オフィス移転を外部へ依頼しようとすると、「引越し会社」「オフィス移転会社」「内装会社」「PM会社」など、さまざまな会社が見つかります。
さらに、会社によって対応範囲も違います。
例えば、荷物の運搬だけを行う会社もあれば、
- レイアウト設計
- 内装工事
- オフィス家具
- 電話・ネットワーク
- 引越し
- 旧オフィスの原状回復
- 不要什器の買取・処分
まで一括で管理する会社もあります。
そのため、オフィス移転業者を比較するときは、見積総額だけを並べても正しく判断できません。
最初に「自社は移転業務のどこまでを外部へ任せたいのか」を決め、その範囲が同じ会社同士で比較することが重要です。
この記事では、オフィス移転業者の種類、一括発注と分離発注の違い、業者を比較するときに確認したい8項目を整理します。
オフィス退去・移転全体の流れについては、オフィス退去・移転ガイドをご覧ください。
オフィス移転業者は「何を依頼する会社か」で分ける
「オフィス移転業者」という言葉は、必ずしも一種類の会社を指すわけではありません。
代表的には、次のような会社があります。
引越し・運送会社
主に、
- 荷造り
- 什器搬出
- 運搬
- 新オフィスへの搬入
- 家具の配置
などを担当します。
新旧オフィスの設計や工事管理を自社で行える場合は、運搬部分だけを引越し会社へ依頼する方法があります。
オフィス移転専門会社
引越しだけでなく、
- 移転計画
- レイアウト
- 内装
- 家具
- IT
- 引越し
などをまとめて支援する会社です。
会社によっては旧オフィスの原状回復や不要什器の処分まで対応します。
オフィス内装・設計会社
新オフィスのレイアウト・デザイン・内装工事を中心に担当します。
移転作業やIT工事は協力会社と連携する場合があります。
PM・プロジェクトマネジメント会社
移転工事を直接すべて施工するのではなく、発注者側に立って、
- 全体予算
- 工程
- 施工会社
- B工事
- 原状回復
- 引越し
などを管理します。
規模が大きい移転や、B工事・指定業者工事が複雑な案件で選択肢になります。
「引越し会社」と「オフィス移転会社」は同じではない
例えば、従業員20人のオフィスで、
- 新オフィスのレイアウトは社内で決める
- 家具は既存品を使う
- 内装工事はほとんどない
- ネットワークは既存IT会社が対応する
のであれば、引越し・運搬を中心に依頼するだけで済む場合があります。
一方、
- 100人以上が移転する
- レイアウトを全面変更する
- 会議室を増設する
- 電話・ネットワークを再構築する
- B工事が多い
- 旧オフィスの原状回復も同時に進める
のであれば、運搬会社だけでは移転プロジェクト全体を管理しにくくなります。
最初に決めるのは「一括発注」か「分離発注」か
移転会社を比較する前に、自社がどの発注方法を取るか考えます。
一括発注・ワンストップ
一社を窓口として、移転プロジェクトの多くをまとめて依頼する方法です。
例えば、
- レイアウト
- 内装
- 家具
- IT
- 引越し
- 廃棄
- 原状回復調整
を一つの会社が管理します。
分離発注
業務ごとに別会社へ直接依頼する方法です。
例えば、
- 内装:A社
- 引越し:B社
- IT:C社
- 家具:D社
- 原状回復:E社
という形です。
一括発注のメリット
社内担当者の調整負担を減らしやすい
オフィス移転では複数の会社の工程が連動します。
例えば、
内装工事完了 → 家具搬入 → ネットワーク工事 → 引越し
という順番があります。
一社が全体工程を管理すれば、社内担当者が各会社のスケジュールを個別に調整する負担を減らせます。
責任窓口を一本化しやすい
移転中に問題が起きたとき、誰へ連絡するかが明確になります。
例えば、
「家具が予定日に入らないので引越し日を変更する必要がある」
といった問題でも、PM担当者が各社を調整できる体制なら対応しやすくなります。
工程の抜け漏れを抑えやすい
初めてオフィス移転を担当する場合、
- ビル工事申請
- B工事
- 電話回線
- サーバー移設
- 不要什器処分
- 原状回復
などが後から判明することがあります。
移転全体を扱う会社であれば、必要工程を早い段階で整理しやすくなります。
一括発注のデメリット
すべてを自社施工しているとは限らない
「ワンストップ対応」と書かれていても、その会社が、
