフィスの原状回復費用は、坪単価だけで高い・安いを判断すると誤りやすくなります。
契約範囲 → 面積 → ビルグレード → 造作量 → 設備工事 → 指定業者/B工事 → 施工条件
の7つに分けて確認してください。
初期予算では坪単価を使い、見積受領後は数量・仕様・工事項目・管理費まで分解するのが実務的です。
原状回復全体の考え方は原状回復の総合ガイド、旧オフィス側の退去総額はオフィス退去費用、新オフィス側まで含む予算はオフィス移転費用もあわせて確認してください。
指定業者の見積が高い、B工事と原状回復の区分が分かりにくい、発注前に予算の妥当性を整理したい場合は、お問い合わせから相談できます。
