店舗やオフィスを定期借家契約で借りていて、契約期間が残っているうちに閉店・移転することになった場合、「1か月前に伝えれば途中で解約できる」とは限りません。
定期建物賃貸借には、一定の居住用物件について借主から中途解約できる特別な制度があります。
しかし、純粋な店舗・オフィスなどの事業用物件は、その制度の対象外です。
事業用の定期借家を期間途中で終了できるかは、まず契約書に中途解約を認める特約があるかを確認します。
特約がない場合は、一方的な通知だけで当然に契約を終了できるとは限らず、貸主との合意解約などを検討することになります。
定期借家は「期間満了で終わる契約」
定期建物賃貸借は、契約で定めた期間が満了すると、更新されることなく終了する仕組みです。
普通借家のように更新が前提となる契約とは異なります。
ただし、ここで注意したいのは、
「期間満了で必ず終了する」ことと「借主がいつでも途中で解約できる」ことは別
という点です。
たとえば5年間の事業用定期借家を契約し、2年目で店舗を閉店することになったとしても、「残り3年使わないから解約する」と借主だけで決められるとは限りません。
事業用定期借家では「1か月前に通知すれば解約」は原則使えない
定期借家について調べると、「借主は1か月前に申し入れれば中途解約できる」という説明を見ることがあります。
これはすべての定期借家を対象とした制度ではありません。
法定の中途解約制度が対象としているのは、一定の条件を満たす居住用建物です。
- 居住の用に供する建物である
- 床面積が200平方メートル未満である
- 転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情がある
- 生活の本拠として使用することが困難になった
これらの条件に該当する場合、借主から解約を申し入れ、その日から1か月を経過することで終了する制度があります。
一方、通常の店舗、事務所、オフィスなど、純粋な事業用物件ではこの法定中途解約制度を前提にできません。
200㎡未満の店舗なら1か月解約できるわけではない
「200㎡未満」という数字だけを見ると、小規模店舗や小規模オフィスなら法定中途解約が使えるように見えるかもしれません。
しかし、面積だけでは決まりません。
対象は「居住の用に供する建物」です。
したがって、床面積が30㎡の店舗や50㎡のオフィスだからという理由だけで、1か月前の申入れによる法定中途解約を利用できるわけではありません。
事業用定期借家では中途解約特約を確認する
事業用定期借家を途中で解約したい場合に、最初に読むのは契約書の中途解約条項です。
次のような表現を探します。
- 中途解約
- 期間内解約
- 解約権
- 解約予告
- 即時解約
- 違約金
- 損害賠償
事業用定期借家では、契約で借主からの中途解約を認めている場合があります。
その場合、契約で決めた条件に従って解約を進めます。
中途解約特約で確認する7項目
1.借主から中途解約できると書かれているか
単に「契約期間5年」と書かれているだけではなく、借主から期間途中で終了できる条項があるか確認します。
2.何か月前に通知する必要があるか
3か月、6か月など契約によって異なります。
事業用テナントについて全国一律の中途解約予告期間が決まっているわけではありません。
解約予告期間全般についてはテナントの解約は何か月前かも確認してください。
3.通知方法が指定されているか
書面、指定解約届、管理会社への提出など、契約上の通知方法を確認します。
口頭で担当者へ伝えただけでは、正式な解約通知として処理されない可能性があります。
4.予告期間を待たずに即時解約できるか
契約によっては、一定期間分の賃料相当額を支払うことで、予告期間を待たずに契約を終了できる条項があります。
ただし、そのような条項がなければ、「6か月分払えば必ず今日解約できる」という全国共通ルールではありません。
5.違約金・予告金があるか
中途解約時に、通常の賃料とは別に違約金を定めている契約があります。
解約予告期間分の賃料と違約金は、同じものとは限りません。
6.残存期間について何が定められているか
契約によっては、残存期間の賃料や一定期間分の金額について定めている場合があります。
一方、残りの契約期間すべての賃料が必ずそのまま請求されると一律に判断することもできません。
契約条項、貸主との合意、個別事情を確認します。
7.原状回復と明渡し期限はいつか
賃料の終了日だけでなく、物件をいつまでに返還する必要があるか確認します。
店舗・オフィスでは、中途解約通知後に、残置物撤去、内装解体、原状回復、貸主検査などが必要になる場合があります。
中途解約特約がない場合はどうなるか
事業用定期借家で、借主からの中途解約を認める条項がない場合は注意が必要です。
定期借家は期間を決めて締結する契約であり、中途解約特約がなければ、借主が一方的な通知だけで期間途中に終了させることは原則としてできません。
ただし、貸主と借主が合意すれば、期間途中でも合意解約することは可能です。
貸主へ相談するときは、
- 希望する契約終了日
- 退去理由
- 残存期間
- 原状回復の予定
- 明渡し可能日
- 後継テナント候補の有無
- 支払条件についての提案
を整理すると協議しやすくなります。
ただし、貸主に合意解約へ応じる義務が当然にあるわけではありません。
後継テナントが見つかっても自動的に契約は終わらない
店舗では、居抜きなどで次のテナント候補が見つかることがあります。
しかし、新しい借主候補が現れただけで、既存の定期借家契約が自動的に終了するわけではありません。
貸主が後継テナントと新しい契約を締結すること、現在の借主との契約終了条件を合意することなどが必要になります。
中途解約特約に予告期間分の支払が定められている場合も、後継テナントが決まれば当然にその支払が消滅するとは限りません。
違約金を払えば必ず中途解約できるわけではない
契約書に「中途解約する場合は○か月分を支払う」といった条項があり、その支払によって解約できる構造になっているなら、その条件を確認します。
