クリニック閉院時に必要な届出は?保健所・厚生局・X線・麻薬の手続きを整理

クリニックや診療所を閉院するときは、賃貸借契約を終了して医療機器を撤去するだけではありません。

医療法上の診療所廃止届、保険医療機関の廃止届、診療用エックス線装置、麻薬関係、各種指定医療機関など、複数の行政手続きが関係する場合があります。

さらに、閉院後も診療録を保存する必要があるため、物件を明け渡す前に記録の保管場所まで決めておく必要があります。

閉院日を決めたら、「医療機関そのもの」「保険診療」「医療機器」「薬剤・免許」「各種指定」「診療記録」に分けて手続きを棚卸しすると漏れを防ぎやすくなります。

目次

クリニック閉院は「保健所へ1枚出して終わり」ではない

一般的な診療所では、少なくとも次の確認が必要です。

  • 医療法上の診療所廃止届
  • 保険医療機関の廃止届
  • 診療用エックス線装置等の廃止届
  • 麻薬施用者・麻薬管理者等の手続き
  • 各種指定医療機関の廃止・辞退手続き
  • 診療録等の保存
  • 医療法人の場合の法人手続き

すべてのクリニックに全項目が必要という意味ではありません。

自院が取得している許可、指定、免許、設置設備を確認し、該当するものだけを処理します。

まず「休止」か「廃止」かを決める

一時的に診療を停止し、同じ診療所を再開する予定なら「休止」が該当する場合があります。

一方、その診療所で今後診療を行わないのであれば「廃止」の手続きを検討します。

物件の建て替えなどで短期間だけ診療しないケースと、完全に閉院するケースでは扱いが異なるため、届出前に区別してください。

診療所を廃止したら医療法上の廃止届を提出する

診療所を廃止した場合は、医療法に基づく廃止届が必要です。

医療法では、病院・診療所・助産所等を廃止した場合、廃止後10日以内の届出が定められています。

実際の提出先や添付書類は所在地の自治体・保健所の案内を確認します。

東京都では診療所の廃止後10日以内が基本

東京都の現行案内でも、診療所・歯科診療所を廃止した場合は廃止後10日以内の届出となっています。

東京都内でも保健所によって、

  • 提出部数
  • 開設届副本の添付
  • 法人開設時の開設許可書
  • 本人確認
  • 代理人・委任状
  • 郵送可否

などの実務が異なる場合があります。

全国の記事としては「10日以内」という法定期限を押さえつつ、具体的な提出方法は所在地を管轄する保健所へ確認するのが安全です。

開設者が死亡した場合は通常の廃止届と異なる

個人開設の診療所で、開設者本人が死亡したことにより診療所を終了する場合は注意が必要です。

通常の「開設者が診療所を廃止した」という手続きではなく、開設者死亡・失そうに関する別の届出が必要になる場合があります。

相続人や事務担当者が自己判断で通常の廃止届を提出せず、管轄保健所へ事情を伝えて確認してください。

保険診療をしているなら地方厚生局への廃止届も別に必要

保険医療機関として指定されているクリニックでは、保健所への診療所廃止届とは別に、保険医療機関の廃止手続きがあります。

提出先は、所在地を管轄する地方厚生局・地方厚生支局等です。

「保健所へ診療所廃止届を出したので保険医療機関の指定も自動的に終了する」と考えないようにします。

保健所と地方厚生局は手続きの目的が違う

手続き 主な提出先 対象
診療所廃止届 保健所・自治体 医療法上の診療所
保険医療機関廃止届 地方厚生局等 保険医療機関指定

レセプト請求や廃止月の診療報酬処理についても、事務担当者・請求システム会社等と日程を合わせておきます。

診療用エックス線装置があるなら廃止届を確認する

内科、整形外科、歯科などでは、診療用エックス線装置を設置していることがあります。

診療所自体を廃止しても、エックス線装置の手続きが自動的に完了するとは限りません。

東京都では、診療用エックス線装置を廃止した場合、廃止後10日以内の廃止届が案内されています。

CT、一般撮影装置、歯科用装置などを使用しているクリニックでは、設備の種類と過去の届出を確認してください。

放射線機器は「廃棄業者へ渡せば終わり」ではない

医療機器の搬出・売却・廃棄と、行政上の装置廃止届は別の作業です。

閉院時は、

  1. 設置している放射線機器を確認する
  2. 過去の備付届・変更届を確認する
  3. 管轄保健所へ必要な廃止届を確認する
  4. 医療機器業者と搬出方法を調整する
  5. 必要な行政手続きを完了する