- 引越し
- 内装
- IT
- 廃棄
- 原状回復
のすべてを自社スタッフで行うとは限りません。
専門会社へ再委託・協力会社発注している場合があります。
それ自体が問題なのではなく、
- どこまでが自社
- どこからが協力会社
- 契約相手は誰か
- トラブル時の責任窓口は誰か
を確認することが重要です。
管理費が上乗せされる場合がある
複数業者を管理するPM・調整業務には費用がかかります。
そのため、各専門会社へ直接発注した合計額より、一括発注の総額が高くなるケースがあります。
ただし、社内担当者の工数や工程ミスのリスクも含めて比較する必要があります。
分離発注のメリット
専門会社を個別に選べる
例えば、
- 内装はデザインに強い会社
- ITは現在の保守会社
- 引越しは法人移転に強い会社
- 家具はメーカーと直接契約
という選び方ができます。
価格構造を把握しやすい
各業務を直接発注すれば、
- 内装費
- 家具費
- IT費
- 運搬費
などを個別に比較できます。
中間管理費を抑えられる場合もあります。
分離発注のデメリット
社内側でPMが必要になる
会社を分けるほど、工程調整は発注者側の仕事になります。
例えば、内装工事が2日遅れれば、
- 家具搬入
- ネットワーク工事
- 引越し
も変更する必要が出る可能性があります。
責任の境界でトラブルになりやすい
例えば、
「LAN配線が予定位置へ出ていない」
という問題が起きたとき、
- 内装会社の図面ミスか
- IT会社の施工ミスか
- 発注者の指示不足か
が分かりにくくなる場合があります。
分離発注では責任分界を明確にします。
一括発注が向いている会社
例えば、次のような会社です。
- 社内に移転経験者がいない
- 総務担当者が通常業務と兼任する
- 移転規模が大きい
- 内装・IT・家具の変更が多い
- 移転期限が厳しい
- ビル側工事との調整が多い
分離発注が向いている会社
例えば、
- 社内に施設管理・移転経験者がいる
- 既存のIT・内装会社を使いたい
- 専門分野ごとに相見積もりしたい
- 移転規模が小さい
- 社内で工程を管理できる
会社です。
オフィス移転業者を比較する8項目
- 対応範囲
- プロジェクト管理体制
- 新オフィスの内装・B工事対応
- 旧オフィスの原状回復対応
- IT・電話・ネットワーク対応
- 引越し・運送・補償体制
- 不要什器・OA機器の買取・廃棄対応
- 見積範囲・追加費用・総額
1.対応範囲を比較する
まず各社が何を行うのか一覧にします。
例えば、
- 移転計画
- 物件選定支援
- レイアウト
- 設計
- 内装
- 家具
- IT
- 電話
- 引越し
- 廃棄
- 原状回復
です。
「ワンストップ対応」という言葉だけでなく、個別項目を確認します。
2.プロジェクト管理体制を比較する
一括発注では、会社名より担当PMの体制が重要になることがあります。
確認したいのは、
- 専任PMが付くか
- 窓口は一人か
- 工程表を作成するか
- 定例会を行うか
- 協力会社を誰が管理するか
- トラブル時の責任者は誰か
です。
自社側の担当者が何をする必要があるか聞く
「全部お任せできます」と言われても、実際には発注者側で、
- ビル申請
- IT会社への連絡
- 家具手配
などが必要な場合があります。
契約前に、発注者側のタスク一覧も確認します。
3.新オフィスの内装・B工事対応を比較する
新しいオフィスでは、借主が自由に発注できる工事だけとは限りません。
例えば、
- 空調
- 防災
- 電気幹線
- 天井設備
など、ビル側指定業者が施工する工事が発生する場合があります。
移転会社が「内装一式対応」としていても、B工事そのものを自由に発注できるわけではありません。
確認したいのは、
- B工事とC工事の整理ができるか
- B工事見積を工程・予算へ反映できるか
- 指定業者と調整できるか
- 工事区分表を確認するか
です。
B工事については、B工事ガイドをご覧ください。
4.旧オフィスの原状回復対応を比較する
オフィス移転は、新しいオフィスへ荷物を運べば終了ではありません。
旧オフィスを契約どおり返却する必要があります。
移転会社が原状回復も扱う場合は、
- 契約書確認
- 原状回復範囲確認
- 指定業者確認
- 見積確認
- 工程管理
- 貸主検査対応
のどこまで行うか確認します。