一方、中途解約を認める条項自体がない契約で、借主が一方的に一定額を提示すれば契約を終了できるとは限りません。
「中途解約できる権利」と「中途解約時に支払う金額」は分けて確認してください。
違約金・解約費用についてはオフィス退去の違約金も参考になります。
定期借家として有効に成立しているかも確認する
事業用物件で「定期借家」と呼ばれている場合でも、争いがある案件では、定期建物賃貸借として必要な手続が行われているか確認することがあります。
定期建物賃貸借では、契約が書面または認められた電磁的方法で行われることに加え、貸主から借主へ、契約の更新がなく期間満了で終了することについて事前説明が必要です。
この事前説明が行われていない場合、法律上「更新がない旨の定め」が無効となります。
契約形態そのものに疑問がある場合は、「定期借家だから途中解約できない」と自己判断するのではなく、契約書や事前説明書を含めて専門家へ確認してください。
期間満了の「1年前〜6か月前通知」と中途解約は別
定期借家には、期間が1年以上の場合、貸主側が期間満了による終了を借主へ通知する制度があります。
この通知期間が「期間満了の1年前から6か月前まで」です。
しかし、これは貸主が期間満了による終了を借主へ主張するための通知制度です。
借主が契約途中で解約するときの「中途解約予告6か月」などとは別の話です。
次の2つを混同しないようにします。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 期間満了通知 | 貸主が定期借家の満了終了を知らせる手続 |
| 中途解約予告 | 契約期間途中で借主から解約する場合の契約上の条件 |
事業用定期借家の退去費用は分けて確認する
中途解約する場合、必要となる金額は一つではありません。
| 費用 | 確認内容 |
|---|---|
| 解約日までの賃料 | いつまで通常賃料・共益費が発生するか |
| 解約予告金 | 予告期間を短縮する場合の条項があるか |
| 中途解約違約金 | 別途違約金が定められているか |
| 残存期間に関する支払 | 契約にどのような定めがあるか |
| フリーレント等 | 早期解約時の返還条項があるか |
| 原状回復費 | 契約終了までにどの状態へ戻す必要があるか |
| 残置物撤去費 | 什器・家具・設備等をどう処理するか |
契約上の支払と、退去工事費を分けて総額を確認します。
閉店日ではなく契約終了日から逆算する
店舗を閉店した日、オフィスから引っ越した日と、定期借家契約が終了する日は同じとは限りません。
退去では次の日付を分けて管理します。
- 営業・業務終了日
- 移転日
- 解約通知日
- 契約終了日
- 残置物撤去日
- 原状回復工事期間
- 貸主検査日
- 明渡し日
解約条件の確認が遅れると、物件を使っていない期間にも賃料等が残る可能性があります。
事業用定期借家の中途解約を進める順番
- 契約書が定期建物賃貸借か確認する
- 契約期間と満了日を確認する
- 中途解約条項を確認する
- 予告期間・通知方法を確認する
- 違約金・予告金・残存期間の定めを確認する
- 原状回復・明渡し期限を確認する
- 退去総額とスケジュールを試算する
- 契約指定の方法で通知する
- 特約がなければ貸主との合意解約を協議する
- 原状回復・明渡しを進める
テナント中途解約の全体像についてはテナントの中途解約も確認してください。
事業用定期借家の中途解約でよくある質問
事業用定期借家でも1か月前に通知すれば解約できますか?
純粋な店舗・オフィスなどでは、居住用200㎡未満を対象とする法定1か月中途解約をそのまま利用することはできません。契約の中途解約特約を確認します。
店舗が50㎡しかなくても法定1か月解約の対象外ですか?
面積だけでは決まりません。法定制度は一定の居住用建物が対象です。小規模でも純粋な事業用店舗だからというだけで対象にはなりません。
中途解約特約がなければ絶対に退去できませんか?
借主が一方的に契約を終えることは原則難しくなりますが、貸主と合意できれば期間途中で合意解約することは可能です。
違約金を払えば中途解約できますか?
契約上、その支払によって中途解約できる条項になっているかを確認してください。一定額を一方的に支払えば必ず終了できるわけではありません。
契約満了までの賃料を全部払う必要がありますか?
契約条項、貸主との合意、残存期間、違約金条項などによって異なります。残存期間すべてが必ず請求される、あるいは一切不要と一律には判断できません。
店舗併用住宅の場合はどうなりますか?
店舗部分があっても、建物を生活の本拠として使用している場合は居住用に該当する可能性があります。面積や使用実態、法定要件を確認します。
満了の6か月前までに通知がなければ中途解約できますか?
別の制度です。期間満了時の貸主からの通知と、契約期間途中の借主からの中途解約は分けて考えます。
定期借家の事前説明を受けた記憶がありません
定期建物賃貸借の成立・効力に関係する可能性があります。契約書、事前説明書、電子交付記録などを確認し、金額や契約期間が大きい場合は専門家へ相談してください。
事業用定期借家では「定期だから解約できない」だけで判断しない
事業用定期借家は、居住用定期借家とは中途解約のルールが異なります。
確認の中心になるのは、
- 本当に定期建物賃貸借なのか
- 中途解約特約があるか
- 予告期間は何か月か
- 即時解約・違約金の条件は何か
- 残存期間について何が定められているか
- 原状回復と明渡しはいつまでか
- 特約がなければ合意解約できるか
です。
店舗の解約予告については店舗の解約予告、オフィスの場合はオフィスの解約予告もあわせて確認してください。
契約書を見ても事業用定期借家を途中解約できるのか分からない、違約金と原状回復を含めて退去日程を整理したい場合は、お問い合わせから契約期間、退去希望時期、物件種別などをお知らせください。