という順番で整理します。

X線室を解体する前に行政手続きを確認する

原状回復工事では、X線室の鉛入り壁材、扉、設備等を撤去する場合があります。

設備の届出状況を確認する前に内装を解体すると、装置や施設情報の確認が難しくなることがあります。

医療機器撤去と内装解体の順序は、クリニックの内装解体もあわせて確認してください。

麻薬施用者・麻薬管理者がいるクリニックは別手続きがある

疼痛管理などで医療用麻薬を扱っているクリニックでは、麻薬関係の免許・届出も確認します。

麻薬施用者や麻薬管理者等が麻薬に関する業務を廃止する場合は、業務廃止届が必要です。

東京都では、業務廃止後15日以内の届出を案内しています。

麻薬取扱者免許証も確認する

麻薬業務廃止届では、麻薬取扱者免許証の原本を添付する手続きがあります。

閉院の片付け中に免許証を廃棄・紛失しないよう、医療関連の許可証・免許証は一般書類と分けて保管しておきます。

麻薬の在庫が残っている場合はさらに手続きが増える

麻薬施用者が一人もいなくなるなど、診療施設が麻薬診療施設でなくなる場合は、所有している麻薬について別途届出等が必要になることがあります。

閉院日直前になって麻薬在庫の処理を始めるのではなく、事前に薬務担当窓口へ確認してください。

麻薬は一般医薬品や医療廃棄物と同じ判断で処分しないよう注意します。

生活保護などの指定医療機関も確認する

クリニックによっては、保険医療機関指定以外にも、行政上の指定を受けています。

たとえば、

  • 生活保護法指定医療機関
  • 各種公費負担医療の指定
  • 被爆者一般疾病医療機関
  • 自治体独自の指定・委託

などです。

閉院時には「開院時にどの指定申請をしたか」を確認し、それぞれ廃止・休止・辞退等の手続きが必要か調べます。

生活保護法指定医療機関は保険医療機関とは別の指定

生活保護法による指定医療機関の手続きも、保険医療機関の指定とは制度上別です。

自治体によっては、保険医療機関関連手続きと同時に行える仕組みが用意されている場合もありますが、「自動的に全部消える」と考えず確認します。

閉院してもカルテはすぐ廃棄できない

物件の明け渡しで特に注意したいのが診療録です。

医師法では診療録について5年間の保存義務が定められています。

したがって、閉院したからといって紙カルテを一括廃棄したり、電子カルテのサーバー契約をその場で終了したりできるとは限りません。

閉院後の診療録保管場所を先に決める

退去前に、

  • 紙カルテをどこで保管するか
  • 電子カルテをどう閲覧できる状態にするか
  • クラウド型電子カルテの契約をどうするか
  • バックアップをどう保持するか
  • 患者から照会があった場合の連絡先
  • 個人情報を誰が管理するか