単に「原状回復業者を紹介します」というサービスと、借主側で工事範囲・費用を管理するPMサービスでは役割が違います。
原状回復見積については、オフィス原状回復の見積はどこを見る?をご覧ください。
5.IT・電話・ネットワーク対応を比較する
オフィス移転で業務停止につながりやすいのがITです。
例えば、
- インターネット回線
- 社内LAN
- Wi-Fi
- 電話
- 複合機
- サーバー
- セキュリティ
があります。
移転会社がIT対応を掲げている場合は、
- 自社IT部門が施工するのか
- 専門会社へ委託するのか
- 現在のIT会社を使えるのか
- 移転当日の立会いがあるか
を確認します。
6.引越し・運送・補償体制を確認する
オフィス移転では、
- PC
- モニター
- サーバー
- 複合機
- 家具
- 書類
などを運びます。
移転会社がPM会社や内装会社の場合、実際の運送を別の運送会社が担当することがあります。
確認するのは、
- 実際に運搬する会社
- 運送契約の相手
- 破損・紛失時の補償
- 保険
- 高額機器の扱い
- 機密書類・機器の管理方法
です。
法人移転の契約条件を確認する
事業所移転では、家庭の引越しと契約条件が同じとは限りません。
見積書・運送契約・補償条件を確認し、破損時にどこまで補償されるのか明確にします。
7.不要什器・OA機器の買取・廃棄対応を比較する
移転時には、新オフィスへ持っていかない物が発生します。
例えば、
- デスク
- チェア
- キャビネット
- 複合機
- モニター
- サーバー
- 家電
です。
すべて廃棄する前に、買取・リユースできるものを分けます。
移転会社が「不要品処分」まで対応する場合も、
- 買取査定を行うのか
- 廃棄だけなのか
- 処分費はいくらか
- どの会社が実際に処理するのか
を確認します。
設備・什器買取については、設備・什器買取ガイドをご覧ください。
8.見積範囲・追加費用・総額を比較する
オフィス移転会社の見積を比較するときは、総額だけを見ません。
例えば、
A社:800万円
B社:700万円
でも、B社には、
- B工事
- 旧オフィス原状回復
- IT工事
- 什器廃棄
が含まれていなければ、実際の移転総額はA社より高くなる可能性があります。
見積を同じカテゴリーへ組み替える
比較するときは、
- PM・設計費
- 内装工事
- B工事
- 家具
- IT
- 引越し
- 原状回復
- 撤去・廃棄
- 管理費・諸経費
へ分けます。
各社がどこまで含んでいるかを揃えて比較します。
追加費用になる条件も確認する
例えば、
- 夜間・休日作業
- 工期変更
- 家具数量変更
- 移転物量増加
- B工事追加
- 原状回復追加
などが別途になることがあります。
「基本見積が安い会社」ではなく、変更を含めた最終支払額を想定します。
何社くらい比較すればよい?
社数を増やすこと自体が目的ではありません。
重要なのは、同じ条件で複数社を比較できることです。
例えば3社へ依頼しても、
- A社:引越しだけ
- B社:内装+引越し
- C社:移転PM+原状回復まで
なら、総額を直接比較できません。
まず自社の依頼範囲を決め、それに対応できる会社同士を比較します。
相見積もりでは「同じRFP・依頼条件」を渡す
中規模以上の移転なら、各社へ渡す条件を整理します。
例えば、
- 現オフィス面積
- 新オフィス面積
- 従業員数
- 移転予定日
- 既存家具の使用割合
- 必要な会議室
- 内装要件
- IT要件
- 原状回復条件
- 任せたい業務範囲
です。
同じ情報を渡すことで、見積と提案内容を比較しやすくなります。
提案書では「安さ」より抜け漏れを見る
比較時には、
- 何が提案されているか
- 何が提案されていないか
- 誰が担当するか
- いつ実施するか
- 別料金になるものは何か
を確認します。
特にB工事・旧オフィス原状回復・ITは後から高額になりやすいため、初期段階で扱いを確認します。
「おすすめランキング」だけで業者を決めない
オフィス移転会社には、それぞれ得意分野があります。
例えば、
- 数十人規模の小規模移転
- 数百人規模の大型移転
- デザインオフィス
- ITインフラ
- 全国拠点移転
- 高層ビル・大規模ビル
などです。
他社にとって評価の高い会社でも、自社の規模・案件条件に最適とは限りません。
実績は「自社と近い案件」を見る
