店舗の閉店費用はいくら?営業終了後も発生する7つの支出と資金計画

店舗を閉店するときは、「営業を止めれば支出も止まる」とは限りません。

最終営業日を過ぎても、解約予告期間中の賃料・共益費、原状回復、設備撤去、在庫や不用品の整理、人件費、ライフラインなどの支払いが残ることがあります。

そのため、閉店費用は「総額はいくらか」だけでなく、何にいくらかかり、いつ支払うのかまで分けて確認する必要があります。

店舗規模・業態・契約・設備・原状回復範囲によって金額差が大きいため、この記事では全国一律の「閉店費用○万円」という相場は置きません。代わりに、閉店資金を7つの費目に分けて、見落としやすい支出と資金計画の作り方を整理します。

物件を明け渡すまでの直接費用に絞って確認したい場合は店舗の閉店・退去費用、総額を抑える方法は店舗の閉店費用を抑える方法を確認してください。

目次

店舗の閉店費用は7つに分けて考える

閉店時に確認したい主な支出は次の7つです。

費目 主な内容 確認する資料
1.賃料・共益費 解約予告期間、原状回復中の固定費 賃貸借契約書・解約通知
2.契約上の精算 中途解約違約金、償却、各種契約の終了費用 賃貸借契約書・各サービス契約
3.原状回復・解体 内装撤去、スケルトン返し、補修、清掃 契約書・工事見積
4.搬出・撤去・廃棄 残置物、什器、看板、産業廃棄物等 搬出・処分見積
5.在庫・設備・リース 在庫処分、設備移設、リース返却・残契約 在庫表・資産台帳・リース契約
6.人件費 最終給与、退職・解雇等に伴う支払い 雇用契約・就業規則・給与台帳
7.閉店後の固定費・手続費 電気・ガス・水道、通信、警備、POS、保険、専門家費用等 請求書・契約一覧

この7つを「確定」「見積済み」「未確認」に分けると、閉店に必要な現金が見えやすくなります。

1.解約予告期間中の賃料・共益費

見落としやすいのが、営業終了後も続く賃料です。

賃貸借契約に解約予告期間が定められている場合、営業を止めた日と賃料負担が終わる日は一致しないことがあります。

例えば、最終営業日が9月末でも、契約終了日が11月末なら、その間の賃料・共益費を閉店資金へ入れておく必要があります。

ここでは、解約予告期間、契約終了日、月途中の賃料計算方法、共益費・管理費、駐車場・倉庫等の付帯契約を確認します。

「店を使わない期間だから賃料はかからない」とは限らないため、営業計画とは別に契約上の固定費を計算します。

解約予告については店舗の解約予告を確認してください。

2.中途解約の違約金や契約上の精算

契約期間の途中で退去する場合は、中途解約条項や違約金の確認も必要です。

国税庁も、建物賃貸借を契約期間終了前に中途解約する際、数か月分の家賃相当額を違約金として受け取るケースがあることを前提に税務上の取扱いを案内しています。

実際に負担があるか、何か月分かは契約次第です。

賃貸借契約以外にも、リース、POS・決済端末、通信回線、警備、予約システム、複合機、定期保守などに途中解約費用や残期間の支払いがないか確認します。

テナントの中途解約についてはテナント解約の違約金を参照してください。

3.原状回復・内装解体・スケルトン工事

閉店費用の中でも金額が大きく動きやすいのが原状回復です。

工事費は、面積だけでは決まりません。

契約上どこまで戻すか、内装解体かスケルトン返しか、厨房・給排水・ガス・ダクト等があるか、造作物の量、商業施設等の工事条件、夜間・休日作業、搬出経路、貸主指定業者の有無などで変わります。

特に飲食店では、厨房設備、排気ダクト、グリストラップ、防水、臭気処理などが工事範囲に入ると、物販店とは費用構造が変わります。

全国一律の坪単価を総額計算へ機械的に当てはめず、契約上の返還状態を確認してから現地見積を取ります。

原状回復の範囲は店舗閉店時の原状回復、費用の見方は店舗・オフィスの原状回復で確認してください。

4.設備・什器・残置物の撤去と廃棄

原状回復の見積とは別に、設備や残置物の搬出・処分費が必要になる場合があります。

厨房機器、冷蔵庫・冷凍庫、テーブル・椅子、陳列棚、大型什器、看板、金庫、事務機器、大量の在庫・梱包材などが対象になります。

大型設備では、取り外しだけでなく搬出・養生・車両・処分まで費用が発生することがあります。

一方、自社所有で中古価値が残っている設備・什器は、廃棄する前に買取へ回せる可能性があります。

処分見積を取る前後で買取可能品を切り分けると、支出と売却収入を分けて比較できます。

撤去・処分は店舗・オフィスの撤去・廃棄、売却できる設備は設備・什器の買取を確認してください。

5.在庫・設備・リース品の整理にかかる費用

在庫

商品在庫は、値下げ販売、他店舗への移管、仕入先への返品、買取、廃棄などに分かれます。

売れ残った在庫をすべて廃棄する前提にすると、処分費だけでなく本来回収できた資金も失います。

設備・什器

自社所有の設備は、移設、売却、居抜き譲渡、処分を比較します。

解体してしまうと査定できなくなったり、価値が下がったりする場合があるため、売却可能性は工事前に確認します。

リース・レンタル

リース・レンタル品は自社所有物ではありません。

閉店時の返却、移転、残期間、途中終了の条件を契約先へ確認します。閉店したからといって自由に売却・廃棄できるとは限りません。

在庫については店舗閉店時の在庫処分、リース品については店舗閉店時のリース品返却を確認してください。

6.従業員に関する支払い

従業員がいる店舗では、閉店時の人件費も資金計画へ入れます。

最終給与だけでなく、雇用関係の終了方法によって必要な対応が変わります。

厚生労働省は、労働者を解雇する場合、原則として少なくとも30日前の予告が必要で、予告しない場合は30日分以上の平均賃金に相当する解雇予告手当が必要と案内しています。予告日数が不足する場合は、その不足日数分が必要です。