を決めます。

「物件を空にすること」と「診療記録を消すこと」は全く別です。

電子カルテのベンダー契約を先に解約しない

電子カルテをクラウドサービスで利用している場合、サービス解約後に過去の診療データへアクセスできなくなる可能性があります。

契約終了前に、

  • データを閲覧できる期間
  • データエクスポート方法
  • 保管形式
  • 解約後の閲覧方法
  • 追加費用

をベンダーへ確認してください。

レントゲン画像や検査データも保管方法を確認する

患者情報は紙カルテだけではありません。

PACS、検査システム、画像サーバーなどに医療情報が保存されている場合は、閉院後の保存・閲覧方法を確認します。

各記録の法定保存期間は種類によって異なるため、すべてを「5年」と一括処理せず、記録ごとに確認してください。

患者への閉院案内と診療継続への対応も準備する

行政届出とは別に、患者が継続して治療を受けられるよう閉院案内を準備します。

必要に応じて、

  • 最終診療日
  • 閉院日
  • 紹介先
  • 診療情報提供書の依頼方法
  • 閉院後の問い合わせ先

などを案内します。

慢性疾患などで継続治療中の患者が多い場合は、十分な周知期間を確保する方が実務上安全です。

医療機器の所有者を確認する

閉院時には、診察台、超音波装置、内視鏡、X線装置、検査機器など大量の医療機器を処分する場合があります。

ただし、

  • 購入品
  • リース品
  • レンタル品
  • メーカー貸与品

が混在している可能性があります。

自社所有でない機器を、不要品として売却・廃棄しないよう契約を確認します。

医療機器の搬出と原状回復を連動させる

大型医療機器には電源、給排水、医療ガス、壁面固定、床補強などが関係する場合があります。

機器搬出後に、

  • アンカー跡
  • 配管
  • 専用電源
  • 遮蔽設備
  • 造作

の撤去・補修が必要になる可能性があります。

原状回復工事を先に始めず、医療機器撤去業者と施工会社で工程を合わせます。

医療法人が診療所を閉じる場合は法人手続きも確認する

医療法人が開設する診療所では、診療所廃止届だけではなく法人側の手続きが必要になる場合があります。

医療法人の定款・寄附行為には、法人が開設する診療所等が記載されています。

そのため診療所を廃止すると、定款・寄附行為の変更認可、登記、その後の届出等が関係する場合があります。

診療所を閉じることと医療法人を解散することは同じではない

医療法人が複数の診療所や事業を運営している場合、一つの診療所を閉じても法人自体は存続することがあります。

反対に、その診療所が法人の唯一の事業で、法人自体も終了するなら、医療法人の解散手続きが別途必要になる可能性があります。

「診療所廃止届を出せば法人も消滅する」と考えないよう注意してください。

医療法人は閉院を決める前に所管庁へ相談する

定款変更認可や医療法人の解散には、診療所の廃止届より長い準備期間が必要になる場合があります。

医療法人の場合は、物件の解約日を決めてから行政手続きを調べるのではなく、早い段階で都道府県等の医療法人担当へ相談した方が安全です。

消防関係の届出も別に確認する

診療所もテナントとして建物を使用しているため、防火管理者や消防設備、危険物等の消防手続きが関係することがあります。

消防関係は店舗閉店時の消防署への届出で整理しています。

医療法上の閉院届を提出したからといって、消防関係の手続きが自動終了するわけではありません。

閉院時は行政手続きと物件退去を一つの工程表にする

クリニック閉院では、行政手続きと不動産退去を別々の担当者が進めると漏れが生じやすくなります。

工程表には、

  • 最終診療日
  • 閉院日
  • 診療所廃止届
  • 保険医療機関廃止届
  • 患者への案内
  • 診療録移管・保管
  • X線等の設備手続き
  • 麻薬等の手続き
  • 医療機器搬出
  • 各種指定の終了
  • 原状回復工事
  • 完了検査
  • 物件明け渡し

をまとめます。

医療機器を全部搬出する前に届出一覧を作る

閉院を急ぐと、先に業者へ機器撤去を発注しがちです。

しかし、届出対象設備の型式や台数を確認する必要がある場合があります。

行政手続きの対象設備を確認してから搬出すると、後で資料を探し直す手間を減らせます。

クリニック閉院時の届出チェックリスト

  • 閉院日を確定した
  • 休止ではなく廃止でよいか確認した
  • 管轄保健所を確認した
  • 診療所廃止届を準備した
  • 開設届・開設許可書等を確認した
  • 保険医療機関廃止届を確認した
  • 管轄地方厚生局を確認した
  • X線・放射線設備の届出を確認した
  • 麻薬施用者・麻薬管理者の有無を確認した
  • 麻薬在庫を確認した
  • 各種指定医療機関を一覧化した
  • 診療録の保管先を決めた
  • 電子カルテの解約後閲覧方法を確認した
  • 患者への閉院案内を準備した
  • 医療機器の所有者を確認した
  • 医療法人の定款・登記手続きを確認した
  • 消防関係を確認した
  • 原状回復・明け渡し日程を確定した

クリニック閉院時の届出でよくある質問

診療所を閉院したら廃止届はいつまでですか?

医療法では、診療所を廃止した場合は廃止後10日以内の届出が定められています。実際の様式・添付書類・提出方法は所在地の保健所等へ確認してください。

保健所へ廃止届を出せば地方厚生局への届出は不要ですか?

別の手続きです。保険医療機関として指定されている場合は、保険医療機関の廃止について地方厚生局等への届出を確認してください。

レントゲンを置いているクリニックは別の届出が必要ですか?

診療用エックス線装置等には個別の廃止届があります。東京都では、エックス線装置廃止後10日以内の届出が案内されています。

麻薬施用者免許は閉院時にどうなりますか?

麻薬業務を廃止した場合は業務廃止届が必要です。東京都では業務廃止後15日以内とされており、免許証原本の提出も必要です。

麻薬が残っていたら廃棄業者へ渡してよいですか?

自己判断で一般の廃棄物として処理しないでください。麻薬診療施設でなくなる場合は、所有麻薬の届出や廃棄・譲渡に関する手続きが関係します。

閉院後カルテは捨ててもよいですか?

診療録には法定保存期間があります。医師法上、診療録は5年間保存する必要があるため、閉院後の保管場所を確保してください。

電子カルテなら閉院日にサービスを解約できますか?

過去データへのアクセスが失われる可能性があります。法定保存期間中に閲覧・提供できる状態を確保できるか、ベンダーへ確認してから契約終了を判断してください。

医療法人の診療所を閉じたら法人も解散しますか?

必ずしもそうではありません。診療所廃止と医療法人解散は別の手続きです。法人の事業内容・定款・残る施設等によって対応が変わります。

生活保護法指定医療機関も別に手続きしますか?

指定を受けている場合は、指定医療機関としての廃止・休止等の届出を確認してください。保険医療機関とは別制度です。

閉院では「行政手続き」「患者情報」「設備撤去」を同時に管理する

クリニック閉院で最も避けたいのは、物件の退去だけを先行させることです。

実務では、

  1. 現在の許可・指定・免許・設備を棚卸しする
  2. 閉院日と患者対応を決める
  3. 保健所・厚生局等の届出を整理する
  4. 診療録の保管方法を決める
  5. 医療機器の行政手続きを確認する
  6. 機器を搬出する
  7. 原状回復工事を行う
  8. 完了検査・明け渡しを行う

という順序で進めると整理しやすくなります。

医療機器撤去と原状回復についてはクリニックの内装解体、原状回復全体については原状回復とは?もあわせて確認してください。

閉院届出、医療機器撤去、原状回復、物件明け渡しの日程を一つに整理したい場合は、お問い合わせから閉院予定日、診療科、物件の明け渡し期限、主な医療機器などをお知らせください。

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