実績確認では件数だけでなく、
- 従業員規模
- 床面積
- 業種
- ビルグレード
- 移転内容
が自社と近い事例を確認します。
特に、原状回復やB工事まで任せたい場合は、それらを含めた案件実績があるか確認します。
担当者との相性も重要
オフィス移転は数か月以上にわたることがあります。
その間、担当者と何度も、
- 予算
- 工程
- 仕様
- 社内変更
を調整します。
会社のブランドだけでなく、実際のPM担当者が、
- 質問へ明確に回答するか
- 変更履歴を管理できるか
- リスクを事前に伝えるか
- レスポンスが適切か
も確認します。
オフィス移転業者の比較チェックリスト
- 依頼したい業務範囲を決めた
- 一括発注・分離発注のどちらにするか検討した
- 専任PMの有無を確認した
- 自社施工と協力会社施工を確認した
- B工事の調整範囲を確認した
- 旧オフィス原状回復への対応を確認した
- IT・電話対応範囲を確認した
- 実際の運送会社を確認した
- 運送時の補償内容を確認した
- 不要什器の買取・処分方法を確認した
- 同じ条件で見積を比較した
- 追加費用条件を確認した
- 工期を比較した
- 類似規模の実績を確認した
- 実際の担当PMを確認した
オフィス移転業者の比較についてよくある質問
オフィス移転は引越し業者だけに頼んでもよいですか?
運搬中心の小規模移転で、内装・IT・原状回復などを自社で管理できるなら選択肢になります。一方、工事やIT変更が多い場合は、全体管理を誰が行うか決める必要があります。
ワンストップ会社へ全部任せた方が安いですか?
必ずしも安いとは限りません。管理費等が含まれることがあります。一方で、社内調整工数や工程ミスを減らせるため、総合的には合理的になる案件もあります。
分離発注なら安くなりますか?
専門会社へ直接発注することで価格を抑えられる可能性がありますが、発注者側のPM工数や工程調整が増えます。調整不足による追加費用まで含めて判断します。
B工事も移転会社へまとめて依頼できますか?
B工事はビル側指定業者が施工することがあり、移転会社へ自由に発注できるとは限りません。移転会社には、B工事そのものではなく見積・工程・指定業者との調整を依頼する形になる場合があります。
旧オフィスの原状回復も同じ会社へ頼んだ方がよいですか?
移転工程と原状回復を一体管理できるメリットがあります。一方、契約で原状回復業者が指定されている場合もあるため、先に賃貸借契約と貸主条件を確認してください。
オフィス移転業者は何社比較すればよいですか?
社数よりも、同じ依頼範囲・条件で比較できることが重要です。対応範囲が違う会社の総額だけを比べないようにしてください。
一番安い会社を選んでもよいですか?
安い理由を確認します。B工事、原状回復、IT、廃棄、夜間作業などが見積外なら、最終総額が高くなる可能性があります。
協力会社への再委託がある会社は避けた方がよいですか?
再委託そのものだけで判断する必要はありません。専門会社を使うのは一般的な方法です。重要なのは、誰が実際に作業し、契約・品質・補償について誰が責任を持つかが明確かどうかです。
オフィス移転業者は「移転総額と管理範囲」で比較する
オフィス移転会社を比較するときは、引越し料金だけを見るのではありません。
確認したいのは、
- 対応範囲
- PM・工程管理
- 内装・B工事
- 旧オフィス原状回復
- IT・電話
- 運搬・補償
- 什器買取・廃棄
- 見積・追加費用
です。
そのうえで、
自社が複数業者を管理できるなら分離発注、通常業務と並行して全体管理する余力が少ないなら一括発注
という考え方を基本にします。
ただし、B工事や指定業者による原状回復など、移転会社へ一括発注できない工事もあります。
「ワンストップだから全部任せられる」と考えるのではなく、契約・工事区分・責任範囲まで確認したうえで会社を比較してください。
オフィス退去・移転全体については、オフィス退去・移転ガイドをご覧ください。
旧オフィスの解約時期については、オフィスの解約予告は何か月前?で整理しています。
原状回復の見積については、オフィス原状回復の見積はどこを見る?をご覧ください。
移転会社から複数の提案を受けているものの、対応範囲・B工事・原状回復・IT・引越し費がバラバラで比較できない場合は、お問い合わせから移転規模・現在地・移転時期をご連絡ください。