ただし、閉店時の雇用終了がすべて同じ「解雇」になるわけではなく、有期契約、退職合意、配置転換、就業規則など個別事情があります。

最終給与、未払残業代等、退職金制度がある場合の支払い、解雇予告・予告手当の要否、社会保険・雇用保険等の手続きを、自社の状況に応じて確認します。

7.閉店後も残るライフライン・サービス・手続費用

営業を終了しても、明渡しまで必要な契約があります。

電気・水道は、原状回復工事、設備撤去、清掃、貸主確認で使用することがあります。

このほか、ガス、電話・インターネット、警備、POS・決済サービス、予約システム、保険、廃棄物回収、税理士・社会保険労務士等への手続費なども、いつまで請求されるか確認します。

ライフラインの停止時期は店舗の電気・ガス・水道を止めるタイミングを参照してください。

閉店費用は「総額」ではなく支払月で並べる

時期 主な支出
閉店決定後 解約予告中の固定費、専門家費用、見積・契約関連
営業終了前 人件費、在庫対応、設備移設・売却準備
営業終了後〜明渡し 搬出、廃棄、原状回復、清掃、ライフライン
明渡し後 追加精算、各契約の最終請求、未確定費用

見積額がまだ出ていない項目も0円にはせず、「未確認」として残しておく方が安全です。

閉店資金は3段階で管理する

状態 扱い
確定 契約書・請求書等で金額が決まっている
見積 業者見積などがあり概算できる
未確認 発生可能性はあるが金額が未確認

「確定+見積」だけを必要資金にすると、未確認費用が後から資金不足につながります。

敷金・保証金は閉店資金へ先に充てすぎない

店舗退去では、敷金・保証金が返還されることがあります。

ただし、預けた金額がそのまま、すぐ返ってくるとは限りません。

契約上の償却、未払賃料等、借主負担として確定した原状回復費などが差し引かれる場合があります。

資金計画では、「預託額」ではなく「返還見込額」と「返還予定時期」を別に管理します。

詳細は店舗の敷金返還、店舗の保証金返還を確認してください。

閉店費用から差し引ける可能性があるお金

設備・什器の買取代金、厨房機器等の売却代金、在庫の販売・買取代金、造作譲渡代金、敷金・保証金の返還額など、回収できる資産もあります。

ただし、売却や居抜き譲渡は成立が保証されるものではなく、敷金・保証金も控除や返還時期があります。

そのため、閉店資金を計算するときは支出総額と回収見込額を別表にする方が分かりやすくなります。

居抜きなら閉店費用はゼロになる?

居抜き・造作譲渡が成立すると、原状回復や設備撤去の一部を減らせる可能性があります。

ただし、貸主・管理会社の承諾、後継テナントの確保、設備の所有権などの条件があります。

「居抜きなら必ず原状回復費がゼロ」とは考えず、通常退去案と並行して比較します。

居抜きと原状回復の比較は居抜き退去の進め方を確認してください。

店舗閉店費用の簡易計算式

閉店に必要な支出 = 賃料・共益費 + 契約精算 + 原状回復・解体 + 搬出・廃棄 + 在庫・設備・リース整理 + 人件費 + 閉店後固定費・手続費

回収見込 = 設備・在庫等の売却 + 造作譲渡 + 敷金・保証金の返還見込

資金繰りでは、単純に「支出-回収見込」だけを見るのではなく、支払いが先で返還・売却代金が後になる可能性も考慮します。

店舗閉店費用FAQ

店舗を閉店するのにいくらかかりますか?

店舗規模・業態・賃貸借契約・原状回復範囲・設備量などで大きく変わるため、全国一律の金額では判断できません。

営業をやめた後も家賃はかかりますか?

賃貸借契約が続いていれば、営業終了後も賃料・共益費が発生することがあります。最終営業日ではなく契約終了日を確認してください。

原状回復費はいくら見ておけばよいですか?

面積だけでは判断できません。返還状態、内装・設備、指定業者、搬出条件などで変わるため、契約を確認して現地見積を取ります。

設備や厨房機器は処分費がかかりますか?

撤去・搬出・処分費がかかる場合があります。一方、中古価値がある自社所有品なら買取できる可能性があるため、処分前に査定します。

従業員への支払いも閉店費用に入れますか?

入れます。最終給与や雇用終了に伴う支払い・手続きを確認します。

敷金・保証金が戻るなら閉店資金は少なくてよいですか?

返還額・返還時期が確定するまでは注意が必要です。預託額をそのまま閉店資金として見込まない方が安全です。

居抜きなら閉店費用を減らせますか?

原状回復・撤去費を減らせる可能性がありますが、貸主承諾や後継テナント確保等が必要です。成立しない場合の通常退去費用も同時に見積もっておきます。

閉店費用は「総額」と「資金繰り」を分けて確認する

店舗閉店では、最終的な費用総額が同じでも、支払時期によって必要な手元資金が変わります。

そのため、費用項目 → 金額 → 支払予定月 → 回収見込 → 入金予定月まで並べて資金計画を作ります。

店舗を貸主へ返すまでの直接費用は店舗の閉店・退去費用、閉店総額を抑える方法は店舗の閉店費用を抑える8つの方法をあわせて確認してください。

原状回復・設備・居抜き・撤去を含め、閉店に必要な支出と回収見込を整理したい場合は、お問い合わせから相談できます。

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